FF14 異聞冒険録   作:こにふぁ

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二話続けて投稿してます。こちら後半です。


4−2:前線参列 ◯◯◯・◯◯・◯◯◯◯◯ ② & 新生エピローグ

 

          *

 

「13の9、不審な塔。魔導障壁と光で繋がっているな。何か関係あり」

「……13の9の位置に……魔導障壁、と。おーけー」

「よし、次行くぞ」

 

          *

 

「……ざぁら」

「おい。フロストッ。誰か来てるみてえだ。隠れるぞ」

「チッ。そこの壁の影だ。早く!」

 

          *

 

「──な、なんだ。あ、あれが……”兵器”か!?」

「なっ!? ど、どんなだ!?」

「18の7の位置だ。でかい……二足歩行、人型の鎧みたいな魔導機械だ! なんて巨大な剣だ……!」

「……ちっげぇよ。それ、魔導コロッサスだよ……まぁ、魔導ヴァンガードよりずっと強いけど。数は?」

「12」

「…………”兵器”じゃなくても、相当ヤバいぞそれ」

 

          *

 

「隠れろ! ここに入れ!」

「ウッ!? 何だこりゃあ! 臭え!?」

「ダ、ダストシュートってやつ!? ……ジン、先どうぞ!」

「……ぃなぁぅ」

「とっとと入れッ!」

 

          *

 

「…………ッ」

「分かってる、クソッ……おい、バレたみてぇだ。お前ら、飛空艇の発着場の方に行ってろ……俺が、敵を引き寄せてくる」

「なに言ってんだ! そんなの!」

「よせ。ココル。俺達じゃ邪魔になる……フロスト。せいぜい死ぬなよ」

「ああ。ついでに、金目の物があったら戴いてくるぜ」

「……いっぺん。痛い目見てこい」

 

          *

 

 

 俺は隔壁の影にしゃがみ込み、そこから様子を伺った。

 帝国兵が4人。頭を動かしながら歩いている。近づいてくる。

 

 偵察は思いの外、順調だった。だが、流石に侵入に気づかれたようだ。俺は仲間たちを比較的、手薄なところへと送った。

 俺の役割は、敵の誘導だ。仲間とは反対の方へ引き付ける必要がある。

 俺は手を止めて、息を詰める。息を小さく長く、吐く。

 エーテルを沈静化させて気配を消した。

 

 すぐに会話が聞こえてきた。あまり警戒心が感じられない、苛立たしげな声だ。

 

「おい、ネズミはどこへいるんだ? 本当に居るのか?」

「どうせまた、モンスターが入ったんだろうよ。こんなところまで侵入するなんて、かなりの手練れか、無謀なバカだ」

「手練れが、このタイミングでここにいる訳ないだろう……戦闘の前線は激しくなってるらしいしな」

 

 魔列車では相当に散らかしたと思ったが、そっちはまだバレてはいないようだ。

 どうやら不滅隊あたりが、牽制に小競り合いを仕掛けている様子だ。

 帝国兵は物資の扱いや、通常業務を後回しにして、戦闘への対応に回っている。

 

 これは……良い知らせだが、悪い知らせでもある。

 

「無駄口を叩くな。万が一侵入者がいてみろ。それは帝国に土足で踏み込まれたのと、同義ではないか」

「…………チッ。属州人の分際で、張り切りやがって」

 

 ハイランダー族だろう、体格の良い男が、熱のこもった声を上げる。制服の意匠を見る限り、他の兵よりもひとつ偉いようだ。

 だが、それを揶揄するような、小さな悪態も聞こえた。

 

 揃いの制服で固められようが、階級制度を徹底しようが、こういう人間臭さは消せないもんだな。安心したぜ、兵隊Dさん。相手が所詮、”人間”だって実感できたよ。

 

 それにしても……クソッ。これは悪い知らせだ。

 ”作戦”が、次の段階に進んだらしい。今日はまだだって、踏んでたんだがな。

 西の方での突入作戦が、始まったんだ。小競り合いは、おそらく陽動だ。

 このままだと、ほとぼりが冷めるまで基地の中で隠れんぼなんてことになりかねない。笑い話にも、なりゃしない。

 情報は、持ち帰って初めて意味を持つ。終わってから「それ実は知ってたんすよ」なんて言っても後の祭りだ。あまりにも間抜けだ。

 隠れてやり過ごす。一応それが、脱出プランその3だが、当然ナシだ。

 

 足音と声は遠ざかっていく。

 俺は、作業を進める。俺はファイアシャードを、積み木のように重ねている最中だ。

 下にあるのは、くっくっく、魔列車で頂戴した”黒色火薬”だ。

 大した量じゃない、質も良くはない。パンッと鳴るぐらいだ。それでいい、ちょっと気を引くには十分だ。

 俺は慎重にシャードを積む。5分から、10分。それぐらいがいい。実のところ、短い方が時間が計算しにくい。反応させるシャードが大きいほうが、時間の予測がしやすいのだ。

 

 これで侵入は完全にばれるだろう。確証を与えれば本格的に捜査される。

 だが、あらかじめ立てていた脱出プランは、全部オシャカだ。

 見たところ魔列車で入った場所が、一番防御が薄い。そこから強引に抜けるしかない。俺は、そこから離れたこの辺りに、少しでも意識を向ける必要がある。

 クソったれめ。時間がない。

 流れが、良くない。

 やることなすこと、裏目に出ている。

 

 

 乾いた破裂音が、いくつか重なって背後で響いた。

 俺は仲間の向かった方角へ進んでいる。身を低くして気配を消しながらだ。火薬もシャードも多くは持ち歩いていない、あれで打ち止めだ。

 いくらかの帝国兵が、音の方へ走っていくのをやりすごした。

 待ち合わせた場所は、もう近い。

 

「おい、もしもし? 俺だ。すぐにそっちに着く……おい、聞いてるか?」

 

 俺は耳に着けたリンクパールにエーテルを込めて、仲間へと声をかけた。普段は、首輪を着けられるようで気に食わないが、こんな時は仕方がない。使えるものは使う。

 だが、返事が無い。

 少しばかり、焦りを感じる。

 

「おい、返事を──」

『だから、ソイツに言っても無駄だって。何言ってるか分かってないんだから』

『フン。ジン、俺たちのことは気にしないで良いぞ。全員、(なます)にしろ』

 

 ……これは、ココルとトールの声だ。

 俺に向かって話していない。だが、リンクパールはエーテルを込めて、初めて音声を拾う状態になる。

 

 つまりこれは、俺に状況を伝えようとしているのか。

 分かるのは、敵に見つかったということ。2人は抵抗できない状況にあること。ジンは、フリーなのだろうか。

 

 すぐに着くさ。すぐだ。

 俺は、声を出すことは控えて、足を早める。リンクパールにエーテルを込めながら耳を澄ませる。

 

 

『──虫は、害虫は、どこからでも湧いてくる。うんざりですよ』

 

 

 向こう側のリンクパールが拾った音は、仲間の声じゃない。

 だが、聞き覚えのある声だ。

 

『共通語も使えないとは……野蛮人め。そう言えば、貴様ら、4匹組だったな。残り1匹はどこだ、答えろ』

 

