異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊   作:日本武尊

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第八話 戦う運命

 

 

 

 それから視察団はトラック諸島に敷かれた鉄道の紹介や、飛行場にて各航空機の説明を―――最初に飛来した連山も含めて―――受け、次に諸島の各島にある工場にて製造中の武器兵器を見学した。

 

 一部ドックを除いた造船所も見学し、視察団は彼らの造船技術の高さを改めて実感するのだった。

 

 

 次にトラック諸島の湾内で、KAN-SEN同士による演習を見学した。

 

 主に海上と空中での演習が行われ、海上では『ビスマルク』を筆頭にした赤組対『ネルソン』を筆頭にした青組による艦隊決戦や水雷戦。

 空中では『武蔵』『翔鶴』『瑞鶴』の赤組対『エンタープライズ』『エセックス』『イントレピッド』の青組による空母機動部隊対決が行われた。

 

 海上では戦艦同士による砲撃戦や巡洋艦、駆逐艦による水雷戦が繰り広げられた。

 

 空中では赤組の『疾風』と『烈風』、青組の『F8F ベアキャット』が激戦を繰り広げ、赤組の『流星』や青組の『A-1 スカイパイレーツ』がそれぞれ機動部隊に襲い掛かった。

 

 そんな激しいKAN-SEN同士の演習に、視察団の面々は呆然としていたそうな。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 一通り見学し終えて 『大和』と『紀伊』 視察団の面々は食堂にて昼食を取っていた。

 

「それで、一通り見学しましたが、どうでしたか?」

 

「い、いやぁ、もう凄いとしか言えないです」

 

「ハハハ……全くですな」

 

 食堂でカレーライスを食べているヤゴウ達は苦笑いを浮かべながらそう言うしかなかった。ありとあらゆる面で、自分達とは次元が違っていたのだから。

 

「どれも見た事が無い物ばかりで、異世界に来た気分です」

 

「実際自分達は異世界から来ましたからね」

 

 ヤゴウの言葉に『大和』は苦笑いを浮かべる。

 

(これは、是が非でもトラック諸島と同盟を組まなければ。その為には政府を説得しなければな)

 

 是非ともトラック諸島と同盟を組みたいハンキは、どう軍務局を説得するか考えていた。自国の軍の強化はそうだが、不可侵条約等を結びたいと考えている。

 彼らから攻め入る可能性は低いが、万が一の事があるとクワ・トイネ公国はそうだが、ロウリア王国も確実に負けるのは目に見えている。だからこそ保険に不可侵条約を結んでおきたいのだ。

 

「それにしても、このカレーライスは本当においしいですね」

 

「艦隊自慢の一品ですからね」

 

 カレーライスを食した感想をヤゴウが述べると、『大和』は誇らしげに言う。

 

 

 このトラック諸島では曜日感覚が狂わないように毎週金曜日にカレーライスが出るようになっている。

 

 最初こそカレーライスを見た視察団の面々は、見た事無い料理に戸惑い気味だったが、鼻腔をくすぐるスパイスな香りに刺激され、意を決してヤゴウが食べてみた。

 そしてその美味さに思わず声を上げて、視察団の面々はそれに続いてカレーライスを口にして、今では視察団全員がカレーライスの虜であった。

 

 ちなみに毎週金曜日に出るカレーは毎回異なっており、今日のカレーは視察団が来るとあって予定を変更して一番人気のカツカレーである。逆に一番の不人気は野菜を使った緑色のルーのグリーンカレーである。味は悪くないのだが、見た目で敬遠されているという。

 

 

 閑話休題(それはともかく)

 

 

「それにしても―――」

 

 と、ヤゴウは周囲を見渡す。

 

 昼食時とあって、食堂には二頭身の妖精の他にKAN-SEN達の姿もある。

 

「このトラック諸島には、女性が多いのですね」

 

 ヤゴウは思わず声を漏らす。

 

 これまでの視察で二頭身の妖精以外に見たのはKAN-SENで、外観年齢の違いはあったが、全員女性であった。

 その為、てっきりヤゴウは戦争で多くの男が失われて女しか残っていないのだろうと予想していた。

 

「まぁ、KAN-SENは女性しか居ませんからね」

 

「えっ?」

 

 ヤゴウは思わず『大和』と『紀伊』を見る。

 

「で、ですが、『大和』殿と『紀伊』殿は」

 

「自分と『紀伊』、それにこのトラック諸島に居る男性型KAN-SENは特殊な一例ですから」

 

「そうなのですか?」

 

「えぇ。前の世界ではこのトラック諸島にしか、自分や『紀伊』の様な男性型のKAN-SENは居ないんです」

 

「……」

 

 ヤゴウは改めて周りを見渡す。

 

「でも、そんな貴重の存在でしたら、他が放って置かないと思うのですが」

 

「えぇ。ヤゴウ殿の予想通り、自分達を狙う輩は居ました。その規模は一国が狙うほど」

 

「い、一国が、ですか……?」

 

「えぇ。クワ・トイネ公国はおろか、ロウリア王国も優に超えるであろう大国でした。そしてその大国の軍と戦うこともありました」

 

