ちょいとめだかボックス要素を出す為に『チカラ』の評価を『スキル』に変更。物語に大した影響はないです。
「受験生のリスナー!今日は俺のライブによーこそー!!エヴィバディセイ!ヘイ!!」
「「「「「……………………………………………」」」」」
馬鹿みたいに大きな声を上げて大勢の受験生に話しかけるチャラそうな男。
何も知らなければ彼のことは不良と思うだろうが、彼はこれでも教師でありプロヒーローだ。
ヒーローとは何か。
それを語るにはこの世界がどんな世界なのか語る必要がある。
ある日を境に、この世界の住人の八割は"個性"と呼ばれる超常の力を使える特異体質となった。
ある者は手のひらから爆発を起こすことが出来、ある者は体から無機物を生み出し、またある者は触れるだけでそれの時間を巻き戻したり分解と修復ができたりと、そんな力を持った人間に溢れた世界となった。
もちろん体を硬くするとか金属に変えるとか物を引き寄せるといった個性も存在するが、愚かな人間がそんな力を生まれた時から持っていたらどうなるだろうか。
簡単だ。悪用する。
個性を悪用する者達は世間から
しかし悪用するものが現れるのなら、同じく個性でそれを止めようとする者が現れるのも必然。
さて、話を戻そう。
受験生の前で話をしているプロヒーローはボイスヒーロープレゼント・マイク。受験生達が受ける高校ーー雄英の教員だ。
なおその元気な声に反応する者は誰一人としていない。テンプレである。
そこから先は特に話すことのない。
どれを倒したら何点なのか。そんな話だ。
そんな中1人の眼鏡をかけた少年がプレゼント・マイクに向けて質問をし始めた。
「プリントには四種の敵が記載されています!誤載であれば、日本最高峰たる雄英に於いて恥ずべき痴態!我々受験者は、規範となるヒーローのご指導を求め!この場に座しているのです!ついでにそこの縮れ毛の君!先程からボソボソと…気が散る!物見遊山のつもりなら即刻、ここから去り給え!」
実に気になる質問である。何せ四体いる仮想敵の内三体しか紹介されなかったのだから。
ついでに注意された緑髪少年はもちろん謝罪した。彼に悪気があったわけではない。ただの癖だ。
ちなみに眼鏡の少年に対する返答は、四体目はマ○オでいうところのドッスンで、倒しても0ポイントとのことだ。
さてこれで終わりか、とプレゼント・マイクは思ったがそうはならなかった。もう1人質問を行った受験生がいた。
「すみません。個性は何処まで使っていいんですか?」
質問をしたのは中学3年生にしては少々身長が小さめの少女だ。
髪は黒く腰のあたりまで伸びており、眼は少し鋭いが優しさも同居しておりその外見にマッチしている。そのせいか美しさと可愛らしさがうまく混ざり合った感じを思わせる。
しかし受験生たちの注目を集めたのはそこではない。彼女の服装だ。
本来受験の際には制服を着ていくものであり、実際この受験会場にいる者の9割は制服だ。残りは学校が私服制で制服代わりの服を着ていたりするが、そうであっても彼女の服装はこの場に置いて異質だった。
その服装は真っ黒なジャージ。朝走りに行く時の服装に近かった。
「君!ここは神聖な受験会場だぞ!何だその格好は!」
「すみませんが今は私が試験官に話しかけているので邪魔しないでくれませんか?それと服装に関しては諸事情で制服のような物を用意できなかったので」
「そ、そうか。それはすまなかった」
眼鏡の少年は少女に対して注意をかけたが正論で返されてしまった。
「オーケーオーケー、受験番号6666くん。ナイスなお便りサンキューな!……って言いたいんだけどそれってさっき説明したよね?周りに危害を加えない程度って」
「いえそうではなく……
「……えっとそれはどういう?」
「具体的には試験会場から見て明らかに外にある位置のものを引っ張ってきて仮想敵に当てるみたいな感じですね」
「ンーーー!そういうことな!それに対する返答だが、さっきと同じく意図的に他の受験生に危害を加えないならオーケーだ!ただし!試験会場外に個性を使うとアウトだから気をつけてくれ!」
「……そうですか。ありがとうございます」
少女は納得したようだが、周りはその質問の意図に理解していなかった。
何故そんなことを聞くのだろうかと。
そんな目線を複数当てられるが少女はどこ吹く風だ。
「それでは俺からは以上!最後にリスナーへ我が校の"校訓"をプレゼントしよう!かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った!『真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者』と!!"Plus Ultra更に向こうへ!!"」
その声に多くの受験生の緊張が高まる。
「それでは皆、良い受難を!!」
ここに受験は始まった!
