異世界に召喚されしはイレギュラーが率いる異界の艦隊 作:日本武尊
人間無理をしないで出来る範囲でやれる方が一番だな、と思います。
中央歴1640年 3月8日 パールネウス
その日、パーパルディア皇国の聖都パールネウスは、準備を整えてアルーニから移動したロデニウス連邦共和国軍と皇国の属領から独立した73ヵ国連合と、ついでのリーム王国との連合軍より攻撃を受けた。
上陸部隊はデュロに上陸し、そこから移動して73ヵ国連合と合流。更に本土より飛んできた連邦共和国空軍の航空隊を迎え入れ、体勢を整えた連合軍は進軍を開始し、その先槍として連邦共和国空軍の航空隊が攻撃を開始した。
航空隊を迎え入れる際に、占領したアルーニの皇軍防衛基地の滑走路を工兵隊によって修復すると共に拡張している。
深山改と連山改といった爆撃機によるパールネウス防衛基地へ爆撃を行い、戦爆機として出撃した三式戦闘機 飛燕による城壁への攻撃が行われ、皇軍に大きな被害を与えた。
しかしこれまでやられていたは皇軍もさすがに馬鹿ではなく、馬鹿正直に迎撃には出ず、堅牢な城壁内や地下壕などに兵士達とワイバーンオーバーロードは避難し、連合軍の攻撃を耐え忍んでいた。
パールネウス防衛基地の司令はすぐにエストシラントや残っている基地へ魔信を用いて連絡を入れさせ、可能ならば増援を要請するが、雑音がするだけどその連絡が連絡先へ届くことは無かった。
この時ロデニウス側は魔導通信機を用いた通信を妨害する装置を起動させて、通信妨害を行っている。この通信妨害装置は、魔導通信機の構造を把握し、魔導士協力の下開発した。質の違いはあれど、構造自体は同じであったので、開発は容易だったとか。
これにより、パーパルディア皇国は円滑に連絡が行うことが出来ず、エストシラントがパールネウスの攻撃の知らせを受けたのは、翌日の夕方頃に到着したパールネウスからやって来た伝令からである。
中央歴1640年 3月9日 パールネウス
ロデニウス連邦共和国軍上陸部隊と73ヵ国連合と、ついでのリーム王国との連合軍は、パールネウスより離れた場所を陣取ってパールネウスの様子を窺っている。
「ロデニウスによるパールネウスへの攻撃は成功に終わりましたな」
「えぇ。これで皇国は空からの攻撃を行えなくなったはずです」
陣地に建てた大きなテントにて、73ヵ国連合の指揮官のミーゴとスカー、ロデニウス連邦共和国軍の上陸部隊の司令官『三笠』とその副官、リーム王国の指揮官カルマが集まって話し合いをしている。
「『三笠』殿。ロデニウスはここからどう動きますかな?」
「我々は現在砲兵隊による攻撃準備を行っています。準備を終え次第砲兵隊による砲撃で皇軍に打撃を与えます。その後地上部隊をパールネウスへと突入させて、基地を制圧します」
「つまり、それまで我々はここで待つと?」
「そうなりますね。今回は相手に地の利がありますので、無策で突っ込んでも効果的な攻撃は行えませんし、かえってこちらに被害が出かねません」
『三笠』がそう説明し、その説明を各指揮官は黙って聞く。
パールネウスは共和国時代に他国からの侵攻に備えるべく堅牢な城壁に周囲を囲った要塞であり、配備されている戦力は海軍戦力が無い代わりに陸軍戦力が他よりも倍近く多い。
その上パーパルディア皇国が聖都と定めているとあって、兵士と武器兵器の質は他の防衛基地と比べると非常に高い。
さすがに技術力はロデニウス側が大きく勝っているとは言えど、防衛体制が整っている状態の敵に無闇に攻撃を行っても、与えられる損害は少なく、逆にこちらが被害を被る可能性が高い。
「もちろん、我々はただ指を咥えて待っているだけではなく、航空機による攻撃を行って敵の戦力と戦意を削ぎつつ偵察を―――」
「その役目! 我がリーム王国にお任せください!」
と、『三笠』の説明に被せてカルマが声を上げ、この場にいる全員が彼を見る。
「我がリーム王国が誇る竜騎士団と精強な王国陸軍の兵士達と共に、多大な被害をパールネウスに与えましょう!!」