 ”霧の村”での出来事が、脳裏に浮かぶ。ガスを撒いた科学者風の男。

 あの男が、ここに居るのか。俺は無意識に、足を早めていた。

 

 

────────────────────

 

 

 陽は大きく傾き、この飛空艇の発着場にも、外郭の城壁の影が伸びつつある。

 ひとつ、短い銃声が響いた。

 

「トールッ!」

「ぐッ……騒ぐな、ココル。こんな豆鉄砲、何発食らっても効きやしねえぜ」

「いい加減に、武器を捨てろ野蛮人。まさかまだ意味が分かっていないのか?」

「…………ッ」

 

 息を整えながら、聞こえてきた声を反芻する。

 クソ、撃たれたのか。

 俺は飛び出したくなる衝動を抑えて、コンテナの影から様子を伺う。

 

 少し開けた場所だ。見ればここは、俺たちが足を休めた、最初の場所だ。

 トールとココルが並んで膝を突き、数人の帝国兵に銃を突きつけられている。

 ジンが奥の方で、こちらに向かう形で、刀を下げて立っている。斬り伏せられたのか、足元に何人か転がっている。

 中央に、拳銃を持った白装束の科学者風の男がいる。ルギウス、確かそんな名前だ。2人、帝国兵を背後に従えている。

 

 ジンが武器を捨てない理由は、ひとつだ。俺を、待っている。状況が分かってないふりをして、時間を稼いでいるんだ。

 

 全部で、残り10人。なぜだか、他から帝国兵が集まってくる様子は無い。

 だが、いくら奇襲をしても、10人を一瞬では片付けられない。

 隙が要る。時間を、稼ぐ必要がある。

 

「もう、いい。時間の無駄だ。おい、そこのチビ」

「……は? チビ? 今ココのこと──」

 

 再度、銃声が響いた。ココルの白い帽子が宙に舞っている。

 

 ココルは、薄く煙の上る銃口を睨みつけている。無事だ。

 俺は肺から、安堵の息が漏れたのを感じた。

 

「居るんだろう、クソ虫が! 出てこい……次は、頭を吹き飛ばす。順番にだ」

 

「止めろ! ……止めろ、俺はここだ」

 

 俺は両手を頭の後ろに置いた状態で、コンテナの影から出た。

 クソッ。もう出ちまった。狙われたのがトールだったら、2,3発もらっても大丈夫だったろうに。

 

「武器も捨てる。そいつらに、手を出すな……ジン、刀を置いてくれ」

 

 俺は言われる前に、自ら短剣を2つ、片方の手で自分とルギウスの中間へと放り投げた。

 そうしてから、また手を頭の後ろに戻す。

 それ見たジンは少しためらった様子だが、刀を鞘に納め、足元に置いた。

 ジンの背後に帝国兵が回り、銃を突きつける。

 ルギウスの横に付いた帝国兵が、俺に銃先を向けている。

 

「やはり、居たな。今すぐ殺してやっても良いが……その殊勝な心がけに免じて、もう少し待ってやろう。何をしていた。言え」

「か、観光さ……いや、立派な施設だ。大したもんだぜ」

「……戯言に付き合っている暇は無い。先程、海上基地、カストルム・オクシデンスの前哨基地に、冒険者が突入してきたという知らせが入った」

 

 俺は、ルギウスの声や仕草から、妙な印象を受けていた。苛立ち……いや、焦りか、これは。

 ルギウスは銃を手で遊びながら、言葉を続ける。

 

「貴様らカスどもが、”英雄”などと呼んでいる連中も、目撃されている……何を企んでいる。貴様も、冒険者とかいう輩なのだろう」

 

 海上基地の無効化。それが作戦の第1段階だ。だが、あの”英雄”と呼ばれる連中が、そこに配置されているのは知らなかった。

 

「な、なんだ、ビビってんのか? なら、俺たちに手を出すのはやめときな。俺らとそいつらは、マブダチ──待て。そうか、てめぇ……ここから、逃げる気か」

 

 俺は口からでまかせを言ううちに、気付いた。

 こいつらが、なぜ人気の少ない、外れた位置にある発着場にいるのか。

 黙って逃げ出そうなんて、なんと見下げ果てた奴だ。

 

「逃げる? フン、騒がしいのが不快で、離れるだけだ。こうして、一仕事もしようとしている。

 ああ、前哨基地の方に懸念はないぞ。

 クク……基地に居るのは、()()()()()()()殿だ」

「…………あ、あんなやつ。俺のマブダチたちの敵じゃ、ないさ」

 

 この作戦、だめな気がしてきたな。

 とてもじゃないが、あのリットアティンとかいう男に、正攻法で勝つビジョンが浮かばない。

 だが、そんなことよりも、今俺たちが生き残る方法を見つけることが大事だ。

 陽はさらに傾き、影が伸びるのが、目に見えて分かる。

 俺は必死で、コイツの気を引く話を考える。英雄共の弱点でも考えよう。素数が分からないとかで、良いか。

 

「英雄の弱点でも聞きたいのか? なら……」

「貴様と話していても、時間の無駄だ。おい、そこのチビ、何を企んでいるか、言え。情報次第では生かしてやっても良いぞ」

「おい! 俺が──」

「貴様、貴様は黙っていろ。適当なことばかりを言う下衆め」

 

「チ……チビ……二度目……ッ」

「よせ。馬鹿。俺の横に居るんじゃ、しょうがねえだろうが」

 

 気色ばむココルを、ボソボソとトールがなだめているのが、耳に入った。緊張感のないやつらだ。

 俺はココルと目を合わせる。

 何を言っても良い。とにかく、時間を稼ぐんだ。

 俺が小さく頷いて見せる。ココルは答えて、コクリと頭を縦に動かした。ちゃんと伝わったようだ。

 ココルは顔を上げ、ルギウスに向かって口を開いた。

 

 

 

 

「うるせーカス。今すぐ、舌噛み切って死ね」

 

 

 

 

 ……何も、伝わって無かったようだ。

 

 顔色を変えるルギウスをよそに、ココルが続けて言う。

 

「てゆうかさ、一つ聞いて良い? なんでそんな調子に乗れんの?

 魔導技術とかさ、へえすごいねって思うよ。でもさ、魔法で良いじゃん。補助器具使ってぷるぷる立ってるのを、わーすごいね、えらいねって言ってるだけだよ。

 勘違いしちゃった? それで優れた種族だなんて、ふふ、思っちゃった?」

 

 「ココはさ、差別とか嫌いだから、大きな声では言わないけど。ぶっちゃけ、ガレマール人って、()()()()だけだからね?

 エーテル操作が不得意って、まじありえないから。その辺のアリみたいなモンスターだってやってるよ。そんな当たり前のことすらできないのに、あちこちに喧嘩売ってさ、頭おかしいんじゃねぇの、お前ら」

 

「あのさ、こんなこと言うと傷ついちゃうかもだけどさ。

 このエオルゼアに住む人種、ララフェルもルガディンもヒューランもエレゼンもアウラもヴィエラもロスガルもサハギンもコボルトもアマルジャもイクサルもシルフもゴブリンもモーグリも、だーれもお前の種族にだけは、なりたがらねーよ。

 なんでか分かる?

