異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊   作:日本武尊

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ガガギゴ様より評価3を頂きました。
評価していただきありがとうございます!

今回から新章突入です


第一章 ロウリア戦役編
第九話 国の変化


 

 

 

 中央歴1639年 3月22日 クワ・トイネ公国 公都『クワ・トイネ』

 

 

 

 クワ・トイネ公国とトラック諸島が同盟を組んで一年の月日が流れた。

 

 

 

 トラック泊地から齎されたインフラ技術により、街の近代化は着々と進んでいた。

 

 街にはインフラが充実しており、どこの家庭には水道、ガス、電気が通っており、住人の生活環境が大きく変わっている。

 道は整地されて歩道にはブロックが敷き詰められ、道路にはアスファルトが敷かれており、その上を建設資材や農作物を載せたトラックが走っている。

 

 鉄道の普及も進んでおり、国内のほぼ全てに行き来できるレベルで狭軌規格の線路が敷かれており、各地に人員や物資が運ばれている。

 

 鉄道車輌もトラック泊地で製造された蒸気機関車とディーゼル機関車が輸入されて運用されている。電気機関車の輸入も考えられたが、変電所と架線の設置が必要になる上、扱いが難しいので輸入は先送りにした。ディーゼル機関車も今は試験運用として少数が輸入されているだけである。

 

 

 街の中に敷かれた線路を『DD51形ディーゼル機関車』が客車を牽引する列車が走っていた。

 

 

「それにしても、たった一年でこれほどの発展を遂げるとは」

 

「えぇ。それも国ではない所と国交を結んだとなれば、尚更です」

 

 興奮気味のカナタは客車の車窓から急速な発展を遂げる街並みを見ながら秘書に声を掛けて、秘書もそれに同意する。

 

 

 クワ・トイネ公国がトラック諸島改め『トラック泊地』との実質的に国交に近い軍事同盟を結んで一年近くが経過した。

 

 この一年はクワ・トイネ公国にとって劇的な変化のあった一年であった。 

 

 国交を結んだトラック泊地は、そのままクワ・トイネ公国の隣国クイラ王国とも国交と軍事同盟を結んだ。

 

 トラック泊地は多くの食料と資源の輸入を求めて来て、大地の神に祝福されたクワ・トイネ公国は多くの食料を輸出し、向こうで栽培している独自の作物を育てる為に土地を貸し出し、クイラ王国は資源を輸出した。

 

 クイラ王国は元々作物の育たない不毛の土地であったが、クイラ王国中に湧き出る黒く燃える水の存在を聞いた『大和』は血相を変え、すぐにクイラ王国との国交を結ぶべくクワ・トイネ公国に仲介して貰うように頼み込み、クイラ王国と国交を結んだ。

 その後の調査で黒く燃える水こと石油以外に石炭や武器兵器の製造に欠かせない鉱石や電子機器の製造に必要なレアメタルが発見されている。この結果に妖精達は「ヒャッハー!! 新鮮な素材だぜぇ!!」と言わんばかりに狂喜乱舞していたそうな。

 

 これらの輸出に対して、トラック泊地は多くの技術の輸出を行った。主にインフラ技術だが、その多くは武器兵器であった。

 

 

「これほどのインフラ技術を輸出してもらっているだけでもありがたいが、何より彼らが使用している武器兵器を輸出してもらえたのは、感謝しかないな」

 

「正確には彼らにとって古くなった代物ですがね」

 

「それでも、我々からすればどれも凄まじいものだ」

 

 カナタは列車が走る線路の隣の線路で『D52形蒸気機関車』が牽く貨物列車が走っていくのを見ながら、一年前にトラック泊地へ視察に向かった視察団からの報告書を思い出す。

 

 クワ・トイネ公国とクイラ王国は食料や資源の輸出と引き換えに、トラック泊地より陸戦隊で一部を除き使わなくなった旧式の武器兵器を輸入して、軍に配備している。その性能に軍は驚きを隠せなかったが、同時に歓喜に満ちていたとの事。

 それらの武器兵器の訓練は、トラック泊地から派遣された指導官が行っている。

 

