異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊 作:日本武尊
時系列は現在へと戻る。
「うっ……うーん……」
多くの瓦礫が散らばっている中、女性は小さく声を漏らしながら目を覚ます。パーパルディア皇国エストシラント防衛基地にて、魔信技術士として勤務をしている女性ことパイである。
(なに、が……起きて)
全身の痛みに混乱していた彼女であったが、次第に冷静になって記憶の糸を辿り始める。
朝早くから基地にて勤務していた彼女は、基地にある魔導通信機と魔力探知レーダーの点検を行っていた。最初に魔導通信機の点検を終えて、次に魔力探知レーダーの点検に入ろうとした。
そんな時、突然基地に設置されているサイレンが鳴り出して、彼女は何事かと外に出ると、空に防衛基地へと向かってくる黒い点を見つける。
魔力探知レーダーには何も反応が無いとあって、それが飛行機械である可能性があるとして、パイは基地司令の指示を受けてすぐに魔信にて各方面に通信を入れ、次に基地司令に魔力探知レーダーに異常が無いか点検を命じられて、すぐに点検に入った。
直後に滑走路が攻撃され、爆発が起きて彼女が居る司令部を揺らした。その直後に更なる爆発が起きて、その時の衝撃が原因なのかは彼女には分からないが、彼女は気を失った。
この時『エンタープライズ』率いる第二艦隊より飛び立った第一次攻撃隊が防衛基地に接近し、F8F ベアキャットよりロケット弾が放たれ、滑走路を破壊した。それに続いてA1 スカイレイダーによる施設に対する急降下爆撃が行われ、この時魔力探知レーダーがあった司令部に爆弾が落とされた。
司令部の魔力探知機の水晶版のレーダーモニターの前に居た彼女だったが、幸運にも衝撃で気を失って倒れ、瓦礫同士が組み合わさったお陰で、隙間が出来て彼女は瓦礫の下敷きにならずに済んだ。
「うっ……くっ……」
彼女は身体中から痛みを感じて顔を顰めるも、ゆっくりと目を開けると、視線の先には瓦礫の隙間から外の光が覗いている。
隙間は狭いが、這いつくばって進んで行けば瓦礫の山から何とか出られそうだ。
(よし……)
彼女は痛みがする中で身体に鞭打って、這いずって瓦礫の隙間を進んでいく。
助けを求めようと思ったが、恐らく外は慌ただしくなっていて、救助活動している余裕は無いだろうし、何より瓦礫がいつ崩れ落ちるか分からないので、すぐに出ないといけない。
時折彼女が着ている作業着が瓦礫の尖った部分に引っ掛かるものの、彼女は気にせず作業着の一部が破れても無理やり進む。
それが所々であったので、恐らく作業着はそこそこボロボロになっていると思われる。恐らく外に出たら少し恥ずかしい状態になっているかもしれないが、命には代えられない。
「もう少し……もう少し」
やがて出口が近づき、瓦礫が崩れそうになって彼女は急いで這いずって外に出ると、直後に瓦礫が砂煙を上げて崩れる。もう少し遅れていれば、彼女は瓦礫の下敷きになっていただろう。
「はぁ……ハァ……はぁ……」
パイは地面に両手を付いて、呼吸を忘れるほど急いでいたので、酸素を求めて荒れている呼吸を何とか整えようとする。
「き、基地のみん――――」
やがて呼吸が整ってか、立ち上がって顔を上げるが、その瞬間彼女は固まってしまう。
彼女の目に映ったのは、大きな穴だらけになった滑走路に、薄い煙を上げて崩れた建物と、破壊の限りを尽くされた基地の惨状だった。
「なに……これ?」
パイは身体と共に震える声を漏らし、呆然と立ち尽くす。
現実で起きているとは思えない光景で、彼女は夢を見ているんじゃないかと思い始めたが、煙と血肉の臭いが彼女の鼻腔を刺激し、その臭いに吐き気がこみ上げてきて吐きそうになるも何とか堪える。
そのお陰で、これが夢ではなく現実であるというの実感される。
「っ?」
思わず足が前へと出るが、ふと足に何かが当たって彼女は足元を見る。
「ひっ!?」
