ざくざくアクターズ二次創作 -夢、筋トレ後に浮かぶ汗の如く泡影に消え之く-   作:網場朱鷺

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一滴

【プロローグ】

 

「フゥ…」

 

 雲の上、太陽を遮るものは何一つなく彼方まで続く晴天の下で漏れるアンニュイな溜息(ためいき)

 

 お気に入りのティーカップに注がれた紅茶もそのままに、カップの(ふち)をなぞって指で(さす)れば指先から伝わる熱が気だるさを解きほぐしてゆく。

 

 ここは魔王タワースカイツリーエントランス。支配者のお子様魔王も水着イベントに夢中になり、一般冒険者をあしらうために幾らかの人員を残して従業員は休暇を取っている。

 

 ハグレ王国が立ち入らない以上、上級者コースを選ぶ者も訪れないので必然的に私の仕事はなくなってしまう。願いの欠片を集めた褒美、人の思い描く夢の事象化。夢の女神としての権能。

 

 神として奇跡を施し実績を積む為に、以前はこの能力を使って芸術家の夢に入り込み美のインスピレーションを授けてやっていたのだが、どいつもこいつもボンクラ揃いで成功したのは間違って夢に入り込んでしまったベビー用品の開発担当者だけという有様だった。

 

 今の世に私の美しさを表現できる者は居ないと判断し、時流を読んで転職。求神広告ヘブンワークで未経験者歓迎、住み込み、社食、オープニングスタッフ、で絞り込み検索をかけてここに至る。マイナーな神の仕事は歩合制がほとんどで、そこは自分の実力でどうとでも出来ると思ったのだが冒険者からタワーエネルギーの投資がなければ稼働も出来ないとは思わなかった。

 

 スカイツリーの待合室の中、サネアツさんやジャーバスさんと一緒に麻雀をして3人でグーフィーから巻き上げた僅かな金を握りしめ不安に震えていたあの頃が懐かしい。まぁハグレ王国の快進撃で願いの欠片の機能が開放されるまで数日と続かなかったのだけれど。

 

 その快進撃のお陰で奇跡の実績を積み天狗になり、スケベ根性が服を着て歩いているような妖精に(そそのか)されるまま願いを叶えてついでに神様らしく理不尽な理由による下々(しもじも)の抹殺を試みたのだが返り討ちに合ってしまったという訳だ。

 

「ボインが…! ボインが私の心を狂わせたのだ…!」

 

 普段の理知的で、聡明で、クールビューティーな大人の魅力溢れる私なら冷静に考えて無意味な戦いなど回避していた。あの変態妖精がセクシー大使にボインではなく、ミアラージュやマリオンちゃんを選ぶ慧眼(けいがん)を持ち合わせていれば私とてあの様な(あやま)ちは犯さなかった筈だ。

 

 百歩譲ってボインにしてもサイキックむちむちポークだったら重要な部位を犠牲にしてのボインなのでしょうがないなという諦めもついたのだ。くびれを持つボインを選ぶ事が如何に愚かしいか、フェミニスト団体に通報して叩き込んでやろうか。

 

「スウゥゥゥゥ~~~~ッッ………フゥゥゥゥ~~~~ッッ………!」

 

 湧き上がる怒りを鎮めるべく全力で深呼吸をする。敗北を喫した以上、潔く受け止めるのもまた神。正直勝ち目もないので筋肉モリモリの猛犬に噛まれたと思って諦めるしか無いのだ。

 

 やり場のない怒りを諦めを以て(しず)めると、今度は本当に気分が鬱屈(うっくつ)してきた。彼氏もなく仕事仕事の毎日。それが充実してる内は良い物の、ハグレ王国が魔王タワーを離れ暇になれば一人の時間を強く感じてしまう。

 

 自分もバカンスにでも行こうかという考えが脳裏をよぎるが、ドンコッコにせよアッチーナにせよハグレ王国の面々の顔がチラついてどうにも行く気になれない。

 

 ハピコの悪夢事件で力添えした事もあり、貸し借りはもう無いものとしても遭遇すればエステルやシノブに加え向こうにはヘルラージュやジュリアまで居ることになる。一部位でしか女性を見れない衆愚を前に、奴等の横に並ぼうものなら(いわ)れなき屈辱を味わうのは必定。

 

 妖精温泉も予約待ちの状況で、結局の所はこの手持ち無沙汰の状況を打破する手段は残されていないという訳だ。

 

「ハァ……」

 

 先程より更に強い倦怠感(けんたいかん)を伴って溜息が吐き出される。せめて夜になれば寝ている人々の夢枕に立って暇を潰せるのだが、(まばゆ)い太陽がその時までかなりの猶予を残していることを告げている。

 

 気怠さに負け思考を放棄し、再びカップを(さす)れば程よく冷めて柔らかくなった熱が指先に伝わり紅茶が飲み頃になった事を伝える。

 

 暇もたまにはいいことだし、恨み(つら)みにいつまでも縛られるのもアホらしい。陰鬱(いんうつ)な思考を断ち切れば、この一杯を口にして帝都にウィンドウショッピングにでも出かけようという妙案まで湧いてきた。カップをくるくる回して指を遊ばせ、それに飽きたら取っ手の位置を調整して一口……。

 

「たのもおおおおおおおおおおおおおおおうっ!」

「だっちゃああああああああああああああっ!?」

 

 一人きりで過ごす静かな空間をぶち壊す雄叫びに、意表を突かれカップをさすっていた指が紅茶の中にダイビングしてしまった。

 

「こいつで……! こいつで俺の願いを……!」

「っるせぇぇぇっ! んなデカい声で叫ばんでも聞こえとるわいっ!」

 

 生まれた活力は(みなぎ)る怒りとなって煮え(たぎ)る。声のした方へと目を向ければ筋骨隆々、オイリーテカテカ、我がセクシー撲滅の野望を打ち砕いた憎き牛男がそこに居た。正確には他人の夢に存在していたコイツであって目の前にいるコイツとは違うのだが、体格や性格に差異が見られないのできっと精神学的に考えればこの恨みは至極正当な物に違いない。

 

 それに加えて、今しがたこの白く美しい指を熱湯に飛び込ませる大罪を犯したばかり。メチャ許せん。

 

「なんなんですか!? シックでタイトに物憂(ものうれ)い気な空気を帯びながら思案に(ふけ)(はかな)げな女神を前に不敬にも怒鳴り込んで…!」

「集めたぜ……! 願いの欠片、20個!」

「おい聞いてんのか!?」

 

 神をシカトするミノタウロス。英雄を派遣して叩き殺してやろうかというゴッドジョークを言う(いとま)もなく、ズカズカとこちらに詰め寄ってアイテムパックから願いの欠片をジャラジャラと音を立ててテーブルにぶち撒ける。

 

「こいつで……こいつで俺にモテ期を授けてくれ!」

「嫌です」

「即答!? か、かなちゃんの話と違うじゃねぇか!」

「……チッ……ハァ」

 

 舌打ちに続く今日3度目の溜息は退屈ではなく、呆れから漏れてしまう物だった。この無礼な粗忽者(そこつもの)に夢の女神として現実の厳しさを叩き込んでやらねばなるまい。

 

 使命感に突き動かされるままテーブルへと向き直る。目尻を上げて蟀谷(こめかみ)(しわ)を寄せ、私の愛らしいパッチリクリクリお目々に今だけは鋭く巌しい怒気を込めたまま、牛男を一瞥(いちべつ)する事もなくカップを手にしたまま思いのままを吐き出した。

 

「なるほど、かなづち大明神に水着イベントの経緯を聞いて、願いの欠片を集めれば自分も願いを叶えてもらえると思った訳ですか。しかし神に対する敬意も払わず度重なる無礼を重ね、その望みも利己的な欲望の塊とあってはそんなもん叶える義理も義務もありませんよ。そもそも話を聞いた癖にかなづちに比べて11個も欠片が足りないじゃないですか。水着イベントみたいな大事じゃなくてもいい、自分だけが幸せになるなら欠片がちょっと足りなくても大丈夫だろうですか? 11個足りないのはちょっとじゃありませんよ? もうかなづちとは違うんだよね、意識の差が。確かにみんなを水着にしたのはかなづちの変態性欲の為だったけどさ、自分だけよければ今のアンタみたいにモテ期でも催眠術でも惚れ薬でもよかった訳。みんなに楽しんで欲しい思いやりの気持ちがあったからイベントにした訳。他人の自由意志を尊重してるから惚れさせる事に固執しない訳。セクハラ裁判で裁かれるような目に会っても自分自身の事を、自分自身の行いで好きになって貰えないなら意味がないことを分かってる訳。セクハラしない、問題おこさない、良識人の皮を被りながらこうして第三者を通じて自分の思い通りに事を進めようっていう腐った性根がない一匹の妖精の願いだから聞き入れたんですよ。ご理解いただけまして?」

 

 はぁ、気持ち良い。最高。暴力なんて下らない事を止め、こうして抵抗もできない勘違い野郎を一方的に言葉で殴りつける喜びをみんなが知れば世界は平和になれる気がする。

 

 正論パンチの喜びに退屈を忘れ、溜飲(りゅういん)を下げて紅茶を口にすれば勝利の味が口一杯に広がった。

 

「……そっか、そうだよな」

 

 神の説法を素直に受け入れる実直な態度に免じて、顔を向けてやると同時に口に含んだ紅茶を吹き出してしまった。

 

 牛男の目から流れる一筋の涙。おそらくは二十前半、年齢は分かりづらいがいい歳こいた大人があられもなく涙を流し震えていた。ちょ、ちょっと言いすぎちゃったかな……?