 最近ではトラック泊地で建造された船舶が海軍に配備されつつあった。

 

「今思えば、彼らが平和的で何よりでしたね」

 

「あぁ。もしあれだけの技術力と力を持ってして覇を唱えていたら、ゾっとしないよ」

 

 カナタは身体を震わせる。

 

 視察団からの報告でKAN-SENの事や陸戦隊の装備を聞かされた時は、顔を真っ青にして、震え上がったそうな。

 

 そしてしばらくして行われた陸海での火力演習でKAN-SENの力を目の当たりにしたことで、カナタ達は身体の心から震え上がったそうである。

 

「しかし、今でも信じられないものだ。KAN-SENというのは」

 

「えぇ。あのような可憐な女性少女達が、我々の常識を超えた兵器とは」

 

「その上、あれほどの力を有しているとは。彼らが居た世界はどれだけ戦乱の世界だったのだろうか」

 

 予想できない修羅の世界に、彼は思わずため息を付く。

 

 

「……それで、ロウリア王国の動向はどうなっている?」

 

 カナタは気持ちを切り替えて、秘書に問い掛ける。

 

「諜報部とトラック泊地の諜報員によれば、工業都市ビーズルの工場と各地にある町工場での大量の武器の製造、港の造船所では軍船の建造、各所でワイバーンの調達と、大規模な軍拡が行われているようです。不確定情報ですが、外来船が港にひっきりなしに出入りしては、荷物を港に降ろしているようです」

 

 秘書はタブレット端末を手にして、報告書のデータを開いて内容をカナタ首相に伝える。

 

「軍拡……。ロウリアとの衝突は避けられそうに無い、か」

 

「抑止力として外交のカードとして使うか、正面切って戦争をするのかはまだ分かりませんが、ここまであからさまに軍拡をしている以上、後者の可能性が非常に高いです」

 

「うーむ。しかし外来船か」

 

「どこの国の船かは分かっていませんが、少なくともロウリア王国を支援しているのは間違いないかと」

 

「……」

 

 カナタは腕を組み、静かに唸る。

 

「……これだけの支援が出来る国は、限られるな」

 

「えぇ。シオス王国はあくまでもロウリア王国の貿易相手。そうなるとロウリア王国を支援しているのは―――」

 

「……パーパルディア皇国か」

 

「恐らくは……」

 

 秘書が肯定すると、カナタは沈黙する。

 

 パーパルディア皇国はロデニウス大陸から北に位置するフィルアデス大陸の大半を有する、第三文明圏の列強国として君臨する大国である。

 

 かの国が支援しているのなら、ロウリア王国の大規模な軍拡も納得がいく。

 

「ロウリアめ。悪魔に魂を売ってでも我々を潰したいか」

 

「愚かなものですね。大陸統一と比べると、明らかに釣り合っているとは思えません」

 

「あぁ。全くだな」

 

 カナタは肯定して頷くと、頭を切り替えて別のことを考える。

 

「仮に戦争になったら、ギムと周辺の村が狙われるな」

 

「恐らくは」

 

 車窓から発展した街並みを眺めながら呟くと、秘書が答える。

 

「疎開命令を出すことも検討しなければならないかもしれんな」

 

「その方が宜しいかと。何かが起きてからでは遅いので」

 

「それもそうだな。次の会議で疎開について決めよう」

 

「分かりました。そのように調整します」

 

 秘書はタブレット端末を操作してメモ帳アプリを開いて先ほどの内容をメモし、その間にカナタは椅子の背もたれにもたれかかる。

 

「今の我々ならロウリア王国に負ける事は無い、が……」

 

「数では向こうの方が圧倒的に上です。武器の性能が良くても、物量を前には無力です。それに実力を発揮できるかどうか」

 

「……」

 

 秘書に痛い所を突かれて、カナタは黙り込む。

 

 国土の広さ故に、人口の数はロウリア王国の方が圧倒的に上であった。当然軍の戦力も向こうの方が上だ。

 

 例え銃や大砲、戦車といった強力な武器兵器を手に入れたとしても、数が少なければ意味が無い。

 

