ざくざくアクターズ二次創作 -夢、筋トレ後に浮かぶ汗の如く泡影に消え之く-   作:網場朱鷺

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三滴

 (ようや)く前座が終わり、本番へと突入する。

 

 これまで行われてきた援護射撃で役に立ったのはクラマくんの演説くらいな物であろう。ベルくんの身を削る投資も、直後に起きた惨劇とローズマリーの闇堕ちによって皆の心中からその姿を消している。景品目録まで作って、誰からも忘れられないように壁にでも張り付けておくんだったか。

 

 まぁ後悔後先立たずと言うし、この経験は次回に活かすとしよう。相手がマッスルで演説も8割失敗に終わった今、このイベントが上手くいく事もないだろうし私が失敗から学ぶいい機会だったという事でお疲れさまでした。

 

 如何に恋愛マスターの神算鬼謀を用いた所で、マッスルをモテさせよう等というシヴィライゼーションを黄巾党で科学勝利するような無謀な試みに挑むのは無理があったのだ。

 

 今から無為な時間を()ごす訳だが、夢の中なら無駄になる事もないので感謝して欲しい。マッスルとのお見合等という、災厄の渦に巻き込まれた者たちへ哀悼の意を表しながらトップバッターの名を読み上げる。

 

【デーリッチ】

 

「さて、それではデーリッチさん……あれ? 何処行ったんですか?」

 

 名前を呼ぶも、その姿の影も形も見当たらない。ローズマリーも今になって気づいたのかキョロキョロと皆と一緒に辺りを見回している。

 

 あのじゃじゃ馬から目を離すとは、保護者としての自覚が足りてないのではないか。プリシラを見習って四六時中トイレからお風呂まで見張る意気込みでいて欲しい。

 

『ぬん! デーリッチ一番乗りぃーっ!』

「い、いつの間に……」

 

 モニターからうっとおしい程に元気な声が響き渡る。

 

 案内をされるまでもなく勝手に部屋に入り込み、先陣を切るべく椅子に飛び乗って名乗りを上げる。

 

 そのお見合いに似つかわしくない勇猛果敢な突入を待ち受けるように、テーブルに並んだ食器からは様々な菓子が伏兵の如く現れる。相手の望む食べ物を、鏡に映すように読み取って出現させる夢の食器を前に目を輝かせる国王陛下。

 

 料理を通して味を共有し、そして互いに美味への共感を生む食事という行為は非常に優れたコミュニケーションツールと成り得る。

 

 相手が求め、愛してやまない物へ同じ想いを抱く。異常な独占欲に支配されている訳でもなければ、それは他者との繋がりを生み孤独から救い二人の関係を作り出す手助けとなる。よって当然ながらマッスルではなく、相手側の好みを反映して食事が出てくる設定になっている。

 

 そういった諸々のセオリーを完全に無視してケーキやプリンを(むさぼ)る国王陛下がお見合いの先鋒を務めていることに、マッスルも面を食らったらしく頭に疑問符を浮かべて狼狽(ろうばい)している。

 

『な、なんだぁ? お見合いってお前、デーリッチとぉ!?』

『およ、聞かされてないんでちか。女神様からのサプライズなんでちかねぇ』

『あいつ一体どういうつもりだよ……』

 

 バクバクと眼の前の菓子を食い散らかす国王を訝しげに見つめながら、神の計略へ疑念を抱く浅はかなる牛男。順当に大人組を狙えるような恋愛力も持っていないのだから、お子様勢に気の迷いが生じることを祈ろうとは思わないのか。

 

『まぁまぁ。ブリちんも賛成して、ローズマリーもそれにゴーサインを出したしきっといい結果になるでちよ!』

『ほ、本当か!?』

 

 懐疑心を剥き出しにしていた眼が、二人の名前が出た途端に嬉々として目を輝かせる。

 

 何故、神の考えに疑念を持っておきながら、カビの生えた古代の遺物と小賢(こざか)しいばかりの人間を信じようというのか。手間暇をかけ、様々な段取りを組んで今この場で一番の味方をしてやっているのはこの私だと言うのに。

 

『子供達は何処の馬の骨ともわからん奴に、騙されないようなんちゃらかんちゃら! 大人たちもまたかんちゃらなんちゃら!』

『はぁー……なるほどねぇ』

 

 合間にお菓子を口に詰め込みながら紡ぎ出される、謎の言語によって意思疎通を図る二人。これもマッスルワードなのか、魔法のみならず物理奥義を使いこなす肉体派の国王であれば筋肉に精通していても不思議ではない。

 

 メニャーニャ先生の語学講座に期待して目を向けてみるも、涼しい顔で疑問を抱く様子もなくモニター越しの会話を受け入れている。もしや皆、かくかくしかじかで会話ができちゃう人達なのだろうか。

 

『だからみんな出来るだけ前向きに、このお見合いに参加してくれる事になるでちよ!』

『ブ、ブリちん……マリーの姉御……ありがてぇ……ありがてぇ……っ!』

 

 このお見合を後押ししてくれた彼女達の心意気に胸を打たれたのか、感涙に(むせ)び泣く牛男。

 

 お見合の企画を立案し、失敗に終わったとはいえ予行演習に付き合ってやり、そして司会まで務めてやってる私には笑顔でアリガトよの一言で済ませた癖にこの扱いの差はどういう事だ。片や私の意見を王国の為に利用しただけ、ローズマリーに至っては反対派だったものを説き伏せての意見だというのに。

 

 彼の事を一番に考え、動いてやったのはこの私だ。まるで手柄を横取りされたような気がして苛立つばかり。この胸の不快感もマッスルの不敬な態度へ(いきどお)っての物に違いない。

 

『んっぐぐ……しかしマッスル、甘えっぱなしは良くないでちよ』

『え?』

 

 二人の知者からの所見を聞き、お見合い計画に明るい見通しがたった事を伝えた所で待ったを掛ける国王陛下。

 

 口内に残った菓子を飲み込み、口元に付着したホイップクリームを舌でベロンベロンと舐め回しながら眉間に皺を寄せ、まるで威厳のないしかめっ面を作ってマッスルに向き直る。

 

『そもそもお前が彼女が欲しいと言い出した事を、お膳立てから何から何まで人任せ。願いの欠片を集めるのは頑張ったと思うけど、それにかけた労力の分だけ自分の好きな人に気持ちを伝えられた筈でち!』

 

 厳しい意見が飛びしたが、概ねその通りであろう。世の中ただ頑張れば報われるという事はない。考えるのを放棄して他人に努力の結果を委ねては、その結果がどうなる事か分かろうはずもない。

 

 だからこそ普通なら、この人こそと自分の意志で決めた人へお近づきになるべく、様々な趣向を凝らし相手に受け入れられる努力をするものだ。

 

 寛大で心が広くて器の大きい慈愛に満ちた私だからこそ、大目に見てやりこのような機会を授けてやったのだ。それを国王の言葉で思い返し、泣いて感謝の言葉を述べるがいい。

 

『うっ……そ、そうなんだが……』

『まぁこんな行動をとってしまった理由、わからんでもない。皆のことが好きなんでちよね? その中の特別がわからなくて、全員とお見合いすることにした訳でちか?』

『女神様の案なんだが、俺もこれでいいと思っちまった……誰か一人ぐらい、俺を好きになってくれる人が居るんじゃねぇかって……』

 

 マッスルらしからぬ弱々しく切実さを訴える声から、彼女いない歴によるコンプレックスの根強さが伺える。

 

 こんな反応を見せるのはマッスルだけなので気にしすぎの様に見えるが、二十かそこらになって彼女の一人も居ないのは普通に考えて憂慮すべき事態なのだ。特に彼は年齢のみならず健康な肉体に加えて仕事も順調、そして本人も彼女募集中の身と有っては独り身で居る理由がない。

 

 アルフレッドくんやクラマくんの様に、気が向いたら何時でも連れ合いを作れるような身分ではないのでチャンスを見逃せないのも当然である。

 

『マッスルのそれ、デーリッチみたいなお子様の好きと大してかわらんでちよ。みんなが好き。その中でも特別な人を探したくて、だけど自分じゃどうしていいか分からないから相手に寄り添ってきて欲しい。そんな贅沢いう子はお子様組にもおらんでち!』

『うっ……か、返す言葉もない……』

 

 だからといって恋愛の不文律が覆されるものではない。ただ一人の想い人へ、自分の出来得る限りをするのが正しい形である。魅力的な女性陣に囲まれて、自分の意思で相手を決めかねているので相手側の意見で決めよう。等というのは恋とも愛とも言えないだろう。

 

『自分の気持ちを探す過程、伝える過程で相手を傷つけたり不快にするのが怖い。だから相手と気持ちを伝え合う場を用意して、相手から言って貰えば自分を袖に振る位どうって事ないだろう。大方そんな考えだとして……ナメてんでちか!? お前に対して恋や愛を抱いて無かったとしても、みんなお前のことが大好きなんでちよ? お前が抱える不安は、そっくりそのまま相手が抱く事になるんでち』

『デ、デーリッチ……そうかもしれねぇ、俺が浅はかだったんだ……』

 

 王の叱責を受け、初回からヘコまされてしまったマッスル。これは私にも計算外だった。ハーレム作る訳じゃあるまいし、全員に気持ちの確認をするだけと開き直れば道義を通せるかと思ったがこんなに速く逃げ道を塞がれるとは思わなかった。

 

 この指摘はローズマリーにされなかった以上、もう少しお見合いが進行してから受けるものだと思っていたが、子供の癖にちゃんと物事の本質を見る眼が備わっている。

 