 

「かなちゃんは正々堂々、欲望だだ漏れでもありのままの自分で勝負してんのにさ……俺なんか嫌われるのが怖いからって、こんな汚い真似に手を出して……ニワカマッスルのニワカは半端者のニワカだったって事か……へへへ」

 

 ファンブック付属公式設定資料(なんとたったの480円)に記載されている自己の由来まで否定しだすのはマズい、原作者へのリスペクトが無いやつだと思われてしまう。読者の不快感を(おさ)め、事態を収拾するためにもフォローしてやらなければ。

 

「ま、まぁほら? わかってくれればいいんですよ。そのうちきっと素敵な人に出会……」

「集めた欠片は三分の二でも根性なんか三分の一にも届かねぇ。これだけの期間を一緒に過ごして、かなちゃんの想いも、気持ちも、俺には三分の一も伝わら……」

「おいバカやめろ!」

 

 突然危険球を投げ始めてカスラックに目をつけられたらどうする気だこいつ。大体お前が空回りしてるのは純情な感情じゃなくて下心だし、アイラビューも言えないで居るんじゃなくて言う相手が居ないんだろうが。あっ、これ小説形式だと私の心情映写が自然と危険球を投げちゃうな?

 

 これ以上の暴投は許されない。少々(しゃく)だが助け舟を出してやり、早々にお帰り願うとしよう。

 

「はぁ……わかりました。機会だけあげましょう」

「……えっ?」

 

 ()頓狂(とんきょう)な声を上げて(すが)るような涙目をこちらに向ける牛男。嗚呼、そうですこれこれ。神を(うやま)う時はこういう首までつかった沼から希望を見上げる時の眼差しを送るべきなのだ。

 

 この眼差しから助けるか、見捨てるか、楽にするか、沈むのを見て楽しむかを選べる優越心、ないしは超越心が神の生き甲斐なのだから。

 

「まず異性から愛されたいと思うなら、自分からアプローチしないとお話にならない訳です。特にお前はブサイクとまでは言わないにしても顔面偏差値が平均切っていますからね」

「えっ、ヒドくない?」

「王国男子の顔写真を並べて誰を彼氏にしたいか街頭アンケートでもやりましょうか?」

 

 うつむきがちに押し黙る牛男を尻目に話を続ける。また泣きじゃくって危険な事を口走る前に事を進めよう。

 

「話を戻しますが、自分から積極的なアプローチはしているのですか? お前に内面の良さというものがあったとするなら、外部の人間より王国の身内のほうが理解を示してくれると思うのですが」

「当然! この紳士的な態度と熱く(たぎ)るこの筋肉で!」

「具体的には?」

 

 なんか冷たいなコイツ、とでも言いたそうに淋しげな視線を送ってくるが無視して話を進めるよう促す。

 

 聞けばまず初対面の相手には挨拶と、重量物で困ったことがあれば自分を頼るよう言って聞かせダメ押しの筋肉アピールが鉄板。いつでも助けになることを示唆しておくのは良いけど、無駄な筋肉アピールで引かれて頼みづらくして自分の強みを殺してる奴だねこれ。

 

 そして頼りになる紳士としての第一印象を作った後は、いつ頼りにされても良いようにロビーで待機。モーモードリンクの営業スケジュールの確認、企画立案、製造発注、卸先への配送等の業務計画を立てつつ筋トレ。こいつ何気にすごくないか?

 

 そして目を合わせれば挨拶とポージング、すれ違えば挨拶とポージング、出かける人へお見送りの挨拶とポージング、返ってきた人へお出迎えの挨拶とポージング……。

 

「全くコミュニケーション取ってねぇ!?」

「いや挨拶とポージングは欠かさないよう努めて……」

「挨拶だけで男女の仲が進むのはイケメンだけって言わなきゃわかりませんか!?」

「ポ、ポージングも……」

「一方的なボディランゲージに意味がねぇから誰と何の関係も発展しねぇんだろ!?」

 

 結局その後の話では仮装大会や美術審査、道場や劇の稽古と業務の内でしか接触がなく鉄板焼きのブーストで火属性食事会をする時位にしか日常的なコミュニケーションは取っていないという事が判明した。

 

 とはいえ、不定期に行われる運動会や新しく取り扱うハグレのマイナースポーツの実践等で頼られており、王国の発展途上期でも建設においての力作業を単身で行うような献身的な働きを見せているらしく、古くから居る者ほど厚い信頼を寄せていると見てよさそうだ。

 

「なるほど、絵に描いたような良い人止まりの男ですね」

「ゔっ」

 

 グサリという擬音でも聞こえてきそうな程に痛々しい顔をして呻く牛男の姿に清々(せいせい)する。

 

「さて、では私が与える機会とはお前が良い人から一歩踏み出すチャンス……(すなわ)ちお見合いです!」

「お、おおおお見合い!?」

 

 ふふ、いい食いつきをしているな。ここが釣り堀だったらフィーッシュ! と掛け声を上げて一本釣りして……いけないいけない、私は華の二十代。公式の設定から逸脱(いつだつ)しないためにも、こういうレトロなネタは控えなければ。

 

「お前たちは皆それぞれ仕事を持ってますからね。現実の世界でお見合いしようとすればスケジュールを組むにも一苦労でしょうが、夢の中なら時間も人数も無制限でじっくり話し合えるという訳です」

「な、なるほど……それで!?」

「は?」

「え、いや、お見合い会場見立ててくれるだけって神様のする事じゃなくね? 婚活プランナーに話せば済むことだったような」

「チッ! ……20個しか集めて来なかった分際で大口を叩きますね? お前が女子に面と向かって俺とお見合いしてくれ、なんて言って回る度量があればその通りですが出来るんですか?」

「ゔっ」

 

 ほれ見てみぃ。浅はかな考えで神に盾突きやがって、高身長と巨乳と牛頭のマッチョには(ろく)な奴は居ないって昔から言われてるからな。

 

「まぁ現実のお見合いより優れた点として、前述した時間無制限の他にも夢の中でなら失言して嫌われても記憶を残さないよう深く眠らせて忘れさせる事も出来ますからね。ただ折角の親交を深める機会ですから、使わないに越したことは有りませんよ。失敗を恐れるな、とだけ言っておきましょうか」

「よ、よぉし…! ビビる必要はないんだな……で、お見合いって何話すんだ!?」

「ハァ~~~~~~~……」

 

 二十余年の神生(じんせい)で一番のクソデカ溜息が口から(あふ)れ出す。朝の溜息から始まり今ここに至れば、溜息をすると幸せが逃げていくなんて言葉も真実味を帯びてくる。

 

「お前もいい大人でしょ? 一つの事業をその身に背負う社会人でしょ? 私でお見合いの予行演習をさせてくれとでも言う気ですか?」

 

 しまった。ついつい名案を授けてしまったが、これを真に受けて私に変な気を向けてきやしないだろうか。己の罪とも呼べる美しさ、そして明晰(めいせき)なる頭脳から明敏(めいびん)に答えを映し出す知性が今は恨めしい。

 

 流石にこれは失言であった。この才色兼備、秀外恵中。美しく知性溢れる女神を前に、見た目も中身もケダモノの野獣がどうして情欲の(たぎ)りを抑えられよう。

 不安に震える私を見ながら牛男は慌てて手を振り、焦った様子で弁明しようと口を開く。

 

「いやロリコンは犯罪だろ。夢の中で練習相手を用意してもらえれば……」

「あぁ!? こちとら花も恥じらう二十代ぞ!? 羞花閉月、水も滴る身長160cmの乙女やぞ!!?? ぞぉ!?!?!?」

「え? どう見ても十代前半の身長140cm、小学生低学年をギリギリ抜けた昭和ライダーも知らない幼女だろ?」

「ムッキャアアアアアアア! もうお前なんか知りませんからね! 帰れっバーカ! バァァァァァァァカッ! 自分で言ってたように婚活プランナーにでも相談しろっ! 花の二十代でも昭和ライダーなんてRXすら知らねぇよ! 願いの欠片も経験値にしてやるからな!」

 

 フザケやがって世の中男って奴はこんなのしかいないのか。この頭部にそびえ立つ二本の塔がみえないのか?