 それに武器兵器を輸入して訓練を行っているとは言えど、導入から今日に至るまでまだ一年に満たない。所々で練度不足が目立っているそうだ。

 

 強力な武器や兵器であっても、使いこなせなければ真価は発揮しない。

 

「トラック泊地の『大和』殿は、要請があれば援軍を出すことは可能と言っています」

 

「……彼らも動いてくれるか」

 

 カナタはそう呟くと、安心したように肩が降りる。

 

(本来であれば、自分達の国は自分達で守らなければならない。だが、プライドに縋っている場合ではない。これは国の存亡に関わるのだから)

 

 内心そう呟き、カナタは決心する。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 場面は変わり、クイラ王国。

 

 

 作物が育たない不毛な大地が広がり、食糧を常にクワ・トイネ公国から輸入しなければならず、仕事に就けれない者や失業者が多く、国民一人一人が貧しい生活を強いられていた貧困な国であったが、トラック泊地より齎されたインフラ技術を投入して生活水準が向上し、大きく様変わりしている。

 

 地下資源の豊富さ、ダダ余りしている土地の存在もあり、この国は今では大きく変化している。

 

 

 クイラ王国の各地には石油が湧き出る場所が多く存在しており、そこには石油の精製所が建ち、そこで様々な種類の燃料が製油されてはクワ・トイネ公国、クイラ王国、トラック泊地へと運ばれる。

 

 鉱物が取れる山では採掘場が設けられて、日々建築材や武器兵器の製造に必要な鉱物を掘り出し、その後国内にある製鉄所にて様々な鉄材に加工され、これも各所へと運ばれる。

 

 クイラ王国は貧困な国であったが、それなりに人数が多く、手先が器用な職人が多かったので、加工業でクワ・トイネ公国と新たに商売をしているそうで、財政が少しずつ潤っている。

 そして採掘業によって仕事が無かった国民に仕事が与えられた事で失業者の数は激減し、その上給料も今までの仕事よりも高かったとあり、インフラ導入に伴い、国民一人一人の生活は豊かになりつつあった。

 

 これらの事業もあって、国内で鉄道の必要性が高く、鉄道ではクワ・トイネ公国よりクイラ王国の方が発達している。

 

 頻繁にクイラ王国内を鉄道が走っては、クワ・トイネ公国の国境線や港へと物資が運ばれる。

 

 クイラ王国は石炭と石油が自国で産出されるとあって、クワ・トイネ公国と違いディーゼル機関車より蒸気機関車が多く運用されており、中身が魔改造されたD52形蒸気機関車や中身が魔改造されたC62形蒸気機関車が多く運用されている。

 まぁ実際は複雑な構造のディーゼル機関車より蒸気機関車の方が扱いやすいからという理由がある。電気機関車は言わずもがなである。

 

 

 更にダダ余りした土地を使い、クワ・トイネ公国陸軍とクイラ王国陸軍が共有で使う演習場や飛行場等の軍事施設が多く作られている。

 

 演習場は小銃の射撃場はもちろんのこと、戦車や榴弾砲、迫撃砲といった兵器運用を行える演習場が多数作られている。

 

 飛行場も間隔を開けて各所に作られており、ワイバーンに変わる新たな戦力として航空機が導入され始めており、特にワイバーンが居ないクイラ王国は積極的に航空機を導入しており、現在必死になってパイロット育成に取り組んでいる。

 クワ・トイネ公国でも航空機は採用されて導入されつつあるが、ワイバーンを既に運用しているとあって、すぐに転換出来るはずもなく、現時点では竜騎士候補生を対象にパイロットを募っており、導入数は少数に留まっている。

 

 将来的にもクワ・トイネ公国も航空機を全面的に運用する予定であるが、航空機への更新後のワイバーンの再利用について様々な意見が出ているとのこと。

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 そんな中、クイラ王国にある小銃の射撃場では……

 

 

「用意! 撃て!!」

 

 クワ・トイネ公国陸軍とクイラ王国陸軍の兵士達が一斉に小銃を構え、指導官の女性の合図と共に射撃を始める。

 

