何とか来客者全員にうどんを配り終え、今日のノルマを達成した勇者部一行はすがすがしい気持ちで亀屋(うどん屋)に打ち上げに来ていた。
風「みんなお疲れ様!おかげ様で今日は体育館に来た人達全員にうどんを食べてもらうことができたわ。完全な復興にはまだまだ時間がかかるかもしれないけど、これからも勇者部として少しでも困ってる人々の力になれるように頑張っていくわよ!それでは、かんぱーい!」
夏凛「水だけどね。」
夏凛がツッコむ。
友奈「そういえば風先輩、3年生の友達と行くって言っていた卒業旅行ってどうなったんですか?」
平日の夕方であるせいか店内でうどんをすする人は少なく、勇者部メンバーの声だけが店内に響いていた。
風「ああ、それがね………中止になっちゃったのよー!行く予定だった小豆島が神樹様がいなくなった影響を受けて少し被害が出たみたい。丸亀城に行こうかって案も出たんだけど、流石に卒業旅行で丸亀城ってのはちょっとねー。その代わりに私の家で卒業パーティすることになったわ。」
風が悔しそうに机をダンダンと叩くが、隣に座っている夏凛は我関せずといった様子で釜玉うどんをすすっている。
樹「おねーちゃん、すっごく楽しみにしてたのにねー。張り切りすぎて友達全員分の旅のしおりまで作っちゃって。」
風「まだ作りかけだったけどね。」
東郷「風先輩、素晴らしい心がけだと思います!旅をいかに楽しいものにするかは、入念な準備と綿密な計画によって決定されるといっても過言ではありません!」
東郷が鼻息をフンと鳴らして風の手を取る。
園子「そういえばわっしーも小学校の遠足のとき、とーっても分厚いしおりを作ってきてくれたよねー。みのさんもすっごく驚いてて、楽しかったなー。」
園子がどこか悲しそうな笑顔を漏らす。
東郷「銀…懐かしいわね。元気にやってるかしら。」
園子「みのさんのことだから天国でも思いっきり楽しんでると思うなー。また会いたいなー…。ごめんね!なんだか湿っぽい空気にしちゃって!」
風「いいのよ、銀ちゃんはとっても明るくて楽しい子だったのね。私たちもみんなでいられることに感謝して思いっきり楽しんでいきましょ!」
友奈「そうだ!風先輩!」
風「ん、どうしたの?友奈。」
友奈「勇者部全員で風先輩の卒業旅行に行きませんか?」
友奈が期待に満ちた表情で風にたずねる。
樹「いいですねー!勇者部全員が揃う機会もこれから少なくなってきますし、最後にみんなで思い出作りがしたいです!」
東郷「楽しそうね!」
園子「さんせーい!」
夏凛「風がどうしてもって言うなら、一緒に行ってあげないこともないけど…」
そう言いながらも夏凛の口角は上がっている。
風「ありがとうみんな、でも旅行ってお金がかかるし…みんなに申し訳ないわ。」
夏凛「ふっふーん、完成型勇者はそこんところも対策ずみよ!」
夏凛が自信満々の顔でそう告げる。
風「対策って何よ?夏凛。」
夏凛「アルバイトよ!」
全員「……」
東郷「夏凛ちゃん、アルバイトではなく非正規雇用契約よ。」
風「東郷、あんたってほんっとにブレないわねー。」
樹「あのー……中学生ってアルバイト禁止だったと思うんですけどー……」
園子「大赦が経営している旅館を使わせてもらうのはどうかなー?さすがに全額負担って訳にはいかないけど、少しは安くしてもらえるはずだよ〜!」
風「今年の夏に行った旅館ね。私が夏凛に水泳勝負で圧勝した。」
夏凛「記憶を改ざんするな!私の圧勝だったわよ!」
友奈「でもいいの?大赦も今は色々と大変な時期なんじゃない?」
友奈が心配そうな顔でたずねる。
園子「私約束したんだー。1年前まだ病院のベッドで過ごしていた時、大赦の人達に何が欲しいって聞かれたんよ〜。だから私答えたんよ〜。「友達との思い出が欲しい。」って。
じゃあ大赦の人達は約束するって言ってくれたんだ〜。今その約束を果たしてもらいたいな〜。」
わずかな沈黙が流れた後、口を開いたのは風だった。
風「よーし!今年の勇者部卒業旅行は大赦旅館に決定!夏から乃木も加わったことだし、もーっと楽しい旅行になるわよ!」
樹「やったー!」
友奈「わーい!楽しみだね、東郷さん!」
友奈が東郷の両手を握る。
東郷「楽しみね、友奈ちゃん!」
夏凛「今回も圧勝してやるわ、風!見てなさい、完成型勇者の超速バタフライを!」
風「季節を考えな……夏凛。凍るわよ。」
五人を見つめる園子の目は嬉しくてたまらなそうにキラキラと光っていた。