そこにあったモノに彼女は声を漏らして後ろずさり、足がもつれて崩れて重なった瓦礫に座り込む形で後ろに倒れる。
それは人間だったものであろう肉塊であり、肉塊から骨や内臓が露出している。それが誰ものであるかなんては分からないが、少なくともこの基地に居た誰かであるのは分かる。
「あ……あぁ……」
パイはショックのあまり言葉を出すことが出来ず、ただただその肉塊を見つめる事しか出来なかった。
(なんで……なんでこんな……こんな……)
認めたくない現実を目の当たりにして、彼女は頭を抱える。
彼女の人生で危険な場面はあった。だが、皇国がここまで被害を受けたことは彼女の人生の中には無かった。恐らく皇国の歴史の中で、これほどの被害を受けたことは無いだろう。
「……?」
と、遠くから何か音がしてパイは顔を上げて、恐る恐る音がする方向を見る。
「……ァ」
それを見た瞬間、目からハイライトが消えて彼女は身体を震わせる。
彼女の視線の先には、空に浮かび上がるほどに大量に現れた飛行機械の群れであった。
『エンタープライズ』率いる第二艦隊より飛び立った第二次攻撃隊は、攻撃を終えた第一次攻撃隊と交代する形で第二次攻撃隊が防衛基地へとやって来たのだ。
第二次攻撃隊には、最後の仕上げをする為の例のアレなるものが艦爆隊と艦攻隊に積まれている。
既に壊滅したであろう防衛基地へとやって来る飛行機械の群れ。それを目の当たりにしてパイは恐怖が頂点に達して、意識を失ってしまう。
所変わって、エストシラント。
市街地では、飛行機械の来襲に市民たちは自宅や倉庫などの建物に避難し、頭を抱えて震えていた。家族が居る者は家族と寄り添って部屋の隅に集まっている。
時折上空を飛行機械が飛び去り、その飛翔音に驚いて身体を震わせている。
上空では、第一艦隊より飛び立った第二次攻撃隊が飛び交い、市街地に点在している目標に対して攻撃を行っている。
市街地の広場にあるそれを一航戦の『赤城』『加賀』の急降下爆撃隊は、まるで針に糸を通すかのような精密な爆撃にて爆弾を落とし、目標を破壊する。
投下している爆弾は、一番小さい6番陸用爆弾で、小さい爆弾をピンポイントに目標に対して投下し、命中させている。目標が広場にあるので、周りへの被害は小規模に済んでいる。
二航戦の『蒼龍』『飛龍』の急降下爆撃隊は、『黒潮』率いる忍びのKAN-SEN達の諜報にて発見した研究所へと向かい、急降下爆撃を敢行して施設を破壊する。
五航戦の『武蔵』『翔鶴』『瑞鶴』は引き続き港の施設への攻撃を行い、港の機能を徹底的に奪う為、80番陸用爆弾で港の埠頭や造船所を地形ごと破壊していく。
今まで響いたことが無い爆発音が次々と起こり、一方的に攻撃を受けている状況に、市民たちはただただ震えて災厄が過ぎ去るのを祈るしかなかった。
「ひっ!?」
そんな中、尻餅を着いて情けない声を漏らす女性の姿があった。事実上この戦争へと突入することになった元凶となっているレミールである。
緊急会合時にムーの大使よりロデニウスの実力を伝えられてから、彼女の中にある絶対的な自信が揺らぎ始めていた。
それ故か、その日から自分がこれまで処刑を命じて処刑された人達に付き纏われる夢に魘される事になって、睡眠不足気味になっていた。
今日もその夢に魘されて早朝に目覚めた。まだ起床時間より早かったものも、二度寝が出来るような状態じゃなかったので、彼女はバルコニーに出て外の空気を吸って気持ちを整えていた。
何も変わらない日常が広がっており、ムーの大使の言葉が脳裏に過るが、彼女は頭を振るってその事を忘れようとする。
ただのムーが何かしらの理由で偽って誇張しているだけで、本来のロデニウスの実力は大したことは無い。今回だって皇国が蛮国に圧倒的な力を見せつけて愚かな蛮族を殲滅し、皇国が勝利を掴み取るのだからと、自分に言い聞かせるように呟く。
だが、その直後に異変を目の当たりにする。