「……」

 

 『大和』の言葉を聞いて、ヤゴウや他の視察団の面々は言葉を失う。

 

 トラック諸島とほぼ同じぐらいの技術力を持って、あのロウリア王国を上回る大国に狙われ、戦ったというのだ。こんな信じられない内容を信じろと言うのが無理な話だ。

 尤も、トラック諸島の技術力が異常なのだが。

 

「自分達は自らの身を守る為に戦いました。異質な敵と、時には人間を相手に、KAN-SENを相手に」

 

「ど、同族同士で、ですか?」

 

「えぇ。むしろ自分達が居た世界ではよくありました」

 

「……」

 

 『大和』は元の世界で起きた事を視察団に聞かせるように話した。

 

 

 

 突如『セイレーン』と呼ばれる強大な力を持つ勢力が出現し、人類に対して攻撃を開始した。

 

 人類はセイレーンに対抗する為にこれまでのいざこざを水に流し『アズールレーン』と呼ばれる組織を立ち上げて団結し、セイレーンと戦う。

 

 人類とセイレーンとの戦い。その最中にセイレーンに対抗出来る存在……『KAN-SEN』の誕生。

 

 そして人類は多くの犠牲を払いながらも、セイレーンの攻勢を退けた。

 

 しかし完全撃退に至らず、アズールレーン内でセイレーンと戦う理念が分かれる。

 

 そしてアズールレーンからいくつもの国が離脱して『レッドアクシズ』を立ち上げて、アズールレーンと対立する。

 

 

 そんな中、『大和』と『紀伊』の二隻の男性型KAN-SENが初めて確認された。

 

 その希少性によって彼らは狙われ、それによって彼らがアズールレーンと全面戦争を行ったことを。

 

 そして、その全面戦争に多くの犠牲を伴いながらも勝利した事を。

 

 

 

『……』

 

 『大和』の話を聞き、ヤゴウ達は息を呑み、そして理解した。

 

 

 敵に回したら、一番いけない、と……

 

 

 彼らは平穏を求めており、自ら戦いを起こすことは無い。

 

 だが、もしその平穏を破るような事をすれば、敵に対して一切容赦しない。それこそ、敵を殲滅しそうな勢いでだ。

 

(これは、彼らとは今後慎重に付き合っていかないと。間違った判断をしてしまえば、彼らは容赦しないだろうな)

 

 まぁ、その心配は結果的に杞憂に終わるのだが、この時彼らが知る良しなど無い。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 その後視察団は居住区の視察を行い、機密に触れない場所の視察を終えた視察団は重桜風の旅館に泊まり、その日の疲れを癒した。

 

 

 その後帰還した視察団は見た物を嘘偽り無く、正確に政府に伝えた。

 

 

 その後同盟締結に向けた会議を行い、満場一致でトラック諸島との同盟締結に賛成となった。

 

 

 そしてクワ・トイネ公国とトラック諸島との間に、同盟が締結されて、トラック諸島に対して食料を輸出して土地を提供する事を引き換えに、クワ・トイネ公国はトラック諸島より軍事、技術支援を受ける事になった。

 同じくしてクワ・トイネ公国を通じてクイラ王国とも同盟を結び、トラック諸島に対して地下資源と土地を提供することとなった。

 

 

 その後トラック諸島は『トラック泊地』として、両国とは独立した軍事組織として再スタートした。これはあくまでも協力体制であって、両国の指揮下に入るわけではない、という彼らの意思の表れである。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 時系列は下ること同盟締結から二日後の夜。

 

 

「……とりあえず、何とかなったな」

 

「あぁ」

 

 トラック泊地の春島にある食堂にて、『大和』が安堵の息を吐いてそう言うと、『紀伊』が相槌を打つ。

 

「これでこの世界で生きていく当てを確保できたが……」

 

「……」

 

「『大和』。これからどうなると思う?」

 

「さぁな。全く想像がつかん」

 

 『大和』はそう言うと、グラスに注がれた重桜産の酒を飲む。

 

「セイレーンはおろか、アズールレーンも、レッドアクシズも居ない世界だ。俺達KAN-SENに出来る事は限られる」

 

「……」

 

「まぁ、俺達が望んだ平穏は確かに訪れた。それはそれで良いんだ」

 

「平穏、か」

 

 『紀伊』は呟くと、瓶に入った酒をグラスに注ぐ。

 

「その平穏が、いつまで続くんだろうな」

 

「……」

 

 何か心当たりがあるのか、『大和』は息を呑む。

 

「ロウリア王国は……恐らく遠くない内にクワ・トイネ公国とクイラ王国に戦争を仕掛けるはずだ」

 

「……やはりそう思うか」

 

 『紀伊』が口にした予測を聞いて、『大和』はため息を付く。

 

「まぁ、あの国の国策を考えれば、戦争はいつか起きるだろうな」

 

「……」

 

 『大和』はクワ・トイネ公国のカナタ首相との会談の中で、ロウリア王国について聞いた事を思い出す。

 