 ()()()()からだよ、カス。

 ねぇ、いつ死ぬの?」

 

「……………………」

「………………………………」

 

 よく噛まずに、言えるもんだ。

 ココルは、目に冷ややかな殺気を浮かべたまま、ルギウスを睨み続けている。その怒りの元は、身長のことだけではないだろう。

 

 ココルの長台詞に答えるものは、誰もいなかった。兵士たちは、気まずい雰囲気で、顔を見合わせている。

 

 ルギウスは……俺は、ルギウスの顔も確認していた。

 赤くなり青くなり、今は、真っ白になっていた。空は赤く焼けているが、血の気が引いているのは良く分かる。

 怒りのあまりだろう、小さく震えている。当然、気の毒とは欠片も思わない。

 少しは、時間が稼げたか。あとは、この沈黙がずっと続けば助かる。

 だがルギウスは震える手で、拳銃をココルに向けた。まずい、そりゃそうだ。

 

「貴様…………」

「わああああ!! 待てッ! 話す、俺が話すって!」

 

 俺は大声を上げて、意識をこっちに向けさせようとする。片手を頭から離し、前に出す。

 思わず足も前に出たが、ルギウスのそばの兵士が銃口をこちらに向け直した。足を止める。

 ルギウスはこちらを見たが、拳銃は、まだココルに向いたままだ。

 

「だ、黙れ──」

「俺らがここに理由だろ!? ”兵器”だ! お、お前らの大事な玩具に、爆弾を仕掛けたって言ったら……どうするよ?」

「…………何だと?」

 

 兵器と言う言葉に、反応した。よっぽど、その兵器はこいつらにとっても重要なんだろう。

 俺は言葉を、必死で紡ぐ。

 

「か、解除は出来ないぞ。帝国の技術じゃない。エーテルの反応を連鎖させた、エオルゼア式の時限爆弾さ」

 

 俺はゆっくりと、はっきり聞こえるように言う。静かなもんだ。

 やはりこの辺りには、俺たち以外はいないらしい。陽が、外郭に沈みつつある。横に伸びた影が、反対にある隔壁に這い登っている。

 

「お、お前らにとっちゃ、俺たちの命よりは、価値があるんじゃないか?」

 

 我ながら、ひどいハッタリだ。俺は頭に添えてる手に、力を込める。そろそろ、腕を上げ続けているのが、疲れてきた。

 黙ってこちら見ていたルギウスが、小さく肩を揺らし始めた。

 

 

 

「……クッククッ。クハッハハハッ!」

 

 

 笑い声が響く。耳障りな声だ。

 声の主は目を血走らせて、つばを撒き散らした。

 

「馬鹿がッ馬鹿共がァ! 詰まらない嘘を並べ立てて、騙せるとでも思ったか! アレが、貴様らに届くような場所に、あるとでも思ったか!」

 

 ルギウスはげらげらと笑っている。大げさな身振りで、手を振りかざしながら声を上げる。

 

「アレは、この基地の最も奥、”魔導城プラエトリウム”の中心、()()()()にある。下賤な、小汚い虫けらの貴様らは、かの兵器が起動するのをただ指を咥えて見ていれば良いッ!」

 

 ルギウスは、遠くに光る城を指差している。城を覆うバリアの表面が、揺らめいて見えた。その周囲の外壁に西日が当たり赤く光っている。

 

 何てこった……こいつ、今、なんて。

 俺の口から、言葉が漏れていた。

 

 

「そんな、地下……だと」

「そうだ! ククク……もうじき、地下工房のアレに火が入る。そうなれば、貴様らエオルゼアのゴミどもは、鏖殺(おうさつ)だ。クハハハハッ!」

 

 俺は、勝ち誇るルギウスの言葉に、がく然としていた。

 なんとか声を絞り出す。

 自分の喉が、震えてるのが分かった。

 

 

 

「い、言ってたんだ……調整が必要だって」

 

「クク、ハァ……もう、死んでも良いぞ。命乞いなら無駄だ」

 

 ルギウスが片手を上げる。兵士たちが銃を構え直した。

 俺は構わず、ゆっくりと、手を頭の後ろから離す。

 

「言っていたんだ。リ、リンクパールとは、違う技術だって。チューニングが、必要だって」

 

「…………貴様……何を」

 

 俺は右手の()()を、ルギウスによく見えるように、前に突き出してみせた。

 ひねりを回すと、()()()()()()()()()()()()()が漏れた。

 

「マルケズは、聴こうとしていた……いや、聴いているんだ、この──”通信”を!」

 

 俺の手にあるのは──兵から奪った()()()だ。

 

「き、貴様……それはッ!」

『──先程の通信は、何だ──』

 

 狼狽するルギウスの声を遮るように、通信機から声が聞こえてきた。

 静まり返ったこの場所に、よく響く。女の声だ。

 

『──こちら、リウィア・サス・ユニウス。どこの愚か者だ。重要機密を、公開通信に乗せて喚いているのは。名乗れ──』

 

 おっと。この通信機に聞いているみたいだな。

 これは、返事をしないと失礼だ。

 俺は真ん中のボタンを押しながら、箱に向かって声を上げる。

 

「あー。こちら、ルギウス。ええと、ルギウス・ナニ・ナントカ。失礼しました。例の兵器が、”魔導城プラエトリウム”の地下工房に在ることは、二度と口に致しません」

『──……ルギウスだと。貴様、この不始末──』

 

 それ以上は聞かなかった。スイッチを切り、通信機を地面に落とす。カバーが割れ、中身がむき出しになった。

 通信を一方的に切るってのは、気分が良いな。クセになりそうだ。

 ルギウスの方を見ると、まだ小刻みに震えている。唇をわななかせながら、声を上げる。

 

「こ、この、糞が、糞がァ! よくもッ!!」

 

 俺は、道化の風格を持ち始めたルギウスに、真っ直ぐに指を差して言う。

 

「その()()に、足を滑らした間抜けがてめぇだ! ハハッ! さぁおっかねぇのが来るぜ、お前らの大嫌いな、”英雄”がッ! お前らを、ぶっ潰しになッ!」

「な、何をしているッ! 撃て! こいつらを! 殺せえ!!」

 

「待て、もうひとつだ。言わせろ──」

 

 太陽が、外郭の影に消えた。俺は目の端で、火花が散り始めているのを、確認していた。

 

「爆弾を仕掛けたって言ったな……あれは、マジだよ──全部、()()()()だ!」

 

 魔列車から持ち出した、”嫌がらせ”の詰まった荷箱。

 その中身は、ありったけの”黒色火薬”とファイアシャードを詰めた、特大の()()()()()()だ。

 

 

 凄まじい破裂音が轟き、直ぐに何も聞こえなくなった。聴覚が耳鳴りで埋まっている。

 影に落ちた景色が、一瞬明るく見えた。

 

 荷箱の直ぐ側にあったコンテナが、ひしゃげて吹っ飛んでいる。

 ……思ったより、激しい爆発だった。やり過ぎたかな。

 全員が、爆発の方へ顔を向けて硬直している。

 

