はるか昔、第三星歴のころだと聞く。第七星歴となった現代すらも大きく超越する技術力を持つアラグ帝国は、その時代の覇者だった。
そうして栄華と退廃を極めたあげく、第四霊災を引き起こして滅びたとされている。
滅びたあとも世界中に残されたアラグの遺物は、管理者もないのにその機能を持ち続けていた。支配を狙う王君や強欲な商人、一攫千金を夢見る冒険者たちが遺物をめぐる争いや混乱を引き起こした。
あの第七霊災もアラグの遺産によって起こされたって話だ。
まったく、かかわりたくない帝国五千年連続ナンバーワンだ。最近はガレマール帝国も追い上げてきているが、まだまだアラグの覇権は続くだろう。
しかしお宝にはちがいない。画期的な装置か何かが見つかれば、高く売れることは間違いない。
そのためなら少しくらいのリスクは負わないといけない。愚かだとは分かっているが、それが冒険者の
「転移ってのは慣れねえな……」先頭を歩くトールがボソリと言った。「1度体が分解されて元に戻るだと? この俺は本当に俺なのか?」
「やめろよ怖ぇこというの……」
転送魔紋に入ったときに本当は
俺たちは転送紋をあとにして、長く続く通路を歩いていた。辺りは一様に金属質な壁に覆われている。靴音が反響するのが気にかかるが、今のところは敵となるような存在は感じない。
「なんだ臆病だな、トールもフロストも。そんなこと気にしなくたって大丈夫だよ」
俺の背後でココルが言った。
「生き物の本質は身体じゃなくて、エーテルそのものって言われてるんだ。もっと言うと、”記憶”と”魂”だね」
ココルの声は大きく聞こえたり、小さく聞こえたりしていた。周囲をキョロキョロと見回しながら喋っているのだろう。
「地脈はエーテルそのものを伝えるんだ。それに魂の完全なコピーは不可能らしいから、いわゆる”自己の同一性”は保たれているんだ」
「なるほどね……よくわかんねぇけど」
体が分解されるという不気味さは残るが、少なくともこの
ココルは持論を喋り続けている。声の反響が頭上からするところをみると、今は上を向きながら喋っているようだ。なんとなくつられて天井に目を向けると、得体のしれない光源が通路に沿って明るく灯っていた。
「──逆に魂に変異があると、身体がそれに合わせて
「魂の変異……か」
ココルの話に、俺はひとつ思い当たるものがあった。”テンパード”だ。
蛮神と相対してそのエーテル放射を浴びると、その蛮神の信者にさせられるらしい。”
「ム……おい。フロスト」
トールが顎をしゃくるようにして、前を指し示した。
俺は前方を確認し、うなずいた。振り返って、言う。
「興味深い話だが、続きは今度にしようぜ」俺は頭を左右に振りながら言った。
「さて、どうするかな……分かれ道だ」
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天井が高く、広くてきれいに片付いた丸い空間だ。
しかし、なにかの施設というわけでもなく、ただの分岐のようだ。
俺たちが進んできた通路の向かい側、左右に2つの扉があった。扉と通路を点で結べばちょうど正三角形になる。
2つの扉は大きさや見た目に違いはなく、行き先を示す看板もない。いかにもアラグらしい簡素な装飾で、ぼんやりとした灯りで周囲を囲まれている。
俺たちは部屋の中央に立って、左右の扉を見比べていた。
「どっちに進むの?」ルッカが俺を見て言った。
「なにがあるか、進んでみないとわからねぇしな……まぁ、行き止まったら戻ればいいか。とにかく、お宝は1番奥に決まってるさ。っつうわけで、こっち」
俺は適当に左の扉を指さした。時間のロスは避けたいが、扉は全部開けていけばいい。
仲間たちもとくに異存はないようで、全員で扉の前に立った。
トールが扉に伸ばした手を、ぴたりと止めた。
「この扉、取手がねえぞ」首をかしげながらトールが言う。
「押すんじゃないか?」
俺は前に出て、扉に手を掛けた。
「引き戸に見えるんだがな……うお!?」
「うわッ!? なんだ!?」