 

 誰も私の美しさにも気づいてくれないしみんな目が腐ってるんだ。そうだそうに決まってる。兀突骨(ごつとつこつ)の身長は信じるくせになんで私の身長は誰も信じないんだよおかしいだろ常識的に考えて身長288cmのバケモン居るはずないだろ向こうは只の人間でこっちは神だぞわかってんのか。

 

 もう疲れた。何もかも投げ出して寝よう。夢の世界だけが私の居場所なんだ。現実はクソだ。

 

「ま、待ってくれ! 悪かったって!」

 

無視して階段の方へ歩みを進める。覚えてろよ中学の名簿引っ張り出して呪術関係に進んだ友達に一生彼女が出来ない呪いをかけてもらうからな精々後悔しやがれ。

 

「そうだ! 良いものが有っ……」

「はぁ~~!? 物で釣ってご機嫌取りですか!? だからモテねぇんだ……よ……?」

 

 差し出された赤く(つや)めく両の手に、至極の宝が見えた。蓬莱(ほうらい)の玉の枝も火鼠の皮衣も、この至宝の前ではガラクタ同然。思わず頬を両手で覆えば、燃え上がる火照りに自分の顔が林檎の様に赤くなっている様が容易に想像できた。自身の心音が聴こえてきそうなほど強く打ち付けられ、輝く世界が乾ききった心を潤おしている。

 

「こ、これは一体何処で………? これを私に………? 本当に………?」

 

 夢だ、これは夢。鬱屈した昼時に訪れた無礼な来客と非礼の怒り。そこから転じてこのような宝物を、何の代償もなく手にできてしまう事があろうか。この頭のタワーを捧げても、カ○ジ並の借金を背負わされても構わない。今ここでやっぱダメとか抜かしたら勝ち目なんかなくてもいいからハグレ王国との戦争に突入する。

 

「只の貰いもんだよ、劇座に出た記念にって。多分まだ一杯あると思うぜ」

「一杯!? デザイン違うやつも!?」

「そりゃ聞いてみないとわからねぇけど……無かったとしてもヘルちんとか手先器用だし頼めるんじゃねぇかな」

「……いいでしょう。マッスルよ、お前の信仰しかとこの胸に届きました」

「そ、それじゃあ……!」

 

 期待に鼻息を荒くするマッスルの手から宝を受け取り、そっと胸に抱きしめる。なんか一瞬フルチンとか聞こえたような気がするけど、今は些細なセクハラを見逃してもいい程に心熱く燃えている。私の世界を変える至宝、これほどの物を献上されたなら神として答える義務がある。

 

「お前の無礼な態度も今は不問とします。今日の夢でリハーサルをして、明日の夢でお見合い決行です!」

「あ、明日!? ちょっと速すぎませんかい?」

「一週間、二週間伸ばすことに意味もないでしょう。むしろその間、周囲を変に意識していつもと違う行動を取り不快にさせたり不審に思われる方がマイナスです。安心しなさい。我が神の知略、権謀術数を以てすればたとえ年齢=彼女いない歴の哀れな子牛であっても東西南北中央不敗スーパージュノンボーイに早変わりです」

「………」

 

 不審な沈黙に不敬な念を感じ取り、手にした秘宝から牛男へ目を移す。

 

「お前年齢=彼氏居ない歴はお前も一緒だろとか思いましたね!?」

「思ってません! 断じて決して多分おそらくメイビーきっと!」

「本当にお前という奴は……お前ら人間と違って、こちとらクソ永い寿命の内たかが二十年で運命の人なんて見つかるもんじゃないんですよ! この御宝さえなかったらその首この場で叩き落としていますからね! 夢の中でまたお前の相手をする事を考えれば頭が痛くなりますよ! はよ帰れ!」

「ウッス!お邪魔しました!」

 

 そそくさと立ち去る牛男の背を憤怒の眼差しで見送るが、掌の上に残された宝に目を向ければ今しがたのくだらない些事(さじ)など頭から吹き飛んでしまう。見るだけで心躍り、恋する人の手を握る少女のように心臓が早鐘を打つ。誰がこんなとんでもない物を考えついたのか。

 

「夢の……身長180cm……!」

 

 手の上に残された、履けば20cmは背が伸びるであろう厚底の靴にそっと頬ずりをして目を閉じた。これを頭のタワーと合わせれば夢にまで見た平均身長どころか、並大抵の成人男性の背丈までぶち抜けるだろう。

 

 ブランドを確認するため底敷きを見てみればケモフサと書かれていた。聞かない名だがこれからのファッション業界を牛耳る存在なのは間違いないだろう。要チェックや……!

 

 その日は夜が明けるまで鏡の前で身長180cmの自分に見惚れていた。

 

【翌日】

 

「なぁ……リハーサルは……?」

 

 夜が明けるまで身長に合わせた服を雑誌を見ながら考えたり、大人っぽいメイクを試していたせいで気づいた時にはすっかり朝になってしまった。入り口にグーフィーを置いて通さないように伝えておいたのだが、しばらく何かを殴打する音が続いた後に(こころ)()しか昨日よりテカテカしている牛男が入り込んできて今に至る。……オイルだよね?

 

「……ちょっと、昨日は、その……あっ、おばあちゃんの法事で……その…ね……?」

 

 まさかこんなか弱い女の子を顔面グーフィーになるまで殴打したりはしないよね? お見合いも私が居ないと成立しないしクールダウンしてくれないかなぁ。それより何より、今ここでブーツを返せなどと言われよう物なら私の希望に満ちた未来が閉ざされてしまう。

 

 ブーツを両腕に抱えて縮こまる私を前に、ふぅと一息ついた牛男が手首を振ると地面に粘性の赤い液体が飛び散った。このテカりはオイルじゃない。

 

「まぁいいよ……そんだけ大事にしてくれてるなら贈った甲斐があるし、助けを頼んでるのも俺だしな」

 

 私の魅了が通じたのか、グーフィーを殴ってスッキリしたのかは定かではないがそこまで怒ったりはしていないようだ。

 

「でも明日にはハグレ大祭りの開催で面子がバラバラになっちまうんだが……」

 

 遠方の広報にハピコやクラマくんが飛んでいったり、ジュリアの夜間シフトの有無等で裏方メンバーの睡眠時間が前後してしまうと、全員が近い場所で同時に寝る瞬間が取れなくなりこの計画は破綻してしまう。

 

 特にハピコが居ないと問題だ。ハピコの悪夢事件の顛末を見て、数多くの携帯小説とメロドラマから知見(ちけん)を得た百戦錬磨の恋愛強者である私の眼に捉えた一瞬が、ハピコこそ今回の一件の鍵を握る人物であることを見抜いている。

 

「……仕方有りませんね。私が付き合いましょう」

 

 顔、心、態度、私の求める男性像から対極に位置するこの男とリハーサルとはいえお見合いの真似事をする事に精神的苦痛を隠し切れない。だが財力においてはモーモードリンクの創業者にして鉄板焼き屋のオーナーシェフ。私への貢ぎ物も、神代に残される御宝をも超越した現代の超テクノロジーの産物である事は確定的に明らか。

 

 お見合い相手が下々の民である事を考えれば、少し格を下げた物の見方をしてやればまぁギリギリ付き合う対象として見れない事もないかもしれない。

 

「ええ……」

 

 え? は? 聞き違いか? こいつ今「ええ……」って言った? お前なんぞが触れることなど到底許されることのない雲の上に存在する高嶺の花を前にして「ええ……」ってほざいたのか? 非モテ(こじ)らせて神に縋り付いてきた奴がしていい発言じゃないってお解り頂けてないのもしかして?

 

「不服そうですね……? 私の用事でリハーサルを不意にしてしまった事へのお詫びだったのですが嫌なら無理にとは言いませんよどうぞぶっつけ本番で皆さんとお近づきになられてはどうでしょうか……?」

 

 怒りに拳を震わせるが、今回は自分に否があるので下手に出てやる。

 

「うーん……いやぶっつけ本番は不安だし、しょうがないからお願いするかな」

 

 見合い相手の予行演習に女神を捕まえてしょうがないからとは、一体どの口でいってんだこいつマジで。この世にこんなデリカシーの欠片どころか塵芥(ちりあくた)すら持ってないような牛ゴリラに好いた惚れたを抜かす悪趣味な女が居るのか? このお見合いを決行する前に、まず鳥娘を眼科及び精神科につれていく必要性を審議したい。

 

「お……お手柔らかにお願いしますね……?」

 

 ビッキビキに浮かび上がる青筋を抑えて冷静に振る舞う。身長を20cm伸ばす代価と考えればこれしきの事は我慢出来る。が、それでは気が済まないので奴にも神への不敬の代償としてこれから始めるリハーサルで男としての尊厳をズタズタに引き裂いてやる。

 

 テーブル越しに向かい合うようにして席に付き、互いのカップに紅茶を注ぐ。

 

「これを注ぎ終えたら開始としましょう」

 

 ゴクリという嚥下(えんげ)の音が聞こえる程に、固唾(かたず)を呑んでカップを見守る牛男。こんな華麗で清純、理知的で慈悲深い清楚な美の化身と向かい合ってティータイムを共に出来るのは、世の男からすればまさに夢のような話だろう。だが奴は度重なる非礼を重ね、自ら全世界の男が抱く夢を放棄したのだ。

 

 ティーポットの先端から最後の一滴がカップに零れ落ち、静かな水音と波を立てる。それは静かなる戦いのゴングだった。

 

「………」

 

 沈黙。これは恋愛弱者の取る立ち回りへの知識不足から取る静寂でも、ウザい勘違い男から身を守る手段でもない。プレッシャーを与え、屈服させ、膝をつかせてやる為に意図して選んだ攻撃的な空間を作る選択。

 

「い、いい天気……ッスね」

「ええ、そうですね」

「……」

 

 適当に相槌を打つが、話を広げる様子もないので再び沈黙する。愚かなり牛男、お見合いの場に生じた沈黙を破るのに天気について話そうなどという浅はかな考えに口元に冷たい笑みが浮かぶ。

 

 天気の話とは初手に挙げる物ではなく、みんながトイレやドリンクバーに行ってる間に親交の浅い人物と二人にされ、何を話していいかわからない時等に急場を凌ぐ時間稼ぎの話題。必要なのはお互いが話せる話題なのだ。

 

 次に出てくる恋愛弱者お決まりの話題といえば、恐らくは趣味辺りだろう。

 

「しゅ、趣味は……何かお持ちで……」

 

 思惑通りの答えが返ってくる。恋愛弱者のテンプレの中では最も汎用性が高く、自然な流れで話題に持っていけて尚且つ趣味嗜好の一致から親交を深めるチャンスを持つ強力な手札。

 