『筋肉に休んでる暇なんてねぇとか言っときながら、悩む暇が出来るとこれなんだから……まぁこうなった以上はしょうがない。マッスルも、デーリッチ達と一緒に相手へ抱く気持ちを整理するでち!』

『あぁ……けどよ、実際どうすりゃいいんだ?』

『簡単でちよ、これからみんなに自分の中にある好きっていう気持ちを正直に打ち明ける! そうしている内に、特別な好きを持った相手にその想いを伝えられる筈でち!』

 

 考えてわからないなら当たってみろとは、やはりあの子も筋肉の化身なのか。やる事は変わらないが女性と見れば手当たりしだいに声をかけて回るという訳ではなく、自分の持つ気持ちを確かめたいという動機を確立させれば相手への不快感はゼロに出来ずともそこそこに解消されるだろう。

 

「しかし、結局の所は数撃ちゃ当たるか……」

「実際のお見合いだって、相手側に何人目か伝えてないだけで大勢と相手してる事もあるだろうよ。それをハッキリさせてるだけマシだと思ってくれねぇか?」

 

 早速ゼロに出来なかった分の不満がぶち撒けられるも、現実に起こりうる悪いパターンを想定して夢のお見合いと対比する事で諌める古代の遺物。

 

 確かに大いに有り得る話では有るが、お見合いへの幻想を叩き壊すような現実を突きつけてまで、マッスルの擁護に周る彼女の真意は一体何処にあるのだろうか。

 

「なんか妙にマッスルの肩持つよねブリちん。お見合いしたかったの?」

「へへ……オレの番が来たら話してやるよ」

 

 首をかしげて尋ねる雪乃も、自分で言っておきながらその意見が腑に落ちないといった様子でいる。

 

 それもその筈、マッスルに好意を寄せてお見合いに望みたいのならば、皆が抱くマッスルの好感を気にかけたフォローはしない筈だ。明らかに周囲を後押ししているように見える。

 

 楽しげに笑っている彼女の瞳に浮かぶ光は、水気の中に映し出される物ではなく金属の(きら)めく光沢で出来ていた。瞳に宿(やど)る暗い(かげ)りは、単に年月を(かさ)ねた金属が輝きを失っただけの物なのだろうか。その無機なる光が、快活に笑う彼女と違って淋しげに見えるのは気のせいだろうか。

 

『うーん……お前が言うならやってみるか……』

『それじゃあ早速、デーリッチで試すでち! バッチこーい!』

 

 当の庇護下に置かれる者はそんな事も(つゆ)知らず、国王の案に則る事にした様だ。コホンと咳払いをすると、改めて目の前でマッスルからの答えを座して待つ国王陛下に向き直って口を開く。

 

『その、なんつったらいいのかな……まずは礼から言わせてくれ。ありがとう、デーリッチ。お前が王国に入れてくれたお陰で、俺は人を騙して独占してた石ころを売るような生活から抜け出せた。鉱夫共もクソ野郎ばかりだったし、それを悪いと思った事はねぇ。俺があの生活の中で一番嫌だったのは、あいつ等と同じ様に相手を騙して利益を毟り取ってた俺自身だったんだ』

 

 真っ向から自分の気持ちを正直に打ち明け、国王との出会いとそれが(もたら)してくれた恩恵に感謝を示す。正当な対価を得るために不正を働いた矛盾が、持ち合わせていた正義感との軋轢(あつれき)を生み彼を苦しめていたのだろう。

 

『お前が国を(おこ)さなきゃ、きっと俺はあの鉱山みたいに薄暗くて埃っぽいシケた人生を送ってた。お前が居るから、俺は正しい道を真っすぐ進んで行けるんだ。今の俺が居るのは、お前のお陰だ。その明るさで、素直さで、そして度胸と根性、優しさと勇気で、俺を含めたみんなをここまで引っ張ってきてくれた。お前は最高の王様だよデーリッチ。これまでも、これからもお前よりすごい王様なんて現れねぇ』

 

 恩人であり、主人であり、そして何より親友である王への親愛と尊敬の思い浮かぶ限りが言葉に込められていた。彼の抱く敬慕の情が(まぶ)しく、目も(くら)むような威光に思えてモニターから目を背ける。

 

 神でありながら、私は今まで何をしてきたのだろうか。今の仕事は水着イベントの実装以外に功績は無く、転売で利益を出しながら身銭を切るのは欠片8個のレアパッシブを渡す時だけ。前職で私を夢に見て、それで成功を収めない者は呆気なく見放し、それより前は親にすら見切りをつけてここに居る。

 

 ただのはぐれの少女である彼女は、今まで何をしてきたのだろうか。並の人間に毛が生えた程度の力と魔力で始めた旅で、悩める者、孤独な者に手を差し伸べ続け紡いだ絆は、今日ここに至る道となり王国という形を残している。

 

 はぐれに生まれた不運、何一つ持たぬままこの世界へと放り出された逆境を乗り越え、掴み取った彼女の現在(いま)は何物にも代え難く、何者も犯すこと叶わぬ光り輝く未来へと繋がっている。それが今居る王国民全員で届かない未来であっても、それを掴める絆になるまで王国の輪は広がって行くのだろう。

 

 夢の事象化、女神の権能。神として生まれ持ったこの力は、私に何も残してはくれなかった。夢、幻の如くなり。人の残した言葉が、頭の中に響き続ける。一日を夢の中に入り浸って送って来た今日までの生が、(うつ)ろな幻の中に居たような気さえしてくる。

 

 二十の(よわい)で得られる経験を、全て幻の中に置いてきた女。だから背が低いんだ。だからワガママなんだ。だから恋もした事ないんだ。だから――だからこうして、自分の弱さに理由をつけて、周囲や育ってきた環境に当たり散らしているんだ。

 

 目の前で無力だった筈の少女が王として後光を放つ所を見れば、これまで失って来た全てが自身の弱さに起因している事をどうしようもなく悟ってしまう。

 

『ふふん! それほどでもあるでち……という訳で』

 

 マッスルの抱えていた彼女への気持ちを、卑下する事なく素直に受取る。それが当然と(おご)るような口ぶりとは反対に、その無邪気な笑顔を見れば調子に乗って愛嬌を振りまいているだけなのだと分かる。

 

 気づけば啓示を待つような心持ちで、彼女の口が開かれるのを見つめていた。その姿が、心が人を惹き寄せるなら、その一端に触れれば私が失ってきた何かが身につくような気がして。

 

『不束者ですがよろしくお願いするでち』

『ん?』

 

 ん??

 

『しかと伝わったでちよお前の気持ち……でもデーリッチは国王の肩書を捨てたくないのでマッスルが女王でち』

『んん???』

 

 オーケー、私がバカだった。考えてみれば今はマッスルのお見合いなんて、99パーセント純正ギャグシナリオの真っ最中。私が心に抱えるシリアス等、僅か1パーセントの抵抗に過ぎない。

 

 このアホに期待した自分が恥ずかしい。穴があったら入りたい気分だった。

 

「性転換したら余計モテなさそうだけど……」

「ジェンダーフリーの世の中とはいえ、女同士って所にツッコミも入れられないのは息苦しいぜ。なぁマリー……」

「デーリッチ……私の手を離れる程に……大きく、グスッ……なったんだね……」

 

 マッスルのTSという(おぞ)ましい妄想や世俗への不満を混じえたジョークも耳に入らぬ様子のローズマリーが、デーリッチの巣立ちを前に泣きながらお(ひつ)に入った赤飯をよそっていた。取り調べのカツ丼といい何処から食い物出してくるんだこいつ等。 

 

「ごめんね……素直に、喜んであげられな……ぐってぇ……ヒック……」

「い、いかんのじゃ! マリーがボケに回ってしまっては王国のボケツッコミの黄金比が乱れ、国民の九割九分九厘がボケ通しの世紀末になってしまう! 行くなマリー! わらわを置いて行かんでくれぇ!」

 

 余りにも大きすぎる責任を背負う王国参謀ローズマリーと、そのボケ堕ちを涙ながらに引き止めるカレー色の姫君。時として負担(ボケ)となり、時として彼女と共に王国内に蔓延(はびこ)るボケの芽を摘む戦友(ツッコミ)慟哭(どうこく)木霊(こだま)する。

 

 ローズマリーとの絡みもあって、ツッコミライン寄りのサイドバックがメインポジション。それでいて際どい服装や、イメージカラーであるカレーを用いたボケへの参加とマルチな分野に活躍を見せる。だが相方を失い狼狽(うろた)えるその姿を、王国の凶悪なボケ担当が見逃すはずもない。

 

「ヒャッハァ! 妖精王国のお通りだぁー! 手始めにティーティー様の紅茶をミルクティーにしてやるぜぇ……このモーモードリンクミルクプロテイン味でなぁ!」

「だぁーっ!? 止さんかバカタレ!」

 

 高い知性と教養からくる頭脳的なツッコミを得意とするティーティー様だが、その小さな身体はフィジカル面が致命的に弱く、体を張ったボケにはついていけない(きら)いがある。チーム妖精王国はツッコミ不在の苛烈なボケによる超攻撃的スタイルを信条としておりその猛攻を食い止める手立てはない。

 

 守備の要であるローズマリーを欠いた王国の貧弱なツッコミラインでは、怒涛のボケは止められない。今こうしている間にも解説の追いつかない速度で、悪童ヅッチーによる魔の手は迫りついには乳製品だからと○ルピスまで入れられてしまった。お子様の味覚ならば紅茶よりも乳酸菌を選ぶのも致し方ないことである。

