異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊   作:日本武尊

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ウズラ11様、minazuki提督様より評価9を頂きました。

評価していただきありがとうございます!


第五章 パーパルディア皇国編 下 滅びゆく列強国
第七十五話 第二次フェン沖海戦 壱


 

 

 

 所変わり、エストシラントの港を後にして、中継点のデュロにて補給を行ってフェン王国を目指す皇軍の艦隊。

 

 

「……」

 

 艦隊旗艦『ベレヌス』に乗艦している将軍『バルト』は腕を組み、空を見つめている。しかし、その顔にはどこか不安の色を浮かばせている。

 

「将軍。まもなくフェン王国領海付近に到達します」

 

 その傍で水兵より報告を聞いた参謀がバルトに告げる。

 

「うむ。各員警戒は怠るな。魔導探知機はもちろん、目視による監視を厳にせよ! 並びに竜母艦隊に連絡。いつでも飛ばせるように、ワイバーンロードの発艦準備に取り掛かれ!」

 

 バルトの指示はすぐに各所へ伝えられ、手の空いた者は周囲の監視を行う。そして魔導通信によって竜母艦隊に指令が伝えられる。

 

「……」

 

 彼は指示を出した後、再び海を見つめる。

 

(皇国は……陛下は一体何をしようとしているのだろうか)

 

 海を見つめたまま、彼は内心呟く。顔には出ていないが、その心は不安によって揺らいでいる。

 

 というのも、彼の同期であり、ライバルであった将軍シウスが、艦隊を率いてアルタラス王国への攻撃に出てから、帰って来ないのだ。

 

 当初は上層部はアルタラス王国を攻略中だと言っていたが、その後に聞いても艦隊は占領地の維持の為に駐留することになった、とだけしか伝えてくれない。

 

 一応彼はシウスに向けて手紙等は送っているが、届いているとは思っていない。現に返信の手紙が来ていないのだから猶更だ。

 

 噂によれば、艦隊は嵐に巻き込まれて壊滅したというが、それも彼は信じなかった。

 

 シウスの指揮官としての技量はそうだが、何より艦隊全体の練度は皇軍の中でもかなり高い。それは同期でありライバルである彼自身がよく分かっている。

 そんな彼が率いる艦隊が嵐に巻き込まれて壊滅するとは考えづらいのだ。

 

 そんな中で、こんな噂も流れている。

 

 

 アルタラス王国へ向かった艦隊は、敵にやられて壊滅した、と……

 

 

 それこそ信じ難い噂であった。ただの蛮族に皇軍がやられるということなど、ありえないのだから。

 

 しかし今回のフェン王国への攻撃に際して、ロデニウス連邦共和国と呼ばれる国が介入してくるという話が入って来ている。

 

 そのロデニウス連邦共和国がアルタラス王国へ援軍を送り、皇軍を迎え撃ったが為に、艦隊が壊滅した、という噂も流れている。

 

 当初は蛮族が徒党を組んで皇軍を迎え撃とうとしているという認識だったが、先の噂の件からバルトはこのロデニウス連邦共和国の事を留意している。

 

(我が艦隊が負けるわけが無い。無いのだが……)

 

 バルトは周囲を航行する戦列艦達を眺めて、絶対的な自信を抱くものの、直後にそれは揺らぐ。

 

(嫌な予感がする……)

 

 彼はこれまで培ってきた経験と勘からか、その胸中に不安の渦を渦巻かせている。

 

 

 だが、古今東西どの世界でもこればかりは共通しているようだ。

 

 

『嫌な予感な時だけ、良く当たる』というのは……

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 所変わり、戦列艦の後方を航行する竜母艦隊。

 

 

 各竜母ではワイバーンロードの発艦準備が行われており、次々と甲板にワイバーンロードが上げられている。

 

 ワイバーンロードを搭載し、発着艦を行う為に竜母は他の戦列艦と比べて二回りほど大きい。他国と比べて隔絶した皇国の圧倒的な造船技術があるからこそ、このような船を作ることが出来る。

 まぁカウンターウェイトを搭載して飛行甲板とのバランスを無理やり整えつつ帆を持つという、中々に大胆且つ強引な構造で、現代からすればトップヘビーが心配な構造をしているが。

