厚い事件簿を薄くしたい   作:あきゅおす

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第11話

 怪盗紳士現る! 蒲生画伯破滅への道筋

 

 先日から報道されている蒲生画伯の逮捕に関してだが、詳細な発表がされた。その内容は、怪盗紳士が捕まっていたI画伯を盗み出すという、まさに漫画や小説のような出来事だったといえる。

 以前、怪盗紳士がコンクールに絵画を送った件があったのだが、それは怪盗紳士の罠だったという。関係者はこう話す。

 

「蒲生画伯は5年前から売れ出しましたが、その絵が今までの彼からは感じられないようなタッチだったんです。その際に実はゴーストを雇ってるんじゃ…とは言われていました。ただ、あまりにも美しい絵だったので、やっかみとして言われていましたが…。怪盗紳士もそれに勘付いたらしく、あのような揺さぶりをしたのだと噂になっています」

 

 確かに5年前の作品を見比べてみると、絵のタッチが違う。そのため、怪盗紳士も気づいたらしく、ゴーストにされたI画伯の以前の絵を入手し、コンクールに出し、蒲生画伯の動きを見ていたのだと思われる。別の関係者はこうも語っていた。

 

「コンクールに出た後、蒲生は表ではコンクールで評価されたことを名誉なことだとは言っていたが、裏では常に苛立ちを見せていた。怪盗紳士が予告状を出すと慌てて警察に警護を依頼したらしいが…。その動きで怪盗紳士は何かしらあるのだろう、と目を付けたのだろう」

 

 自覚なくゴーストにされていたI氏だったが、怪盗紳士が訪れた際にその事実に気づいたのだという。

 

「I氏は気づかれないようにされた監禁状態で外との連絡手段も持ってなかったらしい。さらに家庭にお金がいっていると聞いていたのに実際はいってなかったのだから激怒していた。だから怪盗紳士に出会い、あのように特ダネの記事として広まったのは大きな意趣返しである」

 

 本誌はI氏にインタビューを行おうとしたが、現在旅に出ているらしく、本人への調査はできなかった。

 

 

――〇月▼日発行 週刊〇〇の記事より

 

――――――

 

 ○月・日

 

 今、青森行の電車に乗っている。もう一人の怪盗紳士…和泉さくらちゃんの起こした事件の元凶、和泉宣彦さんが亡くなる前に、さらに言うと和泉さんの奥さんが亡くなる前に家庭に戻そうと思う。

 

 今が原作の2年前だから間に合うとは思うが早めに動くに越したことはない。出たとこ勝負になってしまうけど、岸さんがアトリエに忍び込んでスケッチブックを盗み出したことを考えると、そこまで厳重な警備はしていないはずだ。しかもあの感じだと忍び込んだことすら気付かれてないっぽいし。

 

 原作での岸さんを見るに、そこまで準備しなくても忍び込めそうではあるけど、とりあえずもろもろ準備をしてきたので大丈夫だろう。

 

 

 

 ○月×日

 

 特に苦も無く忍び込むことができ、和泉さんと話すこともできた。

 

 屋敷の周りは塀に囲まれてはいたけれど、岸さんが山歩きしていたと言ってたのを覚えていたので山の方からぐるっと回りこむことが出来た。警備が雑…と思ったけど、警備会社とかに頼むと和泉さんを軟禁しているのがバレるのを避けるためなのか?こっちとしてはかなりありがたかったけど。

 

 時期的にはラベンダー畑の絵を描いてるんじゃ?と思って、ラベンダー畑を探すとほどなくして見つけて、そこで和泉さんが絵を描いているのが見えた。

 

 絵を描いている和泉さんに声をかけると、急に山の方から現れた自分に驚いていたが、敵意がないのが分かったのか、とりあえずラベンダー荘で話を聞いてくれることになった。

 

 自分の目的は蒲生のゴーストライターの調査だと伝えて資料を見せると和泉さんは驚いていた。それもそのはず、自分の名前で発表されているはずの絵が蒲生の絵として発表されているのだから。

 

