少女は短き時に何を視る   作:寿咄

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2話同時投稿。急は待って。

【今回の書かれなかった最初の部分】

「昨日の戦闘訓練お疲れ。Vブイと成績見させてもらった。爆豪、お前もうガキみてえなマネするな、能力あるんだから」

「……わかってる」

「で、緑谷はまた腕ブッ壊して一件落着か。個性の制御、いつまでも『できないから仕方ない』じゃ通さねえぞ」

「……はい」

「それから黒性。今度でいいから『世界のヴィラン辞典』を持ってるやつ全巻貸してくれ。可能であれば初回特典も。今後の授業で使えるかどうか判断したい」

「……そういうのって経費でどうにか出来ないものなんですか?」

「……大人には、大人の事情があるんだ」

「ア、ハイ」


USJ序

 午前中に相澤に『世界のヴィラン辞典』シリーズを授業内容の参考にするため貸して欲しいと頼まれたり、委員長決めの会議で何となく話した回数が一番多い芦戸に入れたりとそんなことをしていた昼休み。

 

「…結局のところさ、黒性の個性ってなんなんだ?」

 

 学食でパンケーキを食べている終と相席をしていたクラスメイトの1人ーー切島は純粋な疑問を口にしてしまった。

 その疑問に同席していた瀬路、耳郎、葉隠も大なり小なり反応を示す。

 瀬路は興味津々に、耳郎は頑張って隠そうとし、そして葉隠はそもそも見えない。けれど皆が皆気になっていたことだ。

 

 先日の戦闘訓練があった日の放課後、1ーAは教室に集まり反省会を行った。

 どこがよく、どこがダメで。ここが凄かった。どうやったのか。どんな個性なのか、など。

 まだ卵であるため深く踏み込めてはいないもののその姿は夢を目指す者たちである。

 

 そんな中、終は私用があると言いさっさと帰ってしまったのだ。

 同じく爆豪も勝手に帰ったが緑谷が彼の幼馴染であり、個性を知っていたためクラスメイトの個性は皆が共有していたのだ。

 そう、終以外は。

 

 彼らが最初に終が個性らしきものを使用しているところを見たのは身体測定のみ。その時点で統一性のないものであったため皆が皆気になっているのだ。

 実際反省会の三分の一は終の個性の正体を考える時間となった。あのクールボーイ轟ですら参戦した。少し気分はよろしくなかったが。

 

「確かにそうだな。すごく速く動いたり腕をでっかくしたりどこからともなく棒を出したり物をワープさせたりわけ分かんねぇ個性だよな」

 

「うんうん!」

 

「……原因が分からないなんて事はありません。何らな私の個性をここで実践して見せましょうか?」

 

「いいのか!?」

 

「ええ、構いません」

 

 そう答えると終は手のひらを天井に向けそこから()()()()()を生み出した。

 

「え?それって爆豪の……」

 

「はい、彼の個性ですね。ついでにーー」

 

 次に見せたのは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()光景だった。

 

「それは八百万とおんなじやつ、で良いんだよな?」

 

「……もしかして終ちゃんの個性ってコピー?」

 

「コピー…、確かにそれが表現しやすいでしょうね」

 

「……えっ?それだけ?」

 

 はい、と答える終に対し同席していた彼らやコッソリと聞き耳を立てていた者たちも見て分かるくらいに項垂れた。

 

「なあやっぱしーー」

 

『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外に避難して下さい』

 

 まだ聞きたかった瀬路が終に声をかけようとすると学食全体、いや学校全体に警報が鳴り響いた。

 

「何だコレ!?」

 

「あんたパンフレット読んでないの?学校へ侵入者が入った時になるって書いてあったよ」

 

「マジか」

 

「……ところでなんで終ちゃんは動かないの?」

 

 警報と共に席を立ち外へと向かい、切島たちも立ち上がり動こうとする中、終は変わらずパンケーキを食べていた。

 

「何故?と問われましても動けないし動く必要がないからです」

 

「どうして……あーなるほど」

 