*
場所は移り試験会場。
多くの受験生が緊張する中、先程の質問をした少女ーー
「はいスタート」
だから普通に会話するように発せられた声に即座に反応することが出来た。
周りに多く、というか終以外の全受験者が残される中試験会場の中に入り瞬時に自らの個性で得た力ーー彼女曰くスキルのごく僅か一部を展開した。
そのスキルは周囲の敵対者の位置を全て把握するというもの。
ここらがゲームであったならここからバフがけを行い戦闘を開始するが、ここはゲームではない。戦場だ。
『標的発見、ブッ殺す!』
「ふっ、ブッ殺すですか……」
ーー斬!!
『標的はっ……』
『ぶっこ……』
「その言葉弱く見えますよ……っとそもそも弱い設定でしたね」
現れた複数の仮想敵は見えない鋭利な何かによって切断された。
しかし機械自体が切断されたことに気づかなかったのか切断が数秒は動き続けた。
それを行った終は仮想敵に対して弱い以外の感情は抱いていなかった。
「……にしても流石に弱すぎませんかね?いくら他の受験生の方々が一般市民で個性を使った戦闘に慣れてはないとは言え流石にこれは……」
なお仮想敵は金属製であるため普通に硬い。
「おいおいおい!流石にこれはやりすぎだろ!」
「もうダメだ、おしまいだぁ!」
「お爺ちゃんお婆ちゃん、今からそっちに行くね」
そんなことを思いながら時間は経過し、試験会場にはドッスンーー0ポイントの巨大仮想敵が現れた。
それを見たある者はツッコミを入れ、ある者は絶望し、ある者は天にいる祖父母に会いに行く覚悟を決めーー
「アレどれくらい硬いんでしょうか?」
ただ強度に興味を抱いた。
何せ雄英の教員がドッスンと評する仮想敵である。それならもちろん硬い筈だ。それこそスターを使わないでもしない限り。
それを確かめるために周りは逃げ惑う中、終は0ポイント仮想敵に向けて駆け出した。
その間に仮想敵の行動を制限するためのスキルを幾つか使用する。
まず仮想敵の周囲のセメントを動かし足を固定させ、さらにそのセメントすらも固定させる。そこから上半身が倒れないように地面に手を触れ、一度分解した上で再構築し仮想敵の側面を支える柱を作り出す。
拘束に関してはこれで終了だ。
もちろん最も効率の良い拘束の仕方はあった。例えばセメントを操るスキルで地面を分解・再構築し柱を建てる過程を行うとか、セメントを固定した際に使った固定のスキルを仮想敵そのものに使うとか、分解・再構築を仮想敵に使い動けないようにするとか。
何なら拘束せずとも倒す方法は幾らでもある。全力でスキルを使い合わせて殴るとか、内部の機械を暴走させて爆発させるとか、太陽に飛ばすとか。
しかしそれらをしなかったのは
(そろそろですかね)
終が空を見上げると小さめだが黒い塊が落ちてくるのが分かる。
先に言ってしまうが、これが事前準備の正体である。
(ん?これは絶対に外れるコースですね。ええっとこれをこうしてこっちはこうしてーー)
その事前準備は威力の保証は特大で、終自身トップヒーローであるオールマイトですら全力で対応しなければいけない威力であると自負している。
しかし自らの周辺に落ちてくるとはいえ誤差が激しく修正が必要である。
故に終は誘導系と演算系のスキルを使い事前準備が仮想敵に直撃するように修正した。
(うん、周りに人なし。なら問題無しですね)
威力が高く自身も含めた無差別攻撃であるため周りに人がいると失格になってしまうと考えがあったが、それは杞憂に終わった。
無論居たとしても説得なりスキルで遠くにワープさせるなどして対処するので杞憂ですらないのだが。
(カウント30秒前、29、28、27ーー)
「おいあんた!そこ危ねえぞ!早く逃げろ!!」
「バカ!ほっとけよ!」
「あいつ死ぬ気か!?」
仮想敵の動きが止まり近づいた受験生も居たが空から落ちてくる終の事前準備に気付き逃げていった。
『ヘイ!そこのリスナー!!危険だから早く逃げろ!!』
何処から見ているのか分からないがプレゼント・マイクも逃げろと言っているが終は不動だ。
先程この事前準備は終自身を含めた無差別攻撃と言ったが終がそれから逃げる術を持っているはずがない。
例えば黒い霧を展開しワープする。例えば再生系のスキルを使い全裸にはなるが肉体を再生させる。例えばブラックホールを展開し吸い込むなどなどだ。
「カウント10秒前、9、8、7、6、5、4、3、2、1ーー」
空から落ちる事前準備によって仮想敵とその周辺は影に染まる。
ーーズドォォォォォーーーーン!!
