異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊   作:日本武尊

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第九十四話 デュロの戦い 壱

 

 

 

「急げ!! ワイバーンロードをすぐに上げるんだ!!」

 

 デュロの陸軍司令部では、敵艦隊出現の報によって蜂の巣を突いたような騒ぎとなっており、軍人たちが右往左往している。

 

「くそっ! どういうことだ!! デュロには攻略するだけの価値は無いはずだぞ!!」

 

 参謀の一人が指示を出しながら、その合間に愚痴をこぼしている。

 

 工業都市として栄えたデュロであったが、海から艦砲射撃を受けたことで軍港はもちろん、工業地帯も壊滅しており、今となっては工業都市として繁栄した姿は見る影も無い。港と湾内に停泊していた艦隊も砲撃によって壊滅しているので、もはやデュロに攻略するだけの価値は無い。

 それ故に警戒が薄かったのだろう。

 

 ではなぜ攻略価値が無いデュロをロデニウス側は攻略に動き出したのか。

 

 ロデニウス連邦共和国は今後の戦闘を考え、可能な限り皇国の戦力を削ろうとしている。それに加え、アルーニに留まっている連合軍と合流させる戦力を送る為でもある。

 

 つまり、自分達がその攻略対象になっているとは、彼らは知る由も無いだろう。

 

「艦隊が壊滅している上に、皇都が攻撃を受けたことを考えれば、我々だけで攻撃を凌ぐしかあるまい」

 

 基地司令のストリームは苦虫を噛んだように顔を顰めつつ、周りに告げる。

 

 皇都は現在混乱の極みにある状況であり、他の基地は防衛を行わなければならないとあって、増援は見込めない。仮に見込めたとしても増援がデュロに到着するのは数日後だ。

 

 その為、現状彼らだけで戦わなければならない。

 

「敵は恐らく先日のような砲撃を行った後に、陸上戦力を上陸させて制圧していくと思われます」

「だろうな。海岸のトーチカとその後方にある市街地に兵を集中させろ。少なくとも地の利はこちらにあるんだ」

「分かりました」

 

 陸軍の将軍ブレムが頷くと、続けて意見具申を行う。 

 

「ストリーム様。皇都空襲の時に敵は飛行機械を用いていたと報告にありましたので、今回も敵は飛行機械を用いてくるかと」

「ふむ。だが、ここにはワイバーンオーバーロードが多く配備されている。ワイバーンロードでは苦戦は免れないが、飛行機械に対抗できるワイバーンオーバーロードなら何とかなるだろう」

「しかし、それだけでは不十分と考えます。そこで、対空魔光砲の使用許可をお願いします」

「対空魔光砲か」

 

 ブレムが出した意見に、ストリームは苦い顔を浮かべる。

 

 対空魔光砲とは、世界最強の国家として知られる神聖ミリシアル帝国で採用されている対空兵器である。

 

 パーパルディア皇国は神聖ミリシアル帝国に少しでも追い付こうとして、その技術を解析するべく秘密裏に対空魔光砲を輸入し、神聖ミリシリア帝国の技術の解析を多くの技術者がいるこのデュロで行わせ、対空魔光砲の複製も試みた。

 

 しかし皇国の技術力では対空魔光砲の複雑な魔力回路の解析が出来ず、未だに複製に成功していない。結局このデュロにある密輸した一基だけしかない。

 

 対空魔光砲は内陸側に保管されていたとあって、先の艦砲射撃の被害を受けずに済んでいるので、準備さえすれば使用可能だ。

 

「うーぬ……一基しかない貴重な存在だが……止むを得ない。出し渋ってこの陸軍基地が壊滅したら元も子もないか」

 

 ストリームは悩んだ末に、対空魔光砲の使用許可を出す。

 

 その後ブレムは前線指揮を行う為、すぐに移動して、ストリームは竜騎士の出撃を急がせる。

 

 

 


 

 

 

 所変わり、デュロの沖合い。

 

 

 海の上には、多くのロデニウス連邦共和国海軍の艦艇が浮かんでおり、デュロに向けて主砲を向けようとしている。

 

 

「いよいよですな」

「あぁ」

 

 戦艦『シキシマ』の艦橋にて、副長の言葉に艦長のミドリが頷く。

 

「これまでの訓練の成果が発揮される。相手は静止目標だが決して気を抜くな」

「はっ!」

 

 副長は敬礼をした後に、窓から外の様子を見る。

 

