異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊 作:日本武尊
中央歴1640年 2月3日 ムー
「結果は見えていたが、こうしてみると想像以上の結果となったな」
「えぇ。皇国内に残っていた国民と大使館職員を強制帰国させたのは正解でしたね」
「これほど激しい戦闘となると、巻き込まれていた可能性があったかもしれない」
「まぁロデニウスなら巻き込まないように配慮はしていただろうが」
ムーの政府関係者は、先のエストシラント空襲についての話し合いを行っていた。
情報は現地に潜んでいる諜報員や、観戦武官より齎された映像と写真、証言等である。
「しかし、あれだけ熾烈な攻撃でありながら、市街地への被害は映像を見る限り目立った被害は石像が破壊されたぐらいですね」
「とても器用な攻撃だ」
「理不尽に民を処刑され、殲滅戦を宣言されても、彼らは皇国に対して自らの姿勢を崩さない。見事なものだ」
彼らは集めた映像と写真を見て、語り合う。
「だが、これでパーパルディア皇国は海上戦力のほとんどを失うことになった。皇国は海からの攻撃を防ぐ術は無くなったわけだ」
「その上、皇国一の工業都市デュロも破壊された以上、武器兵器の供給はこれまで通りにはいかないでしょうな」
「もちろん他の街でも作れるでしょうが、それだけでは不足するでしょうから、恐らく倉庫で埃を被っている旧式の代物を引っ張り出さざるを得ない状況になるかと」
「まぁ、そんな物ですら皇国に残っているのならな」
と、一人の政府関係者がそう言うと、周りは納得した様子を見せる。
ムーは過去にその情報収集能力を用いて、第三文明圏の海で起こっている海賊被害について調査を行っていた。
というのも、その第三文明圏の海における海賊による被害とその動き、そして皇国の動きに違和感を覚え、調査を行ったのが始まりだ。
その結果、皇国が第三者と偽って海賊に倉庫で埃を被っている旧式の武器兵器を売り払っていたのが判明した。
事実が判明したのは、たまたま第二文明圏の海で狼藉を働いた海賊船を捕縛した際に、その海賊が第三文明圏で活動していた海賊であるのが判明し、その海賊船から古い魔導砲やマスケット銃が発見された。
海賊を尋問した所、入手経路は別の海賊から紹介された商人から大枚叩いて入手したという。
押収した銃と魔導砲を調査した所、銘柄は削り取られていたが、それらは過去でパーパルディア皇国の皇軍で使われていた物と同じであった。
これらの魔導砲とマスケット銃が当時皇軍の主力として使っていた時期を考えれば、海賊船から見つかった魔導砲はパーパルディア皇国の物で間違いないだろう。皇国は自国の武器兵器を売り払うことはしていないので、第三国が持っているはずがない(少なくとも表立っては、だが)
更に皇国が他国から海賊対策として護衛契約を結んで、多額の契約金と保険金を得ていることも判明した。しかもパーパルディア皇国が護衛に就いた時だけなぜか海賊の襲撃が無い。
過去にパーパルディア皇国で使われていた魔導砲やマスケット銃が多くの海賊達が使って第三文明圏の海を暴れ、皇国が他国より海賊対策として他国に護衛契約を迫って契約させ、多額の契約金と保険金を得ている。そして皇軍が護衛に就いた時だけ海賊が襲撃して来ない。
こんな怪しい背景を見て、怪しむなと言う方が可笑しいだろう。
しかしムーはパーパルディア皇国にそのことを追求することはしなかった。理由は単純に、自分達には関係無いからだ。ただ気になっただけで、調べただけだ。まぁこれで自分達にも被害が出ているのなら本格的な介入はあっただろうが。
それに、仮にこれらの事を皇国に追及したところで、知らぬ存ぜぬを押し通されるだけである。
結局皇国の薄汚さを確認しただけで、この件に深く関わることは無かったのだ。
政府関係者が語ったのは、この一件の事である。
「まぁ、皇国は引き金を引いた以上、もう後戻りはできない。この戦争は皇国が降伏しない限り続くだろう」
「そうですね。ロデニウス連邦共和国は皇国を滅ぼす気は無いでしょうが、相手が降伏するまで戦いをやめるつもりはないでしょう」
「彼の国は平和を愛しているが、平和を愛しているからこそ容赦は無い」