突然、扉の上部から壁が落ちてきて、俺は手を引っ込めた。あやうく持ってかれるところだ。
分厚い鎧戸のようなそれは、足元まで落ちて大きな音を立てた。
「閉まっちゃったね」
行ったこともない街の靴屋が廃業していたのを見かけたような、そんな気の抜けた声でココルがつぶやいた。
「なんなんだ……」トールはやれやれと首を振ると、もう一方の扉の方に頭を傾けた。「おい、どうする。反対側に行くか?」
「しょうがねぇ、そうす……ぃッ!?」
また突然だ。鎧戸が大きく振動し、周囲の灯りが激しく明滅した。警報のような、けたたましい音が鳴り出した。
「罠か!? 全員、備え……は?」
警報がぴたりと止んだ。
同時に灯りがひときわ明るく輝いたと思ったら、鎧戸が巻き上がるように上に消えた。
再び姿を見せた扉も、ひとりでに左右に分かれて開いた。
ぷあーん、と間抜けな警報音がひとつ鳴った。
俺たちは扉の奥に続く道を、ぽかんとして眺めていた。
「……開いたね」
ココルが閉業した靴屋が、次の日に新規開業したのを見たようにつぶやいた。
「なんなんだよもう……」
俺たちは首をかしげながら、道を進んだ。
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その後も、分かれ道で扉を選ぶたびに扉はすぐに開いたり、閉まったと思ったら開いたり、開いたり、閉まった後に開いたりを繰り返した。
「ホントなんなんだ」
俺は目を指で抑えて、目に焼き付いたビカビカと光る扉を擦り落とそうとした。
「それにしても、拍子抜けだな。魔物も宝もありゃしねえぞ」
「そうだな、トール。だが俺の勘じゃそろそろ……」
そう言っているうちに、また別の部屋にたどり着いた。
広くて丸い、これまでと同じような構造だ。だが初めのほうの分岐と違って、置きっぱなしの部品やコンテナなどが目立つようになっていた。
ここで働いていた人間、内部の人間たちが行き来する場所までやってきたといったところだろう。つまり、お宝は近い。
しかし順風満帆とは行かないようだ。
「あれ、閉まってる?」
新しい分岐にたどり着くと、今度ははじめから両方の扉に鎧戸が降りていた。
「なんだ。こんどこそ行き止まりか」トールが鼻息荒く言った。
「どうする? 戻って違う方の道に行く?」
ココルが俺を見上げて言う。
「それでも良いが、面倒だな」分岐と分岐のあいだはそこそこ距離があった。「なに、俺に考えがある」
俺は扉のひとつに近づき、降りた鎧戸へ「ちょいやっ!」間髪入れずに思い切り蹴り込んだ。
鎧戸から大きな金属音が響いて、扉全体が大きく揺れた。
一瞬のあとに、扉から警報音が鳴り出した。
「ほらな」俺が振り向いて言う。
「考えって、これ?」ルッカが耳を押さえながら、咎めるような目を俺に向けた。
俺たちはビービーと鳴る扉の前に立ち、鎧戸が巻き上がるのを待った。
「おい……さっきと様子が違わねえか?」
トールの言うとおり、扉はビービーと音を鳴らすばかりで、鎧戸が上がる気配はない。
ココルが扉に耳を近づけて、首をかしげる。
「でもなんか、ガシャガシャいってるよ。中で引っかかってるんじゃない?」
「き、きっとそうだ。まぁ待てよ」
しかし、鎧戸は一向に開かない。
ガシャガシャという音ばかりが大きくなっていった。
ルッカが前を向いたまま、頭頂部の耳を器用に前後に動かして、口を開いた。
「……この音。うしろから聞こえてない?」
俺たちはいっせいに振り返った。
俺たちが通ってきた通路から、巨大な機械の塊が歩いてきた。
「……そうだ、ルッカ。扉を開けられないか試してくれ」
「……どうして、蹴る前に言わないの?」
「悪かったと思ってる」
現れたそいつの上半分はまるで列車の機関部か戦艦のように見えた。前後に張り出したその上体の左右から、やたらと太い腕が伸びている。
威圧的な上半身に比べて、貧弱とも言える簡素な2本の脚が上体を支えていた。
よく見れば機械の足元に、膝の高さぐらいの蜘蛛のような別の機械がいくつか着いてきていた。