 それ起こると分かっていた、俺たちを除いて。

 

 俺は破裂音と同時に、前に飛び出している。

 

「ウ、オオォォオらああッ!!」

 

 目だけを横に動かして、見る。

 耳鳴りの遠くで、トールが雄叫びを上げたのが分かった。

 ココルを抱え込むようにかばい、帝国兵のひとりの首を掴む。そのまま地面に押し付けるように叩きつけた。

 恐ろしい腕力だ。叩きつけられた帝国兵は、木人形のように抵抗は無かった。

 目を少し前に向ける。ジンが刀を抜き様に帝国兵を斬りつけている。

 

 地面を強く蹴り、加速する。

 目の焦点を、正面に据えた。白装束の男、ルギウスに狙いを定める。

 横の方で銃声が聞こえる。目は、移さない。地面に落ちた短剣を拾う。

 ルギウスの背後の帝国兵に、角つきの男が飛びかかった。

 銃口がこちらを向いている。ルギウスだ。構うものか。さらに、加速する。

 頭を少しだけ傾ける。銃口が光り、俺の頬を銃弾が裂いた。

 

 ルギウスの顔が、俺の目の前で驚愕の形に歪んでいる。

 俺は短剣を横に構え、さらに踏み込んで体ごとぶつかった。

 

 

「ガッ──」

 

 顔が、鼻と鼻が当たりそうなほど、近い位置にある。

 

 俺はルギウスと、目を真っ直ぐに合わせて、囁いてやる。笑顔で、だ。

 

「なにか、言い残すことはあるか?」

 

「…………ァッ……ッ」

 

 言葉はなく、代わりに短剣を持つ手に、短剣の端から漏れた空気が当たった。

 ルギウスは口をぱくぱくと動かし、憎悪の目で、俺を見つめている。

 へぇ、そう。無いの? 案外、殊勝なヤツだな。

 

「あばよ」

 

 俺はルギウスとすれ違う形で前に踏み込む。同時に体を回転させるように、短剣を一気に引き下ろし、振り抜く。

 

 すぐに、後ろで何かをこぼすような音が聞こえ、大きめな物がそこに落ちる音が続いた。

 

 一瞬だけ、霧の明けた村の姿を思い浮かべ、すぐに振り払った。

 今は、生きているやつのことだけを考える。

 

 気づけば近くにジンが立っていた。

 ジンは刀を一度を大きく振り、鞘に納める。

 顔をしかめて、自分の角をさすっている。

 

「うるさかったか? ジン。悪いな。計算より……ちょっと、火薬が多かったみたいだ」

「フン。何が()()()()だ。適当なことばかり言いやがって。大体ありゃあ、俺たちが出てった後に爆発する手はずだったろうが」

 

 返事をしたのはトールだった。いつの間に拾ったのか、斧を持っている。

 

「最高のタイミングだったからな、言わなきゃ損だろ……トール。撃たれたのか?」

「かすり傷だ。チッ。鎧は、もう駄目だな」

 

 トールは千切れた鎖帷子の端を、むしり取ってその辺へ放り投げた。

 杖を持ったココルが、それを拾った。少しむくれたような面をしている。

 

「コイツ、ココのことをかばったんだ、無茶ばっかりしやがって…………なぁ、のんびりしてて良いの?」

「ああ、ゆっくりはしてられねぇな……落とし物は無いか? 命はさっき拾ったな」

 

 爆発音に助けられたが、今からはそれに追い詰められることになる。

 基地の中心の方から、警報音がけたたましく鳴っている。

 

「潮時だ。とっとと出よう」

 

 

────────────────────

 

 

「『地の砂に眠りし、火の力目覚め──緑なめる赤き舌となれ!』 ファイラッ!」

「おらァァッ! 首が要らねえ奴はどいつだ!!」

 

 ココルが魔法で敵が固まったところを吹き飛ばす。トールは敵の正面で斧を大きく振り回し、敵の意識を集め続けている。

 俺とジンが、片っ端から数を減らす。

 つまり、いつも通りだ。いつもと違うのは、もう長い時間、これを続けていることだ。

 

「きりがねぇ……クソッ!!」

 

 俺はこの状況を罵りながら、槍で突っ込んできた帝国兵の手首を跳ね斬った。

 そのまま蹴りを食らわせて、他の帝国兵にぶつける。

 

 飛空艇の発着場を後にした俺たちは、手薄なところを縫って進み、()()()()()から出た。つまり、魔列車の通用口だ。そこが開いていた。

 

 嫌な確信はあった。罠だ。

 

 中に潜まれるより、逃げ口を用意して動きをコントロールしようって気だ。兵法ってやつを、分かってる奴でもいたのだろう。

 だが、他に選択肢は無かった。

 

 それに敵の方にも、想定外の出来事はあった。

 俺たちの強さを見誤っていた。

 通用口を出てすぐに貼られていた包囲網は、一気に食い破った。

 

 それで、めでたし脱出……ってわけには、いかなかった。

 往生際悪く、追いすがってきやがった。

 蹴散らしては走るのを繰り返した。もう基地の外郭からも随分離れたというのに、まだどこからか湧いてくる。

 一度外郭に沈んだ西日は、今はまだ地平線の上にあった。

 

「く……『暗雲に迷える光よ……我に集い、その力解き放て』ぇえ! サンダラ!!」

 

 もう何人倒したか、分からない。

 俺は目の前の敵を斬り伏せながら、奥を見る。飛んできた矢を、すんでのところで打ち落とした。

 また、敵兵の1団が来ている。その中に、バカにでかい影があった。

 魔導ヴァンガード……! こんな時にだと!?

 

「ク、クソッタレめッ! トール!! ()()()()が来るぞッ気を付けろ!!」

「ハア……ハアッ上等だァ!! バラバラにしてやらァアア!!」

 

 トールは完全にスイッチが入った状態だ。ただ頭に血が昇っているとも言える。

 俺は、トールに矢を向けた帝国兵に一息に接近して、その首を裂いた。

 魔導ヴァンガードはすぐそこだ。

 長身の影が、俺の横から飛び出した。すれ違った時に、目が合う。

 

「ジン……ッ! 頼む!!」

 

「──シィィィァァアアッッ!!」

 

 ジンは弾丸のように進む。勢いよく地面を踏み込み、片手に持った刀の先端を、魔導ヴァンガードの顔面に突き刺した。

 砲のような、大気を震わすような音が響いた。

 魔導ヴァンガードは、その一撃で沈黙した。

 

 ジンは大きく飛び下がり、半身を前に向ける。

 俺は頷いて見せようと、その顔を見た。

 だが、その表情から、この男が見せたことのない焦りを感じた。

 

「ジン……!? お、お前、刀が……!」

「…………ッ……ぜァ」 

 

 ジンが片手に持つ刀は、(つば)から10数センチの刀身を残して失っていた。

 刀はもう、使い物にならない。武具は、その形にも意味がある。形を失えば、もうエーテルを伝えられない。

 背中に、汗が吹き出るのを感じた。俺たちの強さは、連携が要だ。戦力は、4分の1が減るだけでは、済まない。

 俺は動揺を抑えきれず、帝国兵に不意を突かせてしまった。クソッ、いつの間に、近くに。

 