 だが、しかし、まるで全然……婚活女子の心に届かせるには程遠いんだよねぇ。

 

「夢占いを少々」

「おぉ、さすが夢の女神! アレってどんな事が占えるんだ?」

 

 些細なことでも相手を褒め、そうして気分良くしてから次の言葉を引き出す。意図してやっているようには見えないが、コミュ障という訳でもなさそうなのでこの辺の機微は理解しているようだ。

 

 近年は筋トレブームに便乗して様々な女性誌で取り上げられた事もあり、線の細いイケメンよりもマッチョ気味の体型がブームになりつつある。この流行が一過性の物として終わる前に女心を学べば意外と化けるのかもしれない。

 

 とはいえ当然ながら私はトレンドに流されるような軽い女ではないので、この程度のことで気分が上向いたりはしない。真っ向から切り落とすべく言葉の刃を紡ぐのみ。

 

「どんな夢を見たか教えて頂ければ試して差し上げますよ」

「そ、そっか……最近は夢とか見てねぇな……」

「そうですか」

「……」

 

 そして三度訪れる沈黙。趣味が合えば幾らでも話は膨らむが、合わなければ二言三言で終わるのが道理。最近じゃなくとも印象に残っていた夢の話をすれば良い場面では有るが、眠りが浅そうなタイプにも見えないし夢見が良いタイプではないと容易に想像できる。

 

「ほ、ほら! 成長には睡眠の質が大事っていうしさ、思いっきり筋トレして眠るとグッスリ寝付いちゃうよな!」

 

 今度は自分語り、そういうのは相手が興味を抱いてくれる程に友好を築いた後に話すものだ。よな、(など)と確信して言われても夢の女神である私は寝付けばすぐに夢の中。深い眠りなんて完全オフの日、夢を見る気も起きない位にくたびれてる時にしか起こり得ず、休日を理知的かつ計画的に過ごす私にそのようなスケジュールのミスは……あれ?

 

 成長には睡眠の質が大事って、もしかして私の背が低いのって何時(いつ)も夢見てて眠りが浅いから? いやちょっと待ってよ子供の頃からこの力使ってるけど幼稚園の頃は真ん中より上だったじゃん……小学校入る前には全員に背抜かれて並び順も一番前になってたな!? もしかしてこマ(これマジ)!? お、おかしいと思ったんだ両親共に背が高いのに私がこんなに小さいのは。

 

「それで朝目覚めの一杯に気付けとタウリンが欲しいって思いからモーモードリンクが……」

 

 ちょっと医療ドラマかじって身長が遺伝してないのは変だからって勘ぐって、どうせ私なんて橋の下で拾ってきた子なんだって、お母さんを泣かせちゃった事もあったけど原因ってもしかして夢の中に入り浸ってたから……? 私のせいだったの……?

 

 母と受験シーズンに些細な行き違いを起こした末に心無い言葉をかけてしまったあの日。気丈な母の涙に、生まれて初めて父が私を怒鳴りつけた。

 

 それまでずっと甘やかされて育ち、この力も広く(あまね)く世界の人々を幸せに出来るものだと期待され、思い上がり傲慢(ごうまん)になっていた私は説教など耐えられず卒業後にすぐ家を出てしまった。謝罪の言葉一つなかった私を両親は見送ってくれたが、私は父に怒鳴られたことを根に持って銀河特急の中でドアが閉まる音を背にしながら両親を振り返る事すらしなかった。

 

「朝から炭酸ってちょっと重いって声もあるんだけどさ、バチッと目を覚まして一日の活力にして欲しい訳よ俺は!」

 

 母譲りの、このふわふわの栗毛が自慢だった。いつか母みたいな気立ての良い美人になるのだと夢を見ていた。自ら進んで眠りにつき、この力で母のようになった自分を夢見ていた。それが皮肉にも私の成長を妨げてしまっていたのだろうか。

 

「お、ゔっぐっ……ゔぇっ……おがあざ……ごべ……なざ…」

「えっ、ちょっちょちょ、なんで泣いてんの!? お、落ち着こうね! 取り敢えず!」

「あえっ……ふっ……ぐぅ……ゔゔあっ……」

 

 肉体だけではない。母のような慈愛に満ちた女神にも、父の様な優しい柔和な天使にもなれず、私はこの塔で孤独に巨乳美女を(ねた)み願いの欠片を手に(すが)ってきた信徒を(はずかし)めようと卑しい計略を企てている。なりたいと思っていた理想の姿を彼方(かなた)へと置き去りにして築いた今の自分は、まるでおみくじクソ悪魔の様に醜悪だった。

 

 テーブルに突っ伏し、失った物の大きさに(なげ)く私の肩がポンポンと優しく叩かれた。

 

「泣いてたってわかんねぇだろ……どうしたよ?」

 

 大きくてゴツゴツとした掌が肩に触れていると、震えと嗚咽(おえつ)が穏やかに引いていく。かつて私の野望を打ち砕いた憎い男の手は(あつ)い程に(ねつ)を持ち、硬く、力強く、そして優しかった。

 

「わっ……ぐずっ……私……」

 

 彼はぽつぽつと嗚咽(おえつ)混じりに吐露(とろ)される私の過去と、身勝手が生んだ悔恨(かいこん)の念を何も言わず聞いてくれていた。敵視していた相手の筈なのに、不思議と抵抗もなく自身のコンプレックスを打ち明けてしまう。

 

 肩に手を置く、それは相手を独りじゃないと思わせ孤独から救う効果があると仲違(なかたが)いの原因にもなった医療ドラマで聞いた事がある。この肩越しに伝わる温かさと頼もしさにも、医学的な根拠があるのだろうか。

 

 話し終えて落ち着いてみれば、今の私があられもなく惨めで滑稽な姿を晒している事に今更ながら気付き、恥じ入りつつも顔色を伺うべく視線を向ければ彼は(まぶた)を閉ざしていた。

 

「……もう大丈夫か?」

 

 閉じていた目が開かれ、こちらを気遣うような優しい眼で見下(みお)ろしている。つまらない見栄に(こだわ)る私を気遣って目を閉ざしてくれたのだと気づくと、その細やかな配慮に面映(おもばゆ)くなり視線を()らす。

 

 私を見下ろす視線には、いつも低身長を馬鹿にする時の(さげす)みを感じていた。だがここにある視線は違っていた。母の膝枕から見上げる空と両親の顔、そして優しく見守る眼差し。牛や鹿に類する(けもの)特有の白目が殆どない大きくて(つぶ)らな黒目は、両親の面影など全く無い筈なのに遠い記憶を呼び起こす。

 

「私……最低だ……」

 

 自分の所業を口に出せば、ただこの一言に集約される。神としての(おご)り、親への不孝。

 

 夢の中で叶う全ての望み、虚構に溺れ両親を裏切って築いた今の自分には恋人どころか友人も居ない。仕事は順調、それもハグレ王国がこのタワーにいる間だけの話。今はまだ取り損ねたボス装備を取りに偶にやってきては荒らしているが、次回アップデートは水着イベントの続編という事もあり魔王タワーに来なくなる可能性は高い。

 

 窓から見える眩い晴天に照らされた海と対象的に、自分の置かれた状況は果てなく続く荒野だった。長い夢から覚めて現実を見た瞬間。

 

 彼の顔色を伺う。神に在るまじきことに、私は(すが)っていた。

 

「そうかもな……」

 

 求めていた慰めの言葉はなく、帰ってきた肯定の言葉に俯いて目尻に溢れる涙を隠す。

 

 夢の中の悪行を知られずとも、私の性根(しょうね)は見透かされてしまう底の浅い神であるように思えて惨めになる。

 

 こんな我儘で、傲慢で嫉妬深くて底意地の悪い性悪女が今更どの面下げて許してもらおうというのか。

 

「じゃ、素直にごめんなさいって言わねぇとな」

 

 なんでも無い事のように口にされたその一言に呆気にとられ、我に返ってまた呆れ返る。

 

「そんなの……私……許してもらえなかったら……」

「っかー! 華の二十歳が謝罪一つでビビって縮こまってんなよ!」

「っな……!」

「お前もいい大人でしょ? 人の願いと夢を叶える神様なんでしょ? 俺でごめんなさいの予行演習をさせてくれとでも言う気ですかぁ~?」

「おまっ! お前ぇ~~~っ!」

 

 自分の発言がブーメランのように返ってきて胸に刺さる。こんな時に人の発言を混ぜ返しておちょくろうとはどういう了見だと憤慨するも、彼は一頻(ひとしき)り笑った後に真面目な顔でこちらを向き直した。

 

「……俺にはさ、親の記憶とかねぇんだよ。こっちに召喚された時に名前とか色々忘れちまってな」

「……」

「親の気持ち(どころ)か、子供だった頃の気持ちもわかんねぇけど……ここであんたが女神様してくれてたお陰でさ、みんなの願いが叶って、水着イベントが実装されて、レプトスさんや竜宮の人達と出会えたんだ。かなちゃんだけじゃねぇ、俺もみんなも感謝してるんだぜ? こんなに素敵な女神様が娘だったら、絶対自慢に思うって」

「す!? 素敵……って……」

 

 突然の賛辞の言葉は、まるでボール球連投からのど真ん中剛速球の様に私の胸を撃ち抜いた。自分でも容姿への自信はあるものの、同性から小動物的な扱いの上で可愛いという声を掛けられるばかりが関の山。性格に至っては言わずもがなだ。

 

