異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊   作:日本武尊

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第八十二話 作戦完了の知らせ

 

 

 

 所変わり、シオス王国

 

 

 

「王様。ロデニウスによる我が国でのパーパルディア皇国駐留艦隊の制圧は順調に進んでいるとのことです」

「そうか」

 

 王宮の国王の執務室にて、国王と文官が話している。内容はどうやらロデニウス連邦共和国による、王国の港の一角を不法占拠している武装勢力の制圧についてのようである。

 

「しかし、よろしかったのでしょうか? 我々の立場は実質上パーパルディア皇国と敵対するような行為ですよ」

「構うものか。ここ最近の皇国の行為は度が過ぎている。そろそろどうにかしなければならないと思って居た頃だ。ロデニウスの提案はちょうど良かったのだ」

「……」

「それに、ロデニウスの力を以てすれば、皇国を降すのも容易い。心配することはない」

「それは、そうでしょうが」

 

 不安な表情を浮かべる文官に国王は鼻を鳴らし、窓から外の景色を眺める。

 

「しかし、皇国も愚かなことをしたものだ」

「えぇ。ロデニウスの怒りを買うのは目に見えていたはず。技術力を見ればロデニウスが自国よりも国力が高い国であるのは明らかなはず」

「皇国の事だ。文明圏外に自分達よりも高い国力を持つ国が居るはずがないという先入観に加え、無駄に高いプライドでまともな思考をしていなかったのだろう。でなければ、素面でこんなことは出来んだろう」

「……」

「まぁ、あの国がどうなろうと、第三文明圏の均衡が変わるだけだ。貿易もパーパルディア皇国からロデニウスへと中心に行っているから、損失も少ない」

「そうですね」

「兎に角、今は見届けようではないか。歴史の転換点を」

 

 国王はそういうと、パーパルディア皇国駐留艦隊が拠点している港がある方向を見つめる。

 

 

 


 

 

 

「くそっ! くそっ!」

 

 悪態をつきながら皇国駐留艦隊の司令は、部下一人を連れて捕らえたロデニウスの民間人を収監している場所へと向かっている。

 

(蛮族共め! ここまでコケにして、ただで済むと思うなよ!)

 

 歯噛みしながら内心罵倒し、その怒りの矛先を司令部を急襲したロデニウス連邦共和国地上警備隊に向ける。

 

(捕らえた蛮族を奴らの前に突き出して見せしめに一人二人を殺せば、奴らは動きを止めるはずだ。そうすれば、艦隊の帰還までの時間を稼げる)

 

 頭の中でどうするか考え、次第に邪な考えが浮かぶ。

 

(そうだな。あの女を奴らの前で甚振って艦隊帰還までの時間を潰すのも良いだろうな。奴らの悔しい顔が思い浮かぶ)

 

 口角が上がりそうになるも、何とか堪えて彼らは、目的地に到着する。

 

 シオス王国で岩壁に空いた洞窟を利用した倉庫を、皇軍が牢屋として改造した場所である。ここに捕らえた民間人を閉じ込めている。

 

「鍵を持って来い!」

「はい!」

 

 部下に牢の鍵を持って来させて、二人は洞窟の中へと向かう。

 

 

「っ!?」

 

 しかし洞窟に入ろうとした瞬間、何かに足が引っ掛かり、二人は前のめりに倒れる。

 

「な、なんだ……」

 

 司令はすぐに身体を起こして後ろを向くと、細い何かが洞窟の入り口に張られているのを見つける。

 

「い、一体これは―――」

 

 足を引っかけであろうそれに、彼は苛立ちを覚えながら立ち上がる。

 

「っ!?」

 

 しかし立ち上がろうとした瞬間、上から何かに押さえつけられる。

 

「ぐっ!?」

 

 顔を上げた瞬間、首に細い腕が絡み、司令の首を力強く締めに掛かる。

 

 何とか抵抗しようとするも、更に首を力強く絞められて一瞬頭に酸素が行き渡らなくなり、彼は意識を失う。

 

 部下もまた同じように意識を奪われて地面に倒れている。

 

 

「全く。分かりやすいね」

 

 と、司令の男の手首を結束バンドで後ろで拘束しながら、『霧島』が呆れて小さく息を吐く。

 

「『霧島』殿。こちらも拘束完了しました」

 

 その近くで部下の男の拘束を終えた『十六夜月』が立ち上がりながら報告する。

 

