~千里視点~
『あんたさ、親いないの?』
『ここにずっといても退屈だろ?それに、困った時はお互い様ってやつだしさ。』
『千里…か。良い名前だな!彩神って苗字もかっこいいじゃん。羨ましいよ。』
私…、最低だ…。
あの時真衣にはたかれて目が覚めた。
父親を恨むあまり、仲間まで追い詰めてしまった。
杏梨や柊太にも迷惑をかけた事だろう。
そして、何よりも───。
『アタシは…、信じてたのに…。お前がそんな奴だとは思わなかったよ…!』
真衣の言葉が離れられない。
私が無理矢理にでも、ロストワールドに踏み入れる事を必死に拒否していたのは真衣だ。
なのに私は、頭真っ白になり、周りが見えなくなるほど立ち向かおうとしていた。
『明日月曜だから、早速転校初日の登校だな。忘れるなよ?』
『何かわからない事があったら聞いてくれ。いつでも相手してやるから。』
『アタシ達で、ロストワールドの主を見つけ出しに行くぞー!』
人情に熱くて、頼り甲斐のあるあの真衣を、私は壊してしまった。
あの頃を思い出すだけでも、罪悪感が生まれてしまう。
千里「ごめん、真衣……。」
私は立ち上がり、北乃家に帰るのだった───。
~北乃家~
千里「ただいま……。」
北乃家に入った。
そして私は、リビングに入ろうとする。
ガチャッ
…と、誰かが出ようとしているみたい。
真衣「…!」
千里「あ……。」
リビングから出てきたのは真衣だった。
千里「真衣…、さっきは───。」
真衣「……。」
真衣は私を無視して部屋に入った。
千里「……。」
そりゃそうだよ。だって、強めの口調であんな事言っちゃったもの。
柊太「千里お姉ちゃん…?」
私をリビングから呼んだのは、柊太だ。
声だけでもわかる。
杏梨「お帰り…。」
千里「……。」
気まずい。
目の前で言い争いをした事を気にしているのだろう。
千里「ごめんね、2人とも…。真衣と争っちゃって…。」
柊太「僕は気にしてないよ~。」
千里「もうご飯食べたの?」
杏梨「食べたけど、コンビニ弁当だったよ。」
千里「…そっか…。」
そうだろうと思った。
あんな気持ち抱えてたら、料理なんて気分に乗らないだろう。
私は冷蔵庫にあったコンビニ弁当を取って、レンジで温めた。
どうやらこの弁当は、柊太が買ってきてくれたらしい。
しかも、私の好きな唐揚げ弁当だった。
いつもなら喜んでたけど、さっきの事もあって素直に喜べない。
柊太「…ねえ、お姉ちゃん。」
千里「ん?」
すると、柊太が話しかけてきた。
その内容は───。
柊太「…何で、真衣ちゃんにあんな事言ったの?」
千里「…え…。」
柊太は、私と真衣が争った事を話そうとしていた。
柊太「前まで仲良くしていたのに、どうして…。」
杏梨「……。」
千里「…ごめんね、迷惑かけちゃったよね…。」
もう話すしか無いな。
状況的に逃れる事はできなさそう。
千里「あの時私は…、頭が真っ白になってた。あいつに負けるのが嫌で、あいつの顔を見る度に、殴りたい気持ちがいっぱい込み上がってきてた。今思えば、真衣はそれを必死に止めてくれてたってのに、私は見向きせずにロストワールドに行こうとしてた…。今すぐにでも謝りたい…。でも、きっと真衣は私の事なんてどうでも良いのかもしれない。だって、私は真衣に酷い事を言ったんだよ…?」
杏梨、柊太「……。」
真衣のいないこの場は、いつもの娯楽が失われ、寂れた空間のようだった。
本当なら今すぐ仲直りしたいのだが、真衣のあの状況からしたら、それすらも厳しいだろう。
杏梨「そんな事、無いと思う。」
千里「…え?」
突然、杏梨が口を開く。
杏梨「お姉ちゃんもきっと、心のどこかで迷いがあるんだと思う。千里ちゃんだけじゃない。お姉ちゃん、こう言ってたよ?“千里には言いすぎた”って。」
千里「…!」
杏梨「千里ちゃんを見た時、無視していたと思うけど、それは多分その気持ちもあって気まずかったんだと思う。お姉ちゃん、昔から嫌な事から逃げる性格だったから、今回もそうだと思うんだ。」
千里「……。」
そうだったんだ…。