 『シキシマ』は50口径40.8cm三連装砲三基九門を右90度にゆっくりと旋回して、デュロの海岸防衛線に向ける。同じように後方に居る『サガミ』も主砲三基を旋回させている。

 

 更にその後方には、『ソビエツカヤ・ベラルーシア』と『ソビエツカヤ・ロシア』の二隻も軍艦形態で展開している。その周囲にはヤクモ級重巡洋艦とウネビ級軽巡洋艦、マツ級駆逐艦が展開して空を警戒している。

 

 その後方では『ヒョウリュウ』『エンリュウ』に加え、『アーク・ロイヤル』『グラーフ・ツェッペリン』が艦載機の発艦準備を行っている。

 

『こちら「ソビエツカヤ・ロシア」』

 

 と、『ソビエツカヤ・ロシア』より通信が入り、ミドリは通信機のマイクを手にしてプレストークボタンを押す。

 

「こちら『シキシマ』艦長、ミドリです」

『今回はあくまでも上陸部隊の支援だ。初の実戦だが、気負いせず、訓練通りにやればいい』

「はい。精一杯やります」

 

 ミドリはマイクを基の位置に戻して、制帽を被り直して気を引き締める。

 

『電探、及び光学照準器との連動良し! 諸元入力良し! 主砲射撃用意良し!!』

 

 射撃指揮所から報告がスピーカー越しに送られてくる。

 

「……()ぇっ!!」

 

 ミドリは息を吸って号令を言い放つ。

 

 直後に、『シキシマ』の主砲から轟音と共に爆炎が放たれる。続けて『サガミ』、『ソビエツカヤ・ベラルーシア』、『ソビエツカヤ・ロシア』が続いて主砲を放つ。

 更にヤクモ級重巡洋艦とウネビ級軽巡洋艦も砲撃を開始する。

 

 主砲から放たれた榴弾は飛翔音と共に海岸線に配置されたトーチカに降り注ぎ、轟音と共に衝撃波を撒き散らして大爆発を起こす。

 

 皇国のトーチカはムーのトーチカを参考にしているが、石材を組み合わせて作っているので、ムーの鉄筋コンクリートのような強度は無い。故に海岸線に配置されているトーチカは降り注ぐ榴弾によって次々と破壊されている。

 当然中にいる兵士たちは無事で済むはずが無く、配置されている魔導砲と共に粉々に粉砕される。

 

 狙いが良かったので、艦砲射撃は諸元そのままで続行され、海岸線に敷かれたトーチカを次々と破壊していく。

 

「……」

 

 ミドリは双眼鏡を覗き込んで砲撃を受けている海岸線を見つめる。

 

「艦長。観測機より入電。『目標は排除されつつあり。尚砲撃地点より後方の市街地に敵戦力が集結しつつある』と」

「うーむ……」

 

 ミドリは腕を組み、顎に手を当てて静かに唸る。

 

 

 

「『三笠』司令。観測機より入電。『敵は市街地に集結しつつある』と」

「そうか」

 

 その頃、砲撃行っている艦隊の後方にて待機している上陸部隊を乗せている輸送船団の一隻にて、陸戦隊司令の『三笠』が報告を受けて静かに唸る。

 

「敵は市街地で我々を迎え撃つようですね」

「だろうな。いくら民間人を巻き添えにする心配がないとは言えど、市街地で戦闘を行うのは陸戦隊には荷が重いな」

 

 副官がそう言うと、『三笠』が腕を組みながらそう答える。

 

 先日の砲撃による余波で市街地の一部で火災が発生したことで、民間人は市街地郊外に避難している。したがって現在デュロの市街地は無人と化している。

 

 ロデニウス側はこの事を把握しているので、民間人を攻撃しないように神経を使う必要は殆ど無いのが彼らにとって気が楽だろう。

 

 しかし市街地戦が予想されるので、別の所で頭を悩ませることになるのだが。

 

「空母艦載機で空から市街地を監視し、敵の位置を可能な限り把握するしか無いですな」

「うむ。上陸部隊には周囲の警戒を厳にせよと伝えろ」

「ハッ!」

 

 副官は敬礼して『三笠』の指示を待機している上陸部隊に伝える。

 

 

 

 しばらく砲撃は続き、やがて攻撃目標を破壊し終えて、艦砲射撃が止む。

 

「砲撃中止。上陸部隊に合図を送れ」

 

 ミドリの指示で発光信号で後方に待機している上陸部隊に合図を送る。

 

