異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊   作:日本武尊

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タロムス様より評価8を頂きました。

評価していただきありがとうございます!


第八十話 武装勢力の捕縛

 

 

 

 中央歴1640年 1月23日 シオス王国。

 

 

 

 シオス王国は、被害が拡大する海賊から船団を護衛する為、パーパルディア皇国より戦列艦10隻と竜母2隻の計12隻の艦隊と護衛契約を結んでいた。そのお陰でシオス王国の船団は海賊の襲撃件数が少なくなり、被害も減少していた。

 

 しかし、皇軍は護衛を行う度に法外な依頼料をシオス王国に要求していた。シオス王国は皇軍の法外な依頼料の要求に憤りを覚えるものも、相手は列強国とあって強気に出られず、それに強くなっている海賊から船団を守るためには背に腹は代えられず、泣く泣くその依頼料を払うしかなかった。

 その上皇国側が提示した被害補償の保険も、毎回皇軍が護衛に就いていると殆ど海賊が出没しなかったが為に多額の保険料を払わざるを得なかった。

 

 その後、ロデニウス連邦共和国と国交を結び、海賊対策として海上警備隊の警備艦による格安な護衛の依頼をするようになってからは皇軍と交わした契約を解約しようとしているのだが、何を思ってか皇軍側は難癖付けて解約に応じず、未だに港の一角に居座っている。

 その上で駐留費と艦隊の維持費をシオス王国に要求しているのだから、タチが悪いどころの話ではない。

 

 しかし相手が相手なので、シオス王国側は強気に出られず、退去命令ではなく退去勧告に留まっている。それを良い事に皇軍は横暴な態度で港の一角を事実上不法占拠している状況が続いているという。

 

 

 


 

 

 

 シオス王国の港の一角。

 

 

 そこにパーパルディア皇国の皇軍の艦隊が駐留している港の一角がある。

 

 しかし今日は艦隊が航海演習に出ているとあって、港には職員と治安維持と護衛の為に一個小隊の銃兵が残っている。

 

 

 その港の一角にある駐留艦隊の司令部がある建物にて、艦隊司令は執務室で書類の整理をしていた。

 

 すると扉がノックされ、司令は入室を促すと職員が扉を開けて入って来る。

 

「司令。艦隊より定時連絡です」

「そうか。そこに置いておいてくれ」

「はい」

 

 職員は指令の言われた通りに定時連絡の書類を机に置く。

 

「しかし、いつになればここを離れられるんでしょうか」

「そう遠くない内に艦隊の招集があるそうだ。それまでの我慢だ」

「そうですか。ようやく息苦しい蛮族の国から出られるのですね」

「そうだな。それはそうと、捕らえたロデニウスの蛮族はどうなっている? 上層部は殺さない程度に好きにしろという命令だったが」

「心配ありません。死ななない程度には好きにしています。なんなら捌け口が出来て色々と発散出来てこちらとしては助かっていますよ」

「そうか。まぁ死んでいないのなら良い」

 

 二人は会話を交わすと、二人していやらしい表情を浮かべる。

 

「しかし、ロデニウスは馬鹿な奴らですね。素直に皇国に従っていれば民を殺されずに済んだものを」

「その上で更に皇国へ反抗するようだ。だからそう遠くない内にロデニウスと戦争になるそうだ。その為の艦隊招集だ」

「そうですか。それを聞けて安心です」

 

 一体何に安心してか、彼は期待した様子を見せている。

 

 二人がそう話していると、扉から再度ノックがする。

 

 司令が会話を中断して入室を促すと、別の職員が入って来る。

 

「司令!」

「どうした?」

「それが、港の入り口に変な奴らが」

「変な奴ら?」

 

 指令は思わず怪訝な表情を浮かべる。

 

 


 

 

 所変わり、駐留艦隊の母港の入り口。

 

 

 そこには、皇軍側が変な奴らと称する集団が陣取り、異様な雰囲気を醸し出している。

 

 全身紺色の服の上に要所を守るプロテクターを着け、バイザー付きのヘルメットを着用し、成人男性ほどの大きさがある銀色の盾を持っている。

 その後ろには馬車よりも大きな代物が鎮座している。

 

 そんな異様な雰囲気の集団の正体は……ロデニウス連邦共和国の警備警察組織『地上警備隊』通称『地警隊』である。海上警備隊が海の治安を守るなら、地上警備隊は地上の治安を守る警備警察である。