『……』
自信満々に語るカルマの姿をミーゴとスカーはもちろん、『三笠』と副官が呆れた視線を向けるも、当の本人は気付いている様子はない。
「カルマ殿。それは構いませんが、無暗に攻めるべきではなく、慎重に行動するべきです。攻撃は先の空襲の詳細な戦果確認を終えてからでも―――」
「いいえ! ここは一気に攻めるべきです! 皇軍が先の攻撃から体勢を立て直していない今なら、より効果があります!」
「しかし―――」
「何より! もう奴らには制空権はありません!! 圧倒的有利な我々に恐れるものは無いのですよ!!」
「……」
『三笠』の副官の説明も被せるように強引に話を進めようとするカルマに、『三笠』は眉間に皺が寄って苛立ちを見せる。
なぜここまでカルマがパールネウスへの攻撃を押し進めようとするのか。
それは先のアルーニの戦いで赤っ恥を掻いた上にロクな戦果を挙げられなかったことにあるだろう。その辺りの汚名返上に躍起になっているものと思われる。
尤も、前者はただの個人的な理由なのだが。
リーム王国としてはここで戦果を挙げて、ロデニウスに及ばなくても連合軍内において二番目の地位を得ようとしているのだ。更にあわよくばパールネウスの城壁内側へ侵攻し、そこで皇国が培ってきた技術の略奪を行うつもりなのだろう。それが今回の戦争へ参戦した目的である。
それに、リーム王国本国より多くの増援が送られており、陸上部隊の戦力はもちろん、先の戦闘ではワイバーンが風竜に怯えて逃げ出すというハプニングのお陰で竜騎士団は無傷で残っており、本国より送られた増援を含めてリーム王国のワイバーンは180騎が揃っている。
この辺りもカルマが強気でいる理由だろう。
ちなみにロデニウス連邦共和国 トラック泊地所属のKAN-SEN『龍驤』率いる風竜隊は、リーム王国のワイバーンを怯えさせないように陣地から遠く離れた所に移動して待機してもらっている。
「……良いでしょう。次の攻撃はリーム王国に先陣をお願いします」
「お任せを! 期待以上の戦果をお見せしましょう! 皆さまは続け様の攻撃に備えるように、待機しているようにお願い申し上げます! それまでは手出し無用です!」
『三笠』は渋々と言った様子で攻撃を了承し、カルマは気を良くして一礼し、テントを後にする。隠す気の無い手柄の独占宣言である。
『……』
カルマの身勝手な行動に誰もが苛立ちを募らせ、テント内の空気は少し重くなっている。
「……後方のアルーニに居る航空隊には、いつでも出撃出来るように準備しろと伝えろ」
「分かりました」
小さくため息を付いて『三笠』は指示を出し、指示を受けて副官が一礼し、彼女の元を後にしてテントを出る。
「『三笠』殿。リーム王国は手出し無用と言っていましたが……」
「別に手出しはしません。万が一に備えて準備をしておくだけです」
「そうですか」
ミーゴは彼女の言葉を聞いて頷く。
中央歴1640年 3月12日 パールネウス
夜中の内に攻撃準備を終えたリーム王国は、陽が昇ると共に攻撃を開始した。
最初にリーム王国は、アルーニの戦いにて皇軍から鹵獲した魔導砲を用いて砲撃を行った。魔導砲の扱いは捕虜となった皇軍兵士から聞き出しており、ロデニウス連邦共和国陸軍の砲兵からある程度のアドバイスを受けて運用している。
無傷の物から比較的損傷が少ない個体を元に使える部品を使って修理し、可能な限り数を揃えたが、それでも揃った数は多くない。しかし数は少ないが、魔導砲による攻撃は皇国側の動きを阻害するのに十分の威力を発揮していた。
「うーん、いいですねぇ。この音は」
後方の陣地にて、カルマは魔導砲の砲撃音を聞き浸って酔い痴れていた。
(これからはこの魔導砲の砲撃音を聞けると思うと、心が躍りますねぇ)
彼は内心ウキウキとした様子で呟く。
カルマは鹵獲した魔導砲を含むパーパルディア皇国軍の武器兵器の一部を本国へと送っており、本国の技術者達がそれらの構造を調査し、コピー生産を行うつもりでいる。少なくとも準文明国であるリーム王国からすれば、パーパルディア皇国製の武器兵器のコピーはそう難しい事ではない。