 その話の中で「お金も蒲生さんが家族に渡していると言ってたけどあれは…」と途中で和泉さんがこぼしたので、そこらへん確認してもらいがてら自分の携帯から家族に連絡を取ってもらうことにした。原作では奥さんが亡くなったあと東京の親戚に引き取られたりしていたから、もしかしたら家族に関してはノータッチだったんじゃ?と思っていたけど、当たっていたらしい。

 

 ちなみになんで連絡を取ってなかったのかを聞くと、絵を描くのに集中してもらうため、という理由で蒲生が電話をなくしたらしい。家族には自分から連絡を取っておくから、と押し切られたんだとか。分かってはいたけどもうこの時点で真っ黒やんけ…。たぶん家族から絵が和泉さんのものではなく、蒲生のものになっているのがバレるのを防ぐためだろう。

 

 2年ほど連絡を取っていないのもあってか長く話をした後、和泉さんは怖い顔をして考え込んでいた。話を聞くと、お金は家庭には一銭も入っていなかったらしい。それどころか、蒲生からの連絡も一切なかったとのことや絵が蒲生の名前で描かれたということを聞いたらしい。どうするか話を聞くと今は一刻も早く家族の元に帰りたいとのこと。ただ、そうすると蒲生がどんな行動に出るか分からないとも悩んでいたので、1晩考えてもらうことにした。

 

 今はいきなり蒲生が来てもいいように普段立ち入らないスペース…クローゼットを借りている。寒い時期じゃなくてよかった…。

 

 

 ○月△日

 

 朝起きた後、再び和泉さんと話した。

 

 今いなくなると妻と娘に蒲生の手が及ぶ可能性が高いので一緒に行くわけにはいかない。だが妻と娘が困窮してしまっている。どうか妻と娘を助けてほしい、と言われた。当然頷いたけど、その後は2人でどうやったら助かるかという現実的な部分でうんうん悩んでいた。前世ありとはいえ今の自分は学生だからあてにならないし、和泉さんもそこまで親しい友人がいないとのこと。どうするかな…、と考えていたけど、後ろ盾になる人を考えたときに思い当たる人がいた。厚意に甘えることになるけど仕方ない…と思い、和泉さんにある程度事情を話すことに了承を得たあと、アドレス帳を開いて、その人――蓮花さんに電話をかけた。

 

 蓮花さんにとある人を援助してほしいと切り出すとすぐにOKを出してくれた。こっちが急いでいるのを察してくれたのか、事情は後から聞くとのこと。ありがたい。

 

 次に和泉さん自身をどうするかを考えたけど、これに関しては考えがあった。原作のさくらさんがしたこと…偽の予告状を出して本物の怪盗紳士を呼び出して、そこで盗みに来た怪盗紳士にモチーフ…というか和泉さん自体を盗んでもらう、という流れにしたいと思う。そこの交渉は和泉さんが実際に怪盗紳士がきたときにやるとのことだった。

 

 幸い、原作より前の時期ではあるけど怪盗紳士は活動していたし、原作では偽の予告状が出たらその現場を確認しに来る人物、それに加えてある程度の美学は持っているっぽいのでそこは安心できる。…まぁ怪盗紳士も蒲生の内情聞いたら乗り気で盗みそうな気もするしね。

 

 なるべく早く決行しようという話になったので、和泉さんから絵を1枚もらい、それをコンクールに出すことにした。とは言ったものの、他の絵は蒲生に持っていかれているためどうするか…と思ったら、和泉さんが蒲生に内緒でもう一枚描くとのことだった。少し時間はかかる、とのことだったので、半年後にもう一度来てくれ、とのことだった。

 

 話が終わった後、もう一度和泉さんに電話をかけてもらい、まだ帰れないけど、後日援助の話があると伝えてもらった。

 電話の後、お互いに頑張りましょうと握手をして別れ、こっそりと蒲生邸から脱出した。

 

 