 

 見る物に圧倒的な印象をもたらす竜母艦隊を横に眺め、艦隊副司令のアルモスは満足そうに頷く。そして横に立つ竜騎士長に話しかける。

 

「竜騎士長! 皇軍は強い!」

「ハッ! 存じております!」

 

 アルモスの問いに、竜騎士長は迷いなく答える。

 

「なぜ強いと思う?」

「総合力です!」

「そうだ! だが、圧倒的な強さを誇るのは、戦列艦もさることながら、この中核たる竜母艦隊が存在するからだ! この竜母があれば、どんな戦列艦の大砲よりも敵の射程外から攻撃できる! 竜騎士長、制空権を取る者が、海においても陸上においても有利なのだ!」

「ご指導ありがとうございます! 先進的な戦術であります!」

 

 アルモスが語る先進的な戦術に、竜騎士長は感謝を述べる。

 

「皇軍が今までの海戦で無敵を誇ったのは、この竜母艦隊があってこそ。この艦隊がある限り、皇軍は覇王の道を突き進むであろう!」

 

 まるで演説をしているかのように、彼は甲板の上で一歩踏み出し、両腕を高く掲げた。

 

「そして見よ!! この竜母艦隊の中で一際輝く、我が皇軍最新鋭の竜母にして、我が竜母艦隊旗艦『ミール』を!!」

 

 アルモスは自身の眼前に広がる、一隻の竜母を見る。

 

 パーパルディア皇国が最新鋭の技術を用いて建造した最新鋭の竜母。それがこの『ミール』である。

 

「あれは素晴らしい!! 船体は大きく、機能美に満ちている!」

「はい! とても素晴らしいです!」

 

 アルモスと竜騎士長は『ミール』に魅入って、その素晴らしさに感嘆の声を上げる。

 

 木造船の建築技術の限界に到達した、かつての地球では恐らく誕生しなかったであろう規模の船だ。

 

 ワイバーンという航空戦力の存在、そして魔法の存在が、こうした独自の進化をもたらしたのだろう。

 

 

 制空権を確保し、航空戦力による海上、地上への攻撃。現代にも通ずる先進的な戦術であり、彼の戦術思想は確かに時代を先取りしているだろう。

 

 

 だが、当然ながらその戦術を理解している者であれば、その重要性を知っているわけである。

 

 

 故に、竜母艦隊が最優先目標(・・・・・)になるのもまた、自明の理である。

 

 

 

 ―――ッ!!!

 

 

 

 すると竜母の周囲に展開している戦列艦よりムーで発明されたサイレンがけたたましく響き渡る。

 

「何事だ!?」

 

 アルモスが大声を上げると、水兵が慌てた様子でやって来る。

 

「副司令! 三時方向より接近する物体を戦列艦が発見しました!」

「接近する物体だと? ワイバーンか?」 

「しかしフェン王国にワイバーンはいないはず……」

 

 水兵より報告を聞き、アルモスは首を傾げるが、竜騎士長がフェン王国にワイバーンが居ないのを伝える。

 

 ガハラ神国を含めた周辺に風竜が生息している都合、フェン王国の周辺にワイバーンは生息していないし、まず風竜を恐れて近寄ることも出来ない。

 

「いえ、ワイバーンではありません! 魔導探知機に反応がありません!」

「魔導探知機に反応が無い?」

 

 アルモスの質問に水兵が答えると、彼は怪訝な表情を浮かべて首を傾げる。

 

 接近しているのがワイバーンであれば、魔導探知機に反応があるはずである。ワイバーンぐらいの生物であれば、保有している魔力に魔導探知機が反応し、その姿を捉えて接近を察知出来る。これが魔導探知機の構造である。

 だが、魔導探知機はワイバーン以下の魔力、つまり人間が保有する魔力では捉えられないが、そもそも空から人間は来れないという彼らの考えもあって、さしたる問題にはならなかった。

 

「では接近している物体は何か?」

「それが―――」

 

 水兵により詳しく聞こうとアルモスが問い掛ける。

 

 

 だが、彼らが悠長としていたせいで、彼らの対応は大きく遅れてしまう。

 