「ーー0。お疲れ様でした」
『終〜了〜!!って言うことでおい大丈夫か……って何で隕石の直撃を間近で受けて無傷なんだよ!?スゲーな!オイ!!』
終の事前準備、それは
複数のチカラを同時に使い宇宙にある隕石を引き寄せ敵に落とす。そんな大質量かつ広範囲な事前準備である。
それが直撃した仮想敵は跡形もなく消え去り、ごくごく僅かな破片だけが残っていた。
また試験会場にも被害が出ており、仮想敵の周りのビル群どころかその全てはクレーターとなっていた。
そんな中、終は無傷どころか汚れ一つなく立っていた。
それどころか終の周囲は隕石の衝突した気配もなくクレーターの中柱のように立っていた。
(ふむ、威力は少々過剰ですが申し分無し。しかし無差別ならともかく的に当てるための誘導に演算、さらには私の近くにしか落とさず時間がかかる。これならまだ巨大化して踏み潰したほうが効率がいいですね)
しかしそんなことにも目をくれず終は隕石を攻撃に使えるかどうか考えていたが、どうやら技として失格だったらしい。
*
場所は変わり雄英の会議室。
幾人もの合否が決まり今は終の話をしていた。
「彼女の個性、いったい何なの?」
「仮想敵を何も使わず切断したりセメントを操作したり地面を分解した後柱に変えたり……特に最後の隕石を落とすとか今までそんなこと無かったぞ」
「なんならそれの直撃を間近で受けても無傷だったしな!」
「……隕石を落として倒すなんて合理的じゃない」
「ハハ、確かに試験会場への被害もすごかったしね。なんせセメントスくんが過労死しそうだったもんね」
「あのレベルの修復はもうしたくありませんね」
「ソレニシテモアソコマデ強力ナ個性ナノニ我々ノ耳ニ入ッテコナイトハ、彼女ハイッタイ何者ナンダ?」
「ちょっと待ってください……ありました。黒性終。年齢15歳。住居は雄英近辺のマンションでその前の住居は東京近辺。それより前も何度も転々と引っ越しをしてますね。そして個性は……塗りつぶされています」
「塗りつぶされてる?それはどういうことだ?」
「そのままの意味です」
終のプロフィールを見ていた教員が他の教員に見せる。
そこには終の年齢、身長に体重、現在の住居にそれ以前の住居。そして個性の欄は黒く塗りつぶされていた。
「これはどういう事だい?」
「意図的に何者かの手によって消されたと見るべきかと」
「しかしこれらの書類はテスト前に回収されるはず…」
「では回収からこの場で見るまでの間に塗りつぶされたと?」
「もしくは黒性さん自身が事前にそう仕込んでいた可能性も否定できません」
「……今考えてもそれは無駄な事なのさ!それよりも彼女は合格にすべきだと思うかい?」
「俺は賛成だな!」
「ヴィランポイントは200を軽く超えていますが、街の破壊によりレスキューポイントの大幅なマイナスにより2位。少々不安が残りますが私も賛成です」
その後も賛成の声は続いていった。
「もしもの時は俺がどうにかしましょう」
最後に賛成した体調が悪そうな男ーー相澤消太。またの名を抹消ヒーローイレイザーヘッドはそう宣言した。
「確かにそうだね。もしもの時は君に任せるとしよう。……ところでオールマイト、黒性くんの話になってからずっと黙ってたけど、彼女は知り合いだったりするのかい?」
「いえそういうわけでは。…ただ………」
「ただ?」
「ただ画面越しではありますが、私は彼女に近い存在に会ったことがある気がします」
「そうかい。気になるなら彼女が入学してから聞くといい。それじゃあ黒性さんは合格ということで、次の生徒に移ろうか」
終の個性の話はUSJに予定中