 異性からは見向きもされず、それ所か気になる人が出来れば決まって私とは正反対の背が高く胸の大きい女と付き合って恋愛に発展する余地もなく戦う機会すら得られなかった二十年。ここにきて初めて来た勝負球に討ち取られてしまった。

 

「許してくれなくても、許してもらえるまで謝ろうぜ。今までが最低でも、悪いと思って謝る気持ちが出来た今なら最低より上じゃねぇか。それでも一人で行くのが怖いなら、俺も一緒に頭下げて謝ってやるよ。娘さんは今の今まで謝れずにいた臆病な見栄っ張りだけど、信じる者の努力に応えてくれる度量の広い優しくて立派な女神様です許してあげてくださいってな」

 

 (ゆる)しを得た訳でもないのに、打ち(ひし)がれた心に希望が差し込む。どうするも何もない、謝るしか無い。単純で、真っ直ぐな答えに導いて助けてくれる。

 

 捻くれた神を救う、愚直なミノタウロス。滑稽な絵本にでも出て来そうな、人に言えば一笑に付されてしまうであろう丸っきり子供騙しのバカ正直さ。そんな誠実さを精悍(せいかん)な彼が持ち合わせている事がとても眩しく見える。

 

「……臆病も見栄っ張りも余計ですよ」

 

 大きな黒い瞳に見つめられている事が、何故だか気恥ずかしくなりそっぽを向いて突っぱねる。これではまるで()ねた跳ねっ返り娘だ。クールで瀟洒(しょうしゃ)な美貌の女神としてのイメージが崩れてしまう。

 

「じゃ、一人でごめんなさいできるな?」

「子供扱いは止めて下さい! 全くもう……!」

 

 デリカシーの無い発言に怒りを(あらわ)にしてみせるが頬は一層上気して熱を帯び、視線を合わせようとしては直視に耐えられずチラチラと地面や天井と彼の間を行ったり来たりするばかりだった。

 

「へっ! もう大丈夫そうだな。頑張れよ」

 

 肩に乗せられていた手が離れ、ポンと小気味よい音を立てて力強く私の背を叩くと、背に受けた新たな熱がまるで追い風のように背中を押している。椅子から離れ、母からの拒絶が怖くて震えていた足を地面につけて立ち上がって彼を見据える。

 

「えっと……そっ……その……あ、ありがとうございました!」

 

 気恥ずかしさを誤魔化すように頭を下げ、感謝を口にしてその場から逃げるように立ち去る。

 

「よっし……俺も祭りの準備でもするか!」

 

 気合の入った声がエントランスに響き渡る。少しだけ振り向けば、タワーを去ろうとする彼の背が目についた。

 

 大きくて広い背中が遠ざかる姿に心細くなる。ハグレ王国に居る人達は、あの背中に守られてきたのだろうか。

 

 夢の中での戦いを思い返せば、私に向けられるのは敵意ばかりだったが背の先にいるみんなにどんな気持ちを抱いていたのだろう。守られる人達はどんな想いで彼の背を見つめているのだろう。王国の輪に入れば私も守ってくれるのだろうか。

 

 後ろ髪を引かれる思いを残しつつ彼の背から目を離し、自室へと戻る。お風呂にご飯、諸々の準備を終えてベッドに横たわり目を閉ざせば牛頭の幻影が瞼の裏に浮かぶ。

 

 思うままに眠り、夢に堕ちれない初めての夜。胸の鼓動を子守唄に眠りにつけるよう祈れば、それが通じてかあっさりと眠りにつく事は出来た。重要な事を忘れてはいたが。

 

【夢の世界】

 

 ここは夢の中、造られた部屋の一室。暖かな光で室内を照らすキャンドルと暖炉の炎。簡素なテーブルに敷かれた白いテーブルクロスには銀の糸で刺繍が施され、銀製の食器が並ぶ食卓を上品に彩る。壁にかけられた剥製は生気に満ち溢れ、今にも鳴き声を上げそうな佇まいを見せ対面に置かれた姿見鏡にその影を写していた。

 

 まぁ喋らせようと思えばできるのだが、そんな悪夢を見せる為にこの空間を用意した訳ではない。

 

「なぁ……リハーサルは……?」

「……すいませんでした」

 

 流れで解散してしまったが、リハーサルの真っ最中だった。話をなかった事にしていいかどうか決め兼ねたので、取り敢えず当初の予定通りお見合いのセッティングをしてみたのだがやはりツッコまれてしまった。

 

「ハァ……まぁいいよ。正直あのまま続けても練習にもならなそうだったし」

 

 こいつ自分も忘れて意気揚々と祭りの準備に帰った癖に、上から目線で自分の話術スキルの低さ共々人のせいにしようとしてやがる。普段頼れる兄貴分みたいな(つら)してるけど、聞けばお化けの噂で鉱山から人払いして鉱石を独占してたっていうセコい奴なんだよね正体見たりって感じだな。

 

「お、お力添え出来なくて申し訳ありませんでした……」

 

 それでも不仲だった両親と和解する覚悟を与えてくれた事もある手前、強く出るのを抑え再び頭を下げる。耐え難きを耐え、忍び難きを忍ぶ。大人だ、これが大人なんだ。

 

「やはり最後に頼れるのはこの肉体美! 夢の中でもキレてるこの上腕三頭筋!」

「……」

 

 先日一方的に行われるボディランゲージにかほどの効果も無い事を説明した筈なのだが、すっかり頭から抜け落ちてしまったらしい。頭蓋骨がザルかなんかで出来てて、こぼれ落ちた分を筋肉が取り込んでいるのではないだろうか。

 

「なんだ? ジッとこっちを見て、もしや見惚(みと)れちまったか?」

「ハァァァァーー……」

 

 連日続く溜息の嵐。こんな奴に褒められて(のぼ)せてしまった自分が恥ずかしい。見れば見るほど、話せば話すほど私好みの精神的肉体的貴族的地位を(あわ)せ持つイケメンとはかけ離れた人物像が(あらわ)になる。

 

 弱り目に祟り目、昨日の私はどうかしていたのだ。自分の身に起きた不幸を嘆く、か弱い乙女の弱みにつけ込まれた上での不覚。

 

 恋愛球技界の○ツル○ナガタ2000と呼ばれている私が万全の身で牛頭のマッチョマン如きにストライクを取られるはずがない。打ち取れなかったのは認めるが、心は屈しなかったのでアレは凡打だ。図体ばかりデカい癖に、精神的に弱った相手のバット目掛けて球を投げ無理やり凡打にするようなコスい球しか投げれないような奴に遅れを取ってはならないのだ。

 

「ところでお袋さんとは仲直りできたのか?」

 

 バカ話から突然真面目な話を振られ、思い出したくない現実を引きずり出され胃が重たくなる。

 

「電報を入れて返信待ちです。会って話がしたいって……」

「そうか、まぁ大丈夫だろうけど頑張れよ」

 

 これには流石の私も少しムッと来てしまう。人を焚き付けておいて何でも無い事のように言うのは無神経が過ぎるというものだ。

 

「……他人事だと思って軽く言ってくれますね。大丈夫なんて保証もないのに」

「おいおい、また弱気の虫が出てきちまったのか? 昨日も言ったじゃねぇか。俺達に最高の出会いと夏の思い出をくれた立派な女神様だろ自信持てよ」

 

 こいつの頭の中では何事もなく上手くいく算段(さんだん)が出来上がっているようだ。能天気ではあるが、それも理由は私がよく出来た神だからと言われればまぁ悪い気はしない。立ってしまった腹の虫も納めておいてやろう。

 

 普段聞かない頌詞(しょうし)を受ける事で自尊心が刺激され、とある閃きに至る。先日の借りを返すべく、このまま私への礼賛(らいさん)を続けさせセクシーな魅力ある美しい美女で在ることを改めて認知させ私に気を持った所を打ち返してやろうという完璧な作戦でリベンジを狙う。

 

「……それだけじゃちょっと弱いですね」

「そっか」

「……」

 

 コイツ本当に自信を持たせるつもりがあるのか? そこそこのコミュ力を持つ癖に女性の求める答えを出す部分だけピンポイントでゴミすぎるだろ。

 

「も、もっと自信を持てたら両親とも上手く話せる気がするなー?」

 

 一々こんな事を言わせやがって。普通の男だったら一目見て美の女神だとか美の化身だとか魔法の靴が手に入った今なら高身長スーパーモデルとして活動できるね、とか色々言うことあるだろうが。イケメンでもない鈍感野郎とか何処にも需要の無い非モテの化身だぞ。

 

「あー……ほら、欠片5個集めればサンタに会わせてくれるじゃん? この歳で会えるとは思わなかったわ」

「それ私じゃなくてサンタがすごいって言ってるようにしか聞こえないんですが……」

「俺の栄養ドリンクも取り扱ってくれてるしな!」

 

 願いの欠片1個で頼めるけど誰も欲しがらない奴ねそれ。

 

「もっとあるでしょう!?」

「えー……鴨ねぎそばもカレーもウチのお土産だしなぁ」

 

 それに関してははグゥの音も出ない。でも安くて美味しくて還元率高いし、なんでかお前ら非売品貰ったみたいに喜んでるじゃん。

 

「まぁでも言われてみればこうして、俺の願いとはちょっと違うけど協力してくれてるのも有り難い話だしな。俺の身勝手を(いさ)めて、周りの気持ちを大事にしろって気付かせてくれて、その上で持ってった願いの欠片分の仕事をしてくれるなんて良い女神様じゃねぇか」

 

 なんか勝手にいい方向に解釈してくれてるけど正論パンチしたいが為に変態妖精を持ち上げただけなんだよね。折角自尊心が満たされていたのに罪悪感で胸がちくちくしてきた。

 