 

『いやいやいやいやノーノーノーノー……いやお前のことは尊敬してるけどね?』

『それじゃあ夢から覚めたら早速、サムサ村の畜産家に去勢をお願いするでちよ』

『せめて医者使えや! 家畜扱いじゃねぇか!』

 

 モニターの中でキレの良いツッコミが冴え渡る。今こそ鍛え抜かれたフィジカルを発揮し、悪逆の限りを尽くす妖精王国の侵攻をその身を持って止める時だが、男性の象徴を失おうとしている状況下でデーリッチのマークを外す訳にはいかない。マッスルとローズマリーの居ない王国ツッコミラインのなんと虚弱な事であろうか。

 

 しかし球技物にチームの欠員アクシデントは付いて廻る物。その場の主導権(イニシアチブ)というボールを、ボケツッコミで奪い合うこの戦いもまた野球、サッカー、クリケット、セパタクローに次ぐ球技としてカウントすると考えれば致し方ない事である。

 

『むぅ、女王が嫌なら仕方ない。国王である以上、この責務を人に預ける事などできんでち……お前の気持ちに答えてやれぬデーリッチを許してくれ……!』

『なんで俺がフラれたみたいになってんだよ……』

 

 ツッコミをスルーして強引なボケでマッスルを振り抜く、魔法タイプとは思えないフィジカルを見せて軍配を上げる国王陛下。去勢を回避できた事で気が緩み、油断をつかれてしまったのか。

 

 ツッコミのキレ、何時でもボケに回れる取り回しの良さ、優れたフィジカルを持った名ディフェンダーだがメンタルの弱さが気にかかるので監督には気をつけてケアして貰いたい。

 

「ヒャアッ……」

「こら! 大人しくしないと、おやつのプリン抜いちゃうぞ!」

「復活早っ!?」

 

 マッスルの元へ我が子を送り出す心境で居たローズマリーの誤解が解けると、光の速さで戦線に復帰。猫の首根っこを引っ掴むように、ボケ界のエースストライカー妖精女王ヅッチーを軽々とあしらってしまった。

 

 フィジカルこそ一般女性の域を出ないが、妖精の首詰め投石等の悪魔超人も真っ青の残虐にして凶悪なメンタリティ。そしてキレ、テクニック、テンポ、リズム、コク、まろやかさを渾然一体に同居させる完璧なツッコミを併せ持つ彼女が、王国のツッコミラインを鉄壁の要塞と化している。

 

 この無敵要塞を無傷で突破したものは未だ(かつ)て一人として居らず、クソ寒いダジャレを言わせてボケに参加させツッコミラインに穴を開け、ブリザードXX(20)程はある猛吹雪の中を強行する位しか攻略法は確立されていない。

 

『まぁデーリッチの答えはもう出てるでち。王国の仲間なら誰がこようとデーリッチは拒まん。一人一人に対して特別な好きを持ってて、誰が相手でも幸せになれる自信があるし、相手に幸せになってもらえるようにデーリッチに出来ることは惜しまずやったる! ……とは思うんだけど、特別ではあってもこれって所詮お子様の好きなんでちかね?』

 

 すっかりボケツッコミ選手名鑑の解析に熱が入って忘れていたが、そういえば望みも希望も未来もないお見合いを進行していたんだった。個人的な一押し選手はマーロウさんなのだが、出番が終わってしまった事が悔やまれる。

 

 アルフレッドくんにクラマくんにマーロウさん、三人もイケメンプレイヤーを取り揃えた王国球技業界の明日が気になる所では有るが、今は空の宝箱を漁るに等しい形式だけ整えた茶番劇の行方に目を向ける。

 

『でも挙式に良くある二人で病めるときも、悲しいときも、貧しいときも変わらぬ想いを貫けるかって聞かれる奴? あれ当たり前過ぎて、誰が相手でも変わっちゃうのが想像できんでちよ。そもそもローズマリーとの二人旅が悲しみと貧しさの連続だったし、マナ切れで病める時もあったけど今じゃ乗り切った後だし』

 

 恋慕の情はなくとも、誰に対しても愛する人として接することが出来る。男女の愛を知らぬが故のアガペーが、今出せる彼女の答えであり、悩みだった。

 

 言葉だけ聞き(かじ)れば、相手が誰でも構わない軽薄な言い分にも聞こえる。

 

 だがこれまでの行動で、彼女は国民に対して無償の愛を示し続け実践してきた。人の世に満ちた偽りの平等ではなく、真に公平なる慈愛を以て絆を紡いだ者を愛するだろう。主なる神の()く無償の愛、実践しているのが天に残る我々ではなく年端も行かぬ少女ただ一人とは皮肉な話だ。

 

 王の素質もまた、本質的にそうした子供の物なのかもしれない。暗君と呼ばれる者には幼少の内から王政につき、子供で居られる内は善政を敷くが後に暴虐を尽くすようになるパターンも多い。子供の内にしか持ち得ない何かが彼等の中に善性を留め、そして大人になって失われていくのだろうか。

 

 彼女を王とする危うさはそういった所にもある。自己犠牲を厭わない優しさ、無限に思える愛、それらを持ったまま大人になる者が一体この世の何処にいるのか。

 

「ヒュウーッ! ノロけるねぇあの子も!」

「赤飯よそってあげようか?」

「か、からかうのはよしてくれ……」

 

 病も悩みも悲しみも、共に乗り越えてきた王国の女房役。言葉の綾になるかどうかは互いの合意一つの所まで来て、その関係を責付(せっつ)かれるようにして弄ばれている。

 

『なるほど、そりゃあお子様の好きじゃねぇな……』

『およ?』

 

 自身で出した愛の答え。その形がどう称呼される物なのか分からずに、幼さから来る無理解でしか無いのかと悩む王へと向かってそうではないと否定する。

 

『そいつは王様の好きだよ。俺達の誰とでも心を通わせられる、みんなを愛して愛される最高の王様じゃねぇか』

『マッスル……』

『恋だのなんだの、今は持ってなくたっていい。何時かただ一人、この人だけはとお前の方から思える特別な人が出来ても、他のみんなに今と変わらない愛を持ち続けていてくれ。そうすりゃ何時までも、お前は俺達の王様だからな』

 

 愛の形は一つではない。今ある愛をそのままに、何時か見つかる愛には何時か答えを出せばいい。

 

 体良く言った所で要は保留だが、今ある気持ちに整理をつける話だったのでこれでいいのだろう。彼女の歳でそれが見つからない事を焦る必要は無い。

 

 自己犠牲を(いと)わない優しさ、無限に思える愛、それらを持つ大人達はここに居る。それは持ち続けて大人になったのではなく、彼女との出会いで与えられた物。なら同様に、何時か彼女が大人になって失ったとしても周りのみんなが与えてやればいい。

 

 愛の円環。与えられることに甘んじて、愛を返さない者に失望し消えて行く絵空事。形骸化した化石のような理想、そう思っていた神の教えは目の前で息づいているような気がした。

 

 彼女が自ら築いた愛を目の当たりにして、何時もの様に無邪気な顔で微笑みかける。見ているだけで、釣られて笑顔になってしまいそうな輝かしい笑顔。春の日差し、その下に咲く花、優しく暖かに包み込む物に形容される朗らかな笑み。

 

 私にもかつてあんな顔が出来たのだろうか? 同い年程の童女の姿をしていても、私の笑みにあの輝きが宿ることはない。きっと卑屈で、皮肉っぽくて、嘲笑混じりの嫌味な笑みを浮かべる筈だ。私から失われて久しい純真な笑みを(たた)えた口が開かれる。

 

『彼女も出来たこと無いのに、よく恥ずかしげもなくそんな事言えるでちね?』

『王が言葉のナイフで臣下を刺すんじゃねぇ!』

 

 オチをつけないと死んじゃう病気なのだろうか? シリアスムードによる華麗なフェイントからのステップインで、マッスルが二十余年思い抱いてきたトラウマは幼年期特有の残酷さを秘めた無垢なる笑みで引き裂かれた。殺気をまるで感じさせない必殺の隠し剣が、分厚い筋肉の下に隠されたハートへ向けて虎の爪の如く突き立てられる。

 

 神と人とで過ごした歳月の重みこそ違うが、同じだけの恋人募集期間を積み重ねている彼がこんな扱いを受けるのを不憫に思う。憐憫の念を持って弔いたい、南無三。

 

『そいじゃ、しっかりやるでちよマッスル! お前が当たって砕けて粉微塵に粉砕する所を、控室から見届けさせてもらうでち!』

『テメェ覚えてろよ!? 俺がどれだけモテるか、しかとその目に焼き付けてやらぁ!』

 

 手を振り去って行く国王の背へ、涙目で捨て台詞が投げかけられる。しかし悲しいかな、存在しない事象を焼き付ける便利な機能というものは我々の眼球に備わっていない。

 

 負け牛の遠吠えを部屋へ残して扉を開き、モニターから姿を消すと数分としないうちにこの部屋へと姿を現した。

 

「国王陛下の、御成(おなり)ぃ~!」

「御成は貴人の外出や来訪を意味する言葉であって帰還の意味じゃないからね?」

 

 返ってきた国王に、ツッコミと共にさりげなく知識を詰め込むことを忘れない教育者の鏡。その教鞭を振るう手腕は称賛に値するが、保護者としては甘やかしすぎなので厳し目な躾けを要求したい。

 