何だろう、気にしすぎてた私が馬鹿みたい…。
柊太「お姉ちゃん、ずっと迷ってたんでしょ?なら仲直りすればいいじゃん~。」
千里「…柊太は軽いなぁ…。でも、そうとわかったらしてみる。」
杏梨「うん!千里ちゃんならできるよ!」
千里「ありがとね、2人共…。」
私のモヤモヤした気持ちは吹っ切れた。
全く、2人は本当に良い子だなぁ…。
~真衣視点~
真衣「……。」
アタシは、机に突っ伏していた。
千里との争いが、嫌と言う程蘇ってくる。
本当は、あんなくだらない争いなんてしたくなかった。
でもアタシは怒りに身を任せ、強い口調で千里を傷付けてしまった。
千里が帰ってきた時、何て言おうかわからず、目を背けてしまった。
…ったく、本当に変わってねえ。
幼稚なガキのまま育っちまったな…。
コンコンッ…
真衣「…?はーい。」
突然、ドアのノック音が聞こえた。
ガチャッ…
千里「……。」
真衣「…!千里…?」
開けてきたのは、千里だった。
どうしよう、何を話せば良いかわからねえ…。
千里、真衣「…………。」
ダメだ、会話ができねえ。
何せ、喧嘩した後だったからな…。
でも、今しかねえよな。
千里、真衣「真衣(千里)、ごめんなさい!!」
千里、真衣「……え??」
え、シンクロした?
…という事は…。
千里、真衣「ぷっ…!あははははは!!」
考えていた事は一緒だったって訳か。
千里「何だろ、あんなに怒ってた自分が馬鹿みたい。」
真衣「アタシだって、何で必死こいて千里と向き合おうとしてたんだろうな。」
とりあえず、仲直りって事で良いのか?
まあ、千里が心の底から笑ってるなら、それで良いか。
千里「ねえ、真衣。」
真衣「ん?」
千里「…ありがとね。」
真衣「え?何だよ急に。」
急にお礼を言われた。
咄嗟の事だったから、返答に戸惑ってしまった。
千里「あの時、無理矢理にでもロストワールドに行こうとしてた私を止めてくれた事。真衣がいなかったら、私はそのままあいつに殺されていたかもしれない。」
まあ、あの時アタシも必死だったからな。
止めてて正解だった。
真衣「…いいって事よ。それにな、お前には仲間がいるんだからよ。ぜってえ無駄にはするなよな。あいつのロストを消したいのは、お前だけじゃない。杏梨や柊太…アタシだって同じだ。だからもう迷うな。アタシ達はお前に救われて、今こうしてロストワールドにも立ち向かえている。お前がいてくれたからこそ今があるんだ。だから次は、アタシ達がお前を救う番だ。」
真衣「だからよ、一緒に終わらせんぞ。」
千里「真衣…。ふふっ、わかった。」
そして千里は、また笑った。
良かった。いつもの千里に戻ってくれて。
彩神賢一郎…。
千里の全てを奪った極悪人。
あいつのロストワールドがあの街全体なら、あいつのロストが最後と言ってもおかしくねえ。
十中八九そうとは思えないが、もしそうなら徹底的に叩き潰す。
それが、アタシ達の最後の役目なのだから。
~杏梨視点~
杏梨「2人共、仲直りしたみたい。」
柊太「そうだね~。」
お姉ちゃんの部屋から、2人の声が聞こえる。
良かった。
あの状況が続いていたら、どうしたらいいのかわからなかったもん。
柊太「真衣ちゃんの言う通り、終わらせよう~。」
杏梨「うん。終わらせよう。ロストワールドを。」
私達もそう誓った。
千里ちゃんのお父さんという強大な敵。
私達は最後の戦いに向けて、準備をするのだった───。
メインストーリーが終わったら番外編を書いてほしい?
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書いてほしい
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書かなくていい
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書いてもいいけど先に続編書いてほしい
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作者に任せる