 しかしどうもミートゾーンにボールが入って来ない。昨日の素敵の一言だってギリギリ審判がストライクゾーンを見間違えて許してしまったような物なのに、立派だの良い女神だの延々ボール球を投げられてるようなモヤモヤした気持ちになる。後一球で出塁だぞ。

 

「それに、頑張り屋だろ?」

「は?」

 

 夢の中に閉じこもり、おおよそ苦労というものから遠ざかるように生きてきた私に努力や頑張るなんて言葉は全く似つかわしくない物だが一体どうしたらそんな風に見えるというのか。一言口にして(ほう)けるばかりだった。

 

「本当は怖いのに、逃げずに立ち向かおうってんだから頑張り屋じゃねぇか」

「……」

 

 自分にも見えない自分を見られたようなその一言に、また呆けてしまう。

 

「俺だって怖い時、本当は逃げたいんだ。ただ俺は大事な仲間が後ろに居るから逃げられないってだけでさ。一人だったらきっと逃げ出しちまう。自分が間違ってたって認める勇気も、何年も経った今謝ろうっていう勇気も、許してもらえるかわからない不安に立ち向かう勇気も、振り絞ってやろうってんだからカッコいいじゃねぇか」

「かっ……!?」

 

 心臓が飛び跳ねるように強く脈打ち、顔面がガチガチに硬直するほど熱く血が(のぼ)る。ふいと顔を背けて鏡を見れば林檎のように真っ赤に染まった自分の顔が映された。昨日もこんな顔をしていたのだろうかと思うと羞恥に俯いたまま顔を上げることは出来なかった。

 

「……どうかしたか?」

「なんでもありませんよ! もぉ!」

 

 不意打ちだ。汚いなさすがマッスル汚い。全く予想外の言葉を投げかけて意識を外に向けたところでまた予想外の言葉を投げかけるなんて。こんな可憐な女神にカッコいいなんて言葉を放ってくるなんて考えつく筈がない。

 

 本当に汚い球ばかり投げやがって、こんな土をまぶしたボールを地面スレスレに投げて巻き上がる土を保護色に姿を消すかのようなコスい球を次から次によくも思いつくものだ。

 

「はぁ……いいから本題に入りますよ!」

「お、おぅ……?」

 

 そっぽを向いたまま半ば無理やり当初の目的へと立ち返る。これ以上付き合ってペースを乱されてはたまらない。この茶番をさっさと終わらせよう。

 

 この夢が終わったら、そう考えると母と対面する自分を思い浮かべてしまう。不安に震え、みっともなく泣き出しそうな顔で俯いている自分の姿。顔を上げようとしても、拒絶される恐怖は鉛のように頭を押さえつけ母と目を合わせることも叶わない。

 

 長い沈黙が続くうちに肩に手が置かれる。硬く、大きく、触れた肩先から全身に伝わりそうな強い熱を感じる。振り返れば、見慣れた大粒の黒い瞳がこちらを覗き込んでいた。大きく見開かれたその眼は、水気を多分に含んでいてつやつやと見るものを写し取りそうに輝いて――。

 

「おーい、本題は?」

「えっ!? ……あ、あー……はい」

 

 本題に入ると言いながら今後の不安から(ふけ)り込んでしまっていた。(かぶり)を振って思考をリセットする。一度ならず二度も人の不安につけ込んで来るとは本当に卑劣な男だ。今度こそ話を本筋に戻すべく、今後の手順について説明をしなければ。

 

「えーっとですね、お見合いはこの部屋で当然一対一で行われます。まだ何人か夢に入れてない人も居ますが、扉の向こうに用意した待合室から順番に人をお連れしますのでマッスルさんはここで待機しているだけで大丈夫です」

「お、おう……しかし合意もなくいきなりお見合いに連れ出すのってやっぱなんか抵抗あるっていうか……」

「今更しょうもない事で弱気になりますね。事前の説明とフォローはこっちで済ませておきますけど、結局はマッスルさんが口説き落とすんですからしっかりして下さいよ」

「く!? 口説……」

 

 赤い皮膚に熱が差して湯気が出そうな、というか実際に出る程に取り乱す。TP25消費してそう。

 

 羞恥に狼狽(ろうばい)するその様にようやく一本取れた気になれたものの、顔を赤くしてモジモジする筋肉モリモリのマッチョマンというのは中々にキモい。

 

「それでは私は待合室に移りますので、今のうちに覚悟を決めておくことですね」

「ちょ……ちょっとタンマ……」

「はぁ……弱気の虫はどっちですか」

 

 この期に及んで引き伸ばしとは往生際の悪い奴だ。こちとら王国民をマッスルなんかとお見合いをしようという、起こる筈もない気にさせるべく権謀術数を張り巡らせるのに忙しいというのに。

 

「そうじゃなくて……! 今回のこと、アリガトな」

 

 これまた予想外の言葉が飛んできて身構える。さては先の一本で出塁しようとしている私に直接球をぶつけると見せかけた変化球で送球するようなコスい球を再び投げようというのか。投球前にタネを見切った以上、そんな無意味な変化球に引っかかるような私ではない。

 

「女神様に言われた通り、俺が女性陣とちゃんと話す度胸がありゃあよかった話を態々(わざわざ)こんな手間暇掛けてもらった訳だし礼の一つも言っとかないとだろ? だからさ、ありがとうって」

 

 屈託のない笑顔で言われるありがとうの一言。何年ぶりに受けた言葉だろうか、まだこんなに捻くれてない幼年期にあった気がする。友達とする夢の話、見たい夢を見せてあげたり、悪夢から守ってあげていた頃。

 

 嫉妬やコンプレックスに(こじ)れた心が(ほど)け、童心に(かえ)って行くような不思議な感覚と共にその一言は胸にストンと収まった。

 

「いーんですよ、そんなこと。願いを叶える立派な女神様にはこれくらい朝飯前ですからね」

 

 手をひらひらと振って部屋を出て、扉を閉めて息をつくと途端にドッと胸が脈打ちだす。何年振りかに行った誰かのためにした親切と、返ってきた謝辞が可笑しいくらい気恥ずかしくも嬉しくて妙に舞い上がってしまう。

 

 パンパンと頬を(はた)く。気合を入れる訳ではなく、ただ変な火照りを吹き飛ばしたかった。

 

「スゥーッ……フゥーッ……」

 

 化粧室の中で一息ついて落ち着きを取り戻す。化粧棚やクローゼットに用はないので、更にもう一枚のドアをくぐり抜ければ王国の会議室を参考に間取りを取った控室に続く。馴染みのある空間が緊張を(ほぐ)し、普段通りに振る舞う為の一助になる筈だ。

 

 まずは準備から取り掛かろう。邪魔なデーリッチの玉座を廃し演壇にした後、控室の中を見渡すと見慣れた面々がテーブルに突っ伏して眠りについていた。

 

【控室】

 

『本日お集まりのハグレ王国の皆様、どうぞお目覚め下さい』

 

 拡声器を手に目覚まし代わりのアナウンスを行うと、室内に反響してけたたましく鳴り響く。もそもそとテーブルから起き上がる面々が増えるにつれて何事かとガヤが大きくなる。その中から腰まで伸びたピンクの長髪を(なび)かせて、一際大きい声で怒鳴り込んでくる者が現れた。

 

「ちょっとアンタ! また懲りずに私達を夢に引きずり込んだっての!?」

 

 赤紫に輝くピンクトルマリンを想わせる力強い瞳が、射抜くような視線を向けてくる。腰に手を当て、眉間に皺を寄せながら威風堂々と胸を張るとピンクのシャツがはち切れんばかりに悲鳴を上げている。短い説明文に二度も三度もピンクピンクと言わせやがって重複表現になっちゃうだろ。

 

 しかしこれも予想の範囲内。憤慨して詰め寄る彼女を前に、拡声器を下ろしてどうどうと落ち着かせる。マッスルといい彼女といい牛馬の世話でもしてる気分になるが臆する必要はない。

 

「落ち着いて下さいエステルさん。確かにここは夢の世界ですが、前回のように危害を加えたり戦闘をけしかけたりする事はありませんから」

 

 獰猛な光を放つ眼が、私を見上げている。以前は見下ろされていた彼女に並ぶ、圧倒的な技術力。

 

 この頭部に(そび)え立つタワーと、マッスルより捧げられた超技術を用いられたスーパーブーツ。そして皆が寝ている間に手にした新しい第三の力がある今では私のほうが遥かに上。いずれはそのボインすら攻略してみせる。

 

「殺されかけた状況を再現されてるってのに落ち着ける訳があるか! 大体なんなのよアンタそれでバレないとでも思って……」

「先輩……」

 

 食って掛かるエステルだったが、メニャーニャに袖を引っ張られると背後のちびっ子達を見て何故か押し黙る。マリオンと魔王様、超強敵コンビの眼差しが私のブーツと頭部に注がれている。

 

 見破られたかと一瞬焦ったが、二人の輝く瞳に疑念や侮蔑の意は読み取れずむしろ羨望(せんぼう)の念すら感じる。ギミックを見破れないまでも、オシャレグッズとしての価値を見抜いているのであろう。流石の慧眼である。でも歩き辛いからコケないようにちょっと浮いてなきゃいけないんだよねこれ。超疲れる。

 

