相澤消太という人間にとって黒性終という人間は不気味であった。
教師としては失格なのかもしれないが、人という生き物は"未知"や"正体不明"と言った自分には理解できないモノには恐怖を抱くものである。
もちろん安全と分かったとしても、それが自分に向けられていなかったとはいえ悍ましかった。
外見的にも精神的にも、ましては個性に対してでもない。
しかし恐怖した。
走る直前に彼女の口から機械的に溢れ出す"個性"の名称らしきモノら。特にそれが理解できなかった。
彼女のプロフィールの個性の欄は塗りつぶされていたので確認は出来ていないが、教師たちは彼女の個性を"何らかの手段で個性をコピーし、使用する個性"。あるいは"イメージを現実にする個性"と考えているが相澤は今回の個性把握テストを見てどちらでもないーー強いて言えば前者の方が辛うじて近い、という結論に至った。
何故そのような結論に至ったか……それは経験によるものだ。
多種多様なことが出来る個性を持つ人間なら相澤も幾度か見たことがある。
例えば自身のイメージを現実に短い間だが投影する個性。例えば燃やしたり癒したり出来る炎の個性。例えば自分自身で大小さまざまな雲を作り出しその上に乗って自由に空中を移動する個性などなど、彼の個性柄多種多様な個性は見てきた。
そんな中、終の個性はそれらと一つ違う点があった。
それは協調性のなさだ。
イメージを投影する個性でもその自分の趣味嗜好が現れ易く、そういう類の個性は制限がある。燃やしたり癒やしたりする炎の個性も結局のところ炎という根本は変わっていない。
しかし終が使用したのは、速度を上げる個性に風に関する個性、他には腕を肥大化する個性、何故か3mmだけ浮く個性、黒い霧で遠くにワープさせる個性、霧なしでワープを行う個性、腕を伸ばす個性と協調性がない。
故に他者の個性を使用していると考えた。
だがそうすると大盤振る舞いが過ぎるのだ。
隣のクラスの1-Bには偶然ながら触れた人の個性をコピーする個性を持っている生徒がいる。
しかしその個性はコピーは出来るものの、数や時間に限りがあり、何より同時に使えるのは一つまでという制限が存在する。
ここまで語れば終の個性がいかに異常なのか分かるだろう。
時間制限に関しては不明だが、同時に複数の個性らしきものを大量に使用出来るのだ。そしてその総数は相澤からしたら不明。
これは恐怖しても仕方がないものである。
しかしそれは一瞬だけである。
ヒーローなんて職業をやっていれば敵の醜悪さに恐怖している暇もない。
そして何よりそう言った思考は
「失礼します。相澤先生はいらっしゃいますでしょうか?」
職員室がざわつく。
受験の時から教師の間で良くも悪くも話が上がった生徒であるからだ。
「来たか黒性」
相澤は特に動じずにその生徒ーー黒性終の元へ向かう。彼女は既に情報が足りない受験生ではなく、自身が担当するクラスの1生徒なのだ。特に動じる必要性はない。たとえ僅か一瞬恐怖したとしてもだ。
「それで話というのは?」
「……まずこれを見てほしい」
そう言って手渡したのは終が受験時に提出した個人情報の載った書類である。
「これがどうかしましたか?」
「一応確認だがそこに載っていることに間違いはない、でいいんだな?」
「?……はい」
「じゃあこれについて知ってることがあるなら教えて貰おうか」
同時に指を刺すのは彼女の個性の欄。
そこは見せたくない何かがあったのか真っ黒に塗りつぶされていた。
「……知らないですね」
「そうか。知らないなら知らないでそれでいい。ーーでだ、お前の個性あれは一体なんだ?同時に複数の個性らしきものを発動させる。B組にも似たような個性を持ってる奴がいるらしいが、流石にここまではできないそうだ」
「………………」
「話してくれないとこちらとしては困るのだが……」
