東京ロストワールド   作:ヤガミ

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第51話

~午後6時~

 真衣「ほらよっと、出来上がりだ。」

 

 外はだいぶ暗くなってきた。

 私は昼間の事を考えていた。

 あの男の狂いようからして、もう流石にロストに立ち向かわないと、この街全体が危なくなる。

 あいつのロストワールドは、ここ全体なのだから。

 

 柊太「お姉ちゃん?ご飯だよー。」

 千里「ん?あ、うん。今行く。」

 

 とりあえず、皆にも話しておいた方が良さそうだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 杏梨「そういえば千里ちゃん、襲撃の時1人でお父さんの所に行ったんでしょ?大丈夫だった?」

 

 杏梨が言っているのは、私が屋上に行った時の事だな。

 まあでも、あの状況であんな所に行くのは、相当勇気がいる。

 

 千里「大丈夫だよ。銃は多分、私を誘き寄せるためだけに使ってたと思う。」

 真衣「マジで肝座ってるよな、千里って…。まるでアタシらの親父みたいだ。」

 

 そっか、真衣と杏梨の父親はヤクザだったもんね。

 そうなら相手が銃を持っていようが、戦うしかないからね。

 

 千里「私は2人の親ほどじゃないよ。正直怖かった。あれが誘き寄せるだけじゃなく、プラスアルファで私の始末も有り得たからね…。」

 

 考えただけでもえげつない。

 あいつの脳みそを見てみたいもんだよ。

 

 真衣「それにあの事件が来た時、学校中すごい騒がれてたもんな。有り得ねえよ。銃使うなんてよ。」

 

 あいつのせいで、しばらく学校が休校となった。

 とんだはた迷惑で、無駄な休みを与えられた。

 

 千里「…考えたんだけどさ、もういっその事ロストワールドで蹴散らした方が良いと思うの。」

 真衣「…本気か?」

 千里「でないとこちら側が危なくなる。下手したら私が人形のままにされるか、付け狙われるかのどっちかだよ。」

 

 あいつの考えている事は大体わかる。

 でも、そんな手には乗る訳にはいかない。

 なのであれば、ロストワールドであいつのロストを消すに限る。

 それともう1つ。

 

 

 

 

 

 千里「…それに、もう1人の私の謎も突き止めたいから。」

 

 

 

 

 

 柊太「あ…。」

 

 そう、あの時の真っ黒な私だ。

 もしかすると、あいつも今回の事件の鍵を握っているのかもしれない。

 同時に2人の敵に立ち向かう感じだ。

 

 真衣「柊太から聞いた。もう1人の千里が出たって。」

 千里「そう。未だに解明されてないままなんだ。せめてこの休校期間中にとっちめたいと思ってね。もう1人の私はどこで見つかるか、見当つかないけど…。」

 

 私の話を聞いて、皆真剣な表情をしていた。

 

 千里「皆、手を貸してくれる?」

 

 真衣「やるっきゃねえだろ。立ち止まってられるか。」

 

 杏梨「あんな奴の好きになんかさせない!」

 

 柊太「僕達で、取り戻すんだ。」

 

 千里「…ありがとう。」

 

 そうと決まれば、明日行動開始だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は今、夢を見ているのだろうか。

 

 目を覚ますと、そこは真っ暗闇の空間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ???『千里─────。』

 

 

 

 

 

 千里「…!」

 

 声が聞こえる。

 

 ロストワールドで聞き慣れた女性の声。

 

 それにしても、久しぶりに聞いたな。

 

 でも、そんな呑気な事を考えている場合では無かった。

 

 

 

 

 

 ???『千里、急い───さい。───れば────…。』

 

 千里「…?何…?聞こえない…。」

 

 ???『も──人の──が、シ─────サトが、あなたに…。』

 

 千里「どうしたの?聞き取れないよ。」

 

 何やら様子がおかしかった。

 

 まるで通信の悪いトランシーバーのように、途切れ途切れになっていた。

 

 ???『どうか──でいて、千里─────。』

 

 千里「…!ねえ、どうしたの?しっかりして!」

 

 挙句の果てには、何も聞こえなくなってしまった。

 

 すると─────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「久しぶりだね。“人形ちゃん”。」

 

 

 

 

 

 千里「…!」

 

 今度はあの女性ではない、私に似た声だった。

 

 まさか…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 千里「もしかして、黒い私…!?」

 

 目の前に姿が現れた。

 

 案の定、真っ黒な私だった。

 

 千里…?「せいかーい♪しばらく見ない間にすぐ勘付くようになったね~!」

 

 千里「あなたは何なの…?何で私の前に現れるの?」

 

 千里…?「あんたがどのように絶望に足掻いているか見に来ただけ。それにさ、あんたは自分の父親のロストを消そうとしているんだってね?」

 