 

 警察と違う点は、警察では対応出来ない大きな犯罪に対応したり、暴動が起きた時に暴徒鎮圧に対応したりする点である。

 

 本来なら国内で活動するはずの地上警備隊だが、密かに潜水艦を使って夜な夜な人員と物資をシオス王国へと運び込んで、今日この日の為に準備してきた。

 

 今回地上警備隊がなぜ海を渡ってシオス王国に居るかというと……武装勢力(パーパルディア皇軍)捕縛の為である。そしてその武装勢力(パーパルディア皇軍)に捕らえられた観光客と船の乗組員、その生存者の救出が目的である。

 

 カナタ大統領は今回のシオス王国における観光客及び船の乗組員の虐殺に対して、超拡大解釈としてシオス王国に駐留している皇軍をパーパルディア皇国の皇軍とは認めず、皇軍を名乗る武装勢力として認定し、その捕縛を命じた。

 

 そして今回の捕縛命令の中で最も優先すべき命令が、先の虐殺に関わった実行犯達の確実な捕縛である。もしこのままロデニウス連邦共和国とパーパルディア皇国が戦争状態に入れば、シオス王国の駐留艦隊は戦争を行う為に召集を受け、本国に帰還することになる。当然職員達もそれに乗じて本国に帰還することになる。

 

 このまま艦隊を本国に帰してしまえば、虐殺の実行犯達の行方を掴むことが困難になる。艦隊の招集前に、何としても実行犯達の捕縛を行わなければならない。

 この実行犯の捕縛は言うなればケジメを付ける意味合いもある。そして同時に先も述べた捕らえられている生存者の救出を行う為だ。

 

 今回の作戦は前々から準備をして、艦隊が駐屯地の港を離れるタイミングを見計らって行われることになった。駐留艦隊の予定はロデニウス側が現地の人達に協力してもらい、司令部の人間に接触して情報を聞き出したもらった。その方法は単純に職員達に酒を飲ませて酔わせ、思考能力を鈍らせて予定を喋らせたのだ。

 シオス王国側も今回の作戦に協力してもらっている。やはり以前から皇軍の横暴な行いを泣き寝入りして黙っているしかなかったので、今回ロデニウス連邦共和国と協力した。とは言っても、万が一の時はロデニウス側が勝手に行った事だと知らぬ存ぜぬとして対処するように決められている。

 

 

 地上警備隊は駐留艦隊の母港の前に展開しており、手にしている盾を構える。

 

「『クロンシュタット』殿、『クリーブランド』殿! 部隊の展開完了しました!」

「そう」

「分かった」

 

 地上警備隊の隊員の報告を聞き、装甲車の上に立つ二人の女性に報告する。

 

 一人は金髪のサイドポニーに白いクロークが特徴的な『クリーブランド』で、もう一人は薄めの金髪を二つ結びのおさげにしている女性である。

 

 彼女の名前は『クロンシュタット』 北連の超甲巡洋艦と呼ばれる艦種のKAN-SENであり、今回地上警備隊の指揮を任されている。その為か、耳にはインカム付きのヘッドフォンを着けており、服装もいつもの恰好ではなく、捜査官のような恰好をしている。ただ彼女の立派なスイカのせいか、シャツのボタンを殆ど留められていないので、彼女の黒い下着が見えてしまっている。まぁ当の本人は気にしていないようである。

 ただ、そんな過激な姿に地上警備隊の隊員達は、目のやり場に困っている模様。

 

 この他に二名のKAN-SENも主に裏方で今回の作戦に参加している。

 

「さてと……」

 

 と、『クロンシュタット』は咳払いして喉の調子を整え、隣では『クリーブランド』がそんな彼女の姿にどことなく不安げな表情を浮かべつつ、手にしている塹壕での戦闘を想定した銃身が短いトレンチガンモデルの『ウィンチェスター M1897』に鎮圧用のゴム弾をチューブ型マガジンに装填する。

 

 そして喉の調子を整え、『クロンシュタット』は手にしている拡声器を口の前に移動させ、大きな声を発する。

 

「パーパルディア皇国を騙る武装勢力に告ぐ!! こちらはロデニウス連邦共和国、地上警備隊である!! 現在お前達は包囲されている!! 速やかに武装を解除し、投降せよ!!」

 

 拡声器を使っているとは言えど、空気が震えそうな大声を彼女は放ち、隣に立つ『クリーブランド』は両手で耳を塞いで顔を顰めている。 

 