「……ああ、すみません。先生の言う生徒がどんな生徒なのか気になって探すのに集中してました。彼ですよね物間寧人。雄英高等学校ヒーロー科1年B組18番で身長は推定170cm。個性はコピーですかね?おそらく分単位でコピーした個性を使えて一桁以下の個性をストックできると言う感じだと思うんですが……当たってますか?」
「おまっ!?どうやって!?」
「特に大したことはしてませんよ。ちょっとスキルの極々極々一部を使った程度です」
驚愕しかなかった。
彼女は恐らくだが個性を使用した。相澤は警戒して敢えて自分の個性を使用していなかったとはいえ僅か10秒ちょっとの間に個性を使われ、似た個性を持つ隣のクラスの生徒という情報だけでその生徒の名前、出席番号、推定身長、個性の名前とその内容の予測を終わらせていた。
情報収集を主に活動するヒーローも存在するが、彼らが聞いたらショック死してもおかしくない速さであった。
実際その手のヒーローでは無いが、近くで聞き耳を立てていたプレゼント・マイクは驚愕によって手に持っていた飲み物を床にこぼしていた。彼は後で怒られるだろう。
そして何より『スキル』という単語。終はそれを個性の別の言い方として使ってるようには
「……スキルって言うのは個性って意味じゃ無いよな?」
「当たり前じゃ無いですか。寧ろどうして個性とスキルが同じと考えたのか私としてはとても気になるところです」
「……話が逸れたな。で、お前の個性はどう言うもんか、話して貰おうか」
「話すと長くなるので、物間さんの個性の上位互換程度の認識で構いません」
「話す気はないと?」
「…………」
「まあ大方の概要はそれだけでも理解できるから、話す気がないと言うならそれでいい。という事で帰っていいぞ」
「分かりました。それでは失礼しました」
そう言って終は去って言った。
「……無駄に時間を使ったな」
そんな彼女を見つめながら相澤はそう呟いた。
*
「わーたーしーがー!!普通にドアから来た!!」
放課後に相澤と話してから一夜明け、雄英生活2日目の午後、1-Aには異様にゴツくむさ苦しく画風が違う男が入ってきた。
頭には髪の毛で出来た黄色い触覚が2本生えており、毎朝わざわざわそこの手入れをしているのかな?と思うくらいだ。ちなみに画風の違う男ーーNo.1ヒーローオールマイトのこれは一切手入れをしていない。
もちろん頭部に髪の毛の触覚が2本生える個性なのかも知れないが、彼の活躍を見る限り、彼の個性は増強系とされておりそんなチャチな個性では断じてない。
なお彼は今年度からここ雄英の教員として働いている。新米教師というわけだ。
「オールマイトだ!すげぇや、本当に先生やっているんだな!」
そんな声を上げるクラスメイトに対応しながらオールマイトは黒板に『BATTLE』という文字を映し出す。
「ヒーロー基礎学! ヒーローの素地を作るため様々な訓練を行う科目だ! 早速だが、今日はコレ!戦闘訓練!!そしてそいつに伴って・・・こちら!入学前に送ってもらった『個性届け』と『要望』に沿ってあつらえたーー戦闘服!!」
教室の壁が迫り出して、戦闘服コスチュームが入ったロッカーが現れる。これにはクラスの大半が声を上げ喜ぶ。中には立ち上がって絶叫する者や何やらイヤラシイ顔をするブドウ頭がいたが終は特に反応すること無く無視をする。
「着替えたら、順次グラウンドβに集まるんだ!」
「「「はーい!!」」」
「……えっと黒性さん?でしたっけ?」
「はい八百万さん。黒性であってますよ」
「その、他の方のコスチュームにこういう事を言うのは失礼に当たると思うのですが……何故スーツなんですか?」
今終はクラスメイトの女子達と更衣室で一人黙々とコスチュームに着替えていたのだが、そんな彼女に露出過多のコスチュームを着た少女ーー八百万百が声をかけた。