 『黒潮』を筆頭にした忍びのKAN-SEN達は、パーパルディア皇国にて諜報活動を行っており、シオス王国で起きた虐殺事件後、すぐに『大和』からの指示で『霧島』と『十六夜月』が海を渡ってシオス王国に上陸し、捕らえられたロデニウス国民の所在を確認させた。

 

 シオス王国で調査していた彼女達は、人質たちが捕らえられている場所を掴み、今回の作戦に合わせて二人は人質解放に動いていた。

 

 しかし皇軍側が必ず人質を使うと踏んでいたので、『霧島』と『十六夜月』は牢がある洞窟にて、入口にワイヤーを張って待ち構え、倒れた所で意識を奪いに行った。

 

「しかし、予想はしていたけど……」

 

 と、『霧島』は意識を奪った司令を冷たい目で一瞥し、洞窟の奥を見ると、舌打ちをする。

 

「『霧島』殿。『クリーブランド』殿に連絡を入れますが、よろしいですか?」

「……あぁ。頼む」

 

 『十六夜月』は狐の面で顔は隠されているといっても、不安な雰囲気を醸し出しながらも、『クリーブランド』に連絡を入れる。

 

 

 

 所変わり、港の方では……

 

 地上警備隊の隊員達によって、拘束されたパーパルディア皇国駐留艦隊司令部の職員達が一か所に集められて座らされている。

 

 職員達は意気消沈した者や、反抗的な目で隊員達を睨む者と分かれている。その近くでずぶ濡れになった銃兵達も銃を取り上げられて、一か所に集められて拘束されている。

 

「……」

 

 地警隊の隊員達は皇軍駐留艦隊司令部の職員達が暴れないように、盾や散弾銃を構え、その動向を見張っている。

 

 その中に、『クリーブランド』の姿も混じってウィンチェスターM1897の銃口と艤装にある主砲の砲口を向けている。

 

「『クリーブランド』!」

 

 と、呼ばれる声がして振り向くと、背中に艤装を展開している『鞍馬』がやって来る。

 

「『鞍馬』。どうしたんだ?」

「Sより機密通信があったよ。宝物は確保した、と」

「そっか。こっちも武装勢力の確保。作戦は順調か」

「うん。後は海警隊からの連絡を待つだけだよ」

「あぁ。すぐに宝物の回収を頼むよ」

「分かった」

 

 『鞍馬』は頷き、数人の隊員達を引き連れて人質の救出に向かう。

 

「蛮族共が! 自分達が何をしたのか、分かっているのか!!」

 

 と、シオス王国駐留艦隊司令部の職員が声を上げる。隊員達が散弾銃を構えるが、『クリーブランド』が手で制する。

 

「民間人を虐殺し、シオス王国の一角を不法占拠している武装勢力を鎮圧しただけだが?」

 

 『クリーブランド』は表情に何の感情を浮かばせずに、淡々とした様子で答える。

 

「武装勢力だと? 随分と愚かな事をしたものだな」

 

 職員は鼻を鳴らし、地警隊を馬鹿にしたような表情を浮かべて見渡す。

 

「我々を捕らえていい気になるなよ、蛮族共が! 艦隊が戻れば、シオス王国諸共、お前達は皆殺しだ! その上で本気になった皇国がお前達の国を滅ぼしに行くぞ!!」

 

 得意げに語る職員だったが、地警隊の誰もが慌てる様子を見せず、逆に「こいつ何言ってんだ?」と言わんばかりに呆れた表情を浮かべる。

 

「期待しているところ悪いが、艦隊が戻って来る事は無いと思うぞ」

「ハッ。何を言うかと思えば、面白い冗談だ。もっとマシな冗談は言えないのか?」

 

 変わらない職員の態度に『クリーブランド』は呆れるばかりだったが、地警隊の隊員が彼女に駈け寄り、耳打ちをする。

 

「……そうか」と頷き、彼女は職員を見る。

 

「残念なお知らせだ。あんたらが期待している艦隊は、別の部隊が制圧したそうだ」

「は?」

「じきにお前達を本土に移送する警備艦がやって来る。それまで大人しくしていてくれ」

「何を言って」

「いずれ分かる事だ。この港に来るのはあんたらが期待している艦隊じゃなく、我が国の艦隊だ。その眼で確かめてくれ」

 

 彼女はそう言うと、踵を返して離れる。背後で罵詈雑言が飛んでくるが、直後に硬い物で殴ったような音がして暴言が止む。

 