「もし我々が対応を誤っていたら、ロデニウスは第二のグラ・バルカス帝国になっていたかもしれんな」
政府関係者たちが各々話していると、首相の男性が大きく咳払いをして、政府関係者は話すのをやめて首相を見る。
「まぁ、我が国は引き続き情報収集は行って、今後の動きを見ていくだけだ。場合によっては、歴史を見届けることになるかもしれん」
首相がそう言うと、政府関係者たちは頷く。
「首相。ロデニウスについてですが、アルタラス島にある我が国の空港で動きがありました」
「なんだ?」
「ロデニウス連邦共和国の爆撃機と輸送機が空港に集結しているそうです。まだ数は少ないですが、日が経つにつれて集結している数が増えているそうです。ロデニウス側に事情を聴いたところ、作戦の一環で集めているとの返答がありました」
「作戦の一環とは……」
「……エストシラントであれだけの攻撃を行っていて、この上何をする気なんだ」
首相はロデニウスの容赦の無い雰囲気を醸し出している動きに、不気味さと共に恐怖を覚える。
その後は様々な報告を聞き、今後はどうするかの会議が続くことになる。
所変わり、第一文明圏。
第一文明圏の列強国にして、この世界最強の国として君臨している国家……『神聖ミリシアル帝国』
「これは……間違いないのか?」
「間違いありません。エストシラントにある大使館にて、職員が捉えた魔写です。今朝届きました」
神聖ミリリアル帝国のとある部署にて、二人の男性が驚いた様子を見せている。
机に広げられているのは、パーパルディア皇国の皇都エストシラントにある神聖ミリシアル帝国の大使館職員が、上空を飛翔する景雲四型改を捉えた魔写である。白黒ではあるが、くっきりと写っているのを見れば、技術力の高さが伺える。
その他にも、烈風改や流星改二と言った航空機を捉えた魔写もある。
これらはパーパルディア皇国にある大使館の職員が急いで本国に送って来たものである。
「これは、まるでムーの航空機じゃないか。形はまるで違うが」
「それどころか、ムーの航空機よりも洗練されていますね」
「うーむ……」
「大使館職員の証言によれば、ムーのマリンとは比べ物にならない速度で飛んでいたそうです」
「ムーの航空機と違うのは……確かだろうな」
魔写に写っている烈風改、流星改二を見て男性は呟くと、航空機の胴体側面と翼の端にある国籍を表していると思われる赤い円に白い縁のマークを見る。
「この航空機の所属は……ロデニウス連邦共和国だったか?」
「えぇ。パーパルディア皇国がわざわざ我が国の世界通信を使って世界に発信しつつ、ロデニウス連邦共和国に対して宣戦布告を行い、更に殲滅戦を宣言した国です」
「皇国がここまでするからには、よほど文明圏外の国が怒らせることをしたんだろうと思っていたのだが……」
「笑えない結果になりましたね」
「あぁ。パーパルディア皇国が列強としては下の下にあるとはいえ、あのパーパルディア皇国が文明圏外の国相手に初手で甚大な被害を受けるとはな」
二人は魔写を見ながら話す。
彼らの常識的に文明圏外にある国が、第三文明圏の列強国を相手にすれば、ただでは済まないというものであった。
だが、結果は文明圏外の国が第三文明圏の列強国の首都に甚大な被害を与えた。これだけでも世界に衝撃を与えるのに十分だった。
「レイフォルを滅ぼしたグラ・バルカス帝国に続いて、列強国が文明圏外の国に大きな被害を受けたのは、これで二件目になりますね」
「あぁ。どちらとも列強の中でも下だが……一体世界で何が起きているんだ」
常識を覆した事が二度もあって、男性は静かに唸って首を傾げる。
「まぁ、あの国がどうなろうと我々には関係無いが、問題はこの航空機だ! まるで我が国の天の浮舟みたいじゃないか!?」
男性の一人は、景雲四型改に写った魔写を見て驚きの声を上げる。神聖ミリシアル帝国には、天の浮舟と呼ばれるジェット機と構造的によく似た航空機が存在している。それ故に男性が景雲四型改を見て驚いたのである。
「えぇ。この航空機の外観から見て、我が国の天の浮舟と似た構造を持っているのは間違い無いかと」
「だが、なぜ文明圏外の国が天の浮舟を持っているんだ?」