だからこそ、将来同じ砲声を別の戦場でも聞けるという期待感があったのだ。
鹵獲した魔導砲による砲撃は順調に行われ、パールネウスの城壁に砲弾が直撃して次々と爆発を起こしている。皇軍側は先日同様攻撃を耐え忍んでいるので、反撃は無い。
「これならば我々だけでも事足りますねぇ。同じ力を持っている以上、空からの援護のない皇国など、恐れることはありませんな」
カルマは気を良くした様子で攻撃を受けるパールネウスの城壁を見ながら呟く。
空の方ではワイバーンの差は大きいが、そのワイバーンロードも皇軍はもう飛ばすことは出来ない。銃の性能は僅かに下の型落ちから同等の性能、性能が高い九九式短小銃があり、魔導砲の性能は同等だ。
向こうには地の利があると言っても、その戦力差は決して大きくない。
だからこそカルマはリーム王国の勝利を確信しているのだ。
やがて砲撃を終え、皇軍からの反撃が無いのを確認してカルマは地上部隊を前進させ、陣地から飛び立ったリーム王国の竜騎士団のワイバーンが彼らの上を飛んでいく。
「さぁ、行くのです!! 今こそパーパルディア皇国に受けた屈辱を晴らす時です!!」
カルマは大きな声で指示を出し、各所で煙を上げているパールネウスの城壁を見つめる。
(ここで皇国を滅ぼし、このフィルアデス大陸を制するのは、ロデニウスではない!! 我がリーム王国だ!!)
野望を燃え上がらせ、この先来るであろう未来を彼は夢想する。
ギュオォォォォォォォォン!!!
すると空からリーム王国のワイバーンではない、別の生物の咆哮が響き渡る。その咆哮を聞き、竜騎士達とワイバーン、地上の兵士達は戸惑い、動きが止まる。
「こ、これは……!?」
カルマは顔を青ざめて、身体を震わせる。
「まさか、そんな……そんなことが!?」
この場ではありえないその声を持ち主が脳裏に過り、彼は空を見上げる。
竜騎士達も見上げると、太陽を背にこちらに向かって降下してくる影があった。
それはこの空に居るはずの無い、パーパルディア皇国のワイバーンオーバーロードであった。
「馬鹿な!? なぜ、なぜ皇国のワイバーンロードが!?」
現れるはずの無い皇国の空の戦力に、カルマはただ驚愕するしかなかった。
基地を爆撃し、滑走路を破壊したはずなのに、なぜ皇軍はワイバーンオーバーロードを飛ばすことが出来たのか?
皇軍の多くの人間は傲慢な性格故に相手を知ろうとはしないが、中には慎重な性格をしている軍人も居る。パールネウスの防衛基地司令はその類の人間であり、これまでにロデニウスに関する多くの情報が入っていたので、対策を練っていたのだ。
過去のロデニウス連邦共和国による攻撃の中で、防衛基地の滑走路が優先的に破壊されているのが確認されていた。基地司令は仮にパールネウスを攻撃する時も防衛基地の滑走路を真っ先に攻撃すると予想していた。先の空襲時も滑走路を優先的に攻撃していた。
そこで基地司令は一計を案じた。
滑走路は先の空襲で破壊されたのを修復し、その修復と並行して新しく滑走路を作ってそこに荷物や草木を用いて偽装していたのだ。仮に基地の滑走路が破壊されたとしても、少なくとも偽装した滑走路への被害は軽微に留まらせる事が出来る。
現に先の空襲で正規の滑走路は破壊されたが、偽装していた滑走路への被害は皆無であった。
更に市街地の街道にも一手間加えており、ワイバーンオーバーロードの滑走距離分の石畳を剥がして石畳と同じ色の細かい砂利を敷き詰め、それを臨時的な滑走路に仕上げたのだ。
ワイバーンオーバーロードは共和国時代に作られていた地下壕に避難させていたので、空襲の被害を免れていた。
夜中に皇軍は偽装を解除しつつ被害個所の修復を行って、街道に作った臨時滑走路の状態を確認して、ワイバーンオーバーロードを飛ばせるようにしたのだ。
そして連合軍に動きを悟られないように、ワイバーンオーバーロードは攻撃を受けている反対側に向かって飛び立ち、大きく迂回しながら高度を上げ、リーム王国の竜騎士団に奇襲を仕掛けたのである。