 

「っ! 『ミール』直上!! 何かが降下してくるぞ!!」

 

 すると甲板上に居た水兵が、上空を見上げて大声で周囲に知らせつつ上空を指さしていた。

 

 誰もが上空を見上げた瞬間、雲の合間より次々と何かが飛び出てきて艦隊に向かって急降下してきた。

 

 それはロデニウス連邦共和国海軍の空母『ヒョウリュウ』と『エンリュウ』より発艦した艦爆隊の流星改二である。そして敵艦隊の右側を突こうと大きく迂回して戦爆隊の烈風改を先頭に艦攻隊の流星改二が接近している。

 皇軍が見つけた物体というのは、この戦爆隊と艦攻隊である。

 

 艦爆隊は雲に隠れて敵艦隊の監視の目をやり過ごし、艦隊上空へ到達したと同時に全機が艦隊に向かって急降下したのである。

 

「ま、まさか、あれは!!」

 

 アルモスは急降下してくる流星改二を見た瞬間声を上げ、それと同時に流星改二は胴体の爆弾倉を開き、中にある50番爆弾二発と両翼に提げた25番爆弾二発を投下して上昇する。

 

 投下された爆弾は一直線に『ミール』と周囲の竜母へと向かっていき、何発かが竜母の周囲に着弾して複数の水柱を上げる。

 

「ぬぉぉっ!?」

 

 その衝撃でアルモス他数名の水兵がバランスを崩して尻餅を着いてしまう。

 

 その瞬間、『ミール』の甲板に二機分の50番爆弾と25番爆弾が直撃して貫通し、内部で信管が作動して炸裂し、船員、ワイバーンロード、竜騎士諸共木っ端微塵に粉砕し、跡形もなく消滅させたのだ。

 そして内部で爆発が起きた『ミール』は船体を真っ二つにして、沈んでいく。

 

 同時に『ミール』の周囲にいた竜母にも流星改二より投下された爆弾が直撃し、その船体を破壊されて沈められる。

 

 

 

「命中! 命中!」

 

 流星改二の中では、機銃手が戦果を確認して操縦手に伝える。操縦手も機体を傾けて戦果を確認する。

 

「他はどうだ!」

「ハッ! 他の艦爆も竜母に命中させて撃沈しています!」

「よし! 旗艦に発信!『我、奇襲ニ成功セリ!』 各機にも打電しろ!」

「ハッ!」

 

 操縦手はすぐに機銃手に指示を出し、自身は爆弾補給の為、母艦に向けて針路を変える。

 

 

 

「……」

 

 運良く狙われなかった竜母の上で、誰もがその光景に呆然と立ち尽くしている。 

 

 最新鋭の竜母である『ミール』が轟沈した。対魔弾鉄鋼式装甲が施され、竜母としては防御に優れていた『ミール』が、呆気なく沈められた。

 

 そして周囲に居た竜母もまた『ミール』に続くように、船体を破壊されて沈んでいく。その中には『ミール』の姉妹艦だっている。

 

「そんな、馬鹿な……!」

 

 アルモスは絞り出すように声を漏らし、爆弾を投下し終えて上昇する流星改二を見る。

 

「っ! やはり、飛行機械か!?」

 

 飛び去って行く流星改二を見た瞬間、アルモスは目を見開いて驚愕する。

 

「なぜムーの飛行機械がこんなところに……まさか、ムーが兵器を蛮族共に輸出しているのか!?」

 

 そして彼は一つの結論に辿り着き、二重の意味で驚愕するのだった。

 

 彼らからすれば風車のような羽を持つ飛行機械を作れるのは第二列強国のムー以外に無い。故にそのムーがフェン王国かロデニウス連邦共和国へ飛行機械を輸出し、蛮族が攻撃の為に運用している、と。

 

(魔導探知機に反応が無かったのは、飛行機械だったからか!)