 引金を引く度に弾が連続して発射され、銃声と共に発生する反動を抑えようと兵士達は必死であった。その隣では排出されて飛ぶ空薬莢を必死に虫取り網で拾う兵士の相方の姿があった。

 

 放たれた弾は的に命中するも、その場所はバラバラ。真ん中付近に命中する者も居れば、的ギリギリか的にしている紙ギリギリ、そもそも命中しないという者も居た。

 

 十回発砲があると、銃本体下部に差し込まれているマガジン内の弾が切れてボルトが一番後ろまで下がって停止する。

 

「弾倉交換! 急げ!」

 

 指導官の指示と共に兵士達は小銃の下部に取り付けられた20発入るマガジンを外し、空のマガジンポーチに空のマガジンを入れて、別のマガジンポーチよりマガジンを取り出し、小銃に差し込んでコッキングハンドルを引いてボルトを前進させる。

 

 そして指導官の合図と共に再び射撃を始める。

 

 

 クワ・トイネ公国陸軍とクイラ王国陸軍の兵士達が訓練で用いている小銃は『四式自動小銃』と呼ばれるセミオート式小銃である。

 

 四式自動小銃とはトラック泊地の陸戦隊で過去に採用されたセミオート式小銃であり、64式小銃が採用されてからは第一線を退いたが、一部仕様を変更してクワ・トイネ公国とクイラ王国へと再生産され、輸出されている。

 

 主な変更点は使用弾薬で、九九式実包と呼ばれる7.7×58mm弾から64式小銃と同じ7.62×51mm弾に変更され、弾薬変更に伴い銃身を変更し、内部機構も調整等を施して適応させている。使用弾薬を変更した事で、マガジンも本来の10発入りから64式小銃と同様の20発入りマガジンが使用可能となった。

 これにより、いざという時はトラック泊地の陸戦隊と弾薬とマガジンを共有化出来る。

 

 この他にも『九九式短小銃』も輸入されて、これも九九式実包と呼ばれる7.7×58mm弾から64式小銃と同じ7.62×51mm弾に変更されており、銃身と内部機構が変更されている。こちらは狙撃銃として射撃技能が高い者が使用している。

 

 

 ちなみにこの四式自動小銃だが、開発時にこんな話がある。

 

 四式自動小銃の開発の際、動作機構や装弾方法が話し合われ、その際装弾方法でいくつか候補が上がった。

 

 従来の小銃みたくクリップを使って五発ずつの装弾か、マガジンを交換する方法か、エンブロック・クリップ装弾方式が挙がった。

 

 クリップを使っての装弾は時間が掛かると却下され、手堅くマガジンを交換する方法が採用されようとしたが、エンブロック・クリップ装弾方式も候補に残った。

 

 しかしそんな中、一人の妖精がこんな事を言ったそうな。

 

『マガジンを交換するという堅実な作りが出来るのに、わざわざ弾切れを知らせて兵士を危険に曝しかねないエンブロック・クリップを使う物好きな輩が居るのか?』と……

 

 その後堅実かつ素早く簡単にと、マガジンを交換する構造を採用したのである。

 

 

 閑話休題(話を戻そう)

 

 

「射撃終わり!!」

 

 交代しながら射撃訓練が続き、指定の弾数を撃ち終えて指導員が終了を告げる。

 

「訓練終了! 用具は指定の場所へ収容! 薬莢数え始め!」

 

 指導員の指示を聞き、兵士達はすぐに四式自動小銃よりマガジンを抜き取り、コッキングハンドルを二、三回引いて薬室に弾が残っていないのを確認して、銃本体をガンラックカートに戻す。

 

 その傍で虫取り網の中にある空薬莢を兵士が数えて、訓練開始時の弾数と薬莢を確認する。兵士は弾薬係に数を報告するが、その弾薬係も薬莢を数えて確認する。ちなみにその弾薬係はトラック泊地より派遣された喋る事が出来る妖精達である。

 もし数が合わなければ連帯責任で総出で地獄の薬莢探しが開始される。もちろん見つかるまで捜索は終わらない。

 

