真っ赤な夕陽が差し込む放課後の勇者部室は、今日も勇者部員たちの明るい会話でにぎわって……いなかった。高校入試を目前にした風、期末テストで追い込まれている友奈と樹が黙々とシャーペンを走らせていた。園子が風に、東郷が友奈に、そして夏凛が樹にマンツーマンで勉強を教えている。
園子「そこはね〜円周角の定理を使って証明すればいいんよ〜。」
風「ふむふむ、乃木の説明は本当に分かりやすいわね〜。」
友奈「東郷さん!できたよ、合ってるかな〜?」
東郷「友奈ちゃん、正解だわ!さすが私の友奈ちゃん!」
夏凛「樹、頭が回らないときはサプリよ!
これ、キメときなさい!」
樹「え、遠慮しときます〜…」
3人とも放課後を目一杯に使って課題に向き合っていたが、それでも終わる気配はなかった。
風「私、不安になってきたわ。本当に合格できるかしら?」
園子「ふーみん先輩なら大丈夫だよ〜。この問題集だってほとんど満点だったし〜!」
園子が笑顔で風を励ます。しかし風の顔から不安の色は消えない。
風「ねえ、乃木!」
風が園子の両手をとる。
園子「は、はいっ!」
風「今日の夜、何か用事ある?もし良ければ、泊まり込みで家庭教師をして欲しいんだけど……ごめんね!無理しなくていいからね!」
園子の目がキラリと光る。
園子「ビュオーッ!ふーみん先輩のおうちでお泊まりだ〜!私張り切っちゃうよ〜!」
風「遊びじゃないんだけどねー……まあよろしくお願いするわ!」
園子「うん!任せてよ〜!」
風と園子の会話を聞いていた東郷も友奈の方をチラチラと見る。
東郷「友奈ちゃんはテストで不安な所とかない?私は今日の夜、空いてるのだけど……」
東郷が少し期待をこめた様子で友奈にたずねる。
友奈「うーん、東郷さんに頼りすぎるのも申し訳ないしー。どうしようかなー?」
東郷「大丈夫よ!ぜんぜん申し訳なくないわ!むしろ人は他人に教えることでより理解が深まるのよ!」
東郷が机から身を乗り出して友奈を説得する。
夏凛「必死ね、東郷……」
夏凛がやれやれといった顔で東郷を見つめる中、樹が少し顔を赤らめて夏凛につぶやく。
樹「夏凛先輩、もしよろしければ私にも家庭教師をしてくれませんか……?」
夏凛も顔を赤らめてあたふたと取り乱す。
夏凛「し、仕方ないわね!完成型勇者は文武両道!その代わりビシバシいくから、覚悟しておくことね!」
話し合いの結果、今晩は園子が風に、東郷が友奈に、夏凛が樹に家庭教師をすることになった。
(東郷の家)
東郷「ここはtoの後に動詞の原型がきてるから不定詞と考えるといいわよ。」
友奈「そーゆーことなんだ!さすが東郷さん!ありがとう!」
東郷「いえいえ、どういたしまして!(友奈ちゃん……横顔もとっても可愛いわ!)」
(2時間後)
友奈「ふぅ〜。やっとテスト範囲の課題が終わったよ!東郷さんのおかげだね!」
東郷「そんなことないわ!友奈ちゃんが頑張ったからよ!」
友奈「東郷さんに何かお礼がしたいな〜。東郷さん、何か私にしてほしいこととかある?」
東郷「お礼だなんて……(友奈ちゃんにしてほしいこと……たくさんありすぎて決められないわ!)こほん、では1つだけいいかしら?」
友奈「うん、何でも言ってよ!勉強以外なら大丈夫だと思うから。」
東郷「今日はずっと友奈ちゃんと一緒にいたい。」
友奈「……」
東郷「ダメ……かしら?」
東郷が心配そうな顔で友奈にたずねる。
友奈「ご、ごめん!予想外のお願いで少しフリーズしちゃった!それだけでいいの?
美味しいデザートとかマッサージとかでもいいんだよ?」
東郷「いいのよ。友奈ちゃんと一緒にいる時間が私にとって一番の宝物なの。」
友奈「わかった!じゃあ今日はずーっと東郷さんと一緒にいるね!お風呂も夜寝るときも!」
東郷「お風呂!ブホッ!」
東郷が鼻血を吹き出す。
友奈「東郷さん!大丈夫?」
東郷「大丈夫よ。さあ、早くお風呂に行きましょ!」
こうして2人は浴室へと消えていった。
(風の家)
園子「まる、まる、まる、まるっと〜。すごーい!ふーみん先輩、全問正解だよ〜!女子力満点です!」
風「ふっふーん。女子力の鬼の私からしたら簡単なもんよ〜。と言いたい所だけど、乃木の手助けがなかったらここまで出来なかったわ。本当にありがと。助かったわ。」
改まって風が園子に感謝を告げる。
園子「いやいや、それほどでも〜。」
風「何かお礼がしたいわ。何か私にしてほしいことない?乃木。」
園子「うーん、あ!一度皆からうわさで聞いたことがあるんだけど、ふーみん先輩の恋話が聞いてみたいな〜!」
風「オッケー!じゃあ夜寝るときにしてあげるわ!先にお風呂入ってらっしゃい。」
園子「わーい!風先輩の恋話が聞けるんよ〜!楽しみだな〜。」
そう言って園子は浴室に向かう。
風「乃木……いろいろと大変だったみたいだけど、これからは最高の青春を送ってほしいわ。」
風が優しく微笑んだ。
(寝室)
風「あれは私が中学2年生のとき、チア部の助っ人で野球部の応援に……」
園子「zzz……」
(夏凛の家)
樹「ここはxに1、yに3を代入してと……できました!」
夏凛「正解よ。なかなか筋がいいわね。数学の才能があるんじゃないの?」
樹「いえいえ、夏凛先輩の教え方がとっても分かりやすいからですよ!」
樹が夏凛に尊敬の眼差しを向ける。
夏凛「そ、そうね!完成型勇者は自分だけでなく、他人に教えるのも上手いのよ。」
夏凛の顔は少し赤くなっている。
樹「夏凛先輩って私の第2のお姉ちゃんみたいですね!私のお姉ちゃんもよく勉強を教えてくれるんです。」
夏凛「お、お姉ちゃんだなんて何言ってるのよ!」
樹「嫌ですか……?」
樹が心配そうに夏凛にたずねる。
夏凛「嫌じゃないわよ!ただ…私は兄貴しかいないから、姉呼ばわりされるのに慣れてないだけよ。」
夏凛が即答する。
樹「じゃあ今日だけ夏凛先輩のこと、お姉ちゃんって呼んでもいいですか?」
夏凛「……いいわよ。」
樹「やったあ!じゃあ今日は一緒に寝よ!お姉ちゃん!」
夏凛「仕方ないわね…樹は甘えん坊なんだから…(悪くないわね。)」
そして2人は同じベッドで一夜を過ごしたのであった。
樹「おはよう、お姉ちゃん!!」