 その返答を聞いた葉隠は全てを察した。

 大勢の人の波に紛れてしまってはまともに動けない上、彼女には黒い霧によるワープがあるのだ。何ら問題はない。

 

「じゃっもしもんときは俺らも頼んでいいか?」

 

「構いませんよ」

 

 特に問題なしと言うように許可をし終たちは雑談を交えながら食事を続けたのだった。

 

(…ん?今懐かしい気配を感じましたが……なるほどそういうことですか)

 

 

 

 

 この騒動はあの会話の後教員たちによってすぐに収まった。

 ちなみにこの時飯田が非常口をしていたと後程聞いた切島と瀬路は行けばよかったと深く後悔した。

 

 

 

 

 今日のヒーロー基礎学は人命救助訓練。

 広大な敷地を持つ雄英高校では、教室移動のためだけにバスが使用されることが多々ある。

 

「バスの席順でスムーズにいくよう、番号順に2列で並ぼう!」

 

 先日の騒動の後、委員長であった緑谷からの指名により委員長となった飯田は張り切っていた。副委員長の八百屋が少し不憫に思える。

 

「こういうタイプだったか、くそう!」

 

「意味なかったね〜」

 

 しかしながらそんな飯田の頑張りは特に意味は無く、バスは彼の想像していた修学旅行とかで乗るタイプではなく、市営でよく見るタイプだった。

 残念飯田くん!

 

 

 

「私、思ったことは何でも言っちゃうの。緑谷ちゃん、あなたの個性、なんだかオールマイトに似てる」

 

 終がバスの隅で外の景色を眺めているとそんな会話が聞こえてきた。

 どうやら蛙吹が緑谷の個性がオールマイトに似ていると言うのだ。

 

(確かに父さんからオールマイトの個性は聞いてますが普段は身体能力の超底上げ程度ですから、そう考えると似ていると言えば似ていますね。……まぁ増強系という面だけで見ればアレより強いのを見て視たことがあるので凄いとは思いませんけど)

 

「そそそそ、そうかな、いやでも僕はその……」

 

「まあ待てよ、梅雨ちゃん。オールマイトは怪我しねえぜ?似て非なるアレだって」

 

「まあ、制御が効くようにになればそれこそオールマイトのような動きも出来そうではあるな」

 

「確かになー。その辺、シンプルな増強系は羨ましいぜ。やれることが多くて派手だしよ。俺の『硬化』は対人にゃあ強えんだが、いかんせん地味でなー」

 

「そんなことないよ、切島くん! 僕は凄くカッコイイと思う。プロにも十分通用する個性だよ!」

 

「プロなあ、しかしやっぱ、ヒーローも人気商売みたいなトコあるぜ?」

 

 実際のところ彼の意見は間違ってはいない。

 人気があればサポート会社などから認知されやすくなり、そこと契約を結ぶことによってさらに力を高めることができ、そして何よりヒーローとしての役目を果たしやすくなる。

 まぁ、現状は副業でアイドル活動している者もいる為何とも言えないが……

 余談ではあるが異性にモテたい!という理由でヒーローを目指し、実際に雄英に合格した猛者もいる。

 

「派手で強いっつったら、轟に爆豪、それに黒性だよな!」

 

「でも爆豪はちょっとヴィランっぽいから人気でなさそー」

 

「んだとコラ!出るわ!てか出すわ!!」

 

「いや無理だろ」

 

「……低俗な会話ですこと」

 

「でもこういうの好きだ、私!」

 

「爆豪くん、本当に口悪いな!」

 

 爆豪が弄られるという生まれて初めて見るかもしれない光景に緑谷は戦慄していた。

 

「……そろそろ着くぞ。いい加減にしとけよ」

 

「「「「「「「はいっ!」」」」」」」

 

 着実に上下かん……信頼関係が形成されており、相澤の言葉に喋っていた生徒全員は黙り込んだ。

 

 

 バスが目的地に到着し降りた先に見えたのは大きなドームだ。

 