「……チィッ!」

 

「ち……『地の砂に、眠、りし、火の力目覚め──緑なめる赤き舌となれ!』──ファイ、ラッァ!」

 

 ココルの放った炎の塊が、俺に迫った帝国兵を巻き込んで、その後ろの1団をまとめて焼いた。

 俺は、杖を構え、肩で息をしているココルを見た。

 

「悪い、助かったぜ……ココル」

「ぼ、ぼさっとしてんなよ……あ、あれ? 足、足が……くそっ」

「ハアッ……おい。何してんだ、まだ来るぞ。おい……ココル。どうした」

「だ、大丈夫、すぐ、治るから」

 

 ココルは、膝を、両手を地につけて顔を伏せている。

 荒い息は、治まる気配がない。

 トールが片膝を突き、気遣うように、その背中に手を添えている。

 俺は目を、遠くの方に向けた。砂塵。影が見える。また、帝国兵の1団様だ。魔導兵器は見えないが、数が多そうだ。

 

「エーテル切れ……いや、集中力の限界、か」

 

 俺は、ココルの症状をそう判断した。

 ココルは、ずっと高威力の魔法を連発していた。そして、俺は、それを止めなかった。

 こうなるのは、時間の問題と分かっていても、止める余裕は無かった。

 

 ココルは、限界を超えてやってくれていた。俺は、その頑張りに報いたい。

 俺ひとりじゃ無理だ。それは、分かっている。

 

 砂塵が、影がだいぶ近づいていて、もうはっきりと帝国兵の姿が見えた。

 俺は視線を下げて、トールを見る。

 トールは目を合わせると、鼻でと笑うようにしながら、頷いた。

 それを見て、ようやく俺は、腹を決めた。

 

 

「ジン……ココルを連れて、先に行け」

 

「…………!」

「な、なに言ってんだよッ?」

 

 俺は喚くココルを無視して、ジンを見る。

 見たことのない、真剣な顔だ。躊躇いが浮かんでいる。

 

「頼む、ジン。このまま帰ったんじゃ、かっこ悪いまま、歴史に名が残っちまうからな」

 

 俺は、ジンに笑いかけながら言った。

 あのときの通信を、本当に傍受できたなんて分からない。誰かが、伝える必要がある。情報は持ち帰ってこそ、意味がある。

 ジンは笑わない。歯を食いしばるようにしながら、ただ俺の目を見ている。

 

 ジンは目をつむり、一度、こくりと頷いた。もちろん俺は、そうしてくれるのは分かっていた。

 

 ジンは、素早くココルを抱き上げると、青燐精製所のある方角へ走り出した。

 抱えられたココルが、喚いている。

 

「や、やめろ! 私は──まだ戦える! ジンッ戻れ! フロストッ! トールッ──!!」

 

 ジンの背中は、どんどん小さくなった。

 前を向くと、もっと早く、大きくなる影があった。帝国兵どもだ。

 

 砂ぼこりが舞い、むき出した皮膚に浮かぶ汗と混じる。腕で拭うと、ざりざりとした物が傷口に触れ、電気が走るように痛んだ。気づけば、あちこちが痛む。

 

 太陽が、ほとんど真横から荒野を照らし、長く影を伸ばしている。

 俺とトールは並び立って、砂塵を待ち受ける。

 

「ふたりっきりに、なっちゃったね」

「てめえから、ぶち殺されてえのか?」

 

 トールは呆れたように言いながら、首をごきごきと鳴らしている。

 軽口を叩きながら、体を動かす。

 まだ大丈夫だ。死ぬまでは、大丈夫だろう。

 帝国兵は、もうすぐそこだ。やけにはっきりと、顔が見える。

 

 俺は短剣を構え、腰を落として、言う。

 

「当てにしてるぜ……トール」

「フン……」

 

 相棒は、凶暴な顔で笑っている。

 でかい口を、引きつらせるように開きながら、答えた。

 

「任せておけ」

 

 力が、欲しい。

 こんなに強く思うのは、初めてかもしれない。

 あの馬鹿共を、この馬鹿野郎を、俺は。

 今、俺は力を。限界すら超える力を、心の底から願っていた。

 

 振動が足に伝わり、あざ笑うような帝国兵たちの顔が、よく見える。

 気付けば、周囲から音が消えていた。

 ガラスの器が共鳴するような音だけが、頭に響いていた。

 

 

────────────────────

 

 

 耳鳴りは、止まない。

 鼻までを覆う兜の奥に、恐怖が映っているのが見て取れた。

 振り下ろされた剣を皮一枚で躱し、すれ違わせた短剣で首筋を跳ねた。

 帝国兵たちは、明らかに動揺している。

 たった2人、そう(たか)をくくったろう。

 だが、帝国兵たちは、俺たちを攻めあぐねている。いや、()()あぐねている。

 さっきまでの、逃げながらの戦い方とは違う。攻めることに、集中していた。

 

 トールはひたすらに、敵が集まったところへと突進して、台風の様に斧を振り回し続けている。

 雄叫びを上げているのか、口を大きく開けている。鉄さびのような肌へ、返り血を浴びせるその姿は、正しく鬼の様相だ。

 こんなに長く戦うのは初めてだ。正直言って、あいつの体力には驚かされている。無尽蔵としか言いようがない。

 とにかく、帝国兵たちのほとんどは、トールから目が離せない。

 見ていれば躱せる。だが、当たれば胴体すら2つに分けそうな大振りの斧だ。そんなものを目の前に、よそ見をできるやつは少数派だろう。

 

 俺は、トールの斧に目を奪われたやつ、トールの背を狙うやつ、俺を狙って、向かってくるやつ、とにかく隙をみせたやつ、全員を、順番に、斬り捨てている。

 後ろから、俺に向かって剣を振りかぶっている奴がいる。 

 俺は振り向きざまに、そいつの胴を裂く。そいつは、驚愕の顔を浮かべて崩れ落ちた。

 

 耳鳴りが続いている。

 

 いや、これは、ただの耳鳴りじゃない。

 周囲からエーテルが、小さく続く波のように、俺に届いている。

 一瞬前の、”一瞬過去のエーテル”が、俺の頭に続けざまに、断続的に叩き込まれいた。

 

 圧縮された情報が、俺の知覚を押し広げている。意識を加速させていた。

 聞こえる。敵の感情が、その意識の向き先が。

 感じるんだ。この場全ての存在を、砂粒ひとつでさえも。

 まるで、宙から自分を見下ろしているように、情報が伝わってくる。

 俺は今まで、目を瞑って生きていたのかとすら思った。それほどに、周囲が鮮明に感じ取れた。

 

 そうか。これは、”力”だ。

 これが──”過去視の力”の、本当の使い方か。

 最高だ、絶好調だぜ。負ける気が、しない。

 