「くっ……兎に角! 黒コゲになりたくなかったらさっさとみんなを夢から解放しなさい!」

「フフ、そうカッカしないでお茶でも飲んで落ち着かれては? 私の記憶を元に再現した、帝都のレストランで味わったアールグレイをご用意させて頂きましたのですけど……まぁ紅茶を嗜める教養をお持ちかどうかはわかりませんが如何です?」

「先手を取ってフレイムを撃つ……!」

「ちょちょちょちょ待って待ってホントに!」

 

 リラックスさせようとした可愛いジョークに対し本気で魔力を集中させているのを感じ取り、慌てて弁明する。モルペウスも出してないのに、あの頃から更なるレベルアップを遂げた彼女の魔法が直撃したら消し炭になってしまう。

 

「そもそも戦闘になればここに居る全員が夢の住人ではなく、現実に居る本人なので私に勝ち目もないんです。今回は別の要件でお集まり頂いてるので、まずは話を聞いて下さいね? ねっ? ねっ?」

 

 マッスルとどっちが猛牛か分からない程に向こう見ずな性格をしているものの、早口で(まく)し立てるように無抵抗であることを示すと必死さが通じたのか警戒心こそ剥き出しにしたままだが対話の姿勢を取ることにしたようだ。シノブとメニャーニャに連れられ、マジカルバーバリアンが席に着く。

 

 一安心した所で今回の趣旨を説明するべく、再び拡声器を手にアナウンスを続行する。

 

『これより、この夢の世界についての説明を行いますので皆さんご着席の程をお願い致します』

 

 各々が渋々といった様子で椅子に座り直しこちらに視線を向ける。

 

『ご理解ご協力の程、感謝致します。皆さんご存知かと思いますが、私魔王タワーにて願いの欠片を交換させて頂いているタワーの女神と申します』

 

「うちらのお土産と交換してくれる人じゃん?」

「おぉ、タワーの転売ヤーじゃんか! しかし欠片もないのになんで出てきたんだ?」

 

『静粛に! 静粛にお願いします! 金銭の関わらない物品の交換は転売ではなく合法的取引です! 趣味です非営利です! 保護者の方は可及的速やか(かつ)、迅速的至急ヅッチーさんを黙らせて下さい!』

 

 まずいまずい摘発される前に話しの流れを戻さなきゃ。ジュリア隊長めっちゃこっち見てるやん。このシマで商売ができなくなってしまう。

 

『コホン! 先の水着イベントにつきましては、皆様の記憶に新しい事かと存じます。前回かなづち妖精様より頂いた31個の願いの欠片とタワーエネルギーの報酬として実装させて頂き、皆様にもお楽しみ頂けた様で何よりでした』

「何が報酬よ殺されかけたわ……!」

「ほら、楽しかったのは事実だから……」

「正気ですか? レプトスさんが加入した以外は散々な目に会った覚えしかないのですが……」

 

 ボソボソと召喚士娘三人組がボヤいているのが聞こえるが、警戒されたとして今回は後ろめたい事もないので気にしなくてよいだろう。水着イベント一話の件で、また私が仕組んだ事としてマッスルの印象まで悪くなったとしてもどうせ元からあの三人娘の眼には適うまい。脳筋同士エステルとはワンチャンあったかもしれないという程度と見える。

 

『今回ハグレ王国様より20個の願いの欠片を集めたニワカマッスル様から【モテ期を授けて欲しい】なる願いを受けたのですが、残念ながらこちらのご要望を叶えるためにはたったの20個程度では力(およ)ぶ所ではないという結論に至りました』

「なにやっとるんじゃあいつ……」

「店舗の売上が落ちてると思ったらタワーに入り浸ってたのか……デーリッチ、夢から覚めたらすぐ会議を開くぞ」

 

 頭を抱えて呆れる者、怠慢に憤る者、三者三様の反応が入り乱れる中で一人だけ異質な様相を見せる。いつも通り腹に一物抱えたような笑みを浮かべ、困惑する周囲を面白そうに見渡していたのが今の説明であからさまに不満気な顔へと変わった。その反応を誰かに気取られてないか、周囲を見渡し変化を気取られないように端の席へとこそこそと移動している。確信を得るだけの反応を見れたので、目で追うことを止めアナウンスを続けよう。

 

『しかしながらせっかく集めた20個の欠片を、お寿司や一枚のレアパッシブにしてしまうのは勿体ない』

「あたしは三枚のスキル書か三人分の寿司を寄越してくれればそれでいい」

 

 しれっと24個分の報酬を要求してくるんだけど、どういう精神構造してるのこの人。親の顔が見てみたい系ジョークはハグレに言うと人権保護団体が寄ってきてウザいので取り敢えず無視して話を進めよう。しかし差別対象の代表格だったハグレにまだ小さいとはいえ保護団体がつくとは、王国の名も広く認知されたものだ。

 

『……それに彼の心意気に応えてあげたい。努力は報われるものであって欲しいという私の良心から、次善の案を講じることに致しました』

「何が良心よ……こっちは下らない(ねた)みで殺されかけたってのに」

「妬まれる様な物を持ってない私は完全にとばっちりでしたけどね……!」

『静粛に! 静粛に!』

 

 アクの強い連中が集まってるせいですぐに茶々が飛んでくる。もっと厳粛な空気を出せるように部屋じゃなくて牢獄に繋ぎ、モニター越しに案内だけしてマッスルの所に放り込むのが一番だったかもしれない。

 

 お見合いというよりグラディエーターって感じになっちゃうけど、マッスルじゃ望みもないし別に良かったなこれで。そんな後悔を引きずりながらも司会の進行を続ける。

 

『えー、そうして考案しましたのが、この夢の世界での【お見合い】という事になります』

「「「「はぁあ!?」」」」

 

 一気に不満が爆発したのか、ほとんど怒声に近い声が複数上がる。まぁマッスル自身も言っていたが、合意もなくいきなりお見合いに連れ出せば不満に思うのも当然。しかしここを乗り切るのがイベンターとしての見せ所、神学校時代の飲みサーで鍋奉行を務めていた私の手腕を持ってすればこの程度のことはへのつっぱりに過ぎない。

 

『いきなり連れ出されて不満に思う方も多いでしょう……ですが彼の努力を考えてもみて下さい。皆様は願いの欠片を何度パッシブスキルと交換できましたか? 妥協して福神漬けカレーのセットでも良いでしょう。数え切れない程、そう胸を張って言えるほどの挑戦をしましたか?』

 

 各々(おのおの)まぁ敵よけの最中に落ちてたら拾うぐらいのことはするけど、全力で部屋中回って探すもんじゃないしという顔をしている所へ、妥協点も一緒に提示することで挑戦という言葉のハードルを更に下げる。

 

 マッスルの集めた20個の欠片に対して、王国の示す挑戦は8個から7個になった。そう、ハードルが下がれば『7個程度の挑戦も大してやってないのに』とマッスルの集めた欠片と1個分の格差が開き相対的に凄い事をしたように聞こえるのだ。

 

 魔王タワーにおける真の賢将たる私に掛かれば、この程度の心理操作は造作も無いことである。

 

『彼はたった一人で、その挑戦を超える遥かなる試練に挑んだのです。きっと何度も倒れたでしょう……何度も麻痺毒ハメを受けたでしょう……欠片があと一つという場面、無謀と知りながらも幾度となくタコタンクにちゅーちゅーされたでしょう……それも一人の時間を終わらせるため、孤独の先に得るものがあると信じていたから出来た事ではないでしょうか』

「そう考えるとやっぱりかなちゃんすげぇな。31個だもんな」

「……」

 

 やべ、全く同じ努力を遥かに高い純度で行った者が居るっていう事実を突きつけるのは止めて欲しい。ピンクさん顔赤くなってんじゃん。かなづちが自分の為にどれだけの事をしたか考えちゃってるじゃん。

 

『まぁまぁまぁまぁ! 20個の欠片を集めるという事がどれだけ大変な事か、各々に想いを巡らせて頂けましたね……彼が一日千秋の想いで待ち続けた運命の人、今宵この夢の中で巡り合……』

「真剣に迷って申し込まれた訳でもなく、数撃ちゃ当たる戦法に付き合うのもなぁ」

「子供も居るんだけど、まさかこの子達までお見合いさせる気?」

 

 私のフォローも虚しく途端に大した事をした訳でもないような雰囲気になってしまった。20個でも十分すぎるほど辛いからね? 苦行だからね? お前ら集められるんか?