「それは何とも言えません。この魔写が偽物ではないのは確かですし、多くの目撃証言がありますし……」
「……うーん」
「どうします?」
渋い顔をして考えている男性に、もう一人が問い掛ける。
「どうするも何も、ありのまま報告するしかないだろう」
「上層部が信じますかね?」
「そんなの私が知るものか。ありのままを報告するだけだからな」
「……」
「だが、これだけは言える」
と、男性は魔写に映る航空機を見つめる。
「ロデニウス連邦共和国は、少なくとも我々が思う以上に、技術が発展しているかもしれない」
「……」
「ロデニウスに関する情報をもっと集めるべきだな」
「分かりました。すぐに掛け合ってみます」
彼らは頷き合い、すぐにそれぞれ行動を起こす。
所変わって、某所
「……」
空気が張り詰めたような薄暗い一室に、数人の男性が机を取り囲み、机に広げてある白黒写真を睨みつけるように見ている。
写真には、烈風改に
「今回の空襲時に撮影で来た航空機だが、どう思う?」
「どうも何も、どれも我が軍の航空機とは異なるとしか」
「外観だけではない。性能自体もまるで違う! しかもこれだ!」
一人の男が声を荒げながら、数枚の写真を手にする。
それらの写真には流星改二が港の湾内を超低空飛行にて飛行し、抱えている二本の魚雷を投下して飛び去ろうとしている一連の光景が写されている。
「明らかにこれは魚雷だ! この世界には魚雷など無いのではなかったのか!?」
「魚雷の有無はどうでもいい。問題はこの雷撃機が魚雷を二本も抱えていることだ。それだけでも我が軍の雷撃機を上回る性能を有しているのは間違いない」
「その上、急降下爆撃機も同機種が使われている。まさか攻撃機と爆撃機の両方をこなせるとは」
「この航空機はタンデム式か。我が軍に無いような航空機があるとはな」
「それらはまだ技術が予想しやすい。問題なのはこいつだ」
と、一人の男が景雲四型改が写った写真を手にする。
「こいつはプロペラも無く、どうやって空を飛んでいる? その上他の航空機とは比べ物にならない速度で飛んでいたぞ」
「どうやって飛んでいるかは分からないが、ミリシアルに似たような構造を持った航空機がある。何かしらの関係はあるだろう」
「ミリシアルの航空機は、そんな速度が出せるのか?」
「分からん。無い物と見比べてもどうしようもない」
未だに張り詰めた空気の中で、一人の男がため息を付く。
「この航空機は……恐らくパーパルディア皇国が宣戦布告したロデニウス連邦共和国のものだろうな」
「恐らくは。そして空母から飛んできたと思われます」
「航空機でこれだ。その他の分野でも技術が発展しているはずだ」
「我々以外にこれほど技術が発展している国があるとは……」
各々が呟く中、一人の男が咳払いをする。
「兎に角、もうすぐ迎えの潜水艦が来る。ここにある機材は持っていける奴は持っていけ。持っていけないやつは機密書類と一緒に処分しておけ」
「了解」
男たちは急いで行動を起こす。
機密書類は持っていけるだけ鞄に詰め込み、持っていけない分は焼却処分をする為に一か所に集め、暗号機等の機材も持っていける分は持っていき、持っていけないやつは一か所に集めて爆薬を置いている。
「全く。諜報部の連中が真面目に仕事をしていれば、わざわざ独自に諜報機関を作る必要は無かったのによ」
「文句言うな。より精度の高い情報を手に入れる為だ。それで高い給料を受け取ってんだからな」
機密書類を一か所に集めながらぼやく男に、携帯式の暗号機を鞄に仕舞う男が宥める。
「ところで、陸軍の連中はどうするんだ?」
「陸軍はここに残るそうだ。ロデニウスの陸上戦力を確認していないそうだからな」
「熱心な事だな。いつまた攻撃が来るか分からないっていうのに」
彼らは会話を挟みながら機密書類と持っていけない機材を二か所に集め、一人の男が書類に油を蒔き、他の男が機材に爆薬を仕掛けて、導火線を伸ばす。
「行くぞ」
そして男たちは部屋から出ていくと、最後の一人が手にしているマッチの先端を擦って火を付け、油まみれの書類に投げ込み、急いで部屋を出る。
マッチに付いた火は油に引火し、部屋に広がった油に広がって火の海と化す。
書類が燃えていく中、火の手は爆薬に繋がっている導火線に火が付いて爆薬に迫る。