 俺は、周りから浮いた帝国兵の、武器を持った手首を跳ねる。その武器が地面に落ちる前に、返す刃で喉笛を裂く。

 周囲のエーテルが色を変えて偏る。ひとりの兵が、杖を構え魔法を唱えようとしていた。

 偏ったエーテルは、拡散した。俺が投げつけた短剣が、そいつのみぞおちに正確に突き刺さり、詠唱を中断させた。

 そいつが崩れる前に、短剣を回収する。そのままトールに弓を向けた兵士を、背後から貫く。兵士は大きく体を震わせて、倒れる。

 

 もう少し、もう少しだ。

 敵は、目に見えて減ってきている。

 短剣を振るい続けた。

 

 またひとり、帝国兵を斬り伏せたところで、背後から敵意が飛んできたのが分かった。

 剣が、俺の背中を正確に狙っている。敵ながら、良いタイミングだ。普通じゃあ、躱せない。

 だが、今の俺なら避けられる。

 ぎりぎりだ。転がって避けるか。

 いや、カウンターだ。このまま、技を返す。

 

 耳鳴りは強くなり、意識が、さらに加速している。

 

 俺は力を抜き、腰を落とす。それによって俺の体は、一瞬だが、重力から開放される。

 その一瞬は、引き伸ばされた知覚の中では、十分な時間だった。

 地面へ、両足で()()()ように、力を伝える。

 体は勢いよく回転する。さらに上半身に目一杯ひねりを加える。

 剣が、俺の胴体があった空間を、ゆっくりと通り過ぎる。

 

 剣を突き出した帝国兵は、自分の手柄を確信しているような顔をしていた。

 その表情が変わる前に、俺は生じた遠心力を、手に持った短剣に伝えて振り抜く。

 短剣を首元に受けた帝国兵は、体を半回転させながら、顔から地面に着地した。

 

 完璧だ。いける。

 耳鳴りが、うるせぇ。

 

 だけど、もう少しなんだ。

 これを、あと数回繰り返せば、大逆転だ。

 

 

 

 

 ──だから、ふざけんなよ。

 

 

 何してんだ。

 バカ野郎。ガキが。

 俺を守ってるつもりか。

 

 そんなこと、頼んじゃいねぇんだよ。

 てめぇは、気にせず暴れていれば、良いんだ。

 後は、俺が全部、どうにかするんだよ。

 

 だから、だから。早く、前を向けよ。

 ほら、槍が。クソッ。声が。

 なんで、こんなにゆっくりなんだ。

 前だ。クソッ。やめてくれ。トール。

 

 

 俺は加速する意識の中で、起こっている出来事を何も出来ずにただ見ていた。

 

 こちらに手を伸ばし、口を開けるトールの破れた鎧に、帝国兵の槍の穂先が、ゆっくりと吸い込まれいくのを、ただ眺めていた。

 

 

 

 

 だから、この”力”は、クソだって言ったんだ。

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

「……ハァッ……ハァッ。ったく……でけぇ図体しやがって」

 

 ひたすらに、影に埋まった荒野を歩く。

 陽は、地平線に沈み、空は濃いオレンジの光に包まれてた。

 でかい荷物を背負っているせいで、鑑賞する余裕はないが、東のほうは星が見えているだろう。

 

「ハァ……ッ。おい、もう頑張ったぜ。捨てて行っても、文句はねぇよな!?」

 

 俺は背中の荷物に声をかけた。

 その荷物はバカにでかくて、俺の影はほとんど埋まって見えるだろう。

 

「…………下らねえことを……言ってんな。黙って、運べ……非力野郎」

「ハッ……この、借りは、高く付くぜ……! 今後百年、か、稼ぎの9割を、寄越せ!」

 

 その声は、ひどく小さくかすれていた。

 頭のすぐ横から発せられていなければ、聞き取れなかっただろう。

 荷物から漏れたものが、俺の背中を濡らしている。ズルズルと滑って、ひどく不快だ。

 

「………………」

「……黙ってんじゃ、ねぇ! ぶっ殺すぞ!!」

「…………フン……て、てめえの……はな、話は……眠く、なるぜ」

「良いから、喋り続けてろ。もう少しだ」

 

「……ふ、フ」

「何だ……面白えことがあるなら、教えろよ」

 

「……ふ、フロスト…………もう、良い」

 

「ふざけんじゃねぇ……良かねぇんだよ! ……ここまで、運んだ分、無駄にさせるんじゃ……ッ!?」

 

 突然、がくんと膝が落ちた。

 体ごと地面に落ちて、荷物に潰される。

 足が、ブルブルと震えているのが分かった。自分の足じゃないみたいだ。

 

「……ッ。トール、おい……おい!」

「…………ぁ。ああ」

「悪ぃな……ッ……今、今起きるから。待ってろ」

 

 肘で、地面を押し返して、体を起こす。

 顔にべたべたと砂が着いている。

 

「…………ッ」

 

 地面に触れた腕に、振動が伝わっていた。鈍く、地を揺らすような振動だ。

 帝国兵。相当の数か。魔導兵器も、あるのだろう。

 

 こんなことを言っても、無駄だ。

 それは全く意味のないことだ。全部、選んでここに居るのだから。

 そう分かっていても、俺は口を開いていた。

 

「トール……すまねぇ……ッ……俺の、俺のせいだ。クソッ。すまねぇ……!」

 

 バカな真似をした。俺がひとりでも多く敵を斬っていれば。ジンと一緒に、こいつを行かせておけば。こんな、戦場なんかに、連れてこなければ。

 俺は、後悔なんてものを、していた。

 

 

「い、良、い……わ、悪くは」

 

 だらりと下がった、トールの頭から、とぎれとぎれに声とも言えない音が漏れる。

 

 

「わ、わる…………悪くは、なかった」

 

 

「……トールッ! ぐッ!?」

 

 急にずしりと、トールの体が重くなった。

 これじゃ、まるで、水の詰まった革袋だ。

 

 

 振動を感じる。敵。何人。

 大群なのは、分かる。地響きだ。

 俺の、短剣はどこだ。全員、ぶっ殺してやる。

 

 

 さあ、かかって来いよ。

 どこだ。

 

 短剣は、どこだ。

 

 

 俺は目に映る全てがゆっくりと、遠ざかるのを感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      「()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう、聞こえた気がした。

 同時に、俺の背中に、とんでもない量の光が降り注いだ。

 

 光の正体はエーテルだ。見たこともないような密度だが、暖かく、柔らかかった。

 

「──がはッ!? ハアッ! ああ……!?」

「……トール!?」

 

 何が起きたのか、理解ができない。

 これは癒やしの、魔法……なのか。

 一体誰が。

 そう思った時、俺の横を足音が通り過ぎる。

 

 目が霞んで、良くは見えない。

 だがとっさに数えていた。

 8人。

 足音は止まることなく、俺たちが来た方へと駆けていった。

 

 俺は首を持ち上げ、背中の男に声をかける。

 確かに、温度を感じる。

 

「トール……トールッ! お、お前、傷は!?」

「ハアッ……あ、ああ。大丈夫みてえ……だ」

「……そうか。ははッ……そうかよ」

 

 こんなことがあるのか。俺は緊張の糸が、切れようとしているのを感じた。

 だが、終わっていない。あの8人、決して多くない数。加勢をするべきだ。

 

 俺は首をねじり、後方を見る。

 

 8人の背が見える。てんでバラバラの格好だ。武器も揃っていない。

 

 あれは、冒険者の部隊か……?