 

 だからセクシーじゃない方のピンクを黙らせておけって私は言ったのにさぁもうホントによぉ。

 

『……年齢などお互いの合意を前にすれば些細なことですからね。まぁ愛は育むものって言いますし、成長と共に芽吹くような愛を見つけられれば、それも彼の励みになる事でしょう』

 

 過半数が未成年で構成される王国で選り好みなど出来るはずもなく、真っ当な大人は福の神とティーティー様と来て望みの薄そうな神二名。後は晩酌の習慣のあるジュリアに、年齢は不明だが東方の出身である柚葉は十代で成人の儀を済ませている筈だ。

 

 脈がありそうなハピコですらも精々が中等学部、それなら一層(いっそ)の事ハグレ王国民全員がターゲットでいいだろう。どうせ王国に手を出せる国も近隣に存在しないのだから社会の法など無視して、治外法権の下に両者の合意を持ってマッスル彼女いない歴に終止符を打ってしまえばいい。

 

「……いや、やはり倫理的に問題が有る。まだ自分の中で好意と恋愛感情の区別も付けられないような子供達に交際の選択なんて迫るべきじゃない」

 

 神の与えし天啓に待ったをかける愚か者、権謀と知略に恵まれた才女でありながら現し世に伝わるカビの生えた倫理を持ち出してくるとは滑稽千万。

 

 神の権謀を持ってすれば、垢に(まみ)れた現し世の道理など霞んでしまう事であろう。

 

「……ローズマリーさん、わかるんですか? 好意と恋愛感情の違い」

「なっ……!? そ、そんなの分かるに……今は子供達の事をだな……!」

 

 顔を赤くして口ごもるも、語気を強め話を保護者としての観点に持っていこうとする。だが自論を展開する前に、彼女の動揺を突いて一先(ひとま)ず話を続けよう。

 

「建国前はデーリッチさんと二人旅、つまり……賭場(とば)を荒らしてその日暮らしの根無し草。女手一つに少女を抱え、歩む道は餓鬼の道。鴨が来たぞと薄暗闇で、歪んだ瞳がせせら(わら)う。(かす)めてみせます今宵(こよい)の日銭、マリーの指先にコインが光る。それは、死神が引鉄(ひきがね)を引く合図……ってなもんだった訳ですよね」

「何の次回予告だっ……! 私の事は関係ないだろ……!」

 

 数名が不自然に咳き込むようにしてむせる。風邪でも流行っているのだろう、気にせずローズマリーに関係ない話をまるで関係が有るかのように誘導する。

 

「自分の中にある感情は、歳月だけで整理をつける物ではないと思います。あの時どう思った、この時どう感じた。そういった経験と照らし合わせ、他の誰からも感じられない物を与えてくれる人へ向ける特別な感情の一つが恋や愛と呼ばれる物なのでしょう。女手一つでデーリッチさんの面倒を見ながら、周囲を全て敵と見ながらボロ布を服と言い張って徘徊していたローズマリーさんに、男性との交際経験は無かった物とお見受けします。それで……自分の中にある気持ち、わかりますか? 恋愛感情に限らず、今その胸の内にある想いの全てを理解できるんですか?」

 

 お硬いローズマリーやメニャーニャ辺りの説得には理屈で固めるが吉と見る。知恵に長け理に通じる者には、理合いを通して話をすれば向こうも道理を通した返答をしようとしてくる。絶対的自信を持った己の長所をなおざりにする事はないだろう。

 

「そ、それは……」

 

 だが悲しいかな、彼女には恋愛経験がない。そして一般学問としての道から外れている恋愛道も未履修である事が容易に想像できる。己の中に蓄えた知識の書庫で、存在しない本を手探りで探す事になるのは必然という訳だ。

 

「理解できないのも当然です。分かった気になってくっついたのに、下らない理由ですぐ離れるなんて話も人間には良くある事ですからね。まぁそういった痴情の(もつ)れで傷つかないよう、保護者として庇護すべきだという義務感に駆られる気持ちも良くわかります」

 

 思索する彼女に反論の余地を与えないまま、こちらから不安要素を上げてやる。始めにあった未成年をお見合いさせる倫理の正否は、私の理屈を前提に次の話へ進めたことでこの議論において巻き戻しは効かなくなった。

 

 これで恋愛感情は経験によって自己の中で整理される物であるという私の仮定は正当化される。

 

「それなら尚更マッスルさんと話してみるべきでしょう。いつか自分の眼につかない所で、何処ぞの馬の骨に(たぶら)かされる前に信頼できる人物と話し、自分の気持ちという物について考えさせておくのが良いのではないでしょうか?」

 

 後は不安要素を握り潰せば完璧な理論が完成するという訳だ。神の智謀を持ってすればこの程度の答弁は児戯に等しい。しかも恋愛感情などという曖昧(あいまい)な物、どの様に言ってもそれらしく聞こえるものだ。

 

 とはいえ相手は王国参謀ローズマリー、逆転の一打に定評のある王国で弁舌を振るい前線で指揮を取ってきた現代の女傑。安々とは折れないだろう。

 

「だ、だが……」

「そんなに疑う必要も無いんじゃねぇか。オレは賛成だぜこの見合い」

 

 反論を唱えようとするローズマリーに対し、思わぬ横槍が飛び出した。王国の宿舎全体を能力の範囲として捉えていたが、まさか機械も夢を見るとは思わなかった。そういえばさっきマリオンちゃんがいた時になんで気づかなかったのか。

 

 ふよふよと空を(ただよ)う椅子に座したまま前へ出る古代の番人。身長180cmの私を見下ろしている暗い金色の眼は、生命の輝きを宿してはいない。そんな無機質な瞳と正反対に、顔には人好きのする屈託のない笑みを浮かべ楽しそうに口を開いた。

 

「思うに、マリーの勉強会は算数やら国語やら教育を求めすぎて教養はちぃっと(おろそ)かなんじゃねぇか? ヴォルケッタがアイスの蓋をペロペロしてるのを見て、ようやくカリキュラムにテーブルマナーを加えた位なもんだが道義や今話してたような倫理なんかは手つかずのままだ」

「なっ!? しゅ、衆目の前でこの様な辱め……っ!」

 

 槍玉に挙げられ、過去の恥を蒸し返された事に(いきどお)る彼女に笑みを浮かべたまま頭を下げつつ手で制して話を続ける。

 

「みんなよく出来た良い子ちゃんだよな。デーリッチも間違った道へ踏み外さないし、こいつの先導に従って今日この王国がある。つまり教えるまでもなく出来が良かったからって、オレ達は曖昧で分かり辛い物を個々の考えに任せて後回しにしてきたんだ。ガキ共が子供の身分でお見合いなんて変だって思うならそれでいいし、逆にマッスルの事を好きだっていうのも構わない。その上で大人になるまで待たなきゃいけない事もあって、それは何故かと考えさせてやればいい。恋愛も倫理も、正解不正解のある話じゃねぇけどより良い方向へ導いてやりたいと思ってる。その為に一度答えを出すってのは悪い考えじゃないと思うぜ」

 

 この場にいる誰もが、驚き口を開けたまま唖然として話に聞き入っていた。私の適当にお見合いさせてマッスルから貰った欠片の分は働いた事にしようという思惑は、今彼女の示した教育論にかき消され王国の未来を見据えた一歩になろうとしている。

 

「それにマッスルがオレ達を頼らず欠片を20個集めて彼女を作りたいって願うのも、王国の風紀を乱さないよう自分の連れ合いを作る涙ぐましい苦肉の策じゃねぇか。仲間に相談しないで女神頼りってのも水臭いが、女性陣があいつのアプローチに気づいてやれなかったか意図的に無視したかの結果でもある。まぁハッキリ言ってこないマッスルに問題があるんだが、責める事も出来ないだろうよ」

 

 マッスルの努力と苦悩を再確認、悩みの原因を解析し皆がマッスルに抱く不満の一部を罪悪感へと変換する言葉の魔術。機械とは思えない程、心理戦に長けたその手練手管に口を挟む隙は見当たらない。

 

「王国をデーリッチ一代で終わらせる訳でもないし、遅かれ早かれ婚姻(こんいん)の法令整備も必要になる。早い内に問題を洗い出せるなら、それに越したことはない。気乗りしない者も多いだろうが、マッスルの話も聞いて判断してみようぜ」

 

 倫理に限った話ではなくなり、恋愛適齢期の女性陣にもこのお見合いに参加する義務と意義を与える事で冷え切っていたモチベーションもやや上向きに回復する。

 

 彼女の深慮に心入られたのか、ローズマリーは少しの思案の後口を開いた。

 

「……わかった。前例から考えてみれば、マッスルが変なことをする筈もないしな」

 

 悪夢事件の時はマッスルがずっと側にいて彼女を看取っていたと聞く。ハピコを看病するマッスルの姿が脳裏に()ぎると、胸が重くなるのを感じた。

 何故だろうと、理由を考える気も起こらずに(かぶり)を振って脳裏に浮かぶ牛と鳥を振り払う。本当に、何なのだろう。

 

「そ、それでは話も纏まった所で……」

「おっと、気が早いぜ。皆の安全を保証する為に、お見合いの様子はモニターして貰いたい」

 

 この奇妙な提案にまたしても周囲に動揺が走る。頭を振ったせいで脳がクラクラして話が纏まったはずなのに思考が纏まらない。

 

「いやぁ~……衆人環視の中だと素直になれない人も居ると思うんですけど……」

「第一に優先するのは身の安全、アンタを信用出来ない者も居るからな。第二に自分の心と向き合い整理の仕方を学ぶ事が目的なんだ。恥ずかしがる者も居るだろうが、他人の恋愛観は参考になる。それに普通のお見合いなら両親が同席するもんだし、みんな家族同然なんでな。後はお若いお二人で、ってのは夢から覚めてやってもらえばいいさ」

 

 どうしてこうなったのか、まぁ幸いにも諸事情があってモニターの準備は整っている。

 

「……ま、いっか! 」

 

 頭は覚束(おぼつか)ないが、お見合いをさせてしまえば約束は守った事になり私の体面も守られるというものだ。拡声器を再び口元に当て、司会進行の準備へと移る。

 

 今、永い夢が始まろうとしていた。




櫓岳(やぐらだけ)様より作中のワンシーンを絵にして頂きました。
人生初支援絵を経験させて頂き、ありがとうございます。

【挿絵表示】

元ツイートhttps://twitter.com/eM5kc3t9/status/1336694356816760832

春マキ様より支援絵を頂きました。ありがとうございます。
元画像の拡張子が押絵に対応してなかったので直接ツイッターへどうぞ。
元ツイートhttps://twitter.com/hallo_macky/status/1346750512981426176
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