港の方からサイレンが鳴り始め、レミールは港を見る。そして上空にいくつもの黒い点がそれが近づいているのに気付く。
その直後に、港の方から爆発音が何度も響く。
レミールは何が起きたのか理解できず、呆然と立ち尽くすが、更に爆発音が起きて飛行機械が上空を通過して来たことで、ようやく事態を理解する。
その後に、上空に哨戒のワイバーンロードが現われて空を見上げるが、それと同時に信じ難い光景を目の当たりにする。
ワイバーンロード三騎が上方より急降下してきた飛行機械により、一瞬にして撃ち落とされた。そして肉塊と化したワイバーンロードが街に墜落していく様子を目の当たりにした。
ありえない光景にレミールは思考が停止し、身体が固まってしまう。しかし港の方から大きな爆発音が続け様に起こると、再び意識を戻す。
その後、街の上空に飛行機械が飛び交い、街のあちこちに攻撃を仕掛け始めてレミールは顔を青ざめてその光景を見ているしかなかった。
そんな時、飛行機械が急降下して腹に抱えている爆弾を投下するが、これが偶然だったのか、それとも意図的だったのかは分からないが、彼女の住んでいる屋敷の庭に爆弾が落下して土を舞い上げて地面にめり込む。
しかし信管不良を起こしたのか、爆弾は爆発せず地面に突き刺さった状態で止まっている。
その時の衝撃で、彼女は足元がふらつき、尻餅を着いてしまったのだ。
「あ…‥あ……」
レミールは爆弾が爆発しなかったことによる安堵と、もしも少しでも落ちた場所がずれていたら、もしも爆発していたらという恐怖が同時に襲い掛かり、やがて安堵したことによって緊張の糸が切れ、彼女の股間が濡れ始める。
やがて刺激臭が彼女の鼻腔を刺激し、自身の身に何が起きたのを理解して、レミールの顔が赤くなり、歯噛みする。恐らく羞恥心や怒り等、様々な感情がごちゃ混ぜになっているのだろう。
「っ!」
レミールは市街地の上空を飛び交う飛行機械を睨みつける。
「何なんだ……何なんだ!! お前達は!!」
そして空に向かった彼女は咆えるが、その声は虚しく空に消えるだけであった。
場所はエストシラント市街地から離れた場所にあるパラディス城。
ここでは市街地よりも悲惨な状況が広がっている。
パラディス城の手入れがされていた庭に、『大和』所属の水平爆撃隊の艦攻隊の流星改二による水平爆撃が行われ、投下された爆弾によって庭は滅茶苦茶に荒され、城は爆発時の衝撃波や爆風によって飛ばされた破片でガラスや装飾が施された壁面にヒビが入るか、破壊されていく。
その上空を景雲四型改がジェットエンジンを響かせて飛翔し、両翼に提げている25番陸用爆弾を投下し、庭にあるパーパルディア皇国の皇帝ルディアスの石像に直撃させ、爆発と共に粉々に粉砕する。
ちなみにこのルディアスの石像は街にも点在しており、市街地への攻撃はこの石像を破壊する為である。
一見すれば軍事施設ではない、ただ庭先を荒らしているようにしか見えないが、これは絶対的な自信を持つ皇国に対する精神的攻撃の一環であり、市街地への攻撃は国民への訴えとして、国の国力を示している城と綺麗に整えられた庭を破壊することで、皇帝はもちろん、その関係者のプライドを打ち砕く狙いがある。
今回の攻撃の大半は、パーパルディア皇国への精神的攻撃が目的であり、そのダメージは計り知れないだろう。
それに加え、今回の攻撃は多くの国が目撃していることである。まだロデニウス連邦共和国と国交を結んでいない国々は、今回の戦闘でロデニウス側の力を知ることになるだろう。これでロデニウス連邦共和国の実力を知れれば、それらの国々はパーパルディア皇国のような愚かな判断を下すことも無いだろう。
実際に、各国の大使館では慌てた様子で本国に報告を行っていた。
この時、意外な所でこの戦闘が影響を与えているとは、誰も予想していなかったが……
「な、何だ……これは……」
寝室の窓から外を見ていたルディアスは、呆然として声を震わせる。