「水難事故、土砂災害、火事、etc.……あらゆる事故や災害を想定し、僕が作った演習場です。その名も、ウソの災害や事故ルームーー通称USJ!!」

 

 ドームの解説を行いながら出迎えたのは災害現場で活躍をしているスペースヒーロー13号だ。ちなみに宇宙服を着ているため中身を見る事は出来ない。

 

「えー、訓練を始める前に、お小言を一つ二つ…三つ……四つ……」

 

 彼女が話し始めたのは自らの個性と()()()()()()について。

 彼女の個性は『ブラックホール』。言ってしまえば何でもかんでも吸い込み塵に変える殺傷性の高いものである。

 しかし彼女はその危険な個性をーー社会的にはーー正しく用いて災害時に瓦礫の撤去などに使用し多くの人を助けている。

 そして分かりやす例えであるかのように、この超人社会では人によっては個性を使うことによって簡単に人を殺せることを伝え、訴えた。

 

 この間に不用意に声を上げる者は存在しない。

 皆が皆自覚があるのだ。

 地味な個性でというなら切島だ。彼の個性は『硬化』。簡単に言えば身体を硬くする個性である。コレを用いたまま人の頭でも勢いよく殴ればアッサリと死ぬだろう。

 逆に強い個性ならば轟や爆豪だろう。轟なら氷漬けにしたり燃やしたり。爆豪なら急所を爆破すれば簡単に殺せる。

 あくまでコレらは一例に過ぎないが、強い個性はもちろん。弱い個性も使いようによっては善にも悪にも変わる。

 それらを半端理解してるからこそ彼らは13号の話を聞くのだ。

 

「君たちの力は人を傷つける為にあるのでは無い。助ける為にあるのだと思って下さい。以上、ご静聴ありがとうございました」

 

 話が終わり彼女に向けて拍手が舞う。

 飯田に至ってはブラボーと叫んでいる。

 まだ若き彼らにとっては先人の貴重な話であったからだ。

 

 

 

 

 世界は唐突に一変する。

 

「一固まりになって動くな!13号、生徒を守れ!」

 

 それが望まれたものであれ、望まれてなくても。

 

「何アレ?もしかして入試の時みたいにもう始まっていた!みたいな?」

 

 ある時は平穏が暴虐へ。またある時は暴虐が平穏へ。

 しかし今回は不幸な事にーー

 

「動くな! あれは、ヴィランだ!」

 

 ーー前者である。

 USJ内部に突如として現れた()()()。そしてそこから現れる武装した集団。

 そしてその集団の最後に現れたのは彼らの前に出てきた者たちとはどこか格が違う存在だった。

 1人は執事服のような物を纏い、頭部や腕は()()()によって隠され形以外からは人間であると分からない人物。

 1人はラフな格好をしているが全身に人の手を付けている男。

 そして最後は前の2人よりも異質な人とすら呼べない生き物。いや化け物と表した方がいいだろう。その化け物は脳が剥き出しになり生気というものを感じさせず、手の男よりも不気味さを感じさせていた。

 

「ヴィラン!?バカだろ!?ヒーローの学校に入り込んでくるなんてアホすぎるぞ!」

 

「何にせよセンサーに反応してないって事は、そういうことができる個性持ちがいるって事だろ」

 

「さらに人数から見るに目的ありきの計画的な犯行と見てもよろしいかと」

 

 推薦組は冷静に状況を判断して言い放つと、場の空気に緊張がさらに走る。

 相澤も同様の判断を下し、即座に行動に移す。

 

「13号避難開始!学校に連絡試せ!センサー対策も頭にあるヴィランだ。電波系の個性が妨害している可能性もある。上鳴!お前も個性で連絡試せ」

 

「っス!」

 

 相澤に指名された生徒ーー上鳴は自らの個性『放電』を使い対処しようとするが無意味に終わった。

 この場における妨害の無力化は不可能と判断した相澤は首元のゴーグルを装着する。

 

「せ、先生は!? まさか1人で!?」

 

「無茶です! イレイザーヘッドの戦闘スタイルは個性を消してからの捕縛、あの数相手じゃ……!」

 