 

 そして彼は、魔導探知機が敵の接近を察知出来なかった理由を察して、歯噛みする。

 

 魔法とは違う、科学で開発されたムーの飛行機械は、魔力を発さない。それ故に魔導探知機は飛行機械を捉えることが出来ない。そして先述したが、人間の魔力程度では魔導探知機は捉えられないので、飛行機械との組み合わせでは相性が最悪なのだ。

 だから、皇国は対ムーを想定しての軍拡の一環として、人間の魔力でも探知できる魔導探知機の開発を行っているとかなんとか。

 

 

 閑話休題(それはともかく)

 

 

 まぁ事実は全く違うのだが、判断材料が少ないのもあるが、何より今の彼にそれを詮索する余裕など無い。

 

「っ! 何をしている! 早くワイバーンロードを上げろ!! 急げ!!」

 

 アルモスは気を取り直して、すぐにワイバーンロードの発艦を急がせる。

 

 少なくとも竜母の甲板にはワイバーンロードを上げてあるので、後は空に上げるだけである。相手が飛行機械であるので苦戦は免れないだろうが、無いよりかはマシである。

 

 尤も、そのワイバーンロードが轟音と飛行機械の存在で動揺しており、興奮して竜騎士と甲板員の言う事を聞かないでいた。

 

 

 ッ!!

 

 

 すると轟音と共に閃光が発せられ、アルモスは振り返る。

 

「『フィシャヌス』『オリゴ』『バタフ』、あぁ!!『リーベル』轟沈!!」

 

 水兵の報告を聞き誰もが振り返ると、彼の目に黒煙と炎を上げて船体を真っ二つにして沈む『フィシャヌス』『オリゴ』『バタフ』『リーベル』、更に数隻の姿があった。

 

 パーパルディア皇国が誇る名艦である100門級戦列艦『フィシャヌス』とその同型艦。『ミール』同様最新式の対魔弾鉄鋼式装甲が施された皇国自慢の艦。それが、呆気も無く沈められている。

 

 

 竜母艦隊が慌てふためいている間にも、艦隊の右側面より接近していた戦爆隊と艦爆隊は、まず戦爆隊の烈風改の両翼より一〇〇式ロケット弾改二が放たれ、弾道性能が向上して真っすぐ飛ぶようになったロケット弾は『フィシャヌス』『オリゴ』『バタフ』『リーベル』、その他数隻の艦側面に直撃し、自慢の対魔弾鉄鋼式装甲を一〇〇式ロケット弾改二は貫徹して内部で炸裂し、魔導砲に使う魔石に引火して大爆発を起こした。

 魔導砲を大量に搭載した戦列艦は、当然船内にはギッシリと魔石が積み込まれている。火薬庫同然な状態である以上、被弾すればどうなるか、日の目を見るより明らかな事である。 

 

 

 ロケット弾を打ち終えた烈風改は竜母に向けて機銃掃射を行い、HE(M)(薄殻榴弾)の弾丸が竜母の船体やマスト、帆を破壊する。そして甲板に居た水兵や竜騎士、ワイバーンロードは身体を粉々に粉砕されてその命を失う。

 

 中にはカウンターウェイトの役割を担う支柱を破壊され、二隻の竜母がバランスを崩して横転してしまった。

 

「な、な、な……」

 

 彼らかすればありえない光景を目の当たりにして、アルモスは立ち尽くし、一部の水兵達は腰が抜けて尻餅を着いてしまう。

 

 だが、彼らに驚いていられる暇は与えられなかった。

 

 竜母艦隊を守る戦列艦が轟沈した事でその守りに穴が開き、更に艦隊が動揺した所に、魚雷を抱えた後続の艦攻隊の流星改二が入り込む。

 

「攻撃目標! 前方の竜母!」

 

 先頭を飛ぶ隊長機の流星改二の操縦手は声を上げつつ二本ある内一本のレバーを下ろして爆弾倉の扉を開け、投下レバーを掴む。

 

用意(よーい)……()ぇ!!」

 

 そして投下距離になり、レバーを下ろして中に抱えている魚雷を竜母に向けて投下し、艦隊の上を通って離脱する。他の流星改二もまた、抱えた魚雷を次々と投下して離脱する。

 

 投下された魚雷は白い航跡を引きながら竜母へと向かっていく。

 

「なんだあれは…‥?」

「奴ら、なぜ爆弾を捨てて……」

「白い線?」

 