その日の夜、エストシラント郊外にある小屋が突然爆発を起こし、火の手が上がったという。
結果、パーパルディア皇国はクソ忙しい中で、その対処に追われることになるのだった。
中央歴1640年 2月7日 パーパルディア皇国 エストシラント
「……」
カイオスは大きな欠伸をして、自分の執務室に入る。
(ここ最近まともに眠れていないな)
彼は内心呟きながら椅子に座る。
彼の顔には疲れの色が浮かんでおり、目の下には隈が出来ている。
エストシラントは多忙を極めており、どこもかしこも休んでいる所は無かった。それこそ家に一度も帰れていない者が多くいて、次々と過労で倒れる者が続出するぐらいには。
特に軍では昼夜問わず港と防衛基地の復旧に追われている。まぁこちらに関しては、先日到着した各属領より撤収した臣民統治機構軍が加わっていることで、多少マシになって作業も進んでいるそうである。
各外務局も例外ではなく、手空きの職員は復旧作業に駆り出され、残された職員は膨大な仕事に追われている。
「……」
カイオスは深くゆっくりと息を吐き、目を瞑る。
(……ロデニウスは、どう動くか)
内心呟きながら、昨日のことを思い出す。
カイオスは昨日の深夜に、あることをしていた。
それは普通に考えれば国家に対して反逆行為であることは間違いない。もしバレれば、国家反逆罪で極刑になるだろう。
それでもこの国を滅ぼさない為に、裏切り者の烙印を押されようとも、彼は行動を起こしたのだ。
事の始まりはロデニウスの国民をシオス王国で処刑し、その光景をレミールが『大和』と『エンタープライズ』に見せつけた、あの日である。
二人の帰りの時に接触したカイオスは、『大和』より使いを寄こすと聞いて二日後の夜、屋敷で待っていた。
そして言ったとおりに、夜中にカイオスの私室に『大和』の使いがやって来た。使いは『十六夜月』と『黄昏月』と名乗る面を被った二人の獣人であった。
『十六夜月』と『黄昏月』はカイオスより話を聞き、彼に長距離無線機を渡して使い方を説明した後に撤収した。カイオスはロデニウスと個人的な繋がりを手に入れたのだ。
その日からカイオスは間隔を空けて、スパイのように内通者としてロデニウスに情報を流しつつ、ある計画を撃ち明かした
それは、カイオスが予てより計画していたクーデターをロデニウス連邦共和国に撃ち明かし、クーデターの協力を要請した。ロデニウス側は明確な返答は無かったものの、手応えのある答えはあったとカイオスは感じていた。
そして先日もカイオスは属領での動きをロデニウス側にリークしていた。
少なくとも、ロデニウス連邦共和国は何かしらの動きを見せるとカイオスは予想している。
(成功させねばな。この国を救う為に)
カイオスは改めて決意を胸に抱き、頬を叩いて気合を入れる。
『――――ッ』
「ん?」
すると、何やら雑音が響き出す。
「何だ、この音は?」
カイオスは椅子から立ち上がって窓を開ける。
『―――より、―――国よりメ―――』
ノイズ混じりに何やら声みたいなものが聞こえる。
「これは……」
「カイオス様!」
と、執務室の扉が開いて、部下のバルコが入って来る。
「何が起きている?」
「それが、街中で魔信の放送が流れています!」
「何? どういうことだ?」
「そのままです。街中どこからともなく魔信の放送が流れています! 原因は不明です!!」
「……」
カイオスはノイズ混じりの声に耳を傾ける。
現在エストシラントでどこからともなく魔信の放送が流れており、復旧作業をしている皇軍兵士が発信源を探ろうとしているが見つけられなかった。
というのも、この放送は『黒潮』率いる忍びのKAN-SEN達が密かに街中に仕掛けたスピーカーから発せられており、数が多い上に特殊な構造をしているので、音の方向を特定しづらくしている。その上巧妙に偽装しているので、発見されづらくなっている。
「カイオス様!」
と、開いた扉からバルコが入って来る。
「何だ! 放送の事なら既に―――」
「いえ、放送の事ではありません!」
「じゃぁ、何だ?」
「先ほど海の方に巨大な船が現われたと報告がありました!」
「船、だと?」
「我が軍の船はもうありません! となると……!」
「っ! ロデニウスか!」