もしも上空からの偵察を徹底して行っていれば、これら一連の動きに気付くことが出来たかもしれなかった。そうすればロデニウス連邦共和国による再度空襲を行って、ワイバーンオーバーロードの出撃を阻止できたかもしれなかった。
だが、リーム王国が攻撃を強行したことで、皇国のワイバーンオーバーロードの出撃を許してしまった。
そこからのリーム王国は一方的な殺戮に見舞われた。
竜騎士団は皇軍のワイバーンオーバーロードの奇襲を受けて一気に40騎が撃ち落とされた。
パーパルディア皇国のワイバーンオーバーロードは僅か42騎で、リーム王国は40騎墜とされたが、それでも140騎は残っている。
数だけならばパーパルディア皇国側が圧倒的に不利であったが、その質は圧倒的に皇国側が有利であった。
パーパルディア皇国が聖都と認めたパールネウスの防衛を任された精鋭たちが最新のワイバーンオーバーロードを操っているのだ。格下のワイバーンロードよりも更に下のワイバーンで、準文明国のリーム王国の竜騎士の練度では、その戦力差は大きく開いていた。
ワイバーンの速度差に加え竜騎士の練度も相まって、リーム王国の竜騎士団は次々と撃ち落とされていった。リーム王国の竜騎士達も負けじと果敢に挑んでいたが、返り討ちに遭って撃ち落とされている。
「ぬぅ!! し、しかし、まだ地上部隊が残っている!! 竜騎士団が持ちこたえているうちに!!」
空が混乱に陥っている中、カルマは何とか気持ちを切り替えて地上部隊の進撃を指示し、地上部隊は戸惑いながらも前進を再開する。
しかしその直後、地上部隊のあちこちで爆発が起こる。
「なっ!?」
カルマは突然の爆発に驚愕するが、その原因をすぐに見つける。
彼の視線の先には、パールネウスの城壁から次々と白煙が上がり、その直後には地上部隊のあちこちで爆発が起きている。
「そんな!? あれだけの砲撃にもあの城壁は耐えたというのか!?」
信じられないというような表情を浮かべて驚愕するカルマを他所に、皇軍側の砲撃は地上軍のあちこちで爆発して兵士たちを吹き飛ばし、更にリーム王国の魔導砲を破壊していく。
パールネウス周囲を囲う城壁は硬い岩盤から切り出した石材を複雑に組み合わせ、更に強化魔法で石材の強度を上げているので、かなり堅牢な作りをしている。少なくとも自軍で用いている魔導砲の直撃に耐えられる強さを持っている。
その為、リーム王国側の砲撃は皇軍に被害を齎さなかったのだ。
ワイバーンオーバーロードの攻撃に合わせて城壁内で待機していた砲兵隊は、一斉に魔導砲を出して反撃に出たのだ。
その上、パールネウスの防衛を担っているとあって、砲兵隊の練度は高く、魔導砲は他と違って最新の物が配備されており、砲丸の威力から速度、砲撃精度はリーム王国側の魔導砲よりも高い。その為、皇軍の砲兵隊は威力があって、より正確な砲撃で、リーム王国を攻撃しているのだ。
「こんな、こんなはずでは……」
轟音が響き渡り、カルマは空を見上げて、次々と落とされる自軍のワイバーンと空を掛ける皇軍のワイバーンオーバーロードを見つめる。
もはや風前の灯火であって、あと一歩攻めれば勝てると、そう思っていた。
援軍も来て、武装も強化され、竜騎士団は無傷で残って数も増強された。
必ず勝てると思っていた、それだけに彼の衝撃は大きかった。
「カルマ様!!」
「っ!」
と、呆然としていたカルマは部下に声を掛けられてハッとすると、彼の視界にこちらに向かってくるワイバーンオーバーロード姿が映る。
「に、逃げ―――」
一瞬で悟った彼は逃げようとするが、その前にワイバーンオーバーロードは竜騎士の指示で口を大きく開け、導力火炎弾を放つ。
「ぎゃぁぁぁぁ!!!」
「熱い! 熱い!!」
「助けてくれぇっ!!」
導力火炎弾が地面に着弾して火が辺り一面に広がり、陣にいたリーム王国軍は被害を被り、多くの者が火達磨になってもがき苦しみながら地面を転がっている。
「あ"あ"あ"あ"あ"ぁぁぁぁっ!!」