まだ就寝中だったルディアスは轟音によって目覚め、すぐにベッドから立ち上がって外を見ると、港と市街地の各所から黒煙が上がり、上空を多くの飛行機械が飛び交っている光景だった。
彼の人生で……いや、皇国の歴史上類を見ない被害に、彼は自分の目が信じられなかった。
「余は……余は、夢を見ているのか……皇都が、エストシラントが……」
声を震わせて彼は、その光景を見ながら後ろに二歩下がる。
もし冷静であれば、上空を飛行している景雲四型改を見て彼は、それを神聖ミリシアル帝国の天の浮舟と連想していて大きな混乱を招いていただろうが、あまりに衝撃を受けていたのか、上空を飛行している景雲四型改の姿を見ても、何の疑問を浮かべることは無かった。
するとルディアスの寝室の扉が開かれ、彼の相談役のルパーサが入って来る。
「陛下! すぐに避難を!」
「避難だと!? 余に逃げろと言うのか!」
「このままでは陛下の身が危ないです! どうか、地下室に!」
ルパーサの言葉にルディアスは中々応じようとしなかったが、直後に風切り音が響き渡る。
ルディアスは窓の方を見ると、流星改二がパラディス城へ向かって急降下を行い、爆弾倉の扉を開けて中にある80番陸用爆弾を落とす。
「っ!?」
この時嫌にハッキリと落下してくる爆弾の姿を捉え、二人は逃げることを忘れて驚愕の表情を浮かべる。
投下された80番陸用爆弾は、一直線にパラディス城の壁を破壊して中へと落下する。
落下時の衝撃は城を揺らし、その衝撃でルディアスとルパーサは倒れ込む。
しかし爆弾は訓練に用いる模擬弾頭のものであり、爆発することは無い。
「へ、陛下。ご無事ですか?」
「……あ、あぁ」
「すぐに避難を。先ほどの物体がいつ爆発するか分かりません」
「……」
ルディアスは苦虫を噛んだような表情を浮かべつつ、ルパーサの力を借りて立ち上がり、急いで寝室を後にする。
所変わり、『大和』の艦体にある戦闘情報管制室。
「……」
『大和』は電子管制機より送られる情報と共に、艦載機越しに前線の状況を確認している。
「艦長! 『エンタープライズ』より入電!」
「内容は?」
「『土産の配達完了』です」
「そうか」
通信士より『エンタープライズ』より報告を聞き、彼は頷く。
「『大和』より一航戦、二航戦、五航戦へ。状況は?」
『こちら一航戦「赤城」ですわ。市街地に点在している目標は全て破壊。「赤城」「加賀」共に被害はありませんわ』
『こちら二航戦「蒼龍」。市街地にある研究所の破壊を完了しました。「蒼龍」「飛龍」共々被害なし』
『こちら五航戦「武蔵」。港の施設及び埠頭の破壊完了しました。湾内に浮かんで残存する船は残っていません。「武蔵」「翔鶴」「瑞鶴」共々被害はありません』
「……よし」
『大和』は報告を確認して頷き、指示を出す。
「艦載機を帰還させろ。艦載機の収容後、艦隊はアルタラス島に戻る。第二艦隊にも伝えろ」
通信士の妖精はすぐに『大和』の指示を艦載機のパイロットと各KAN-SENに伝える。
「……」
『大和』はモニターに映るエストシラントの惨状を一瞥すると、制帽を脱ぎながら浅く息を吐く。
(『紀伊』の方も無事に終えたようだから、戦争の第一段階は成功に終わったな。これで皇国が降伏するのなら楽なんだが、まぁあのプライドの塊がおいそれと頭を下げて降伏するはずがないか)
内心呟きつつため息を付いて制帽を被り直し、第二次攻撃隊が戻って来るのを甲板上で艦載機の収容作業を行っている光景が映っているモニターを眺める。
夜間にデュロに艦砲射撃を行っていた『紀伊』と『尾張』は、デュロの港と工業地帯を破壊しつくし、夜が明ける前に撤退している。
「……」
「……何と言うか」
「言葉に出来ないわね」
その傍で、マイラス、ラッサン、アイリスはモニターに映っているエストシラントの惨状を見て、冷や汗を浮かべている。
「あんなに小さい目標をピンポイントで爆撃するとは。とんでもない練度だぞ」
「爆弾の威力も凄いわね。地形が変わってしまっているわ」
