東京ロストワールド   作:ヤガミ

52 / 59
第49話

~千里視点~

 『あんたさ、親いないの?』

 

 『ここにずっといても退屈だろ?それに、困った時はお互い様ってやつだしさ。』

 

 『千里…か。良い名前だな!彩神って苗字もかっこいいじゃん。羨ましいよ。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私…、最低だ…。

 

 あの時真衣にはたかれて目が覚めた。

 

 父親を恨むあまり、仲間まで追い詰めてしまった。

 

 杏梨や柊太にも迷惑をかけた事だろう。

 

 そして、何よりも───。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『アタシは…、信じてたのに…。お前がそんな奴だとは思わなかったよ…!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 真衣の言葉が離れられない。

 

 私が無理矢理にでも、ロストワールドに踏み入れる事を必死に拒否していたのは真衣だ。

 

 なのに私は、頭真っ白になり、周りが見えなくなるほど立ち向かおうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『明日月曜だから、早速転校初日の登校だな。忘れるなよ?』

 

 

 

 

 

 『何かわからない事があったら聞いてくれ。いつでも相手してやるから。』

 

 

 

 

 

 『アタシ達で、ロストワールドの主を見つけ出しに行くぞー!』

 

 

 

 

 

 人情に熱くて、頼り甲斐のあるあの真衣を、私は壊してしまった。

 

 あの頃を思い出すだけでも、罪悪感が生まれてしまう。

 

 千里「ごめん、真衣……。」

 

 私は立ち上がり、北乃家に帰るのだった───。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~北乃家~

 千里「ただいま……。」

 

 北乃家に入った。

 

 そして私は、リビングに入ろうとする。

 

 

 

 

 

ガチャッ

 

 …と、誰かが出ようとしているみたい。

 

 

 

 

 

 真衣「…!」

 

 千里「あ……。」

 

 リビングから出てきたのは真衣だった。

 

 千里「真衣…、さっきは───。」

 

 真衣「……。」

 

 真衣は私を無視して部屋に入った。

 

 千里「……。」

 

 そりゃそうだよ。だって、強めの口調であんな事言っちゃったもの。

 

 

 

 

 

 柊太「千里お姉ちゃん…?」

 

 私をリビングから呼んだのは、柊太だ。

 

 声だけでもわかる。

 

 杏梨「お帰り…。」

 

 千里「……。」

 

 気まずい。

 

 目の前で言い争いをした事を気にしているのだろう。

 

 千里「ごめんね、2人とも…。真衣と争っちゃって…。」

 

 柊太「僕は気にしてないよ~。」

 

 千里「もうご飯食べたの?」

 

 杏梨「食べたけど、コンビニ弁当だったよ。」

 

 千里「…そっか…。」

 

 そうだろうと思った。

 

 あんな気持ち抱えてたら、料理なんて気分に乗らないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は冷蔵庫にあったコンビニ弁当を取って、レンジで温めた。

 どうやらこの弁当は、柊太が買ってきてくれたらしい。

 しかも、私の好きな唐揚げ弁当だった。

 いつもなら喜んでたけど、さっきの事もあって素直に喜べない。

 

 柊太「…ねえ、お姉ちゃん。」

 千里「ん?」

 

 すると、柊太が話しかけてきた。

 その内容は───。

 

 

 

 

 

 柊太「…何で、真衣ちゃんにあんな事言ったの?」

 

 

 

 

 

 千里「…え…。」

 

 柊太は、私と真衣が争った事を話そうとしていた。

 

 柊太「前まで仲良くしていたのに、どうして…。」

 

 杏梨「……。」

 

 千里「…ごめんね、迷惑かけちゃったよね…。」

 

 もう話すしか無いな。

 状況的に逃れる事はできなさそう。

 

 千里「あの時私は…、頭が真っ白になってた。あいつに負けるのが嫌で、あいつの顔を見る度に、殴りたい気持ちがいっぱい込み上がってきてた。今思えば、真衣はそれを必死に止めてくれてたってのに、私は見向きせずにロストワールドに行こうとしてた…。今すぐにでも謝りたい…。でも、きっと真衣は私の事なんてどうでも良いのかもしれない。だって、私は真衣に酷い事を言ったんだよ…?」

 

 杏梨、柊太「……。」

 

 真衣のいないこの場は、いつもの娯楽が失われ、寂れた空間のようだった。

 

 本当なら今すぐ仲直りしたいのだが、真衣のあの状況からしたら、それすらも厳しいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 杏梨「そんな事、無いと思う。」

 

 千里「…え?」

 

 突然、杏梨が口を開く。

 

 杏梨「お姉ちゃんもきっと、心のどこかで迷いがあるんだと思う。千里ちゃんだけじゃない。お姉ちゃん、こう言ってたよ?“千里には言いすぎた”って。」

 