 なので、薬莢取り係の兵士は他の兵士からの重圧が凄く、もし薬莢を回収し損ねて紛失すれば、恨みを買うことは間違い無し。

 

 

「はぁ……」

 

 そんな中、一人の兵士がため息を付く。彼はクワ・トイネ公国陸軍の兵士で、最近訓練に入ったばかりだ。

 

「どうしたんだ?」

 

 と、同僚の兵士が新入りの兵士に声を掛ける。

 

「いや、俺今日も的に当たらなかったなぁって」

 

「はぁ……」とため息を付き、自分が狙った的を見る。

 

 その的には穴はおろか、かすり傷すらなかった。

 

「また当たらなかったのか? もう二日連続だぞ」

 

「あぁ。また隊長にどやされる」

 

「はぁ……」とこの後あるであろう事に、再度ため息を付いて落ち込む。

 

「俺、向いてないのかな……」

 

 気持ちが更に落ち込み、彼はうな垂れる。

 

 

「どうした?」

 

 と、新入りの兵士に指導官の女性が声を掛ける。

 

「きょ、教官!」

 

 兵士は振り返ると、指導官の女性に敬礼する。

 

 その女性は黒いショートヘアーに片目が隠れるような髪型をして、瞳の色はブルーグレーをしている。青いロングコートの下に胸元が開けたドレス風の軍服を身に纏い、タイトスカートにストッキングを支えているガーターベルトとそこから見える絶対領域、開けた胸元から覗く谷間が艶かしく、その格好は兵士達からは大変人気である。

 

「い、いえ! 何でもありません!」

 

「何でもないなら、そう何度もため息を付くとは思えんが?」

 

「っ!」

 

 指導官の女性ことKAN-SEN『アークロイヤル』はそう指摘すると兵士は反応する。

 

「……あぁ、お前はあそこの的を狙っていた兵士か」

 

「……っ!」

 

 『アークロイヤル』が思い出したように呟くと、兵士は更に反応する。

 

「そう身構えるな。弾が一発も当たらないで怒鳴るようなことはしない」

 

「で、でも、二日連続で一発も当たらないなんて―――」

 

「最初は当たらなくて当然だ。これは射撃に関係なく何でも最初はそんなものだ」

 

 『アークロイヤル』は兵士の言葉を遮り、話し始める。

 

「最初から何でも出来るやつは小説の中の主人公ぐらいだ。現実ではまずいないさ」

 

 彼女は妖精に目配せをしながら兵士に冗談を交えて語り掛ける。

 

「何にせよ、最初は下手で当たり前だ。何事も技術というのは経験を積んで身に付けるものだからな」

 

「それは……」

 

「だが、お前の銃の構え方はあまり良くないな。小銃の反動を制御出来ていないし、体勢が整っていないまま連続して射撃を行っている。その上撃っている度に銃声に驚いて目を閉じているようでは、的に当たるわけがない」

 

「……」

 

 心当たりがあり過ぎたのか、兵士は表情を暗くして落ち込む。

 

「だが―――」

 

 と、『アークロイヤル』は妖精が持ってきた四式自動小銃を受け取り、マガジンを差し込んでコッキングハンドルを引く。

 

「ちゃんと銃を構えて、反動を制御できれば―――」

 

 彼女は銃を素早く構え、引金を引く。

 

 強い反動が彼女に掛かったはずなのに、銃口は大きくぶれること無く、銃弾は的の中央を貫く。

 

「ま、真ん中……」

 

 兵士が思わず声を漏らすと、直後『アークロイヤル』が短い間隔で引金を引き、連続して銃声と共に弾が放たれる。

 

 連続して射撃をしているにもかかわらず、『アークロイヤル』は銃口を的から大きくずらす事無く狙いを定めている。

 

 次々と的の中央付近に穴が開いていき、訓練である為に半分の10発しか入っていないマガジンを撃ち終え、ボルトストップが掛かる。

 

 『アークロイヤル』に狙われた的は真ん中とその付近に風穴を空けており、しかも均等に穴が空いているとあって、それだけでも彼女の技量の高さが窺える。

 