「抵抗する場合は相応の対応をさせてもらう!! 大人しく投降すれば罪は軽くなるわ!!」

 

 その大きな声はシオス王国中に響き渡りそうなぐらいであり、当然そのくらいの大声ならば、皇軍の職員や兵士達の耳にも届いている。

 

 

「なんだあれは?」

「さぁ。蛮族の考えなど理解できませんな」

 

 司令部から出てきた司令と職員は、単眼鏡越しにその光景に怪訝な表情を浮かべて見つめている。まぁ彼らからすれば理解できない行動なのだからこの反応も致し方ない。

 

「しかし、我々を皇国を騙る武装勢力とは。随分と舐めた真似をしてくれる」

「全くですな。それにやつらはあのロデニウスと名乗りましたな」

「あぁ。この間の処刑の報復のつもりか? だとするなら相当間抜けな奴らだ」

 

 不機嫌そうな表情を浮かべる二人の単眼鏡越しの視線は、車輛の上に立つ『クロンシュタット』と『クリーブランド』に向けられる。

 

「だが、蛮族にしては中々上物じゃないか。特に薄い金髪の女は」

「えぇ。あの女。あんな大きさ見たことが無いですよ」

「あぁ。隣のガキも見た目は良いな。大きければ満足いくものだったんだがな」

「では?」

 

 職員は期待した様子で声を掛けると、いやらしい笑みを浮かべて司令は口を開く。

 

「蛮族共にはお仕置きが必要だな。すぐに銃兵隊を出せ。撃ち殺しても構わん。それと艦隊に至急戻ってくるように連絡しろ」

「分かりました」

「だが、あの女は生かしておけ。可能ならガキの方も生かして生け捕りにしろ。楽しみに取っておきたいからな」

「はい。すぐに銃兵に攻撃指示を出します」

 

 邪な感情を隠す事なく曝け出しながら二人は話すと、職員は司令の名前で銃兵隊に指示を出す。

 

 

 

(さてと、奴さんはどう出るか。まぁ想像通りに出るんだろうけど)

 

 『クリーブランド』は内心呟きつつ皇軍の動きを観察し、自身の手にあるM1897のフォアエンドを少し引いて排莢口から薬室に初弾が装填されているのを確認し、フォアエンドを戻す。

 

「んでだ。そろそろ向こうも動き出す頃だし、車内に入っていて欲しいんだけど」

「その必要は無いわ。指揮官たるもの、戦局はこの目で確かめておきたいのよ。それに、いざとなれば艤装を展開すれば問題無いわ」

「そういう問題じゃないんだよなぁ」

 

 なぜか自信を醸し出している『クロンシュタット』に『クリーブランド』はげんなりした様子で答える。

 

「……」

 

 と、『クリーブランド』は港で動きがあるのに気付き、背中に艤装を展開する。

 

 港にある建物から、マスケット銃を持った銃兵達が出て来て、地上警備隊に向かって並び始める。

 

「武器を捨てて、大人しく投降しろ!! これが最終警告よ!」

 

 『クロンシュタット』は再度拡声器で警告を促すが、皇軍側は応じる姿勢を見せず、むしろ銃兵はマスケット銃をこちらに向け始める。

 

「総員、構え!」

 

 もはや状況は確定的と判断し、『クリーブランド』が号令を掛けると、隊員達は手にしている盾を前に出し、斜めにして構える。

 

 

 

「馬鹿め。あんな盾で防げると思っているのか」

 

 銃兵を指揮する部隊長は盾を構える地上警備隊に鼻を鳴らし、号令を掛ける。

 

「構えっ!」

 

 号令と共に銃兵は手にしているマスケット銃を構えて銃口を地上警備隊に向ける。

 

 一個小隊の銃兵全員による射撃。部隊長はこの後起きる光景を想像してにやりと口角を上げ、号令を上げる。

 

「撃てぇっ!!」

 

 号令と共に銃兵が構えているマスケット銃より銃声と共に黒色火薬のような白い煙を出し、弾丸が放たれる。

 

 

 ッ!! ッ!! ッ!! ッ!!