 ロウリア王国は人間至高主義を掲げ、亜人撲滅を目指しているとクワ・トイネ公国のカナタ首相から聞かされて、亜人のように様々な獣の特徴を持つ重桜のKAN-SENが居る『大和』達はロウリア王国へ接触を避けていた。接触すればどうなるか、目に見えているからだ。

 

「話し合いで解決出来るのなら、楽で良いんだがな」

 

「あぁいう連中と話し合いで解決なんか出来るとは思えんがな」

 

「そりゃそうか」

 

 『紀伊』の言葉に『大和』は深くため息を付く。

 

 話し合いで解決するという方法がどれだけ難しく、どれだけ実現が困難かは、二人は『カンレキ』でよく知っている。

 

「この世界でも、俺達は戦う運命にあるらしいな」

 

「みたいだな」

 

 『大和』はそう呟き、『紀伊』は相槌を打ってグイッとグラスに注がれた酒を飲む。

 

「戦争が起きない事に越した事は無いが、あの国に対して警戒しておかないといけないな」

 

「あぁ」

 

 二人はしんみりとした雰囲気を醸し出して、酒を飲む。

 

 

 

 その後『大和』は一足先に食堂を後にして、『紀伊』だけが残った。

 

「……」

 

 彼はグラスに注がれた酒を見つめ、ため息を付く。

 

「俺達は戦う運命にある、か」

 

 『大和』の放った言葉を呟き、『紀伊』は席を立ち、ケースより酒の入った瓶を取り出して元の席に着き、蓋を開ける。

 

「……」

 

 

「『紀伊』か」

 

 と、彼の耳に女性の声がして、その声がした方向を見ると、『ビスマルク』が立っていた。

 

「よぉ、『ビスマルク』。どうした?」

 

「あぁ。少し飲みに来ただけだ。そういうお前は? 見た所大分飲んでいるようだが」

 

「ちょっと前まで『大和』と話していたからな」

 

「ヤマトと?」

 

「そうだ」

 

「そうか……」

 

 『ビスマルク』は短く声を漏らすと、食堂の奥へと向かいグラスを一つ手にして、『紀伊』の隣の席に座る。

 

「ん? どうした?」

 

「今日はそれでいい」

 

 彼女は『紀伊』の前にある重桜産の酒が入った瓶を指差す。

 

「重桜の酒はあまり好きじゃないだろ?」

 

「まぁ、あの独特の風味はあまり慣れないが、別に嫌いというわけではない」

 

「そうか」

 

 『紀伊』は酒が入った瓶を手にして『ビスマルク』が持つグラスに酒を注ぎ、自身のグラスにも酒を注いでから手にし、お互いグラスを軽く当て合う。

 『ビスマルク』はグラスに口をつけて酒を一口飲むと、微妙そうな表情を浮かべる。

 

「……やはり、この独特な風味には慣れんな」

 

「いつかお前にもその風味の良さが分かるさ」

 

 そう言って彼はグラスに入っている酒を一口飲む。

 

「それで、ヤマトとは何を話していたのだ?」

 

「あぁ。今後のことについてだ」

 

 『紀伊』は『大和』と話した内容を『ビスマルク』に伝える。

 

 

「ロウリア王国と戦争、か」

 

「まだ確定的になったわけじゃないが、あの国の性格に加え、連中が掲げている国策を考えると、可能性としては高い」

 

 彼女にそう言ってから、『紀伊』はグラスに注がれた酒を飲み干す。

 

「戦争をする口実としては、ロウリアが掲げている亜人を撲滅し、ロデニウス大陸を統一するってところか」

 

「自らの野望の為に戦争を起こすのか」

 

 『ビスマルク』はスゥ、と目を細める。

 

「何時の時代も戦争っていうのは理不尽な理由で起こされるんだ。国家の野望の為に、己の欲望を満たす為に、たった一人の人間の為に、盟友を助けると言う大義名分の為に、異なる宗教が関わった為に、しょうもない理由の為に、その理由は様々だ」

 

「……」

 

「今の所、クワ・トイネ公国とクイラ王国から要請があれば、トラック泊地は戦力の派遣を行う予定だ」

 

「そうか……」

 

 彼女は声を漏らして、酒を口にする。

 

「異なる世界に飛ばされても、私達は争いから逃れられないのだな」

 

「……」

 

「だが、それが兵器としての運命なら、受け入れるしかないだろう」

 

「運命、か」

 

 『紀伊』は声を漏らし、瓶を手に自分のグラスに酒を注ぎ、『ビスマルク』のグラスにも酒を注ぐ。

 

「『大和』も、同じ事を言っていたな」

 

「……」

 

 悲しげな雰囲気を醸し出す『紀伊』の姿に『ビスマルク』は何も言えず、グラスに注がれた酒を飲む。

 

 

 

 その後二人はしばらく酒を飲み交わしつつ、しばらく今後の事について話した。

 

 

 

 




今回でプロローグ編が終了。次回から新章突入です

感想、質問、評価、要望等をお待ちしています。

竜の伝説編はやっておくべき?

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