ひなた「では、勇者王決定戦、開幕です!」
「キィィン!」
空気を断ち切るような金属音が鳴り響く。
誰もが驚きの色を隠せない。
戦闘が始まるや否や、若葉が無言で銀に斬りかかったのだ。
殺気一つ漏らさないあまりにも自然な若葉の居合に、銀も受け止めるのがやっとであった。
若葉「よく反応したな、銀。」
球子「手加減なしかよ…若葉。」
銀「へっ、これでも反射神経には自信があるんですよ!」
銀が両手斧で若葉の模擬刀をはね返す。
銀がお返しにと言わんばかりに若葉に連撃を加えようとするが、全て受け止められる。
若葉「速さはなかなかのものだが、一撃ずつの重みが足りないな。」
銀「それなら!」
銀はとっさに体勢を下げ、そのままの位置から体を回転させ、両手斧で若葉に2連撃を加える。
間一髪のところで若葉は後退し、その攻撃を避ける。
若葉「今の攻撃はなかなか良かったぞ。
とっさに身をかわさなければ危なかった。」
千景「せーいっ!」
千景が若葉に大鎌で斬りかかるが、若葉の
模擬刀で防がれる。
千景「まずは乃木さんを倒すわよ、三ノ輪さん。」
銀「分かりました!」
銀と千景の間で一時的な協定が結ばれる。
友奈「こっちも忘れちゃいけないよ!」
友奈が球子に向かって右拳を繰り出す。
球子「知ってるか友奈?タマの羅針盤は防御にも使えるんだぜ。」
球子が得意げに友奈の拳を羅針盤で受け止める。
そのとき友奈と球子の間を一本の矢が駆け抜ける。
友奈、球子「うわわっ!」
杏「こっちも忘れないでね、いつでも狙ってるから♪」
杏が遠くから二人を狙撃する。その横では
ひなたがカメラを構えていた。
ひなた「模擬刀を振るう若葉ちゃん、素敵です♪」
互いに手を組んだ銀と千景だが、それでも若葉を攻めあぐねていた。
近接戦において、刀と大鎌なら大ぶりになりやすい大鎌の方が不利である。
しかし、若葉とて銀が両手斧を構えている以上、千景を迂闊に攻め入ることはできない。
均衡を破ったのは若葉だった。
若葉は思いっきり踏み込むと、千景目掛けて大きく模擬刀を横に振った。
千景は大鎌でそれを防ぎ、好機と見た銀は両手斧の片方で若葉に斬りかかる。
だが若葉は腰につけていた刀を納める鉄製の鞘で斧を防いだ。
銀「な…」
銀は声を出す暇なく若葉の模擬刀に当てられてしまった。銀が負けを確信した瞬間、耳元で千景の声が聞こえる。
千景「ナイスよ、三ノ輪さん。」
若葉は下腹部に大鎌の先が刺さっていることに気づく。
若葉「一体どこから…」
千景「あなたが三ノ輪さんに気を取られた
一瞬、彼女の背後から大鎌を回したのよ。」
若葉「鎌刃の形状を活かしたという訳か…」
千景「あなたの負けよ、乃木さん。」
銀「痛てて……あちゃー負けちゃったかー」
銀が心底残念そうにつぶやく。
千景「 いいえ。」
千景が優しそうに銀に微笑む。
千景「私たちの勝ちよ。」
若葉「千景…変わったな。」
若葉が嬉しそうに話しかける。
千景「そうかしら?」
生前、死ぬ間際に若葉に対する胸中の想いを伝えられたこと、自分は孤独ではないことに気付けたことが千景は心から良かったと思えた。
勇者王決定戦の最終的な結果は最後に残った千景と友奈の一騎討ちになる予定が、千景が友奈に鎌を振るえないと言う理由で友奈の
優勝になった。
ひなた「友奈さんの優勝です!さあ、何でも一つ皆さんに命令して下さい。」
友奈「うーん、、、」
友奈が悩む。
そして満面の笑みで答えた。
友奈「みんなでお泊まり会がしたい!!」