「港は破壊し尽くされているし、湾内には轟沈した船の残骸で埋め尽くされているな。これじゃ港の機能は元からなかったような状態だし、復旧も難しいだろうな」
「城の方も攻撃を受けているから、上層部に与えた衝撃は相当でしょうね。これで自分達が犯した過ちに気付いて事の重大さを認識すればいいけど」
「……」
ラッサンとアイリスが話している間、マイラスはモニターに釘付けであった。
マイラスの視線の先には、モニターに映っている景雲四型改の姿であった。
(ジェット機……)
ただでさえ興味のあるジェット機である上に、まさかのジェット機の新型が披露されたとあって、今の彼の視線は景雲四型改に釘付けである。
「観戦武官の皆様」
と、『大和』が三人に声を掛ける。
「よろしければ艦載機の着艦作業の様子を見学しますか? 帰還途中には格納庫内での見学も許可しますが」
「っ! ぜひ! お願いします!」
『大和』の提案にマイラスが勢いよく食いつき、その様子にラッサンとアイリスは苦笑いを浮かべる。
しかしムーにとっては貴重な機会であるので、二人も見学をお願いして、『大和』に案内されて戦術情報管制室を出て装甲艦橋の防空指揮所へと向かう。
そして各KAN-SENは自身の艦載機の収容を行い、収容を終えた艦隊は針路を反転させてアルタラス島への帰路に付く。『エンタープライズ』率いる第二艦隊も艦載機の収容後、針路を反転させてアルタラス島を目指す。
後に『エストシラント空襲』と呼ばれる今回の戦闘における双方の被害。
ロデニウス連邦共和国の被害は無し(強いて挙げるなら景雲四型改一機がエンジントラブルに見舞われたものの、帰還途中であったので、何とか母艦に帰還出来ている)
一方パーパルディア皇国の被害は、空母機動部隊の艦載機の波状攻撃により、エストシラントの港に停泊していた戦列艦、竜母、揚陸艦の全てが沈没。港の施設、設備、造船所が軒並み潰され、埠頭も80番陸用爆弾によって地形ごと破壊されて地形が変えられてしまっている。
死傷者の数は原型を留めていない死体が多く、混乱も相まってそもそも何人居て誰が居たかすら分からず、計測不能。
皇都防衛基地もまた航空機の波状攻撃により、滑走路に司令部の破壊。配備されていたワイバーンロードとワイバーンオーバーロードは竜騎士共々全滅。奇跡的に一人だけ生存者が残って、それ以外は戦死している。
デュロでは、戦艦の艦砲射撃によって港の施設、設備、造船所は軒並み破壊され、港に停泊していた船舶は全て破壊されて湾内に沈んでいる。工業都市として栄える源である工場地帯も破壊された上に火災によって全てが燃え尽き、その上周囲の住宅街に延焼して被害は拡大しつつあるという。
死傷者の数はこちらも軍人の数だけならず、工場関係者も巻き込まれているので、その数の特定は余計に難しくなっていた。
列強国とは言えど、アルタラス王国侵攻時と第二次フェン沖海戦で多くの戦力を失ったのは大きく、今回のロデニウス連邦共和国への攻撃の為に軍艦はいくつもの港から搔き集め、まだ試験段階の新鋭艦も投入するほどのカツカツ具合であった。結果今回投入するはずだった戦力を全て失ってしまった。その上エストシラントとデュロの造船所も破壊されたとあって、新たな戦列艦、竜母といった船舶の建造が出来なくなってしまった。他の場所にも造船所はあるが、大型船クラスとなるとエストシラントとデュロでなければ建造できない小規模のものしかない。
つまり、パーパルディア皇国の海軍は事実上壊滅した。それは皇国の制海権喪失を意味している。その上、デュロが壊滅したことで、新たな武器の供給がこれまで通りにいかなくなっているので、皇国は初手で兵站に陰りが見え始めている。
皇国は初手から窮地に立たされることになるのだが、ここから更に追い込まれることになろうとは、皇国側は予想もしないだろうが。
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