『「クリーブランド」』

「『鞍馬』? どうしたんだ?」

 

 と、人質救出に向かった『鞍馬』より通信が入り、彼女は耳に手を当てつつ返答する。

 

『捕らえられた人質を発見したけど、人数が多いから、人を寄こして欲しいんだ』

「すぐに手配する」

『それと、拘束された駐留艦隊の司令官と部下一人を発見したから、今から司令官をそっちに運ばせるよ』

「分かった。そっちは任せてくれ」

 

 彼女はそう言うと、通信を切る。

 

「どうやら、ここの責任者を見つけたようだな」

 

 と、声がしてその方向を見ると、一人の女性が歩いて近づいて来る。

 

 青い髪を腰まで伸ばし、立派な胸部装甲の南半球の一部が露出し、スリットが入ってブーツに覆われた脚が出ているスカートという特徴的な服装をした女性ことKAN-SEN『ソビエツカヤ・ベラルーシア』。

 北方連合の『ソビエツキー・ソユーズ級戦艦』の二番艦のKAN-SENである。

 

「あぁ。姿が見えないと思っていたけど、おおよそ人質を使うつもりだったんだろうね」

「だろうな」

 

 『ソビエツカヤ・ベラルーシア』はため息を付くと、『クリーブランド』を見て口を開く。

 

「容疑者は確保しているが、全員いると確定していないのだろう?」

「あぁ。まだ分かっていない。地道に調べればわかる事だけど……」

 

 と、『クリーブランド』はウィンチェスターM1897を艤装に引っ掛けて、隊員にタブレット端末を持って来させて受け取り、あるデータを開ける。

 

 そこには数人の男性の顔が並んで写し出される。画面に表示された男たちは、『エンタープライズ』が撮影した虐殺時の映像を解析して判明した、件の民間人虐殺の実行犯達である。

 

「なら、手っ取り早く聞いた方が早い。そうすれば後で調べる必要も無いからな」

「……」

 

 淡々と述べる彼女の姿に、『クリーブランド』は苦虫を噛んだような表情を浮かべつつ、咳払いして声を掛ける。

 

「言っておくけど、相手が犯罪者であっても、我が国ではそんな犯罪者にも人権ってのがあるんだからな。当然尋問をするにしたって、過激なやり方はNGだ」

「ふむ。善処する」

 

 彼女がそう説明すると、ベラルーシアは頷くも、そんな彼女の姿に『クリーブランド』は不安を覚える。

 

 

 

 しばらくすると、人質救出に向かった隊員達数人が男二人を抱えて戻って来た。

 

「この男が」

「みたいだな」

 

 二人は連れて来られた二人の男の内、タブレット端末の画面に表示された顔写真を片方の男の顔と見比べて、シオス王国駐留艦隊の司令であるのを確認する。

 

 その後地警隊の隊員が水いっぱいのバケツを持って来て、司令に水をぶっかけて目を覚まさせる。

 

「気分はどうだ?」

「……」

 

 『クリーブランド』が問い掛けると、ずぶ濡れの司令は彼女を睨みつける。

 

「あんた達の身柄を本国に移す前に、聞きたい事があるんだ」

 

 彼女はそう言いながらタブレット端末を操作し、容疑者リストを表示させて司令に見せる。

 

「ここに写し出している容疑者について聞きたい事がある。協力してくれるなら―――」

「いい気になるな、蛮族が」

「ん?」

 

 彼女の言葉を遮り、司令は鼻を鳴らす。

 

「この程度で勝ったと思っているのか? だとするなら愚かだな。我々の戦力は全体のたかが一片に過ぎん。本国艦隊はこれの比ではない。この事はすぐに本国に知られるぞ」

「……」

「協力しろだと? 断る! 誰が蛮族のガキにするものか」

(分かっていたけど、こんな状況でも強気でいるか)

 

 皇軍の軍人がプライドの高い人間であるのは予想していたが、予想通りの光景過ぎて『クリーブランド』は内心呆れて浅く息を吐く。

 

「だが、まぁ……」

 

 と、男はにやりと口角を上げて『クリーブランド』の後ろにいる『ソビエツカヤ・ベラルーシア』を見る。

 

「そこの女が俺の相手をしてくれるなら、話してやっても良いぞ」

 

 男は彼女の身体を上から下までを、隠すことなく露骨に邪な感情剥き出しのにやけた表情を浮かべながらそう伝える。

 