カルマも例外ではなく、火が付いたマントを剥いで地面を転がっている。すぐさま無事だった兵士達が布を叩きつけて火を消そうとしていた。
空からの奇襲を受け、城壁からまさかの反撃を受け、想定外な事態の連続にリーム王国は阿鼻叫喚の状況となり、もはや戦うどころではなかった。
それに追い打ちをかけるように皇軍は更に攻撃を仕掛け、リーム王国軍の殲滅に入ろうとする。
しかしリーム王国にとって幸運だったのは……連合軍が「こんなこともあろうかと」と備えてくれたことだろう。
突然地上部隊に攻撃を仕掛けようとした数騎のワイバーンオーバーロードが、血飛沫を上げて墜落する。
何事かと皇軍の竜騎士は周囲を見渡すが、その直後にまたワイバーンオーバーロードが血飛沫を上げて墜とされる。
その直後に彼らの上を甲高い音と共に何かが通り過ぎ、誰もが見上げる。
そこにはワイバーンとは異なる飛行機械こと三式戦闘機 飛燕の姿があった。
動きが何も無いパールネウスに違和感を覚え、リーム王国が何かしらやらかすと考えていた『三笠』は、後方のアルーニの飛行場に待機している航空隊にいつでも出撃できるように指示を出していた。リーム王国が攻撃を開始したと共に三式戦闘機 飛燕で構成された航空隊を出撃させ、高高度にて待機させていた。
上空高くにて哨戒している偵察機より接近するワイバーンオーバーロードの隊列を発見し、報告を受けた『三笠』はすぐに航空隊に攻撃指示を出し、リーム王国の救援を行わせた。
「これで三騎と……」
三式戦闘機 飛燕のコクピット内にて、マールパティマは呟くように撃破数を数える。
反撃しようと追いかけるワイバーンオーバーロードを速度と馬力に物を言わせて上昇し、追い付けなくなって降下した所を彼は機体を滑らせるように前後を反転させ、逃げようとするワイバーンオーバーロードに照準を定め、零式機銃の発射ボタンを押して弾が放たれ、ワイバーンオーバーロードを竜騎士ごと粉砕する。
他の機もワイバーンオーバーロードを次々と撃ち落としている。
(『三笠』司令の予想通りとなったか)
彼は下の方を見て多大な被害を被っているリーム王国を見て鼻を鳴らす。
『お見事です! マールパティマ殿!』
と、彼の三式戦闘機 飛燕の近くにターナーケインの機体が近づいてきて通信が入る。
「大したもんじゃないさ。教官たちのしごきに比べればな」
『さ、さすがにそれと比べるのは……』
ターナーケインは通信越しに乾いた笑い声を漏らす。マールパティマの言葉に訓練の時の光景が脳裏に過ったようである。
『あっ、皇軍のワイバーンロードが!』
と、ターナーケインは引き揚げていく皇軍のワイバーンオーバーロードを見つめる。
皇軍の竜騎士達は冷静に判断してか、ロデニウス軍の飛行機械とは無理に戦おうとはせず、撤退している。
「良い引き際だな」
マールパティマはそう呟くと地上を見る。
リーム王国は今の内にと連合軍の陣地へと撤退し始めていた。
『リーム王国は撤退し始めましたね』
「みたいだな。さすがにこの状況じゃ戦う気は起きないだろう」
彼はそう言ってため息の様に大きく息を吐き、無線機のプレストークボタンを押す。
「これよりリーム王国の撤退を支援する。王国軍が撤退を完了するまで可能な限りこの空域に留まるぞ」
『了解!』と彼が率いる隊のパイロット達から返答が帰って来て、マールパティマは高度を下げてパールネウスの城壁に対して機銃掃射を開始した。
城壁に被害は出ないが、零式機銃から放たれた弾丸は城壁のスリットに入り込んで魔導砲を破損させたり、弾丸の破片で砲兵達を殺傷させる。
皇軍は慌てて魔導砲を城壁内へと格納し、スリットを閉じる。
砲撃が無くなったことでリーム王国は手早く撤退を開始し、マールパティマ率いる航空隊は機銃掃射で皇軍を威嚇して動きを封じる。
そしてリーム王国が撤退を完了させたのを確認し、航空隊も引き揚げていった。
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