 〇月>日

 青森から無事帰ってきたけど、まだやることがあるから引き続き頑張る。というのも、蓮花さんに報告して、そのあと和泉さんの奥さんと繋げないといけないからだ。…と言っても、報告、援助まではスムーズだった。和泉さんの奥さんと蓮花さんをつなげて、無事援助してもらうことができた。ちなみに内容は家はそのままにするためのお金、それとは別に給料を出す代わりに、奥さんが蓮花さんの元で働くことになった。元といっても、実家のことも考慮してか、蓮花さんは奥さんに在宅ワークでの仕事をお願いしたらしく、そのまま北海道の実家で待つことになったらしい。

 

 あとは和泉さんの絵の完成待ちなのでそれまでは他の事件のことを進めつつ待つことにする。

 

 

――――――

 

 ×月〇日

 

 怪盗紳士に和泉さんを盗んでもらう計画は無事成功した。

 

 和泉さんから絵をもらうタイミングで連絡が取れるよう携帯を渡したあと、直近のコンクールを調べ、原作での偽予告状の文言を使わしてもらって送ったところ、館やその周辺に警備が増えたらしい。ちなみにコンクールに送った絵は原作より幼いさくらさんがラベンダー畑に立っている姿が描かれたものになっていた。描いたものによって予告文変えようと思っていたけど、そのまま使うことにした。

 

 その数日後、ラベンダー荘に怪盗紳士が現れ、無事交渉成立。ラベンダー荘周りが不自然に警備が多かったらしく、それを怪盗紳士に怪しまれ、ラベンダー荘に潜入したところで和泉さんを見つけた…ということらしい。

 

 和泉さんが怪盗紳士にこちらの計画を話した後、うまく使われたものね…と苦い顔をしながらもOKしてくれた。蒲生の画風が変わったのにも気づいていたらしく納得し、何があったのかもともと興味があったんだとか。ちなみに報酬は和泉さんの新作の絵らしい。

 

 そのあとは蒲生の絵を盗むとの予告状を出し、その絵と和泉さんを盗み出した、ということだ。

 

 和泉さんを盗んだ後、わざわざ警察に予告状を出し、指定された場所に向かった警察を和泉さんが笑顔で迎え入れたらしい。

 事が明るみに出たあと、蒲生と片棒を担いでいた海津は詐欺で逮捕され、和泉さんは取り調べを受けた後、無事家族と再会できた。ちなみに蓮花さんの仕事は引き続きしているそうだ。

 

 ちなみに和泉さんとその家族とは、事件後にあった後もちょいちょい連絡を取っている。

 絵を描く旅の途中に東京にふらっとよる宣彦さんと時折こっちに出張で来ている奥さん、それについてきてるさくらさんが合流するところに一緒に混じってご飯を一緒に食べたりしている。時々蓮花さんとジゼルさんも混じったりすることもある。その時に都内で遊んだりしているせいか、さくらさんは都内の高校に行きたいのだとか。…不動や秀央は止めた方がいいよとは口に出して言えない。

 

 あと怪盗紳士とは結局対面はしていない。さすがに巻き込めないと思い、和泉さんは協力者がいるとだけ伝えたそうだ。発案した側だから言っても良かったんだけどな…、と思ったけど、顔に出ていたのか、和泉さんからそこらへんは大人に預けなさいと窘められた。中身は大人なんだけどなぁ・・・。

 

 追記

 錬金島のあと、怪盗紳士と電話で軽く話した際、実は協力者候補の中に自分も入っていたけど、一番有力視されていたのは蓮花さんだったらしい。だから錬金島で会ったときは驚いたし、変装がバレたときはもっと驚いたけど、逆に確信したんだとか。蓮花さんにそのまま確定されなくて本当に良かった…。




大変遅れてすいませんでした!
うまくまとまらず、書いては消してを繰り返し、そしたらうまく整合性が取れず…というのを繰り返していたらこんな時期になりましたorz
前回と同じく、既に起こっている事件の話がうまくまとまらず、スライドしたこちらでもまとまるのまで難航しました…。

次の話は早く書きたいですが、まだ何を書くかも決まってないので少し遅くなるかもしれません。

誤字修正してくださった方、ありがとうございます!

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