 飛行機械の謎の行動を取り、尚且つ海面では白い線を引く物体に、水兵の多くが戸惑いを見せる。

 

「何をボーとしている!! 早く回避行動を取れ!!」

 

 しかしアルモスは長年の経験と勘からその白い線を引く物体に危険を察し、すぐに各艦に回避行動を取るように指示を出す。 

 

 指示を受けた竜母各艦は回避行動を取ろうとするが、その前に魚雷は竜母に命中する。

 

 命中した魚雷は爆発を起こし、轟音と共に水柱と共に竜母を真っ二つに破壊する。

 

「竜母『ガナム』『ヘリスト』『マサーラ』消滅!!」

「更に『エリオット』『フェイル』『マーベラ』も消滅!!」

 

 魚雷の直撃を受けた竜母はたった一発で轟沈し、水兵達から次々と竜母轟沈の報告が上げられていくが、轟沈していくのが早過ぎて報告が追い付いていない。

 

「ば、馬鹿な!? 最強の皇国竜母艦隊が、こんな……馬鹿なぁっ!?」

 

 目の前で繰り広げられる光景と、水兵からの報告によって、アルモスは声を上げて頭を抱えるしかなかった。

 

 皇国最強と疑わなかった竜母艦隊が、一方的に攻撃され、次々に沈められる。あまりにも現実離れした光景に、誰もが信じられないでいた。

 

 ワイバーンロードは飛ばせずに制空権を奪われて、一方的に攻撃を受けている。アルモスは自身が得意げに語った戦術を、自らが受けることになってしまったのだ。

 

 彼は経験則から攻撃の正体を突き止めようと思考をフル回転させるが、彼の知識と経験にこんな攻撃の仕方は無い以上、対処のしようが無い。

 彼らに出来るとすれば、どうにかして攻撃を回避するしかない。

 

 尤も、魚雷というものを知らない以上、そもそも有効的な回避方法も思いつけられないのだが。

 

「この艦にも向かって来るぞ!!」

 

 すると彼の上で見張り員が絶叫する。流星改二より放たれた魚雷が彼が乗艦している竜母にも向かっていたのだ。

 

「うわぁぁぁぁっ!!」

「回避だ! 回避しろぉっ!!!」

 

 水兵が絶叫し、アルモスは最後まで諦めないで回避を指示する。

 

 

 しかし彼らの足掻きも虚しく、魚雷は回避しようとしている竜母の動きを予想した先に向かって航走して命中し、轟音と共に水柱を上げて船体を真っ二つにして破壊する。

 

 そしてアルモスの思考は、闇の中に消えていき、二度と明かりを灯すことは無かった……

 

 

 

「命中率は六割から七割ってところか」

 

 と、艦体の艦橋にて、『アーク・ロイヤル』は艦載機越しに『ヒョウリュウ』と『エンリュウ』の攻撃隊の様子を見て、その命中率を確認している。

 

(まぁ一年足らずではこれが限界か。だが、彼女達の理想には程遠いだろうが、さすがは一航戦と五航戦が鍛え上げただけはあるな)

 

 過労死しそうな猛訓練を思い出してか、彼女は苦笑いを浮かべる。とても過酷な訓練ではあるが、世界最高峰の技量を持つ彼女達に鍛え上げられたとあって、短期間でありながらある程度の技量を得られている。

 

「さてと、私もそろそろ動くとしよう」

 

 彼女はそう呟くと、攻撃隊に指令を伝える。

 

 

 

 直後に『アーク・ロイヤル』所属のF8Fベアキャットの戦爆隊と艦攻隊、艦爆隊のA-1スカイレイダー、そして残った烈風改と流星改二が残存艦艇への攻撃を開始した。

 

 旗艦を失い、指揮系統が崩壊した皇軍艦隊に成す術は無く、頼みの綱のワイバーンロードも烈風改及びF8Fベアキャットによって生き残っている竜母より発艦しようとしていたが、その前に機銃掃射を受けて空に上がる前にその命を散らしてしまう。

 

 事実上制空権を失い、竜母艦隊は航空機からの猛攻を受けて壊滅するのだった。

 