「言うべき事も言ったし、これで露払いも済んだ所で……後は煮るなり焼くなり好きにするでち!」

「スキヤキ! ハオ、スキヤキ食べたい!」

「物理的な話じゃなくてね!?」

 

 本人の預かり知らない所で、フォンドボーからステーキまでなんでもござれと予約を受け付けるベスト和牛。案の定言葉通りの意味に捉えたハオが、口の端から涎を垂らして期待に目を輝かせている。

 

 ボケに定評のある国王だが、実は鋭いツッコミの刃を隠し持つオールラウンダーでもある。フォワードからボケ寄りのミッドフィルダーが主戦場だが、意表をついたツッコミラインへの配置も悪くない。とはいえセンター配置は持ち味のボケが死んでしまうのでサイドバックに置いてボケとツッコミの間を走らせたい所だ。

 

 食卓を彩る一品になりかけたとは知る由もないモニターの中、一層不安そうにせかせかと手汗を(ぬぐ)い一人残された部屋で左右を見回すマッスルに、先の大言を実現させるような予感はまるで感じられない。

 

 それでもやるべき事は王から下った訓戒により示された。皆が抱える共通の不安、それを配慮して相手の気持を推し量り、そして自分にある気持ちを見つけられるかの舵取りはマッスル自身がするべき事であると。

 

「全く手のかかる奴だぜ……仕方ねぇ、付き合ってやるか!」

「ヅ、ヅヅヅヅッチィー!?」

 

 ハグレ王国お子様部、悪ガキ代表イカヅチ妖精ヅッチーが名乗りを上げると、この世の終わりを目にしたかの様に震え、嘆き、絶望に身を(よじ)り整った顔立ちを自身の頭髪よりも青くしたプリシラが泡を吹く。

 

「言いたいことはデーリッチに言われちまったからな。断りもなくこんな所に呼び出して、自分の気持ちに整理もつけれない分際で彼女が欲しいとは片腹タケミナカタバーストよっ!」

 

 笑いすぎて腹が痛い例えの筈だが、まるで鳩尾(みぞおち)に雷神の加護を宿した必殺の一撃を叩き込んで殺害を図るような言葉になってしまった。妖精王国の教育担当は意識不明に陥り、先のローズマリーの様に訂正してやる事も出来ずに椅子の上で首を(もた)げている。

 

「しかしマッスルが自分の中にある気持ちを探したい、誰かと紡ぎたいというならこのヅッチー……愛の妖精として奴を導く煌めきとなる事も(やぶさ)かではないっ! 言葉にしなきゃ分からない気持ちの中で、アイツや私達が自分でも気づいてない愛を抱えているのなら……お互い答えを出して突きつけてやろうぜ、なぁプリシラ!」

 

 彼女の言う付き合う、とはお見合い参加への意思表明であってマッスルとの交際を意味するものではなかった。ブクブクと気泡を口から漏らして喉につまらせ、酸欠に痙攣しガクガクと頭を振って答えるその姿を賛同と受け取ったのか満足そうに鼻を鳴らして胸を張る。

 

「しょうがないのう……わらわも一肌脱ぐとするか!」

「うふふ、縁結びも福の内。なれば今こそ、王国に最大最高の福を(もたら)す時かもしれませんね」

「うーんポッコには既にクラマくんが居るですからぁ……貞淑な妻としては、相談に乗ってあげる以上のことは出来かねますねぇ」

 

 妖精女王の気勢に答えるように、皆の不満がまた少し氷解して行く。まるでマッスルにモテ期の風が吹こうかとしているような、非現実的光景。

 

 その様相を見て、胸中に広がるのは不安であった。

 

 不安。先程から感じる不快感の正体はこれなのだろうか。しかしお見合いに明るい見通しが立った所で、何を危惧する必要があろうか。これが成功すれば水着イベントに次いで、婚活コンサルタント及び縁結びの実績を積んで更なるキャリアアップまで目指せるというのに。

 

 いやいや所詮はニワカマッスル。どれだけ好感触を得た所で、結果に繋がる事なくこの浮かび上がった出世街道も夢と消え之く。私はきっと、それが心配なのだろう。期待を抱かなければ、胸に広がる奇妙な動悸も収まる筈だ。

 

 そうは思えどその不安はしこりの様に残されて、胸を打つ鼓動を重く沈ませたままだった。

 

【ローズマリー】

 

「眠りから、覚めても続く夢現(ゆめうつつ)。不安と猜疑、欺瞞と弁明の交錯する只中で開かれた扉の先、かつての友と望まぬ形で再開を果たす。次回「お見合い」甘く微睡む夢で飲む、マリーのコーヒーは苦い…!」

「何故ホードボイルド調の次回予告を入れたがるんだ……?」

「これから30人近い王国民を呼び出さなければならないので、少しでも変化を加えてマンネリを防ぎたいんです……」

 

 みんなもオールスターで話を組む時は、こんな行き当りばったりの○ン肉マン式プロット法は用いず計画的に考えよう。一人のパートに約1万から2万字程使っているので、このまま行くと完結する頃には30万から60万文字になってしまう。馬鹿な奴だと笑って欲しい。

 

「それじゃあ行ってくるね、良い子にしてるんだよ」

「むうっ、デーリッチは何時だって良い子にしてるでちっ!」

 

 そんな間抜けな失敗談とは縁遠い、知恵者ローズマリーが立ち上がる。机の上に纏めていたファイルを掴むと、国王陛下の頭を撫でて、言いつけを残して扉を開く。

 

 反対を押し切ってのお見合い決行だった事もあり、彼女の心中にはまだ反マッスルのしこりが残っている事だろう。

 

 例えそれが無かった所で、相手は才知に溢れ建国の時より政務の経験を積み、戦時に於いては陣頭に立って戦いながら指揮まで取る稀代の名参謀。マッスル程度の男を歯牙にかけている筈もない。

 

 取り敢えず笑いを取って、モニターの前に居る国民を退屈させない様にして後続へ良い空気を繋ぐのがベストだろう。

 

 そんな事を考えていたのだが、扉に入ってから寸刻を経て未だその姿は見えずに居た。先程手にしていたファイルをどうこうしているのだろうか、時間無制限の夢の中とはいえ後に(つか)える人が居ることも考えて欲しい物だ。

 

「遅いなマリーの奴……トイレか?」

「マッスルさんを見るに焦りや動揺といった精神的な反応で汗は流れるようですが、夢の中ですから代謝機能は働いてないでしょう。それから先輩はデリカシーを学ぶべきですね」

 

 暇を持て余し寸劇を始め出す者、テーブルに突っ伏して眠りに落ちる者、良い子にしてろと言われたのに先程までティーティー様にぶち込まれていたモーモードリンクミルクプロテインカルピ○のミックスティーを誰が処分するかで争い合う者。

 

 三者三様に暇を潰しだせば、扉が開かれるまであっと言う間の事だった。

 

 そして開いた扉の先を見て、今度は実際にあっと声を上げる事になる。

 

『す、すまない。待たせたかな?』

『……』

 

 驚き戸惑い言葉を失う牛男だが、そうなるのも無理はない。

 

 何時も(かたく)なにオシャレを拒み、ボロボロにほつれた緑一色(リューイーソー)でも狙っているかのように野暮ったい深緑のローブと帽子を脱ぎ去って、羞恥に高揚し頬を染める少女が見せる新たな装い。

 

 首元に余裕を持たせたタートルネック、グリーンのニットシャツの上から黄褐色のカーディガンを羽織って膝丈のブリーツスカートで締める。彼女らしい落ち着いた服装、イメージチェンジというにはもう少し冒険心を見せて欲しかった所だが突然の変身に控室は騒然としている。

 

(え……これどういう事? まさか俺に見せるためにわざわざオシャレを……? そ、それってつまり……?)

 

 そんな都合のいい夢想が透けて見えるかのように鼻を伸ばし、大胸筋を期待で膨らませる牛男。

 

 なんと浅ましく浮泛(ふはん)で軽薄な男であろうか。ニットシャツのモコモコ感が見せる柔らかな雰囲気と、それをカーディガンで包み込むような穏やかさは飽くまでファッション。

 

 その中身は妖精の首を笑顔で切り落とし、投石機に詰め込む事に何の躊躇(ちゅうちょ)も抱かない女だという事を忘却の彼方へ置き去りにしたマヌケ面に怒りが湧き上がる。

 

『マッスル……』

『ハ、ハイ!』

 

 名前を呼ばれ、上ずった声で勢いよく返答に応じる牛男。その伸ばされた鼻先に、彼女が手にしたファイルから数字の羅列とグラフが敷き詰められた書類が引き抜かれ突きつけられる。

 

『先の会議で君の税収には前回比マイナス16パーセントもの差異が出ている。私はてっきり君が経営難に陥ってるのかと思って、幾つかの手を考えてきた。一つは味の改善、内容物の栄養価を損なわずに美味しくしてくれという難題にキャサリンが協力してくれている』

 

 お見合いの場で突如として行われる粛々とした収支報告、及び経営改善の提案。思わせぶりな着替えをフェイントに、ボケで突っ切るのかと思えば真面目な顔で二枚目の用紙がマッスルの手元に渡される。

 

『次に広告塔の拡大だが、これは秘密結社活動での宣伝の他に、ベスト和牛に参加しているライバル達の所属企業へも声を掛けている。肉ボクシング協会帝都支部、ステーキハウス筋、トウトツハッスル……皆、君の為ならと快くタイアップを引き受けてくれたよ』

『か、会長……筋ちゃん……ハッスルまで……! 皆、ありがてぇ……』

 