 その奥には……クソッ。帝国兵がうじゃうじゃとやってきている。魔導兵器もいくつか見える。

 俺は体に力を込めようとしたが、手足はブルブルと震えるばかりで役に立たなった。

 加勢を。奴らを死なせたくない。

 

 

 その考えは、繰り広げられた光景にかき消された。

 

 

「──すげえ」

 

 同じ光景を見ていたのか、声を漏らしたのはトールだった。俺はただ唖然としていた。

 

 その冒険者たちが帝国の部隊へと触れやいなや、その群れが吹き飛んだ。

 冒険者の持つ槍が、斧が振るわれるたびに帝国兵が宙を舞った。見たこともない魔法が放たれると、魔導兵器が紙細工のようにくしゃりと潰れて破片を撒き散らした。

 

 あんなのは見たこともない。だが、聞いたことがあった。

 そうか、あれが。

 

「…………え、英雄」

「何? そうか……あ、あれが……”光の戦士”」

 

 トールは驚き、だがすぐに得心した様子だ。

 そりゃそうだろう。あんなのそうそう居てたまるか。

 あの中の1人の呼び名なのだろうか。それとも8人でそう呼ばれているのだろうか。

 どちらにしろ、英雄譚の登場人物みたいな奴らだ。人気が出るのも分かるね。

 

 俺たちが目を奪われているその間に、帝国兵はあっという間に陣形を崩し、押されて下がっていった。

 その冒険者たちは帝国兵を圧倒しながら、そのままカストルム・メリディアヌムの方角へ進んでいる。その背中は、もう小さく見えていた。

 

 俺は前へ向き直り、地面に頭を下ろす。ぎりぎりに張り詰めた糸が、今切れた。体から力が抜けた。

 加勢する気は無くしていた。拗ねた訳じゃないぜ。何もかんも、託したくなったんだ。

 そう思わせる何かが、奴らにはあった。

 体も、動かねぇしな。

 

 俺は、背中の仲間に声をかける。

 

 

「……いつまで乗っかってんだ。重ぇんだよ、デカブツ」

「お? 何だ。そこに居たのか。あんまり小せえから、気付かなかったぜ」

 

 トールは悪態を垂れると、「よっと」と言いながら、俺の背からごろり落ちた。

 傷はふさがったみたいだが、体は上手く動かないようだ。そのまま地面に仰向けになっている。

 

 俺は顔にこびり付いた砂を、袖で擦り落とす。それからトールと同じ様に、体を転がして空を仰いだ。陽は沈み、西の方がぼんやりと赤く光っていた。東の方には既に、星が昇っている。

 

「…………はぁぁああ」

「………………疲れたぜ」

 

 俺のため息に答えるように、トールがぼやく。

 しばらく黙って仰向けになっていた。指一本動かしたくない。今モンスターが来たら、大人しく食われてやっても良いほどだ。

 ……地面に触れた体に、振動を感じる。じ、冗談じゃねぇぞ。

 

 俺は睨みつけるように上に、振動の方に目を向け……安堵した。 

 小さい影と、のっぽの影が走ってきていた。 

 影は俺たちを認めたのか、足を早めて近づいてくる。

 俺は小さく手を振ってやった。

 

「フロストぉぉお! トールぅぅう!!」

「───ブフッ!?」

 

 目に涙を浮かべながら駆け寄ってきたココルが、トールの顔面にダイブした。

 

「うおぉぉぉぉっ!! がおぉぉぉぉっ!! あおっ!! あおっ!! あおぉぉっ!!!」

 

 そのまま、ぎゃんぎゃんと泣いている。

 

「おい。息が出来ねえぞ…………ったく……しょっぺえな」

 

 トールは何やらブツブツと文句を言ったが、結局観念したようだ。

 その様子に苦笑していると、そばにのっぽの影が立った。

 

「ジン……悪かったな。助かったぜ、ありがとよ」

「…………ッ……」

 

 ジンは肩で息をして、汗がびっしょりだ。それでも、何でも無いと言うように、柔らかく微笑んでいる。

 左手にはどこから借りてきたのか、鞘付きの片手剣を持っている。刀とは違うそれじゃあ、ちゃんとした技は放てないだろう。それでも、戦う気で戻ってきてくれたのか。頼りになるヤツだ。

 

「ココルも、元気そうだな。エーテル薬持ってないか? すっからかんで動けやしねぇ」

「う、うるさい! バカ!」

 

 ココルはその場に立ち上がると、俺を指差して見下ろす。

 

「……どこに立ってやが」 

「よ、よくも、あんな真似を……! クソッ……ううっ。コ、ココは、もっと強くなるから……だから、に、二度とあんな真似するなッ!!」

 

 トールの声をかき消して、ココルは高らかに叫んだ。目からはまだ、ぼろぼろと涙が溢れ続けている。

 

「……ああ、悪かったよ。ココル、頼りにさせてもらうぜ」

「…………フン。俺は、謝らねえぞ。俺が、このパーティの”守り手”だ。一番前、一番先。それが俺の”役割”──おい、いい加減、そこから降りやがれ! 格好付きゃあしねえッ!」

 

 ココルの足元で、トールが不満の声を上げた。

 ココルは両腕でごしごし涙を拭いて、肩をすくめた。

 そして地面に降りて靴に足を入れる。わざわざ靴を脱いでいたあたり、むしろ毒気を感じる。

 

「よいしょっと。ふんっ、トールって、案外カッコつけだよね……ガキなんだから」

「何だとこの──」

「よせよトール。ホントのことだろ……それより、もう青燐精製所の方に戻ろうぜ。ケツが冷える」

 

 俺はジンの手を借りて、体を起こす。

 ちらりとカストルム・メリディアヌムの方を見る。もうできることは無いだろう。

 後は、”光の戦士たち”に任せよう。

 俺の言葉を聞き、ココルが何やら気まずそうに口を開いた。

 

「あー、青燐精製所なんだけど、戻んないほうが良いかなって……」

「んあ? なんでだよ。ま、まさか、”兵器”の場所、伝えなかったのか!?」

「そ、それは大丈夫。ココたちが着いた時は、それで大騒ぎになってたから」

 

 ココルは焦るように、手を前で振りながら言った。そ、そうか。俺たちの通信を聞いたかはともかく、”兵器”の居所が知れたなら一安心だ。

 

「じゃあ、何で」

「そ、それがね、ココルが技術屋さんと話してるときに、ジ、ジンが、剣を借りようとしてて……当たり前だけど、ジン、言葉が通じてなくて」

 

 ココルが、そう言ってジンの方を見る。釣られて見ると、ジンはあからさまにそっぽを向いている。

 目を戻すとココルは、気後れするように言葉を続けた。

 

「それで……ジン、相手ぶん殴っちゃってて。しかもその人、ちょっと偉い立場っぽくてさ。戻るのは、ちょっと気まずいかなー、なんて……」

「…………」

「………………」

 