 

 

「なっ!?」

 

 しかし彼らが見ている中で繰り広げられた光景は想像していたものとは違い、マスケット銃より放たれた弾丸は、衝撃でよろけた者もいるが、地上警備隊の隊員達が持つ盾に音を立てて弾かれてしまった。

 部隊長は目を見開いて驚愕し、銃兵達も驚きのあまり次弾装填を忘れてしまう。

 

 地上警備隊の隊員が持つ盾はアルミ合金で出来ており、片手で何とか持ち運べるようにしているので、厚みはそこまで無い。しかし傾斜装甲の様に盾を斜めに構える事で防御力が増すので、マスケット銃ぐらいの銃火器なら防ぐことが出来る。

 さすがに至近距離から撃たれれば盾を斜めにしても貫通されるが、そもそもそんな距離になれば銃を使う前に近接武器で攻撃した方が早い。

 

 そして何よりマスケット銃は例外はあるものも、射撃精度は劣悪であり、距離が離れれば離れるほどまず当たる事は無い。皇軍の銃兵隊と地上警備隊との距離はそこそこ離れていたので、地上警備隊の隊員達が持つ盾に命中したのは、一個小隊の斉射でわずか五発程度である。

 

 

「武装勢力より攻撃を受けた! 各車! 放水開始!!」

 

 『クロンシュタット』は『クリーブランド』と共に装甲車より降りながらインカムに向かって指示を飛ばし、装甲車の車体上部に取り付けられた放水ホースより水が勢いよく放水された。

 

 勢いよく放水された水は銃兵隊を飲み込み、水の勢いが強く彼らは後ろへと押し倒される。

 

「く、くそっ!? 水だと!? これでは銃が!?」

 

 ずぶ濡れになった部隊長は上半身を起こし、同じくずぶ濡れになった銃兵と銃を見て歯噛みする。

 

 パーパルディア皇国の銃はマスケット銃の構造と同じで、銃口に注ぎ込んでラムロッドで火薬を押し固め、次に弾を入れて再度ラムロッドで押し込み、そして撃鉄を起こして構え、引き金を引いて発射する。

 ただ、地球でのマスケット銃と決定的に違うのは、やはり炸薬である。

 

 皇軍のマスケット銃は黒色火薬ではなく、粉末状に加工した魔石であり、これに着火して炸裂させる。

 

 黒色火薬と違って粉末魔石は多少の湿気ぐらいなら着火できるほど湿気に強いが、さすがにずぶ濡れになってしまえば、着火しない。

 

 つまり、もろに放水を受けた銃兵達はその戦闘力のほとんどを失ったことになり、サーベルか銃剣ぐらいしか戦う術は残されていない。

 

 すると地上警備隊の隊員達が盾の構えを解き、その後ろに居る隊員達が腰に提げている警棒を右手に持つ。

 

「総員、突入!! 武装勢力を一斉検挙よ!!」

『ウォォォォォォォォォッ!!!』

 

 そして『クロンシュタット』の号令と共に、隊員たちは大きな声を上げて走り出す。

 

 銃兵達はよろよろと立ち上がろうとするもその前に隊員たちが殺到し、戦意を喪失させる為に死なない程度に、盾や警棒で銃兵達をボッコボッコに殴りつける。

 

 乱闘に参加しない残りの隊員たちは港の奥へと向かい、駐屯地の職員たちの検挙に掛かる。

 

 

「ば、馬鹿なっ!?」

 

 瞬く間に銃兵隊が無力化され、司令は目を見開いて驚愕する。隣にいる職員も同じような反応を見せている。

 

「蛮族共め! 銃の弱点を知っていたのか! 残りの銃兵を出せ!! 艦隊が戻るまで持ちこたえるんだ!」

「それが、銃兵はあそこに居るので全員です!」

「なっ!?」

 

 司令はこの場では聞きたくない報告に、驚愕する。

 

 元々港の警備と治安維持が目的で銃兵が配置されているので、その人数は多くない。だが逆に言えば、今まではそれだけの数でも事足りたということだ。

 そして先ほど出した銃兵が全員であった。

 

 その銃兵が無力化された以上、職員が自ら戦うしかないが、まともな戦闘訓練を受けていない職員が軍人では無いにしても、警備隊相手に戦えるはずがない。

 

「それに、先ほどから魔信を送っているのですが、艦隊から返信がありません!」

「何だと!? 確かなのか!?」

「はい! 恐らく魔信が故障しているのかもしれません」

「ならさっさと直せ!」

 

 職員に怒鳴るように指示を出し、司令は踵を返して走り出す。

 

「どちらへ!?」

「やつらの民を閉じ込めている牢だ! 蛮族の民を前に出して時間を稼ぐ! お前は何としても魔導通信機の修理を急がせろ!」

「は、ハッ!」

 

