第1話 復興
当初は絶望的だった。
地の神の消滅後、資源は限られ故郷は崩壊し、それでも人類は復興への道を一歩、また一歩と着実に歩んでいた。
天の神が退いたことにより、バーテックスと戦う必要がなくなった勇者部員達だったが、復興のために全力で人助けをする彼女らの姿はまさしく勇者と呼ぶのに相応しかった。
勇者部一同は復興支援の手伝いで、讃州中学校の体育館へうどんの炊き出しに足を運んでいる。部活動の一環なのでもちろん全員制服を着用しているのだか、変わったことと言えば、東郷が友奈からもらった青色のヘアゴムで髪を後ろにまとめていることぐらいだろう。東郷が宝物にしている物である。
友奈「はいはーい!肉うどんの方はこの列に、きつねうどんの方はこっちの列に並んでくださーい!」
友奈が明るく響き渡るような声で一般市民に呼びかける。
樹「ペットボトルのお茶は一人一本まででーす!赤ちゃん用のミルクもありまーす!」
樹も友奈に負けじと後に続く。
風「すごい数の人達ね…さすがの私も少し驚いたわ。」
東郷「皆さん、あの日の戦いの影響で十分な物資を頂戴できていないようですから。
もちろん、勇者部に必要な備品なども最近は不足気味です…」
東郷の声は心なしか疲れているようだが、それでもうどんを湯がく手が止まることはない。
夏凛「これぐらいの列、完成型勇者の私にとってはどーってことないわ!」
夏凛は得意げな顔で宣言するが、その額は汗でびっしょりと濡れている。
園子「あれ?にぼっしーの袋、もう空になってるよー?」
夏凛は透明になったにぼしの袋をハッとした顔で見つめる。
風「夏凛ー、うどんの匂いで夏凛もお腹すいてきてるんじゃなーい?少し休憩してきな。夏凛は朝からずっと立ち仕事してるんだし。」
風がニヤリとした顔でかつ優しい声で夏凛に話しかける。
夏凛「大丈夫よ!てゆーか、さっきからずっとお腹鳴らしてるあんたにだけは言われたくないわ!列の終わりも見えてきてるし、もう少し頑張るわ。ありがと。」
夏凛は風から目を逸らしながら口を尖らせて答える。
風「夏凛がお礼を言うなんて、えらく素直ね…雪でも降るんじゃないかしら。」
夏凛「失礼ね!」
樹「おねーちゃんも夏凛さんも目立ってますよ…」
樹が困り顔で二人の耳元で小さくささやく。
夏凛「コホン、とりあえずあと少し頑張るわよ!」
夏凛が自分に言い聞かすように呼びかける。
園子「エイエイオー!」
園子が満面の笑みで答えた。
そのとき、一人の少年と赤ん坊を抱えた母親が園子たちの前に現れた。
少年「お姉ちゃん!うどん、とっても美味しかったよー!どうもありがとう!」
母親「忙しい中、ボランティアありがとうございます!勇者部の皆さんのおかげでこの子達の未来がつながったと思うと、いくら感謝しても足りない思いです!本当に…本当にありがとうございました!」
そう告げると親子は深々と頭を下げてその場から去って行った。
風「実を言うとね、私達が勇者としてでなくただの友達として出会っていたら、あんなに辛い思いをしなくて済んだんじゃないかって思うこともあったの。でも、私達が頑張ったおかげで救うことができた命も確かにあったのよね……うん!頑張って良かった!」
樹「お姉ちゃん、泣いてるの?」
風「やーねー、玉ねぎが目に染みたのよ。」
夏凛「もう…何言ってんのよ、良かったわね……風。」
夏凛の温かい微笑みが広がる。