 すると強襲揚陸艦の開かれた艦後部より戦車一台を乗せられる特大発が海へと下ろされていく。他の強襲揚陸艦や輸送船より兵士達が乗り込んだ大発も出発し、上陸地点の砂浜を目指す。

 

 波に揺られながら前進する上陸部隊は、やがて砂浜に辿り着いて上陸用舟艇が乗り上げる。

 

 最初に戦車を乗せた特大発のランプが開き、74式戦車改が特大発から降りて砂浜に上陸する。他の特大発でも74式戦車改と61式戦車改が次々と砂浜に上陸する。

 

 トーチカは徹底した砲撃で破壊しつくされたのか、反撃は無い。

 

「さぁ、行くぞ! 同志諸君!!」

 

 74式戦車改のキューポラより、上半身を出している女性が騒音に負けない大声で周りに告げる。

 

 白いショートヘアーに帽子を被った女性こと、北連のKAN-SEN『キーロフ』である。彼女は『シャルンホルスト』と『グナイゼナウ』と共に戦車隊を率いているKAN-SENである。

 

 戦車が揚陸され、続いて大発のランプが下ろされて小銃や機関銃を手にする歩兵達が次々と降りて砂浜に上陸し、戦車の後に付いて行く。

 

 上陸部隊は警戒しつつ破壊されたトーチカの横を通り過ぎていき、市街地を目指す。

 

『こちらトンビ1。皇国の部隊が市街地にて展開中。警戒されたし、送れ』

 

 と、上空を飛行しているカ号観測機から各車両に報告が送られてくる。

 

「報告感謝する。敵に動きがあれば逐一報告せよ、送れ」

『トンビ1了解。各機と連携して索敵を行う。終わり』

 

 『キーロフ』が喉元に付けている咽喉マイクを手にしてカ号観測機に感謝の言葉と指示を送ると、空母から発艦した艦載機が上陸部隊の上空を通り過ぎるのを確認し、彼女は砲塔内に入ってキューポラハッチを閉める。

 

 市街地の入り口に戦車が差しかかろうとすると、74式戦車改の近くに砲丸が着弾して砂を舞い上げる。

 

 『キーロフ』はすぐにキューポラの覗き窓を確認すると、前方には魔導砲を並べて戦車隊に対して砲撃を行っている皇国兵の姿がある。

 

 直後に魔導砲から砲丸が74式戦車改の砲塔に着弾して爆発を起こす。

 

 皇国兵は歓声を上げているが、直後に煙の中から一部の爆発反応装甲を失ったほぼ無傷の74式戦車改が出て来て驚愕の表情を浮かべる。

 

「各車停止! 弾種榴弾! 撃て!!」

 

 『キーロフ』が指示を出した直後に、74式戦車改が停車し、砲塔が旋回して魔導砲に狙いを定め、105mm砲が一斉に轟音と共に火を噴く。放たれた榴弾は狂い無く魔導砲群に着弾し、爆発と共に魔導砲と皇国兵を吹き飛ばす。

 

「命中! 続けて撃て!!」

 

 着弾を確認した後、続けて指示を出して74式戦車改各車が砲撃を行い、展開している魔導砲と皇国兵を吹き飛ばしていく。

 

 展開している魔導砲と皇国兵を排除したのをカ号観測機が確認し、その報告を受けた上陸部隊は前進を再開する。

 

 

 


 

 

 

 ここで時系列は遡り、四日前のこと。

 

 

 所変わって、アルタラス島にある、ムーの空港。

 

 

 空港はロデニウス連邦共和国の協力もあって、その規模は大きく拡大しており、滑走路の脇には多くの航空機が駐機している。

 

 

「それにしても、凄いもんだよな」

「あぁ。全くだ」

 

 ムーの空港職員達が管制塔で仕事をしながら話すその視線の先には、滑走路脇に駐機されている深山改と連山改の爆撃機の姿があった。

 

 ここ最近ロデニウス連邦共和国より多くの爆撃機がこのアルタラス王国にあるムーの空港にやってきて、集結している。

 

「これだけの数の爆撃機を揃えるってことは、やはりパーパルディア皇国への攻撃に使うんだろうな」

「それ以外にここに集める理由は無いしな」

「この光景を見ると、逆に皇国が可哀そうに見えてくるな」

「同感だな」

 

 職員達は会話を交わしつつ、深山改と連山改を見る。

 

 これだけの爆撃機がパーパルディア皇国の皇都エストシラントに大量の爆弾を落とす光景を想像して、職員達は皇国に同情の念を抱く。

 