「あ、知ってる。あのおっきいほう”ドレッドノート”って呼ばれてるやつだ。アラグの遺跡に出るっていう工作機械だよ」
ココルが言った。なんでそんなことを知っているのかわからないが、酒場かどこかで噂話でも聞いたのだろう。
それにしても
「ふぅん、工作機械ね。じゃあ危なくないんだな。扉を直しに来てくれたとか──」
『ギイイィィイイッ!!』
ドレッドノートは両腕を大きく振りかぶった。きしんだ部品が叫び声のような音をかき鳴らす。
ランプを赤く明滅させ、巨大な頭部をまっすぐこちらに向けて、その歩みを加速させた。
「……そう都合よくはいかないか。行けトール! 念願の敵だぞ!」
「てめえは……まあいい」トールは一度俺をにらみ、首を鳴らしながら前に出る。「ガラクタがノコノコと──」
トールはずんずんとドレッドノートに向かって歩き、肉薄する。
ドレッドノートの高さはトールと大きくは変わらないが、質量は圧倒的な差がある。
トールはトールで、
「──鉄くずにしてやらあ!!」
斧を下から振り上げ、ドレッドノートの頭部を殴りつけた。
ドレッドノートは衝撃で2、3歩下がり、片膝をついた。装甲の一部が剥がれて床に落ちる。
トールが一撃を加えると同時に俺も飛び出す。
「ガハハハッ! なんだあ大したことねえなあ!」
「トール! 小さいほうも忘れるな!」
四本脚の蜘蛛のような機械が、カシャカシャと音を鳴らしてドレッドノートに追いついた。
トールが振り抜いた斧を返すように蜘蛛に向けた。
「フン! 分かってる──む、う!?」
機械蜘蛛がドレッドノートの足元にたどり着いたと同時に、ドレッドノートがその蜘蛛をおもむろに掴んだ。
そしてそのまま、蜘蛛の体を引き裂いた。
小さい破片がいくつか床に散らばった。
俺は思わず急ブレーキして、その様子に目を取られた。
「な、仲間割れか?」
「驚かせやがってこのポンコツ……め……な、なんだ?」
トールも面を食らったようにのけ反って下がった。
「……ひぇ……く、
後ろからそう言ったのはココルだ。
ココルの言葉は正確には事実と異なるが、おおむね合っていた。
ドレッドノートは分解した蜘蛛の破片を、自らの体に取り付け始めた。その様子はたしかに食事のように見えた。
『ギィィイイイィィイイインンッ!!』
もう一度ドレッドノートが大きく体をきしませた。
その装甲はさらに厚く、より質量を増していた。
「ま、まずい!」俺は声を上げた。「蜘蛛から倒せ! これ以上食わせるな!!」
「も、もう遅えぞ!!」
次々と足元にやってきた蜘蛛を、ドレッドノートはことごとく分解し、体に取り付けた。
すべての蜘蛛を取り込んだドレッドノートは、一回りほど膨れて見えた。
トールは前に出ると、斧を大きく振りかぶった。
「チッ、ちょっとデカくなったからって、なんだってんだ!! おらあッ!! ──おっおお!?」
攻撃を弾かれたトールが、今度は下がらされた。
「クソッ……ジンッ!」ドレッドノートがトールに向き直るのと同時に、俺とジンが側面から技をかける。
しかし──
「……ゔぁッ!?」ジンがうめき声を漏らした。
「こ、これは、まずい……! 硬い!!」
俺の短刀もジンの刀も、いとも簡単に弾かれた。
「"ルインラ"! ……ひぇ、き、効いてない。どーすんのさ! フロスト!」
ココルの魔法も効果は今ひとつのようだ。
「参ったな……」俺は大きく飛び下がって、全体をもう一度眺めた。
実のところ、そこまでの危機は感じていない。
工作機械というだけあって、攻撃面はたいしたことがないからだ。
風切り音をたてながらドレッドノートが剛腕を振るうが、トールは落ち着いてそれをさばいていた。
とは言っても、ちんたら戦っているわけにもいかない。
「クソッ……このままじゃ時間切れになるぞ。ルッカ! 扉はどうだ!」
俺は扉の前で膝をついているルッカに声を掛けた。
「だ、だめ。全然わからない……もうあれを使ったほうが……!」
「だめだ。こんなところで使うわけにはいかない。なんとかするんだ!」
「で、でもこんな……!」
ルッカは手にっ取った工具を取り落とし、慌てて拾い直した。集中できていないようだ。