 俺は呆れてジンを見る。そう言われてみれば、ちょっと上等そうな剣を持っている。

 ジンは明後日の方を向いて、唇を尖らしてふーふーと息を吹いている。口笛のつもりなら鳴ってねぇぞ。

 

「………………まあ、良いか」

 

 どうせ正式な部隊でもないし、このままバックレちまおう。

 

 そんなことよりも大事なことがある。

 俺は仲間に向かって言う。

 

「さて、お前ら……どこの酒場で飲みたい?」

 

 もう長いこと、酒を飲んで無いような気分だ。

 仲間たちは、一瞬顔を見合わせると、競うように口を開く。

 

「……溺れる海豚亭だ。久しぶりに、あの魚を揚げたヤツが食いてえ」

「カーライン・カフェ行こうよ! ミューヌさんやアリムに会いたい!」

「ざぁ、ももでぃさんっ!」

 

 見事に割れたな。つまり、行き先を決めるのは俺ってことか。

 俺はそれぞれの店の名物を思い浮かべながら、空を見た。

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 俺はカウンターに立つ男に話しかけながら、天板に寄りかかっていた。

 ここ”溺れる海豚亭”では、もう何日もお祭り騒ぎが続いていた。どいつも浮かれた顔で、歌えや踊れやの大はしゃぎしている。

 別にここだけってわけじゃない。今は、エオルゼア中の酒場がこんな感じだろう。

 

 カストルム・メリディアヌムを飛び出したあの後、俺たちは北へ、モードゥナのレヴナンツトールへ向かった。

 その間、何度かとんでもない爆発音を聞いた。カストルム・メリディアヌムの方の空が、明るく見えたほどだ。

 

 あれから何日かが経ったが、あそこで何があったのか細かいことは分からない。だが、(ちまた)じゃ”英雄”の話で持ち切りだ。

 とにかく、エオルゼアの当面の危機は、回避されたって話だ。 

 ついでに、正式に”第七霊災”の終結が宣言されたらしい。

 そんなこんなで、人々は浮かれきっている。この馬鹿騒ぎもひと月は続きそうだ。

 

 俺たちは、しばらく傷ついた体を癒そうってんで、ここリムサ・ロミンサまでやってきた。

 ココルとジンは、来たことがなかったようだから丁度いい。

 リムサ・ロミンサには、最近やけに腕の良い職人が現れたそうだ。ジンの刀も、それで直してもらえそうだ。

 

 途中、”霧の村”にも寄ってきた。

 村人は、きれいに埋葬されていた。あの、リットアティンという男の指図だろうか。

 ココルはそこで、長いこと祈っていた。呪術ってのは、葬送の儀式から発展したものらしい、その昔……いや、そんなことは関係ない、か。

 

 とにかく、そういうわけで俺はカウンターの中の男、”溺れる海豚亭”のマスターにこれまでの経緯をだらだらと話していた。

 

「──ってな感じでさ。何やったって金にはならねぇし、お荷物は増えるし。ひでぇと思わねぇか、バデロンさん」

 

 手に持ったジョッキを傾けて、中身を飲み干した。

 俺がジョッキをカウンターに置くと、それを受け取ったバデロンさんは、いかにも可笑しそうって顔で口を開く。

 

「ミューヌやモモディからよ、少しは聞いていたぜ。ククク、だいぶ笑わせてもらったぞ。

 ”言うことなんか聞きはしない。たまに良いことしたと思ったら、その倍は面倒事を持ってくる。もう褒めれば良いのか、叱れば良いのか”……ってな」

 

 そう言うと、バデロンさんは口を開けてからからと笑う。

 自分の評価ってのは、興味が沸かないね。とりあえず褒めてくれりゃ良いんだ。褒められて伸びるタイプなんだよ。誰だってそうだろ?

 

 そもそも冒険者ってのは、褒められるために冒険してはいない。酒、宝、食い物、未知なる体験を求めているんだ。

 

 俺はカウンターを指で叩いて、エールを催促する。

 

「笑い事じゃねぇよ。こっちはよ、命を張る場面ばかりだったんだぜ? だってのに結局、何のお宝も手に入らねぇ。そのままここに戻ってきちまった。大損だぜ、この旅はよ」

 

「そうか? 俺にはそうは見えねえぜ。──手に入れたモンも、あるんじゃねえか?」

 

 バデロンさんはそう言い、一度顎で俺の後ろを指すと、エールの樽の方へと体を向けた。

 

 俺はバデロンさんが示した方に、顔を向けた。

 にぎやかな酒場のテーブルのひとつに、一際ぎゃあぎゃあと騒いでいる連中がいる。

 

 俺の仲間たちだ。テーブルには隙間なく酒が、皿が乗っている。何がそんなに面白ぇのか、げらげらと笑っている。

 

「……ああ。バデロンさん」

 

 俺は、こちらに背を見せてジョッキにエールを注ぐバデロンさんに、言う。その背中は、こころなしか楽しげだ。

 

「バデロンさん……俺の話、聞いてなかったな!? 無ぇんだって! お宝ゼロ! 金のことか? とぉんでもねぇ。あのバカども、ひでぇ大メシ食らいで酒食らいだ。もう明日には素寒貧だぞッ!? ちったぁ! 節約して! 飲みやがれってんだ!!」

 

 俺はカウンターの天板にバンバンと八つ当たりしながら、まくし立てる。

 

 背中を向けるバデロンさんは、頭痛を抑えるみたいに頭に手を当てて、上空を仰いでいる。

 

 まったく。忙しいのは分かるけどよ。客の話を聞くのも、仕事のひとつだろう? しっかりしてくれよな。

 

 バデロンさんは、ため息を突きながら、こちらに向き直った。

 エールの入ったジョッキを4つ、カウンターにゴンッと並べ立てる。

 

「まあ、とにかくだ。おまえさんのやってきたことは、悪いばかりじゃなかったってことさ……ほれ、俺の奢りだ。持っていきな」

「おっサンキュー。なんだ太っ腹だな」

 

 俺はジョッキたちの取っ手を、がちゃがちゃと寄せてバデロンさんの顔を見る。

 バデロンさんは、なぜだか上機嫌だ。

 

「なに、気紛れだ。冒険、続けるんだろ? その門出の祝いさ。また戻ってきて、笑わせてくれよ」

「……ああ。何度だって来るさ。ここのエールは最高だからな」

 

 俺はそう言って、ジョッキを片手で持ち上げ、カウンターから離れた。

 テーブルの方へ歩み出すと、仲間たちが俺に向かって、なにやら声を上げながら手を振っているのが見えた。乱暴者で、わがままで、何を考えているか分からない、俺の仲間だ。

 

 さて、どうするかな。

 

 どんな冒険をしよう。アイツラは、どんな冒険がしたいだろう。

 使命なんてない。波乱の運命なんて望んでいない。

 それでも待ち受ける探求の旅に、

 俺はめまいさえ覚えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

         つづく

 

 

 

 

 




 



ここまで読んでくれた方、ありがとうございます。
ブックマークや感想をくれた方、とても励みになりました。感謝です。
ひとまず新生編、完結です。
大変楽しく書けました。
ネタが溜まったら、今度は蒼天編を書いてみたいです。
ノシ。

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