 千里「…!」

 

 杏梨「千里ちゃんを見た時、無視していたと思うけど、それは多分その気持ちもあって気まずかったんだと思う。お姉ちゃん、昔から嫌な事から逃げる性格だったから、今回もそうだと思うんだ。」

 

 千里「……。」

 

 そうだったんだ…。

 

 何だろう、気にしすぎてた私が馬鹿みたい…。

 

 柊太「お姉ちゃん、ずっと迷ってたんでしょ?なら仲直りすればいいじゃん~。」

 

 千里「…柊太は軽いなぁ…。でも、そうとわかったらしてみる。」

 

 杏梨「うん!千里ちゃんならできるよ!」

 

 千里「ありがとね、2人共…。」

 

 私のモヤモヤした気持ちは吹っ切れた。

 

 全く、2人は本当に良い子だなぁ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~真衣視点~

 真衣「……。」

 

 アタシは、机に突っ伏していた。

 

 千里との争いが、嫌と言う程蘇ってくる。

 

 本当は、あんなくだらない争いなんてしたくなかった。

 

 でもアタシは怒りに身を任せ、強い口調で千里を傷付けてしまった。

 

 千里が帰ってきた時、何て言おうかわからず、目を背けてしまった。

 

 …ったく、本当に変わってねえ。

 

 幼稚なガキのまま育っちまったな…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンコンッ…

 

 真衣「…?はーい。」

 

 突然、ドアのノック音が聞こえた。

 

ガチャッ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 千里「……。」

 

 

 

 

 

 真衣「…!千里…?」

 

 開けてきたのは、千里だった。

 

 どうしよう、何を話せば良いかわからねえ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 千里、真衣「…………。」

 

 ダメだ、会話ができねえ。

 

 何せ、喧嘩した後だったからな…。

 

 でも、今しかねえよな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 千里、真衣「真衣(千里)、ごめんなさい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 千里、真衣「……え??」

 

 

 

 

 

 え、シンクロした?

 

 …という事は…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 千里、真衣「ぷっ…!あははははは!!」

 

 考えていた事は一緒だったって訳か。

 

 千里「何だろ、あんなに怒ってた自分が馬鹿みたい。」

 真衣「アタシだって、何で必死こいて千里と向き合おうとしてたんだろうな。」

 

 とりあえず、仲直りって事で良いのか?

 まあ、千里が心の底から笑ってるなら、それで良いか。

 

 千里「ねえ、真衣。」

 真衣「ん?」

 

 

 

 

 

 千里「…ありがとね。」

 

 

 

 

 

 真衣「え?何だよ急に。」

 

 急にお礼を言われた。

 咄嗟の事だったから、返答に戸惑ってしまった。

 

 千里「あの時、無理矢理にでもロストワールドに行こうとしてた私を止めてくれた事。真衣がいなかったら、私はそのままあいつに殺されていたかもしれない。」

 

 まあ、あの時アタシも必死だったからな。

 止めてて正解だった。

 

 真衣「…いいって事よ。それにな、お前には仲間がいるんだからよ。ぜってえ無駄にはするなよな。あいつのロストを消したいのは、お前だけじゃない。杏梨や柊太…アタシだって同じだ。だからもう迷うな。アタシ達はお前に救われて、今こうしてロストワールドにも立ち向かえている。お前がいてくれたからこそ今があるんだ。だから次は、アタシ達がお前を救う番だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 真衣「だからよ、一緒に終わらせんぞ。」

 

 

 

 

 

 千里「真衣…。ふふっ、わかった。」

 

 そして千里は、また笑った。

 

 良かった。いつもの千里に戻ってくれて。

 

 

 

 

 

 彩神賢一郎…。

 

 千里の全てを奪った極悪人。

 

 あいつのロストワールドがあの街全体なら、あいつのロストが最後と言ってもおかしくねえ。

 

 十中八九そうとは思えないが、もしそうなら徹底的に叩き潰す。

 

 それが、アタシ達の最後の役目なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~杏梨視点~

 杏梨「2人共、仲直りしたみたい。」

 柊太「そうだね~。」

 

 お姉ちゃんの部屋から、2人の声が聞こえる。

 良かった。

 あの状況が続いていたら、どうしたらいいのかわからなかったもん。

 

 柊太「真衣ちゃんの言う通り、終わらせよう~。」

 杏梨「うん。終わらせよう。ロストワールドを。」

 

 私達もそう誓った。

 千里ちゃんのお父さんという強大な敵。

 私達は最後の戦いに向けて、準備をするのだった───。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メインストーリーが終わったら番外編を書いてほしい?

  • 書いてほしい
  • 書かなくていい
  • 書いてもいいけど先に続編書いてほしい
  • 作者に任せる
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。