無理もない、まだ戦闘に慣れていないのだ。
俺はルッカに駆け寄り、震えている肩を掴んだ。
「落ち着け、後ろは任せておけ。時間はいくらでも稼ぐ」
俺はゆっくりと言い聞かせる。
「これはおまえにしかできないんだ。いや、おまえならできる! 大丈夫だ!!」
「フ、フロスト……」
「だからはやーーく!! 早く早くはやーーーくッ!!」
「分かったから! ちょっと黙ってて!! あと”おまえ”はやめて!!」
ルッカは目に力を込めると、扉に手をついて顔を近づけた。そのまま高速でなにやらつぶやき始めた。
「なぜ扉はひとりでに開くの? 人の姿を認識するような装置はない。おそらく、床の感圧で人が立っているのを認識する仕組み。その仕組みの異常ならどうしようもない……違う。むしろこういう部分は丈夫に作られる。もっと繊細な箇所が……違うアプローチを……扉が二重になっているのは、鎧戸はきっと異常時の隔壁。開いたり閉まったりしていたのはなぜ?」
扉にへばり付いて壁に向かって話す姿はなかなか迫力があった。しかし口に出すと怒られそうなので、俺は黙って見ていることにした。
「開いたり閉まったりする隔壁なんて意味はない、つまり経年劣化によるセンサーの誤作動……! 精密な認識が求められる部分……そうだ、ここが施設の奥深くなら、どこかに個人を認識するための仕掛けが。私なら、この辺りに……あった! ここだけ材質が違う。でも、鍵穴はない……この研磨されたフラットな形状……接触による認識? おそら板状のものに情報を記録したもの……情報をオーバーフローさせれば、初期状態にもどるかも……この材質が通しやすい属性は……”雷属性”!!」
ルッカはおもむろに立ち上がると、懐から丸っこいものを取り出した。
「来て、"オートタレット・ルーク"!!」
『フィィィイイン!!』
オートタレットはひとりでに組み上がると、甲高い風切り音を鳴らして空中に浮かぶ。
そのまま、扉の横にある銅板のような部分の前に移動して静止した。
「ごめんね……”
ルッカがそう声を上げると、オートタレットの風切り音がひときわ大きくなった。
『──キュィイイィィィッッ!!』
音がピークに達すると同時に、バチバチと閃光を放ち、稲光が銅板を巻き込んで走った。
オートタレットはそのまま、力を失ったように床に落ちていった。
ルッカはじっと扉をにらみ、俺はその様子を固唾を飲んで見守った。
ぷあーんと、間抜けな警報がひとつ鳴り、鎧戸が巻き上がると同時に奥の扉も開いた。
「や、やった!」ルッカは拳を握って、その場で跳ねた。
「いいぞ、ルッカ!」
俺はルッカの背を叩き、振り返った。
「トール!!」
「先行ってろ!!」
トールはこちらを見もせずに声を上げた。ジンはまだダメージを与えようと試行錯誤している。
ひとまず夢中になっている二人をおいて、俺は足元に駆け寄って来たココルと開いた扉に飛び込んだ。
「こ、これは、倉庫……か?」
扉をくぐったそこは、店のバックヤードのようになっていた。そこかしこにコンテナのようなものが積まれている。
ちゃんとした倉庫というわけでなく、通路にものを乱雑に置いてあるようだ。
俺は思わず唾を飲んだ。
ひとつひとつ開けてみたいところだが、敵が近すぎる。
「フロスト! これ! これ見て!」
ココルがコンテナのひとつを指差しながら飛び跳ねた。
「そ、そいつは!?」それを見て、俺は驚いた。
「これなら! アレもなんとかできるんじゃない!?」
「これ、すごいよ……! なんて
追いついたルッカもそれを見て感嘆の声を漏らした。
コンテナの上に、飾るように置かれているのは
それもかなりの上物だとわかった。
ココルの言う通り、これならあの機械を倒すことができるにちがいない。
「だが、俺には無理だな……」その武器は俺が使うには大きすぎた。「トール!! ちょっとこっち来い!」
俺はこの武器のサイズに合いそうな男の名を呼んだ。
「ああ!? 忙しいんだよ! 見りゃわかんだろ!!」ドレッドノートから目を離さずに、トールは怒鳴り散らした。