「そのロデニウスの船からも、放送が流れています!」
「何?」
『―――します。世界通信から、これよりアルタラス王国王女、ルミエス殿下よりメッセージがあります』
「っ! これは!」
「カイオス様!?」
カイオスは急いで執務室を出て、バルコが続く。
『この放送をお聞きの皆様、初めまして。私はアルタラス王国王女、ルミエスです』
その放送は、エストシラント中に伝わるように大きく、そして鮮明に流れてくる。
この放送は神聖ミリシアル帝国の世界通信を通じて行われており、ロデニウス連邦共和国はムーを通じて神聖ミリシアル帝国の世界通信に放送させている。かつてパーパルディア皇国がロデニウス連邦共和国に宣戦布告と殲滅戦を世界通信を通じて宣言したように、今回も同じように世界通信を通じてメッセージを送っている。
放送の音声の出どころは、忍びのKAN-SENによって街中いたる各所に仕掛けられたスピーカーであり、どこからともかく放送が流れているような錯覚がして、エストシラントの市民は驚きと困惑に満ちている。
復旧作業をしていた皇軍兵士達は、放送の発生源を特定しようと対処に追われていたが、巧妙に偽装されて隠され、数が多く特殊なスピーカーで音のする方向が特定できず、発見に至らないで居た。
その上、港の外で、しかも肉眼でも分かるぐらいの近距離に、目を疑うぐらいに巨大な船体を持つ軍艦が二隻も停泊して、その二隻の甲板設置されている巨大なスピーカーからも放送が流れている。
その周りには『伊勢』、『日向』、『扶桑』、『山城』が主砲や高角砲、機関砲を空に向けて空からの襲来に警戒している。
市街地に放送が流れているのにわざわざ海からも放送を流しているのは、皇国への威圧的な目的がある。
「はぁ……初出撃がこんな形になるなんて……」
『文句言わないの「飛鶴」。おじ様たちが特別に許可してくれたのですから。私たちの練度では、まだ出撃なんて無理なんですから』
「そうだけど……『蒼鶴』姉」
その巨大な軍艦こと、航空母艦の甲板に、それぞれ二人の女性が立っており、『飛鶴』と呼ばれた女性がため息を付く。そんな様子を見せる『飛鶴』を『蒼鶴』と呼ばれる女性が宥める。
『蒼鶴』と『飛鶴』と名乗る女性二人……以前マイハークにて『武蔵』と『翔鶴』『瑞鶴』と一緒に居た女の子二人であり、『武蔵』と『翔鶴』、『武蔵』と『瑞鶴』の間に生まれた第二世代のKAN-SENである。
あれから完成した艤装を受け取った二人は成長し、KAN-SENとして完成を迎えたのである。成長したことで、より母親に似た容姿になっている。
二人共身長が伸びて母親と同じぐらいの背丈になり、スタイルも母親譲りの立派なものになっているという。
二隻の艦体はともに300mを超える巨大な船体にアングルドデッキを持つ飛行甲板と、その造形は父親から大きく受け継いでいる。ただ父親と違うのは、電子機器類が『武蔵』はそうだが、『翔鶴』『瑞鶴』よりも近代的なものであり、武装もかなり様相が異なる。
何より特徴的なのが、船にあるはずの物がなく、艦橋周辺が結構スッキリとした造形になっている。第二世代のKAN-SENは次世代の力を持つと推測されているが、『筑後』や『まほろば』と違ってこの二人はより明確に、そして全体的に次世代の技術が現われているだろう。
実際、多くの技術がこの二人から得られている。
KAN-SENとして完成した後、二人は一人前になるべく他のKAN-SEN達から教練を受け、訓練を重ねる日々を送っていた。
まだ練度は不足気味であったものの、今回の作戦で二人に白羽の矢が立ったのだ。
作戦を行うにあたり、二人の艦体には特別な改装が施されており、甲板には放送を行う大型のスピーカーが搭載されており、放送はここから発せられている。
ちなみに、この放送はエストシラントに向けているが、実を言うと本命はパーパルディア皇国が抱える各属領であり、ここでも特戦隊所属の妖精達が密かに仕掛けたスピーカーより発せられているのだ。
これこそ、エストシラント空襲に続くロデニウス側の戦略……『ルミエス王女の演説』である。
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