「詳しいな緑谷。だが覚えとけ。一芸だけじゃ、ヒーローは務まらん」

 

 ヒーローオタクである緑谷はほぼ全てのヒーローの情報を頭に入れている。年齢性別出身個性趣味嗜好活動地域に戦闘スタイルまで。

 それゆえに相澤ーーイレイザーヘッドには不向きであると判断したのだ。

 しかし当の本人は意に返さず、寧ろそれが全てでは無いということを証明するかのように広場へ向かった。

 

 結果から言って緑谷の思いは不要な物であった。

 広場へ向かった相澤は個性や武器である布を上手く扱いながら20を超えるであろうヴィランたちに対処していた。

 

「すごい…!多対一こそ先生の得意分野だったんだ」

 

「分析してる場合じゃない!早く避難を!」

 

 飯田が声をかけ、我に戻った緑谷は他のクラスメイトと共に避難を開始する。

 しかし悪意はさらに彼らに牙を剥く。

 

「初めまして。我々はヴィラン連合。僭越ながらこの度ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせて頂いたのは平和の象徴、オールマイトに息絶えて頂きたいと思っての事でして」

 

 突如として現れた黒い霧。

 そして彼の発した言葉に()()()()()その場にいる全員が驚愕した。

 オールマイト。誰もが知るNo. 1ヒーローであり無敵のヒーローである彼を亡き者にしようと言うのだ。一般的な感性を持つ者なら当然の反応である。

 

「……さすがにあなたは驚きませんか」

 

「当たり前です。オールマイトが死んだ程度で立ち直れないと言うのならその人間は脆弱です。……まぁ私にはそこまで重要なことではない、というのが驚かない大半の理由ですが」

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

(相変わらず?黒性さんとコイツは知り合いなのか?それにイレギュラーって一体……)

 

 終と霧の男はまるで久し振りに再開した友人や家族のように会話を始める。それはこの場においてかなり異質であり、そこだけを切り取れば日常風景であった。

 

「……黒性さん、あなたこのヴィランと知り合いですか?」

 

「はいそうですよ。それから出入り口さん。私の名前は黒性終です。間違えないでください」

 

 13号の問いかけに対し戸惑いもなくサラッと返す終。

 その言葉に場にいた雄英側の人間に衝撃が走った。

 生徒が、学友が悪びれもなく、誤魔化す気もなくヴィランと繋がりがある事を素直に肯定したのだ。

 

「ではあなたも彼らの仲間という事でーー」

 

「それは違います。あくまでも父親に仕えていた人物であり、何度か交友があった程度で、今回の件については一切関わっていませんよ。そうですよね出入り口さん」

 

「あなたは本当に私の名前を覚えませんね。私の名前は黒霧だと何度も言ったはずなんですけどね……それと彼女が言っていることは真実ですよ。ある時まで我々の身内であり、今回の件に関しては我々からは一切伝えてません。それどころか今初めて生きていると知りましたから」

 

 黒霧と名乗った彼は嘘を言うわけでもなく、当然のことのように終の言葉を肯定した。

 

「……ただあなたには色々と聞きたいことがあります。無抵抗でいて下さいね」

 

「もちろんです。あなた如きが私を殺す事なんて出来ませんからね。せめて父さんを連れてきてくれませんと勝負にすらなりませんよ」

 

 フフフと笑いながら終は無抵抗に立ち尽くし、黒霧が放つ霧その姿を消した。

 

「少しばかり予定外のことがありましたが、私は私の()()を全うするとしましょう」

 

「じゃあその前に俺らがぶっ殺してやるよ!!」

 

 そう言いながら黒霧に飛び込むのは爆豪。

 しかし彼の攻撃は霧によって包まれ姿を消した。

 

「危ない危ない。()()と比べればあの方以外の全てが劣りますが、一般的な範疇ではあなた方は優秀な金の卵。ーー故に私の()()はコレ。あなた方を、散らして、嬲り、殺す」

 

 その瞬間、黒き霧がその場を満たし生徒たちを包み込んだ。

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