東京ロストワールド   作:ヤガミ

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そろそろ展開が大きく変わる頃だと思います。


第35話

~千里視点~

 とりあえず、部屋には入らせてもらった。

 彼の体には、無数の傷や痣が残されていた。

 警察に伝える為、証拠にする為に写真に残しておく。

 もちろん、彼から許可はちゃんと取った。

 

 千里「それで…、君はどうして監視対象にされてるの?」

 

 まず、その理由が聞きたい。

 この家庭で何が起きたのか、どのような経緯で彼は監視されていたのか。

 全て聞いてみる。

 

 柊太「お母さんがああなったのは…、僕が6歳の時…。」

 千里(…となると、今この子は杏梨と同い年で16歳…。10年も前から続いてたのか。)

 

 10年となると、相当長い。

 そんな期間でも、一切外出は許されなかったのか。

 

 柊太「…僕が誤って道路に飛び出して、車に轢かれそうになった時、お父さんが庇ってくれたの。だけど…、お父さんは結局事故に遭って死んじゃった。お母さんは狂ったように叫んで、僕に暴力を振るい始めたの…。」

 千里「……。」

 

 幼い時にそんな事が…。

 そりゃあ、2人はショックだったよね…。

 目の前で信頼していた人が突然亡くなる事が…。

 私も母親を亡くした身だから、気持ちはわかる。

 

 

 

 …でも、それが監視対象の始まりって事?

 

 いくら教育っていう事でも、学校にも行かせず、しかもこんなに痩せ細ってまで監視し続けるなんて。

 

 …流石にやりすぎだと思う。

 

 

 

 千里「お母さんは、君を危険に遭わせたくないから、君を監視してるって事?」

 柊太「…だと…、思う…。」

 千里「そっか…。私が子持ちの母親なら、いくら何でもそこまではしたくないかな。君のお母さんは、暴力も振るってるんでしょ?その時点で、完璧な犯罪者だと思う。」

 

 

 

 真衣『ああ、千里に同意見だ。』

 

 千里「……。」

 柊太「…え?」

 

 突然、通話を開いたままにしていた真衣が喋りかけた。

 

 杏梨『萩君、私達は今、千里ちゃんのスマホに通話を繋げてるの。皆に聞こえるようにスピーカーにしてたから。』

 柊太「そう…なんだ…。」

 真衣『辛かったよな…。君の母親は、父親が死んだのは君のせいって言ったんだろ?悪意はないのに、父親を殺した訳でもないのに、罪は君の方に行っちまう…。』

 柊太「……。」

 

 真衣がそう言うと、男の子は悲しそうな表情をしていた。

 これ以上思い出したくないだろうけど、今すぐにでも聞きたい事を聞いてみよう。

 

 

 

 千里「ねえ、今君が言った事、もう警察には話したの?」

 

 

 

 柊太「…!っ……!」

 

 千里「…?どうしたの?」

 

 男の子は怯え始め、私に抱き着いた。

 

 柊太「それが……。っ……!!」

 杏梨『何?』

 真衣『怯えてるのか…?なあ、正直に話してくれ。何があったのか聞きたいんだ。』

 柊太「話した…けど…、でも……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 柊太「お母さんが…!!皆殺しちゃった…!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 千里「…!?」

 真衣『は…!?』

 杏梨『えぇ…!?』

 

 男の子の口から、衝撃的な一言が出された。

 

 千里「皆殺した…?どういう事…?」

 柊太「っ…!うぅ…!!」

 

 ダメだ、話してくれそうにない。

 余程思い出したくない出来事が起きたのだろうか。

 

 真衣『なあ千里、ひょっとしたらさ…。』

 

 真衣が私に話しかけた。

 

 千里「…?何?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 真衣『彼が警察を呼んだが、その子の母親…。やっぱり口止めする為に、そこに来た警察を殺したって事じゃないか…?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 千里「え……?」

 

 真衣『邪魔する奴が現れたのなら、皆排除せざるを得ない。多分その子が言いたいのは、そういう事だと思う。アタシらがそこに来た時も、誰もいなかったろ?もしかしたら、そのアパートに住む人達は皆…。』

 杏梨『何それ、酷い…。関係ない人まで殺したって事…?』

 千里「…そうなの?」

 柊太「っ……。」コク

 

 彼は怯えながらも頷いた。

 やはりあいつは、完璧に犯罪者だった…。

 

 千里「…そういう事だったんだね。ありがとう、話を聞かせてくれて。」

 真衣『で?この後どうする?』

 千里「一通り情報は集まった。これからすぐ戻るよ。」

 真衣『おう、じゃあ後でな。』

 

 そう告げ、私は通話を切った。

 

 千里「君のお母さんは、私達が何とかする。だからもう少し辛抱してて。」

 柊太「……。」コク

 

 私は、さっき入った部屋の窓から出ようとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時だった─────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガチャッ

 

 真由美「柊太?誰かいる…の……。」

 

 

 

 千里「…!?」

 真由美「…!あんたは…。」

 

 まずい、見つかった!!

 くそ、何でこんな時に…!

 

 真由美「ああ、思い出した。先日スマホで撮ってた女よね?何しに来たのかしら?柊太に何しようとしてたのかしら?理由次第ではタダじゃ済まないわよ。」

 千里「……。」

 

 こうなったら…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 逃げるが勝ち!!

 

 

 

 柊太「…!」

 真由美「あ!ちょっと待ちなさいよ!!」

 

 彼女の言葉を無視し、私は逃げ出した。

 

 

 

 

 

~柊太視点~

 お母さんは僕の部屋から出て、家から飛び出して行った。

 きっと、あのお姉ちゃんを始末する為に…。

 

 柊太「助けに…行かないと…!」

 

 もう、我慢の限界だ。

 僕は監獄から抜け出し、外に出た。

 

 

 

 

 

 柊太「はぁ…、はぁ…。」

 

 それから僕はお姉ちゃんを助けに、一生懸命走る。

 でも、毎日少食の繰り返しで、長くは続かなかった。

 

 柊太「あっ…!」

 

ドタッ!

 

 挙句には、足を躓かせ転んでしまった。

 …ああ、また自分の体に傷を付けちゃったな。

 体力の限界か、息遣いが荒くなる。

 

 柊太(このまま、死んじゃうのかな…。誰の手も届かないまま…、僕は…。)

 

 うつ伏せのまま、そんな事が頭の中でよぎる。

 もう、いいよね。どうせ助からないんだし…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドォンッ!!

 

 柊太「…っ!」ビクッ

 

 諦めようとしたその時、大きな物音がした。

 

 柊太「何これ…。」

 

 見ると、目の前には大きな扉があった。

 

 何だろ、これ…。

 

 僕は立ち上がり、よろけながら、扉に触れた。

 

 

 

ビリッ!!

 

 柊太「いっ…!」

 

 指先に電気か何かが通った。

 

 そして───。

 

 

 

 

 

 柊太「え…?何これ…!?うわあああ!!!」

 

 

 

 

 

 ───その後は、何が起きたのかわからなかった。

 

 ────一体どこに連れて行かれるんだろう。

 

 ──────僕の意識は、ここで途切れてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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