 ベスト和牛で凌ぎを競い合うライバル達との熱い激闘を思い返し、そして本編とは全く無関係の所で紡いだどうでもいい絆に感極まったマッスルの眼に熱い汗が流れ落ちる。

 

 そんな事より、トウトツハッスルとかいう謎企業について説明して欲しい。このままでは気になって夜しか眠れなくなってしまう。

 

 ライバル達の熱い申し出に興奮冷めやらぬマッスルに向けて、普段は利発さを滲ませる涼し気な顔をした彼女が柔和な笑みを浮かべている。

 

『ああ、もっと有難がるといい。君がタワーに入り浸っている間、方々(ほうぼう)に飛び回ったハピコやクラマ、そして彼等への報酬や企業への投資に使われた数十万ゴールドの事もね』

『誠に申し訳ございません』

 

 その微笑みに底冷えする様な怒気が孕まれていた事を知るや否や、一も二もなく頭を下げて謝罪する。

 

『……君がこれまで国営に尽くしてきた事を思えば、この程度は今の私達には端金(はしたかね)だよ。それでも皆が真面目に店舗を経営してる中、つまらない私用で本分を疎かにするなど(もっ)ての(ほか)だ』

 

 実質的に王国の宰相である彼女の身になれば当然の意見だが、つまらないとは随分な言い方をする物だ。

 

 連れ合う人が側に居ない苦しみを、誰も分かってやらないからこそ私を頼りに欠片を20個も集める無茶をしたのである。自分で店舗を経営する責任者としては確かに軽率な行動であったかもしれないが、そこまで言うならば彼に何時、何処で誰と恋をしろというのか答えて見せて欲しいものだ。

 

『……返す言葉もございません』

『……そう思っていたんだが、これは私の落ち度でもある』

『へ?』

 

 彼女の意見に押し負ける。そんな情けない薄弱な意思が私の怒りを煽り立てようとした矢先、まさかの彼女自身からその考えに過ちがある事を告げられる。

 

『本分を疎かにするなと言った事を、撤回する気はないよ。でもバレンタインやクリスマス、イベントの節目に君が独り身で居る事を気に病んでたのは周知の事実。私はそれを知りながら、色恋に口を出すのは政務の内じゃないと放置してきたが、その一方で風紀を守る為とはいえ君に我慢を強いてきた。ベルは子供だから例外としても、人気のない場所で男女二人きりになるような状況は避けるよう定めたりね』

 

 過半数が女性で構成される王国メンバーで、この取り決めは当然であろう。

 

 だが数少ない男性陣に於いて、王国の外で幾らでも女性に当てを付けられるアルフレッドくんやクラマくん。劇座の団長としてメディアへの露出で人気を得ているマーロウさんや、その団員である事に加えて自身の道具屋でも好評を得ているベルくん。

 

 彼等に比べマッスルだけが国外の女性に自身の存在を知らしめる物を持っていない。ベスト和牛によって世のマッチョやグルメリポーターから評価は得ているが、当然ながら女性の眼に止まる興行ではない。

 

 内面でしか勝負が出来ない哀れな雄牛を理解してやれるのは側にいる人間だけだが、深い関係へと発展する状況を規律によって封じられていた訳だ。

 

『君がこれを破ったのは悪夢事件の時だけだし、そんな不埒な事を仕出かす奴じゃないのは分かってる。それでも私は、みんなの安全を確保する為と君に足枷を()めるばかりで、助けになる様な事を何もしてこなかったんだ』

 

 規則は弱者を助けるために有る。その基本原則に則って王国女子を守る様に務めてきたが、それによってマッスルの立場や取れる選択肢を狭めてきてしまった事に悔恨の念を浮かべ顔を伏せる。

 

 バツが悪そうに前髪の上に手を伸ばして、慣れ親しんだ帽子の(つば)を掴もうとすればそこに帽子はなく空を切るばかりだった。外していることを思い出したのか、彼女にしては珍しいドジに頬を赤くして所在なさげに前髪を弄って手を遊ばせる。

 

『その、知っての通りウチは女所帯だ。万が一という事がないよう厳しく取り締まってきたのを間違いだったとは思わない。でも誰を害することもなく、身体を張ってみんなを守ってきた君に対して見て見ぬ振りというのは不誠実だったとも思ってるよ。すまなかった』

 

 恥じらいを誤魔化すように話を続け、自らを省みてマッスルの置かれた立場に理解と謝意を示す。

 

 考えるに王国の政務を一手に担う彼女の負担も相当な物。特に規則で縛らずともモテない事実に変わりはないのだし、無意味な配慮に思考を巡らせる余裕などあろう筈もない。

 

 自らの行いを改めるその姿に、振り上げかけた怒りも収めてやるのが大人というもの。なんて冷静で的確な判断力なんだ。これによってクールビューティ部門の投票率は、グッと上がった事であろう。

 

 ブーツ、タワー、天馬、三種の神器を失っても自前の器量と美しさで勝負を諦めない秘めたる意思の強さ。そして更なる計略を巡らす知的な姿勢でポイントを稼いでいく。

 

『い、いやいや! 仰る通りカワイイ女の子に囲まれてる中で、こんな野郎が紛れてたら粗相(そそう)を起こさないよう気を張るのは当然ッスから!』

『それでもだよ。二人きりになる状況を禁止されたら、誰ともそういう関係を発展させるなんて出来ない事に変わりはない。もし出来たら、誰かと二人でお互いをより深く知ってもっと親密になっていた可能性だってあるだろう?』

『そ、それはまぁ……』

 

 それはまぁ、続く言葉は有り得ないである事に一票を投じたい。

 

 自分から女子に話しかける勇気もなく、ロビーで一人ミケランジェロの展覧会でも開いている様に意味もなくポーズを取って、女子に構って貰えるのを待っていただけの奴にどうしてそんな未来が有り得たと思えるのか理解に苦しむ。

 

 ローズマリーも持ち前の知力が泣かないように、普段のマッスルを思い返して欲しい。知力9でこんなバカな事を言っていたら、シノブ以外の高知力組が全滅してアホの王国になってしまう。

 

『それで、えと、私に出来る方法で、君に協力してあげたいと思うんだ……』

『……えっ?』

 

 目を逸らし、またも前髪を帽子の鍔代わりに弄りながら上気した頬を隠すように俯く。利発で大人びた顔立ちをした彼女が、恥じらう少女としての一面を見せる姿は爽やかで仄かに甘い色気を感じさせる。

 

『そ、その、私が……』

 

 化粧っ気のない白い素肌にチークを掛けたような薄い赤味が刺し、何時もの涼し気な顔を崩してオドオドと当惑し面映(おもばゆ)さに口噛みながらも、潤んだ瞳に決意を浮かべて上目遣いにマッスルと視線を合わせる。

 

 また胸が重くなる。這いずり回る鎖で緩やかに臓腑を締め付けられるような、ざわついた不快感が全身に広がっていく。

 

 それが頭に上ると今度は耳鳴りが起こり出す。静寂ではなく、私の脳がその先の言葉を拒むように中耳は音の震動を際限なく増幅させ、聴神経がそれを認識するのを防いでいる。聞きたくない。肉体に拒否反応が起こる程の強い思い。

 

 それなのに、同時にその先が何故か無性に気になっていた。聞きたくないという身体の拒否反応とは裏腹に、どうしようもなく聞きたい気持ちが胸の中で鎖を引き摺って藻掻いている。

 

 感情の二律背反、肉体に拒否反応を起こし聴覚だけが五感の全てであるように脳を(つんざ)耳鳴(じめい)を残す。だが人の脳は騒音の中でも、自分の求める情報を的確に拾い認識することが出来る。

 

 カクテルパーティー効果、フザけた名称で定義づけられた脳の反応。幸か不幸か、音だけの世界になったように錯覚する程の耳鳴りの中で彼女の声は余す事なく私の耳に届いてしまった。

 

『どうしたら君に彼女が出来るか、一緒に考えるよ……こ、こういう話は、苦手なんだけど……』

『……ハイ、有難うございます……』

 

 告げられるのは告白ではなく、ローズマリー先生による恋のお悩み相談室開催のお知らせだった。

 

 不快な共鳴音が耳から離れ、安堵に胸を撫で下ろすと無意味と知りながらモニターに映るマッスルを睨みつける。

 

 本気で落ち込みやがって高望みも大概にせぇよホンマ。マッスルは論外にせよ、彼女も思わせぶりな言動は控えて欲しい。

 

 どうして私がマッスルなんぞの恋の行方に、一々気を焼かなければならないのだ。自分の心中すらも思うままにならない、これが不安発作という奴なのだろうか。年中無休のストレスフルな日々が多すぎたのかもしれない。まぁハグレ王国がタワーに来ない日は休日同然なんだけど。

 

『取り敢えず、前にも言ったけど服装をちゃんとした方がいいよ』

 

 恋の相談室が開かれて、先ず第一声は服を着ろとの指示だった。恋よりも前の段階、人として既に(つまづ)いている。

 

 反論の余地などまるで無い正論、まだ彼女の恋愛力を計り知ることは出来ないが取り敢えず機先を制したと言えよう。

 

『ええ……でも俺の肉体を布切れで隠しちまったら、後に残るのはハンサムだけですぜ?』

 

 この男、なんと服を着ろという一天四海に通じる倫理に対し、己の肉体が持つ魅力を以て真っ向から立ち向かおうとしている。しかも人の神経を逆撫でする自称ハンサムのオマケつき。

 