 ただ、不幸中の幸いとしてか、横転した竜母の水兵や竜騎士達は攻撃から逃れることが出来て、何とか生き残る事が出来て、樽や残骸にしがみ付いて海を漂流することになった。

 

 

 しかし、生き残った者達からすれば、死を先延ばし(・・・・・・)になった結果に過ぎないのだが……

 

 

 


 

 

 

 所変わって、空母『ヒョウリュウ』

 

 

「……」

 

 艦橋にてシャークンは腕を組み、攻撃隊からの続報を待っていた。

 

「しかし、感無量ですな。あの列強国パーパルディア皇国の竜母艦隊を、我々空母艦隊が打撃を与えたのですから」

 

 彼の隣に立つ航空参謀が、興奮した様子で皇軍の竜母艦隊撃滅を語っている。

 

 彼らからすれば第三文明圏の列強国であるパーパルディア皇国。その最強格にあたる竜母艦隊を自分達が大きな被害を与えた。以前なら夢もまた夢な事だったが、今ではそれを成しえることが出来た。興奮しないはずがない。

 

「航空参謀」

「ハッ!」

「確かにパーパルディア皇国の竜母艦隊に攻撃を仕掛け、甚大な被害を与えた。我々からすれば快挙ともいえる。だが、教官たちはそれで満足しないだろう」

『……』

 

 シャークンの言葉に、艦橋に居た者達が息を呑む。

 

 彼らは空母のKAN-SEN、特に重桜の第一航空戦隊の『赤城』『加賀』、第五航空戦隊の『翔鶴』『瑞鶴』よりしごかれて鍛えられてきた。

 その為か、彼らの目標は中々に高く設定されていたりする。

 

「竜母のみならず、戦列艦と揚陸艦の殲滅ぐらいを、教官たちは望むだろうな」

「で、ですな」

 

 その言葉に航空参謀が苦笑いを浮かべる。

 

「まぁ、私もあのパーパルディア皇国に大きな打撃を与えられたことに、喜びを感じていないわけはないがな」

「……」

「だからこそ、戦果に浮かれずに、慢心と油断だけはするな。戦場では不測の事態は常に起こるものだからな」

『ハッ!』

 

 シャークンの言葉に、艦橋に居た者達が姿勢を正して敬礼する。

 

「攻撃隊より入電! 『敵竜母艦隊の撃滅を確認!』と」

 

 そして彼らの元に、攻撃隊からの続報が入る。

 

「うむ。すぐに『ネルソン』殿に打電しろ!」

 

 続報を聞き、シャークンはすぐに旗艦『ネルソン』へ連絡を入れるように指示を出す。

 

 

 

「『ヒョウリュウ』より入電!」

 

 皇軍艦隊へ向かう『ネルソン』の艦橋にて、通信兵の妖精が『ネルソン』に報告する。

 

「内容は?」

「『敵竜母艦隊を撃滅。制空権は我が方にあり』です!」

「そう……」

 

 報告を聞いた彼女は声を漏らして目を瞑り、少しして目を開ける。

 

「これで空の心配は無いわ。空母の護衛は艦載機に任せて、空母護衛に就いているKAN-SENは水雷戦隊と合流よ!」

 

 『ネルソン』は空母の護衛を艦載機に任せて、護衛に就いているKAN-SEN達に水雷戦隊へ合流するように指示を出す。

 

 指示を受けて『名月』『涼月』『宵月『春月』の四隻は空母を離れて水雷戦隊との合流を急ぐ。

 

「『アーク・ロイヤル』と『ヒョウリュウ』、『エンリュウ』は攻撃隊を収容。補給後揚陸部隊への攻撃を開始よ。各艦に伝えなさい」

「ハッ!」

 

 通信員の妖精はすぐに『ネルソン』の指令を各空母へ伝える。

 

「……いよいよね、『ロドニー』」

『はい、姉さん』

 

 指示を出した『ネルソン』は後方を航行する『ロドニー』に通信を入れる。

 

「相手が何であっても、手加減する必要は無いわ。全力で叩くわよ」

『はい!』

 

 『ロドニー』の返事を聞き、『ネルソン』は通信を切って前を睨みつけるように目を細める。

 

 

 

 

 




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