どうやら終のコスチュームが他のクラスメイトどころか一般的に知られているヒーローのコスチュームともかけ離れていたので疑問に思ったのだろう。
彼女のコスチュームはスーツなのだ。それも国の役員が着てそうな真っ黒の。
実際スーツをコスチュームとして着ているヒーローはいない事はない。例えばサー・ナイトアイというThe・社会人みたいな外見をしているのにも関わらずユーモアをこよなく大切にする彼なんかが当てはまる。ちなみに彼は一個5Kgする通常サイズのハンコを
追加すると他のクラスメイトのコスチュームはパツパツであったり、ファンキーであったり、そもそも手袋と靴だけだったり。
最後の子は多分ヒーローになったらネットでセーフかアウトかの論争が起きるだろう。
「理由ですか……まぁ一番の理由は街中にいても一目ではヒーローとは分からないことですかね」
「というと?」
「正直な話世間一般にいるヒーローのコスチュームは、ここにヒーローがいまーす!、と言ってるようにしか感じないんですよ」
「それはヒーローですから当然ですよね?」
「そうヒーロー。ではヒーローとはどういう職業か、簡単に言って仕舞えば犯罪者を捕らえる職業です。アイドル活動してる方もいますがそういうのは考えないようにしましょう。そこから発展して、ではどうやって犯罪者を見つけるのか。八百万さんこれの答えは?」
「……ヴィランが悪事を働いているところに向かって倒すですよね。何を当然のことを」
「そう、
八百万と終の話を聞いていた生徒たちはハッとする。
ヴィランの行動に対して基本的にヒーローは受け身になるしかない。そのくらいの事は分かっていたが、口に出さないのは暗黙の了解となっていた。
けれど彼らはそこまでで思考が停止し、
何故ヒーローは受け身を取らざる得ないのか。
答えは簡単だ。
ヴィランはヒーローが近くにいないところで行動を起こした。
ただただ単純な、それこそ違和感を感じれば直ぐにでも思い付くであろうその考えを話を聞いていた生徒たちは理解した。
「なので一目見られても違和感の湧かないであろうスーツ、というわけです」
「なるほどそれでスーツだったんだね」
「てっきり早く大人になりたいのかと」
「……大人になりたい、と言うわけではありませんが、スーツである理由はもう一つあるんですけどね」
「えっ!?どんな!どんな理由なの!」
「……えっと、その、あまり言いたく無いんですが」
「いいじゃん!いいじゃん!話しちゃいなよ!クラスメイトで今は女の子しか居ないんだから!」
(クラスメイトと言ってもまだ2日目では?)
終が密かにそう思ったのは秘密だ。
そして積極的に理由を聞いてこようとするピンクの少女ーー芦戸三奈と終に救いが現れる。
「確かに気になる話ではあるけど、遅れるわよ」
そう言った蛙ぽい少女は更衣室にあった時計を指すと集合時間までゆっくり進んでいると遅刻が確定する時刻であった。
なお雄英は広い為、普通校の場合軽くゲームが出来る程度の余裕がある。
「あ!やっば!急がないと!!梅雨ちゃん教えてくれてありがとう!」
芦戸は梅雨ちゃんと呼ばれた少女に礼を言うと急いでドアの方に向かった。
他の生徒も慣れないコスチュームに着るのに手間取っていて芦戸が出てから少ししたくらいに着替えが終わりグラウンドβに向かった。
「えっと……「蛙吹梅雨よ。梅雨ちゃんと呼んでちょうだい」……梅雨ちゃん、さっきはありがとうございました」
「いえ、授業に遅れたら困るのはみんなだから」
そんな中二人の少女のそんな会話があったとか。
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次回の参考にでもしようかと。
二次創作においての戦闘訓練の轟くんは噛ませ犬かどうか
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興味ないね