「しかし、こうして見ると、我が国のラ・カオスがちっぽけに見えてくるな。大きさはラ・カオスも負けてないんだが」

「あぁ。そういえばあのシンザンとレンザンって爆撃機を本国はラ・カオスの後継機と研究用に購入するらしいな」

「そうなのか。しかし本国の技術者達は快く思わないんだろうな」

「かもしれんが、グラ・バルカス帝国の脅威があるんだ。プライドを捨ててでも上の連中は必死なんだよ」

 

 と、片方の職員がそう答える。

 

 ムーはロデニウス連邦共和国と国交を結んでからは、多くの技術を輸入して近代化を進めている。もちろんムー統合軍でも近代化を進めている。

 

 空の方では航空機の輸入を積極的に行っており、戦闘機もそうだが、爆撃機も深山改と連山改を輸入することが決定している。特に深山改はライセンス生産を行うことになって、正式採用する予定である。しかし連山改はライセンス生産が許可されず、研究目的で数機が輸入されることになった。

 

 すると通信機の前に座っている職員が首に掛けているヘッドフォンより音声がして慌てて耳に掛ける。

 

「―――分かりました。おい、予定通りロデニウスから航空機が来たぞ」

「もうそんな時間か」

 

 通信を聞き、職員達が各所に連絡を入れて航空機の受け入れ準備をさせる。

 

 今日もロデニウス連邦共和国から航空機がやって来る予定が入っていて、その一団がそろそろ到着するようである。

 

 

「おっ、来たな」

 

 と、職員の一人が双眼鏡を手にして覗き込む。

 

 双眼鏡で覗き込む先には、飛行場に向かってくる二つの機影が確認できる。

 

「また爆撃機か。ロデニウスは容赦ないな」

「だが、今回は二機だけなんだな。他は戦闘機らしい」

「あぁ。以前までなら倍以上の数で来ていたが……」

 

 双眼鏡を覗き込みながら職員は他の職員と話していると、「ん?」と声を漏らす。

 

「どうした?」

「いや、何か違和感があるんだ」

「違和感?」

「何て言うか……んん?」

 

 双眼鏡を覗き込みながら首を傾げる職員は、遠くに見える機影を見つめる。

 

 他の職員も気になるのか、別の双眼鏡を手にして覗き込む。

 

「……なぁ、あの爆撃機……なんか大きくないか?」

「ロデニウスの爆撃機はどれも大きいだろう」

「それはそうだが、あの二機は更に大きくないか?」

「それは……」

 

 しばらくしてロデニウスの爆撃機が空港付近まで接近し、その全体像が現われる。

 

「……なぁ、俺の目が可笑しくなったんだろうか? あの爆撃機、とんでもない大きさなんだが」

「いや、紛れも無い現実だ」

 

 驚愕のあまり無表情になっている職員達は、滑走路に着陸する爆撃機を見つめている。それは管制塔にいる職員以外の、滑走路で作業していた作業員も呆然と立ち尽くしている。

 

 その爆撃機は……あまりにも大きかった。

 

 滑走路の脇に駐機している深山改と連山改が小さく見えるぐらいに大きな機体であり、両翼には三基ずつ計六基の発動機を持ち、発動機には二重反転プロペラを持っている。

 

 トラック泊地にて大山敏郎と妖精達が連山改の後継機として開発を進めていた超重爆撃機……その名を『雷神』と言う。

 

 完成した雷神二機はとある作戦を行うにあたり、トラック泊地よりロデニウス大陸にある飛行場を介さずに直接アルタラス島にあるムーの空港へとやって来ている。深山改と連山改がロデニウス大陸にある飛行場を経由しないといけないのを見れば、雷神の航続距離の長さがうかがえる。

 

 完成したばかりの新兵器を他国に見られて良いのか、と思われるだろうが、敢えて見せつける為にムーの空港へ向かわせたのだ。

 抑止力とは見せつけてこそ真価を発揮するのだから。

 

 ともあれ、雷神はムーの人間には大きな衝撃であるのは違いなく、彼らは自らの仕事を忘れて雷神を呆然と立ち尽くして見つめていた。

 

 雷神二機は滑走路脇へと移動し、続いて疾風(しっぷう)改を横に二つ繋げたような姿をしている双子機『天雷』が滑走路へと着陸する。

 

 雷神と天雷の二機種はロデニウス連邦共和国側の整備士達によって整備点検と並行して燃料と弾薬の補給を行い、次の作戦に向けて準備する。

 

 

 

 




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