 千里「…あいつのせいで休校になったからね。他の生徒まで巻き込んでまで…。」

 

 そう、過去の件だけでなく、今の休校の件もあいつと関わっている。

 

 そうなれば、こちらとしては黙っていられない。

 

 それと───。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 千里「…あなたは何者?どうして私に似た姿をしているの?」

 

 これが私が気になっていた事だ。

 

 そもそも何故私の姿なのか。何故その姿で生まれたのか。

 

 千里…?「そうだねぇ…。あんたが“彩神千里”ならば私は…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「“シャドウ・チサト”、とでも名乗ろうかな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 千里「シャドウ…チサト…?」

 

 となれば、この私は…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 “影の彩神千里”……って事か…。

 

 

 

 

 

 シャドウ・チサト「あんた父親を消した後、私も消そうとしているんだって?ま、私を消せばロストワールドも消えて一石二鳥だけど、そう簡単にできるのかなぁ~。」

 

 そうか、やはりこいつが…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …ロストワールドを作り出した張本人って事か。

 

 

 

 

 

 千里「できるかどうかじゃない、やるんだよ。でなかったら私はここまで這い上がって来ていない。」

 

 シャドウ・チサト「望む所♪じゃ、父親のロストを消した時にまた会おうね~。」

 

 やる事は決まった。

 

 まず父親のロストを消す。

 

 そして、シャドウ・チサトも消す。

 

 それでロストワールドは終わるんだ。

 

 やるからには本気で。

 

 

 

 ───もうすぐ目が覚める。

 

 目を覚ましたら早速作戦開始だ。

 

 私の意識は遠のいていった───。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 千里「ん……。」

 

 目を覚ました。

 時計を見ると、7時を指している。

 隣には、柊太が抱き着いて寝ていた。

 

 千里(……起きれないんだけど…。)

 

ガチャッ…

 

 真衣「ふわあぁ~…。」

 

 リビングに入ってきたのは真衣だった。

 それに、寝癖ボーボーのままだ。

 

 真衣「あ、千里。起きてたのか。」

 千里「うん。体起こせないけどね…。」

 真衣「まあ、知ってた。お前が柊太と寝ると大抵そうなるよな。」

 

 真衣はそう言いながら、台所へ向かっていった。

 恐らく、コーヒーを飲んでから朝食を作るのだろう。

 

 

 

 

 

 …今日はロストを消す日だ。

 

 このような状況でロストを消すのは、この休校期間の中でしか無い。

 

 放っておいたら、街が危ない。

 

 今日で終わらせるんだ。

 

 父親も、影の私も、そしてロストワールドも…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~午後1時~

 千里「…皆、やり残した事とか無い?」

 真衣「ああ。いつでも良いぜ!」

 

 私達は今、ロストワールドの出入口前まで来ている。

 ここでロストワールドに入った。

 

 千里「それじゃあ、扉を出すよ。一応言っとくけど、ロストワールドに入ったら後戻りはできないと思ってて。今日でこのロストワールドも終わらせるのだから。」

 柊太「影の千里お姉ちゃんだよね?わかってる~。」

 杏梨「私も大丈夫だよ!早くこの事件も終わらせたいもん!」

 真衣「…だそうだ、千里。」

 

 皆、覚悟ができたね。

 私はスマホを構え、ロストワールドを出す───。

 

 

 

 

 

ドォンッ!!

 

 ……。

 

 真衣「…?千里?」

 

 

 

 

 

 千里(───これで最後なんだ。)

 

 ロストワールドに入る前に、胸に刻んでおこう。

 

 ロストワールドが消えたら、この扉も消えるのだから。

 

 千里「…皆、ありがとね。」

 

 真衣「え?」

 

 千里「私1人だったら、ここまで這い上がれなかったかも。皆がいたから、ロストワールドそのものを消す事ができる。だから、ありがとう。」

 

 真衣「何だよ、別れる訳じゃあるまいし。でもまあ…、アタシらもここまで来れたのも、千里、お前のお陰でもある。お前がいたから、1人1人の悩みや苦しみを解けたんだ。だから…アタシらからもありがとな。」

 

 杏梨「千里ちゃんは正義のヒーローだよ。ヒーローがいてからこそ、私達も強くなれる。そう思えたんだ。」

 

 柊太「僕は、千里お姉ちゃんがいなかったら、僕の人生は壊れてた。お姉ちゃんは…いや、真衣ちゃんも、杏梨ちゃんも。僕の恩人だよ。ありがとう。」

 

 本当に、真衣や杏梨、柊太は良い子だよ。

 

 1人1人個性は違えど、持つべき正義は同じだ。

 

 千里「行こう。私達で終わらせるんだ。」

 

 真衣「おうよ!」

 

 杏梨「了解!」

 

 柊太「作戦開始~。」

 

 

 

 私はロストワールドへの扉に手を触れ、侵入したのだった─────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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