 魅力2の分際で世の常識を覆せる訳ないだろ(わきま)えろ。

 

『……個人の趣向もあるので、君がハンサムかどうかについては控えさせてもらう。しかし例えば、アルフレッドやクラマが腰蓑一つで町中を歩いていたらモテると思うかい? 彼等の魅力を服が引き立てているように、その自慢の筋肉にも引き立て役が必要なのさ』

『うーん、あいつ等は身体つきが貧相だからなぁ……』

 

 貧相どころかちゃんとトレンドに則った細マッチョ、しかもお前と違って自称じゃない他者から認められるハンサムなんだぞと、厳しい現実で横っ面を引っ叩いてやりたい気持ちに襲われる。正論パンチの喜びを知った拳が、血を求めて唸りを上げる。

 

『でも確かに皆がオシャレしてる中で腰蓑ってのは浮いてるかもなぁ。マーロウさんみたいに腰布ならカッコ良く見えるかもしれねぇ、お互い水着になれば俺も負けてねぇからな!』

 

 マーロウさんに関しても褌一丁になって態々(わざわざ)マッスルと同じ土俵に降りてくれた物を、自分の肉体美で並んだと勘違いする辺りはやはり愚かとしか言いようがない。その上で彼の魅力は4、マッスルの二倍あり全然並んでないダブルスコアの大差をつけて、二人の間にはマリアナ海溝より深い(みぞ)が存在する。

 

『それにマリーの姉御も、何時もと違う服になっただけで可愛く見えるもんな。試すだけ試してみるか』

 

 歯の浮くような台詞を素面(しらふ)で口にしやがって。鏡見てそれ言ってる自分を想像した事がないのかこいつは、寒イボが浮き立つような口先に眉が自然と釣り上がる。

 

『かっ!? からかうなよ……君に服装がどれだけ印象に左右するか実践しようとしてみた物の、見ての通り私が着た所で馬子の衣装にもならない有様だ……』

『いやいや、何言ってんすか! 姉御らしい頭良さそうな感じをそのままに、人当たりも柔らかそうな印象っていうか? 水着の時も思いましたけど、やっぱそういう格好も似合うんだなぁって』

『だ、だから止せってば……』

 

 万年腰蓑の分際で、他人のファッションチェックとは偉くなったものだ。

 

 辿々(たどたど)しく幼稚な表現で読者様のお目汚しをしやがって。利発な印象を損なう事なく温和で包容力を感じさせ、年相応の愛らしさが見えると言えばそれっぽい文章に出来るだろうが。魅力も知力もスカスカな奴はこれだから困る。

 

 ローズマリーも普段しない格好をしているだけで、牛頭の非モテ野郎から賛詞の言葉を浴び満更でもない様子だ。そのようなチョロさで国が守れると思っているのか、マッスル程度も跳ね除けられない女に国防が務まるのか。

 

 こうなるから碌に人生経験も積んでいない小娘に政務を任せてはいけないんだ。それに引き換え私程の女神になれば、可愛い等とは言われ慣れており何も感じる事はない。

 

 学生時代の給食にりんごやみかんを食べてると、ハムスターみたいで可愛いと毎回言われていた実績もある。同じ可愛いという言葉を向けられている上での怒りなので、これは断じて嫉妬ではない。

 

 取り留めのない不快感に(さいな)まれ、それを払拭しようとパタパタとつま先を上げ下げして地面を叩くも、心に立つさざ波は押しては寄せを繰り返して胸中をかき乱す。

 

『私のことはもういいから……! 化粧室に幾つか衣装があったから着替えてきなよ、夢の中なら破れないかもしれない』

『え、トイレで着替えんの!?』

『揚げ足を取るな……! 化粧台と近いほうが便利だからとトイレに置かれる内に混同され、化粧室と呼ばれるようになっただけでトイレのみを指す訳じゃない!』

 

 そういえば何の注釈も入れてなかったし、トイレと思ってた人も居るかもしれない。記述不足による誤解を生む表現があった事をここに深くお詫び申し上げます。極自然な導入で化粧室に(まつ)わる雑学を解説してくれた、王国参謀長官のファインプレーに感謝しよう。

 

『でも急に何か着ろって言われても、何着たらいいんすかね?』

『言っておくが私はもう二度と、君の衣装選びには付き合わないぞ……私のこれはドリントルが一度見せてくれたファッション誌を参考にしたんだ。そっちの部屋にも同じ様な雑誌があるから、参考にするといい』

 

 過去の苦い思い出(ファンブック付属設定資料集、お求めやすいリーズナブルなお値段480円参照。絵日記とセットでの購入がオススメ)を噛み潰したローズマリーに追いやられ、部屋を後にして化粧室へと入っていく筋肉ダルマ。

 

 マッスルを部屋に入れる事を考えていなかったので用意した雑誌は女性誌ばかりだが、彼氏に選ぶべき男性のトレンド等、メンズ特集では我々女子によって選ばれる男性像が解説されているのでより実践的かもしれない。

 

 服に関しても食器同様、夢の衣装棚は取り出す者の望みに答える形で服を生み出すので問題はない。

 

『ウッス! お待たっしゃーした!』

『おや、速かっ……だああぁーっ!?』

 

 さしたる間も置かずに出てきたマッスルは、パンツから伸びた革紐にチェーンのサスペンダーらしき物を通し、そのまま鎖で身体を縛るように固定して如何(いかが)わしいレスラーとなって現れた。

 

 目を背けるように仰天して赤くなった顔と眼を覆うローズマリー。腰蓑姿を見慣れた王国民達も、視界に入ってしまった歪み無き肉体美に頭を抱えている。当然ながらこんな趣味の雑誌を部屋に置いた覚えはないし、買ったこともないのであしからず。

 

『な、なんて格好してるんだ! 速く着替え直してこい!』

『あれ、水着にちょっと手を加えて露出を下げてみたんだけど……』

『ちょっと露出を下げる為に品性をドブに捨ててどうする!』

 

 渋々と化粧室へと引っ込むと、今度は決めかねているらしく間が空いてしまった。

 

 暇を持て余した大人達に先程の格好を始めとして、このままだと子供達の教育に悪影響を及ぼさないかという議題が持ち上がる。しかしそれも普段のマッスルの格好を考えれば今更なので、この話は腰蓑に変わる代替を探す事にして決議は次回に持ち越すことになった。

 

「全く……あんな格好して恥ずかしいと思わないのかしら。それとも普段から腰蓑一つで生活してると、分からなくなる物なのかしらね」

 

 プチ会議を終えたティーティー様を手に、マッスルが羞恥心という物を持ち合わせていない事を嘆くサイキッカー。

 

 勿論その衣装は何時も通り、ピチピチに張り詰めたレオタードにコルセットらしき物を巻いてウェストが誤魔化されている。膝の上まで伸ばされたニーハイブーツは丸太の様に太く、大根の様に白い太腿によってギチギチという悲鳴を上げており、仕上げに頭部へ目玉焼きのアクセサリーを突き刺した前衛的過ぎるサイキッカースタイル。

 

 超特大のサイキックブーメラン発言が飛び出したが、ティーティー様はモーモーカル○スティーのダメージが抜けきらずグロッキー。相方の雪乃は考え事に没頭しており、その渾身のボケをツッコんでくれるような相手は居ない。

 

 しかし能天気に見えるこの少女が、妙に真剣な顔で思案を巡らせる姿に違和感を覚える。マッスルの変態レスラー姿を見て、恥ずかしがる事も嫌悪する訳でもなく逡巡(しゅんじゅん)(ふけ)り込んでいるのは何故か。

 

 気になって目を離せずに居ると、悩まし気な表情のままぼそりと誰にも聞こえないように呟かれたであろう、その一言を捉えてしまった。

 

「雪だるまレスリング部、やっぱ通らないかな……」

 

 その謎に満ちた単語に私が幾許(いくばく)程の恐怖を覚えたかなど、まるで意に介さない様子で頭を唸らせる。マッスルの姿を見て思いついたという事は、そういう格好でするのだろうか?

 

 雪だるまキックなる謎スポーツが孕む闇、深淵へと飲み込む(あぎと)が王国の喉元に毒牙を突き立てようとしているのを、部外者の私は傍観することしか出来ずに居た。大会とかあったら指差して笑ってやろう。

 

『ウッス! 今度のはどうっすかね?』

 

 先のパンツレスラースタイルが心的外傷(トラウマ)になっているのか、マッスルの声にびくりと肩を震わせて戦々恐々に扉を見遣(みや)ると、不満気な顔こそしている物の、今度こそちゃんと雑誌を参照したのかマトモな服装に着替えていた。

 

 腕を()くった青いワイシャツの上に、藍色の袖なしブレザーを通して膝下寸のハーフパンツもブレザーに合わせた藍色の物。

 

 清潔感と清涼感を併せ持った青を基調にコーディネートしつつ、それを着崩す事でちょっぴりヤンチャな印象を残す夏のイケオジ特集の物と見た。

 

 胸元や腕まくりはちゃんとした服を着ながらも、自分の筋肉を誇示したいというささやかな抵抗の表れだろう。それがまた悔しい事に、逞しい胸板と前腕は下手なアクセサリーよりも眼を引くアクセントになっている。

 

『あぁ、良く似合ってるよ。コーディネートはこーでねーと、なんてね!』

『……へ、へへへ』

『あ、笑ったね! 分かってくれるのはマッスルだけだよ、皆してバカにするんだから……』

 

 モニターの向こうで朗らかに笑う二人とは対象的に、控室は地獄をそのまま切り抜いたように凄惨な後景が広がっていた。

 