(よくもまぁこんな状況でそんな事が言えたもんだ)

 

 『クリーブランド』はこんな状況で強気で尚且つ偉そうにしている男を嫌悪感を顔に表しつつ、呆れを通り越して逆に感心するのだった。

 

「……」

 

 と、ベラルーシアは無表情のまま司令の元へと歩み寄る。

 

「ほぅ」

 

 司令は感心したように息を吐き、やがてベラルーシアは男の傍まで来て、地面に片膝を着けてしゃがみ込む。周りでは捕まった職員達が変な期待をしていたり、地警隊の隊員達が息を呑む。

 

「……」

 

 下心を隠しもせずに口角を上げて期待している男をよそに、ベラルーシアは右手を男の頬に―――――

 

 

 

 ――――添えることなく男の胸ぐらを掴む。

 

「えっ?」

 

 司令が呆けていると、彼女は司令を地面へと引っ張り倒しながら後ろに回り込み、後ろで拘束された右手の親指を掴み、曲がるはずの無い方向へと親指を曲げる。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁっ!?」 

 

 激痛が走り、司令は声を上げて悶えるも、ベラルーシアが上から押さえつけて男を身動きを取れなくする。

 

「答えてもらおうか。画面に表示された職員達は今もここに居るのか」

「い、い、い!」

「お前の望み通り、相手をしてやっているぞ」

 

 彼女は司令を押さえつけながら耳元で語り掛ける。この時密着しているので、必然的に彼女のご立派な胸部装甲が男の背中に押さえつけられているが、当の本人は激痛のあまり気付くだけの余裕はない模様。

 

「こ、こんなもののわけがぁぁぁぁぁ!!! 分かった! 分かったから! そこに写っている職員は今もここに居る! 一人も本国に異動していない!!」

 

 司令は抗議の声を上げようとするが、ベラルーシアが折れた親指を更に曲げながら力を入れ、激痛が走った司令は悲痛な声で慌てて彼女が問い掛けた質問に答える。

 

「では、出払っている艦隊の乗組員は件の虐殺の件に関わっているのか?」

「そ、それはぁぁぁぁぁぁっ!? 分からない! それだけは調べてみないと分からない! ホントだ誓う! 誓う!!」

 

 彼が言い終えると、ベラルーシアは折っていた親指を離して立ち上がる。

 

 痛みのあまり泣き出す司令の姿に、職員や銃兵達はさっきまでの楽観的な様子はどこへやら。全員青ざめて身体を震わせている。

 

 一方地警隊の隊員達はドン引きしており、『クリーブランド』に至っては眉間に手を当てて、皺を寄せている。

 

「北連式の方が能率的だ」

「……はぁぁぁぁぁぁ」

 

 横を通り過ぎる際にベラルーシアは『クリーブランド』にそう告げると、彼女はクソでかいため息を付く。

 

「何の為に私が事前に人権がどうこう言ったと思ってんだ! 脳筋!!」

 

 歩くベラルーシアの背中に怒号を浴びせて、再度クソでかいため息を付き、気持ちを整えてから地面に頭を着けたまま泣いている司令を見る。

 

「あ~……信じて貰えないかもしれないけど、普段はあんなことしないからさ。余程あんたの発言に怒ったんだと思うよ、たぶん」

 

 『クリーブランド』は頭の後ろを掻きながら男にそう伝えると、手にしているタブレット端末の消えた画面を再び点けて、画面に表示された容疑者リストを涙と鼻水でくしゃくしゃな顔の司令に見せる。

 

「改めて言うけど、ここに写し出されている容疑者の探索の協力、してくれるよね?」

 

 優しく問いかける『クリーブランド』であったが、先ほどの事もあって司令の目には、彼女の姿さえも恐ろしく見えてしまった。

 

 故に、司令の答えは一つしかなかった。

 

 

 その後捕らえた武装勢力ことシオス王国駐留艦隊司令部の職員と銃兵達の護送の為、海上警備隊の第150号警備艦と『ジャン・バール』『アルハンゲリスク』、更に軍艦形態化した『土佐』と『出雲』が港へとやって来る。

 

 戦艦四隻の姿を見た皇軍の職員達がそのプライドを打ち砕かれたのは、言うまでもないだろう。

 

 捕らえられた人質の救出は多少の問題が起きたものの何とか完了し、KAN-SEN達の力を借りて本土へ搬送されることとなる。

  

 

 

 




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