 司令の指示を聞き、すぐに職員も動き出す。

 

 

 

「武装勢力は全員捕らえろ! 一人も逃がすな!」

 

 『クリーブランド』は地上警備隊の隊員達に指示を出しながら走り、建物の前で止まる。

 

「催涙弾投射!」

 

 彼女の指示と共にM79グレネードランチャーを持つ隊員達が建物に向けて催涙弾を放ち、建物の窓を破って催涙弾が中に入る。

 

 直後に弾から催涙ガスが噴射され、建物の中にガスが充満していく。

 

 すると催涙ガスに耐えかねた職員達が咳き込みながら出てくる。

 

「確保!!」

 

 出てきた職員たちを地上警備隊の隊員達が駈け寄って地面に倒し、すぐさま両手首を後ろに回して拘束する。

 

「っ! 隊長! 後方注意!」

 

 と、港に置かれている木製のコンテナの陰から鉄の棒を手にして職員が出て来て『クリーブランド』に襲い掛かろうとする。

 

「っ!」

 

 彼女はすぐさま振り返り、M1897を構えて引き金を引く。野太い銃声と共にゴム弾が放たれ、ゴム弾は×字に広がり、襲い掛かろうとした職員の身体にぶつかってその衝撃で職員は吹き飛ばされる。

 隊員達はすぐさま吹っ飛ばされた職員の拘束に入る。

 

「奴らも必死だな」

 

 『クリーブランド』はフォアエンドを引いて薬莢を排出し、フォアエンドを戻して次弾を装填する。

 

「死ねぇ!!」

 

 すると別のコンテナの陰から装填済みのマスケット銃を持った職員が出て来て、『クリーブランド』に向けて引き金を引く。

 

「っ!」

 

 銃声と共に放たれた弾丸は逸れることなく、『クリーブランド』の顔に命中する。

 

 

 -ッ!!

 

 

 しかし弾丸は金属音を鳴らして弾かれ、彼女は弾丸が命中した衝撃を受けて身体が仰け反る。

 

「なっ!?」

 

 近距離から撃って直撃させたにも関わらず、とても生物に弾丸が直撃して出るような音が出て職員は驚愕する。

 

「くっ!」

 

 『クリーブランド』は仰け反った身体の姿勢を戻し、M1897を構えて引き金を引き、野太い銃声と主にゴム弾が放たれ、×字に広がったゴム弾が職員に直撃して吹っ飛ばされる。

 

「油断大敵、だな」

 

 彼女はそう呟くと、フォアエンドを引いて薬莢を排出させる。弾丸が直撃した右頬には、鉄粉がこびり付いているが、怪我は負っていないようである。

 

「隊長! 大丈夫ですか!?」

「大丈夫。掠り傷程度だ」

 

 心配して声を掛けてくる隊員に『クリーブランド』はフォアエンドを戻して次弾を装填し、左手で銃を支えて右手の甲で弾丸が直撃した箇所を拭い、大丈夫なのを伝える。

 

 人型といっても、KAN-SENが艤装を展開すれば、攻撃力と機動力以外は軍艦のスペックを発揮する。その為、軽巡洋艦に豆鉄砲を当てても精々掠り傷が限界である。まぁさすがに体格から直撃時の衝撃は防ぎ切れないが。

 

「それより、状況は?」

「銃兵隊は全員の捕縛完了。建物の中に居た武装勢力も全員捕らえました。今は周囲を捜索して見つけ次第捕縛に動いています」

「そうか」

「それと、人質の場所は―――」

「それなら、問題無い」

 

 緊張した様子の隊員の言葉を遮って、彼女は言い切る。

 

「捕まっている場所の特定と人質の確保は、既に別動隊が動いている」

「別動隊、ですか?」

 

 事前に聞かされていない部隊の存在に怪訝な表情を浮かべている隊員に、彼女は「あぁ」と短く答える。

 

「だからお前達はただ武装勢力の捕縛だけに集中しろ。人質は必ず別動隊が救出する」

「っ! 了解!」

 

 隊員は彼女の言葉を信じ、敬礼をして武装勢力捕縛に動く。

 

(さて、あいつらなら、そろそろ……)

 

 『クリーブランド』はM1897にゴム弾のショットシェルを込めながら、別に動いている部隊を思い浮かべる。

 

 

 

 

 




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