「エステル……起きて……もう少しでこたつが空くから……エステル……? 寝てるの……? 後少し……後少……メ……ニャ……」

 

 こたつの順番を待ちながら、必死にエステルとメニャーニャを揺すっていたシノブが凍土に沈む。三人並んで川の字になって倒れるここは、(さなが)ら絶対零度のコキュートス。

 

 地獄の深奥、呼び起こされた嘆きの川は罪過を問わず、そこに居る者たちを地獄で最も重い罰で裁いていた。

 

『み……みんな、この寒さを凌ぐために服を着てるんだな……へへ』

『いやダジャレの寒さから身を守ってる訳ではないよ!? 』

『お、おいハピコか……? どうしたんだよ俺を背負って飛べるなんて……すげぇ力じゃねぇか……』

『よ、止せ! それはハピコじゃない! 速く降りろ!』

 

 緊急リカバー薬によって一命を取り留めるマッスル。危うくフラン○ースの牛になる所だった。

 

 一連のギャグが落ち着いて吹雪は止めど、自らの排熱によって皆に暖を取らせるべく可愛いを自称し、オーバーヒートに倒れたマリオン。そして余りの寒さに錯乱して火の中に飛び込み、B級グルメに成り掛けたルフレを筆頭に残された爪痕は深く刻まれている。

 

『兎に角、何時もの格好よりずっといいよ。その格好で居てくれ』

 

 ダジャレがウケなかった事に不満があるのか、()ねて頬を膨らましてはいるがその言葉は本心であろう。ざくアク業界のファッションリーダーたる、私の眼に狂いはない。

 

 まぁ普段が腰蓑一丁なんだから、何時もの格好より悪い服装を探す方が難しいだろう。

 

『えぇ……ホントっすか? この鍛え抜かれた腹筋も大腿四頭筋も見えないのに?』

 

 折角の忌憚(きたん)なき賛辞を疑いの眼差しで返すとは、その筋肉への無駄な自信をドブに捨てて美意識の改善に努めるのが先決ではないか。

 

 こういう所がモテない男の最たる所作であるのだが、それを放置して涼しい顔で受け流しているのを見るに、やはり恋愛ヘッドコーチへ就任するのにローズマリーではまだ若すぎた様に思える。

 

『まぁ論より証拠さ。確かめてみようか……この秘密結社スカウターで!』

『ひ、秘密結社スカウター!?』

 

 得意気な笑みと共に取り出された、一々描写する必要もない見慣れた○イヤ人のアレがテーブルの上に置かれる。間違いなくアウト、反論の余地なき違法行為。

 

 ちらりとジュリアに眼を向ければコーヒーを片手にドーナツを味わい、画面から明らかに目を逸らして虚空を見つめて口笛を吹いていた。自国に蔓延する不正から意図的に目を背ける、絵に描いたように腐敗した官僚の姿を見て私の正義の心と財産を差し押さえられた怒りが熱く煮え滾る。

 

『みんなの能力値もこれで測っていた訳さ。水着イベントでマッスルは魅力はたったの2、ゴ……ゴホッ! ゴホッ!』

 

 絶対ゴミって言おうとした奴だこれ。デーリッチの時とは違い理性を保ったままボケに回れる事にはしゃいで、超えてはいけないラインに足をかけてしまったのか。

 

 ローズマリーがまさかのモノボケで攻勢に出るとは思いもよらなかった。ダジャレ以外でボケに回ってみようというその冒険心を、どうしてファッションに発揮しようと思わなかったんだ。

 

 苔とダジャレ以外にもボケに参加するレパートリーを増やすべく、未知への試みに対する期待と不安を隠しきれずそわそわと落ち着かない様子を見せる王国参謀長官。

 

 普段の険しい表情で放たれる怜悧なツッコミとは逆に、ダジャレを言う時に見せるあどけない微笑みを浮かべてテーブルに置かれたアレを顔に掛ける。

 

『そ、それじゃあ今のマッスルを測り直してみるよ……お、魅力3だね!』

『マ、マジすか!? アケボノメタルを装備しても変わらなかったのに、こんな頼りない布切れで!?』

 

 何故わざわざ鎧の中でも草摺(くさずり)(甲冑にある腰周りの前張り)のないアケボノメタルを選んでしまったんだ? ビキニパンツ丸出しのまま鎧を着込んでいたら、秘密のビキニアーマーを男が上まで着ているのと大差ない事を誰も指摘してやらなかったのか?

 

 まぁフルプレート以外の防具全てに当てはまる事では有るが、こういう時に普段から腰蓑一枚でいるからフォローを得られないのだろう。本人のセンスにも大いに問題がある為、パーティーメンバーを責める事は出来まい。

 

 生態を深く掘り下げるほど、モテる要素を失っていく哀れな男。その子守を引き受ける存在が、王国内に存在しない事が確認できてより一歩生涯独身生活へと近づいた。

 

『これで分かっただろう? 衣食足りて礼節を……』

『ま、待ってください姉御! という事はですよ……ぬうううううううぅぅぅん!』

 

 ローズマリーの言葉を遮り、雄叫びと共に両拳を丹田の前にかち合わせ渾身の力を込めて筋肉を隆起させる。肩、腕、胸、肥大化したその圧倒的筋量は筋肉の小宇宙であった。

 

「す、すごい……腕がヤエちゃんの太腿ぐらいある!」

「オォイ!? アンタの雪だるまキックに付き合って太くなったんでしょうが!」

 

 歩く度にむちむちぷよぷよと震えるあの太腿が、スポーツによる筋力増加で形作られた物ではないのは明白だが「ごめんごめん」と不用意な発言を謝罪するキャプテン雪乃。

 

 チームの雰囲気作りもリーダーの資質、自分に否が無くとも責任は全て自分にあるという心構え。ハグレスポーツ界の頂点に君臨しているだけあって、頼りない見た目と態度からは想像もつかないキャプテンシーを発揮する。

 

 ごめんとは言っても、悪かったとも間違いだったと訂正する事もせず、こっそり本音を通してパワープレイを押し付けるフィジカルとテクニックも見逃せない。

 

『これなら……もっとぉ! イカスんじゃねぇですかい!?』

『いやポーズ取って筋肉強調しただけでは流石に……み、魅力4!?』

 

 そういえばめっちゃ頑張って力入れて筋肉を盛ってる奴がいたんだった。しかもその努力が実を結び、なんと筋肉ダルマとなる事でマーロウさんと同等の魅力を身につけることに成功してしまった。

 

 どうせ故障でしょ? すぐ壊れるからなサイ○人のアレは。

 

『フ、フフ。来ちまったか……俺の時代がぁ! ぬううぅっ! おぉりゃああぁ!』

 

 敬い慕っている男の背を越えようと闘志を燃やすマッスルに、更なる膂力が(もたら)される。

 

 魅力最下位の汚名を(そそ)ぐ為、吠え(たけ)り熱狂の渦中へ身を投じる。その気迫が剛力を招来し、限界と思われていた筋肉は一層膨れ上がり渾身を超える全力全開のフルパワーでまさかの二段階バルクアップを果たす。

 

 まるで赤銅の要塞。岩と見紛(みまご)う硬質の肉体が、足の先から首まで覆いギラギラと滲み出る汗に輝いている。代謝ではなく、精神の昂ぶりによって記憶にある興奮状態が再現されているのだろう。

 

 モニター越しに伝わる熱意を前に、そんな理屈も霞んでしまう。イケメンとは程遠い、暑苦しいばかりの男がその身体に秘めたる意地と情熱を持って己の殻を破ろうとしていた。

 

『4.4……4.5……バカな! 四捨五入すれば魅力5に!?』

 

 あ、小数点以下も測れるんだ? 考えてみればシノブが魅力5で、かなづちと同レベルなのも変な話ではある。繰り上がれずに残留してしまったのか。

 

「私……アレと一緒なんだ……」

 

 小さな巨人の眼からは光が消え、モニターの前で膨れ上がる筋肉の塊と同等の魅力しか己が持ち得ていない事に気落ちして失意の底に沈んでいた。

 

「げ、元気だしてシノブさん! マッスルが4.5ならシノブさんはきっと5.4! ギリッギリで落ちちゃっただけ! 実質6になれた魅力5だから!」

「そうよ! 0.9も違えば実質1の差があるから! ステータス合計値で言えばマッスルより8も高いから合わせて9も差があるわ!」

 

 普通に外見の魅力だけを計測した物ではないと伝えてやればいい話ではないだろうか? 小数点以下の単位で行われる親衛隊のフォローが、逆に痛々しく傷口に塩を塗るようにシノブを追い詰めていく。

 

 しかし、これも彼女が今までしてきた事を思えば当然の仕打ち。この世界に居る全てのはぐれは彼女が作り上げた召喚ゲートの被害者であり、その責を取ると宣してゲート騒動を引き起こし大陸を混沌の渦へ陥れ、そして不敬にも神である我が野望を足蹴にした大罪人。

 

 4コマ漫画や苔キャンプなる狂気を通し、クールビューティー路線から外れ私の敵に足り得ないとしても神の威信を傷つけたその大いなる罪過。例え魅力が5であったとしても許しはしない。

 

 加えて齢15そこそこにして、神を嘲笑うかのようなダイナマイツボディ。全然そんな映写なかったのに水着になった途端に暴れやがって。

 

 創造神はむすたの気紛れによって得た天からのギフトならば、神たる私の物だったとしてもおかしくない筈。このモテカワスリムのゆるふわガールの象徴たるワンピースを脱げば、エステルやシノブを上回るアトミックボディが出てくる筈なんだ。