「練習を積んでいけば、射撃はここまで極められる」

 

 彼女は空になったマガジンを外し、コッキングハンドルを二、三回引いて薬室に弾が入っていないのを確認して、妖精に銃とマガジンを返す。ちなみに薬莢は他の妖精が虫取り網で回収済みである。

 

「……」

 

「まぁ、これはあくまでも極端な例だ。目標で良いが、別にこれを今すぐやれとは言わん」

 

 唖然となっている兵士に『アークロイヤル』はフォローを入れる。

 

 いつの間にか遠巻きに他の兵士達が見ていた。そしてアークロイヤルの射撃の腕前に唖然としている。

 

「銃の構え方と反動の制御の基本を覚えていれば、弾は当たる。後は経験を積んで腕を磨くしかない」

 

 彼女は兵士に教えると、右肩に右手を置き、射撃場を後にする。

 

 そんな厳しくも優しく、射撃の技量も相まって、男女問わずアークロイヤルに対して尊敬の眼差しを向ける。

 

 

 

 さて、ここで疑問に思うのが、なぜ兵士の訓練を洋上で戦うはずのKAN-SENが指導しているのか、ということだろう。

 

 これはトラック泊地に暮らすKAN-SEN達の特殊性が大きく関わっている。

 

 トラック泊地のKAN-SENの中には自身のKAN-SENとしての役割の他に、様々な事をする者が多い。これは他の基地では見られない彼ら独自の体制だ。

 

 例えば『三笠』は陸戦隊の司令官として陸上で指示を出し、一部のKAN-SEN達も自身の出撃が無ければ戦車隊や砲兵隊、更には航空隊の指揮を執っている。

 

 なので、それぞれ独自の技術や知識を持つKAN-SEN達は両国の軍へと教導の為派遣され、武器兵器の運用を教導している。

 

 『アークロイヤル』は艤装の関係上か、銃を用いた射撃が非常にうまく、教えもうまい。

 

 そんな彼女のスキルを『大和』は買って、『アークロイヤル』にはクワ・トイネ公国陸軍とクイラ王国陸軍の兵士達の射撃訓練の教官をしてもらっている。

 その他にも空母としての知識と技術も生かし、両国のパイロット育成の教官も『加賀』と共に行っている。

 

 その為、彼女は両国の陸軍兵士とパイロットからの人気が高い。ゆえに美人な彼女を襲おうとした輩が居たが、KAN-SENの彼女に敵う筈もなく、あえなく返り討ちにした。それ以降『アークロイヤル』を襲おうと考える者は居なくなったそうな。

 

 ここまで来れば『アークロイヤル』の有能さが窺える。いや実際に有能である。

 

 

 

 

 が、この派遣に関しての真相は、彼女のイメージを根底から崩してしまうものであった。

 

 何せ『アークロイヤル』は色々とやらかしたことが発覚し、『大和』に説教を喰らった後に罪滅ぼしを兼ねて教導隊の一員として送り込まれている。

 

 で、何をやらかしたかと言うと……『駆逐艦の盗撮』である。つまり『アークロイヤル』は、まぁ所謂ロリコンである。しかもその対象は『冬月』や『名月』達も含まれているようで、最近ではショタコン疑惑が浮上している。

 

 その盗撮が発覚して、彼女は罪滅ぼしを兼ねて教導隊の一員として派遣された、というわけである。

 

 

 一応彼女の名誉の為に言っておくが、『アークロイヤル』が好きなのはあくまでも『駆逐艦』であり、小さい子であれば誰でも好きと言うわけではない。実際彼女は演習場の近所の町に暮らす子供達から懐かれているが、いつものクールな雰囲気で接しており、決して小さい子供に対して○○(発情)してはいない。

 が、後々の出来事で本当に駆逐艦だからなのか、という疑惑が浮上するのだが、そこは置いておいて……。

 

 

 まぁ兎にも角にも、『アークロイヤル』は駆逐艦が絡まなければめっちゃ有能なのは確かである by『大和』

 

 

 




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