「いいから来いって!!」
「チッ。なんなんだいったい。おい、ジン。ちょっとのあいだ任せたぞ」
「ッ!?!?」
急に敵を押し付けられたジンが、驚愕の顔を見せた。
そのままドレッドノートを引っ張るように逃げ、ぐるぐると部屋を回りはじめる。
無茶苦茶なことをすると思ったが、幸いドレッドノートは足が遅く、十分に時間が稼げそうだった。
どすどすとトールがこっちまで来た。
「なに遊んでんだ!!」トールが顔を赤くして声を上げた。
「いいからトール、見ろ! これを使え!」
「こ、こいつは……!」
トールは俺の指し示した武器に、目を見開き、それから悔しそうに頭を振った。
「だ、駄目だ。こいつは、俺には使えねえ……!」
「そんなことねぇって! おまえなら! いやおまえにしか無理だ!」
顔を横に振って渋るトールに、俺たちは口々に叫ぶ。
「ト、トールはやく! ジンがやられちゃうよ!」
「ああ! ジンくんふっとばされた!」
「うぐ……ぐぐぐ」
「頼むトール!!」「トール!!」「トールくん!!」
「うぐ、く、クソッタレがあああ!!」
トールは大きく吼えると、斧を床に突き立てた。
コンテナの上の武器を掴み、ドレッドノートの方に向かって駆け出した。
「ジン!! 代われえ!!」ジンとすれ違う形で機械と向き合うと、手に持った武器をぐるりと回しながら、大きく振りかぶる。
「"シュトルム──ヴィント"ォオッ!!!」
真正面から大技を放ち、武器の先端がドレットノートの横腹に深くめり込んだ。
『ギッギィアアッッ!!』
重く響く衝撃音とともに、ドレッドノートが大きく体勢を崩して転倒する。
俺の見立て通りだ。こいつは、とびきり上等な武器だ!
トールのエーテルに反応しているのか、武器の先端に薄青色の光が点っている。
明滅する武器の先端に、装飾が施された巨大な
そう、それは、見るも見事な──”
「すごい……! 似合ってるよトールくん!」
「「よっ! "
「ウガアアアアアアアッ!!」
トールは叫び声を上げながらドレッドノートを滅多打ちにしている。トールの猛攻により、ドレッドノートは立ち上がることすらできていない。
おっと、俺もこうしてはいられない。
トールの一撃を受けて、ドレッドノートの装甲に歪みができているのを俺は確認していた。
そうだ。この状態なら、刃が通る!
「ジン! 合わせろ!!」俺は息を切らすジンに言う。
俺はドレッドノートに飛びついて、その装甲に短刀を引っ掛け
「ジンッ!!」
「シィィイイイッァアアッ!!」
うっぷんを晴らすように、ジンが大きく広がった装甲の隙間に刀を突き立てた。
ドレッドノートは1、2度ガクガクと体を揺らし、ランプを何度か明滅させた。それからようやく、その機能を停止した。
「やったーーっ!」ココルが勝利を喜ぶ声を上げた。
「よしっ! いい一撃だぜ、ジン!」
「……ぜぅ」
ジンはふくれ面をし、ちょっと納得がいかないという顔を見せていた。
「お、怒るなって、ジン……平気だったろ? それにさっきのは俺の指図じゃねぇよ。なぁ、トール」
「…………」
返事もせずにトールは、戦鎚とこれまで使っていた斧を手にとって交互に見比べていた。
しばらく迷った表情をした後、斧のほうをそっと壁に立てかけた。
「クソッ。手に馴染みやがる」トールがそうぼやいた。
「良い武器じゃねぇか。おまえのもんだ」
トールは鼻を大きく鳴らし、戦鎚を肩に担いだ。
当然だが、こいつのお宝の分け前からは、戦鎚の分を抜くことにするつもりだ。
「なあ! もっと探してみようよ!」
「見てこの無属性のクリスタル! すごい純度!! これ持っていっていい!?」
ココルとルッカはコンテナのほうに駆け寄り、わくわくとした顔を見せていた。
「よせ、ここで時間を取られるわけにいかない。木っ端はあとだ。この先が、”一番奥”だ」
俺は確信を持ってそう言った。辿ってきた道筋、さっきまでと違う通路の雰囲気から、この通路の先がこの施設の終点だと俺は思い至った。
「さぁ、見せてもらおうぜ。アラグのお宝を」