 

 嗚呼、止めろ。なんでこのタイミングで脳裏に浮かぶ言葉が夢、幻の如くなり――。

 

『ううぅおおおぉぉぉぉぉっ!』

『み、魅力5.1……5.2……ぐうっ!?』

 

 ローズマリーの眼前で破裂するサ○ヤ人のアレ。危ないよねガラスが眼に入っちゃうじゃん。砂の目潰しすらザーボ○さんに有効なので、ガラスともなれば被害は甚大なはずだ。

 

 過去の妄執に囚われ、またもマッスルが奮起する様を忘れていた。しかし実際の所マッスルの魅力なんてどうでも良い事に、一々意識を割いてなどいられない。今もマッスルより魅力5.2で破裂する様な欠陥品で、11まである秘密結社ステータスをどうやって計測していたかの方が気になっている。

 

『これで……どうだああぁぁぁぁぁあっ!』

 

 そんなどうでもいいマッスルが見せる、全力を超えた先にある力。いやもうアレが壊れちゃったし、どうだと言われても測りようがないけど。

 

 三度膨らもうとする筋肉に、衣類がサイキッカーのレオタードが如く張り詰めている。これはもう限界ギリギリ、破ける寸前であることを示していた。

 

 だが夢の中で衣類は本人の自己認識を纏ったマナの外殻に過ぎない。例えば炎に身を包まれた時、衣類が燃えると思えば燃えるし、燃えないと思えば燃えない。局部を晒すのが恥ずかしいと思えば、お子様によく配慮されたアニメの様に都合よく各部位は残される。

 

 つまりマッスルが自分の肉体を曝け出したいと思わない限り、破けることは絶対にない。あっ、これダメじゃん。

 

 思い至ったか、それとも炸裂する瞬間か。どちらが速かったかは検討も付かないが、身に纏った衣類は空気を入れすぎた風船のように、マッスルの筋肉による圧力に負けて弾け飛んでしまった。

 

『……多分2だね。当然だけど』

 

 衣類を失いパンツ一丁になって後に残されたマッスルに、冷たい声が投げ掛けられる。

 

『え、な、なんで?』

『なんでじゃないんだよ! わざとやってるのか!?』

『い、いや! 服で1しか変わらなかったんだから、今の筋力だけでもマーロウさんに追いつける筈!』

『マーロウさんが服着て1上がったらどうする気だ?』

『う”っ』

 

 虎の爪によって穴が空いたハートに、再び残酷な現実が突き立てられる。所詮、筋肉だけではマリアナ海溝は埋められないという訳だ。

 

『はぁ……さっきも言っただろ。衣食足りて……』

『あ、生活に余裕があってようやく礼儀や節度を理解できるって奴っすよね。よく居るんだよなぁ、服着て飯食ってればそれだけで礼節が身につくって勘違いしてる奴が……』

『そこまで分かってんなら礼節を身に着けろってんだよ!』

 

 知力3の分際で意外な教養を見せつけるマッスルだが、知ってる上で実践しないのは尚の事に(たち)が悪い。ローズマリーのキレのいい、というか実際にキレてるツッコミも当然の事だろう。彼女が水着だったらあの顔になっていた所だ。

 

 やはりローズマリーはツッコミに限る。鮮魚に火を通すのもオツな味わいがあるものだが、その真髄が刺身にあるように安易なモノボケよりもやはり本来の持ち味で頂くのが一番であろう。

 

『全く……それじゃ私に出来ることはもう無さそうだし、お邪魔させてもらうぞ』

『え!? あ、あの……!』

 

 ファイルを纏めて立ち上がり、部屋を後にしようとするその背中へ名残を惜しむ用に声が投げ掛けられる。しつこい男だ、そのまま嫌われてしまえばいい。

 

『服着ろってアドバイス以外に何にもないんすか……?』

『そうだよ! 思い浮かばないよ! 悪うございましたね!』

 

 猜疑の眼差しを向けるマッスルへ向けて顔を真赤にしながら怒号と非難を混じえた謝罪を送るその姿に、ローズマリー先生の恋愛相談室は今日を限りに未来永劫開かれる事はない事を悟ってしまった。まだペットのベロベロスの方が為になる話をしてくれた辺り、やはり荷が重かったらしい。

 

 しかしながら服を着ろという指示すらまともに実行できなかった奴が、彼女に文句をつける資格はない。先生は最後まで立派だったと、胸を張って退場して貰いたい。

 

『全く……でもそうだな。責任があると言った手前もあるし、十年後だ』

 

 退場する前に、何かを残していこうというのか。振り向いて一本指を立て、未来を口にする意味不明な宣言が告げられる。

 

『あの子と出会う前もあるし、寂しい気持ちっていうのは私にも良く判るよ。けれども、今そういう気持ちは全く無いんだ。デーリッチも、君も、みんなが居てくれて毎日が楽しくて、この幸せを絶対に手離したくない。そう思って机に向かい、事務仕事に明け暮れて……そうして机の上だけで物を考えるうちに君の事を後回しにして、申し訳ないと思っているよ』

 

 ただ享受に甘んじることなく研鑽を積んで有事へ備え、国王が描く未来への展望に向けて歩む彼女を支えるのは他でもない、今この瞬間に胸に抱く仲間たちへの親愛の情だった。

 

 この世の何処に、慈しみと愛によって支えられる国があろう。王国の柱である彼女は、滅私などという都合のいい駒を賛美する言葉に収まらず、自らの為に気高い我欲を持って国を治めていた。

 

『だから十年後さ。デーリッチが独り立ちして、その頃になってお互いに伴侶が見つかってなかった時。もしそんな時が来たら……まず一番に君の事を思い出させて貰うとするよ』

 

 照れくさそうに頬を掻き、遠慮がちに笑う彼女は木陰に咲く侘助椿の花の様だった。たおやかな佇まい、小さくとも厚い花弁を(すぼ)めてその実を優しく包み込む姿が彼女に重なる。

 

 直向(ひたむ)きになって実を守り、(あで)やかな美しさを持つそれに憧れて手を伸ばしても、背の低い私では木に咲く花に届くことはない。

 

 彼女のような知性を持つ優れた人物でもなく、優しさを原動力に責任を全うできる人格者でもないのに、私は浅ましく彼女が今いる場所が自分の物になるよう願っていた。

 

『……えぇっ!?』

『な、なんだその反応? 私が相手じゃ、お詫びにもならないのは分かってるけど……まぁ君なら十年もあれば良い人を見つけられるだろうし、保険にまで文句を言わないでくれよ』

『いえいえいえいえ! も、文句なんて滅相もない!』

 

 喜色ばって声を上げるマッスルに、怒りは、湧いてこなかった。

 

 手は震え、目頭が熱を持ち、その軽薄さを呪う声もなく、大切な何かを失ったように軽くなった胸を抑え、ここにあった何かを返して欲しいと縋り付く。

 

 胸中から重さこそ消えたものの、獲物を締め付ける蛇が住まうような不快感に締め付けられる。

 

『そ、そうか……? まぁ良くわからないけど、今度こそお(いとま)させて貰うよ』

 

 未来に約束を残し、扉を開けて帰路につくローズマリーとそれを見送るマッスル。浮ついたその笑顔に、もう怒りが湧くこともないのに私はモニターを直視出来ずに居た。

 

 それから寸刻としないうちに、元のローブ姿に着直して彼女が控室へと戻って来る。

 

「これ! なんで元に戻しておるのじゃ、先に見せた(よそお)いのままでおれ!」

「い、いや、アレはマッスルに衣服の重要性を説くために着替えただけで……」

「かーっ! その重要性を分かっとらんから失敗したんじゃろ!」

「そんなに言うなら君の番でアイツに服を着せられるんだな!?」

「う”っ……ま、まぁ(たま)にはオシャレも良いであろう? 友人の頼みは無下にしておきながら、マッスルの為に一肌脱いだとあっては、わらわが焼くのも当然の事ではないか……のぅマリー?」

 

 帰ってくるや否やドリントルに詰め寄られ、マッスルとの応対を引き合いに普段の誘いを袖にされている不満を漏らす。

 

 上目遣いに強請(ねだ)るよう()り寄る美姫も、今の私の眼には入らない。その眼が見ている侘助椿の、細枝の様な(うなじ)に手を伸ばしかけ止める。

 

 まるで理性的ではない、衝動的で、殺意もない。花を手折ろうとする様に伸びた手が、この胸にある気持ちを悟らせた。

 

 私の空虚な夢の中、何もかもが幻として消え去って行く中で咲いた嘘偽り無い想い。(けが)らわしい想念を、愛おしく抱いて二十年越しに芽吹いた醜い花。

 

 これが私の恋なんだ。




化粧室は洋画に良くある楽屋みたいな所を想定して書いてました。
でも楽屋だと舞台とか出演者への控室だから違うかなと思ったけど、よく考えたらそれ伝えないと読者からしたらトイレじゃんってなったのでフォローを入れました(言い訳)

デーリッチの愛はスケールがデカすぎるので合ってるか自信がない(言い訳)

一ヶ月も掛けただけあってイリス編と後日談が八割書き終わって、今回は3万字だけど合計は7万字書いたから許してね(言い訳)

櫓岳(やぐらだけ)様よりまたまた作中のワンシーンを絵にして頂きました。
いつもありがとうございます。

【挿絵表示】

元ツイートhttps://twitter.com/eM5kc3t9/status/1347556535652675584
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