日曜の午後に動画見てたら幼女になって配信する件について 作:二三一〇
「んー……面白いのねえなぁ……」
たまの日曜日の昼下り。
やる事のない休日の午後はまだまだ時間がある。ちなみに俺は酒もタバコもやらない。なので、酒に逃げる手もないのだ。
暇を持て余して動画サイトの巡回をしているのだが、ヨーチューバーに興味がある訳でもない。
なんとはなしに眺めて、次の動画へ。
いわゆる
「にしても、ゲームアプリの広告、ウゼェな。どんだけ出てくんだよ」
動画を見る度に、新しいゲームの紹介が次々と現れる。
麻雀とか落ち物とかはともかく、RPGとかクソ長そうなのやってられんのよ。絵はいいんだけどね、だいたいかわいいし、カッコいいし。
それはさておき。
一つ見る度に代わる代わる出てくるのは正直ウンザリである。なんとかならんかと思っていたら、うっかりタップしてしまった。
「あーもう、めんどいっ!」
慌ててバツをタップして止めようとするけど、なぜかダウンロードは止まらない。
「質悪いゲームだなぁ……どこだよ、コレ」
スマホのアプリを閉じようとしても受け付けず、ホームにすら戻れない。こんなわけあるか、訴えるぞコラ。
「あーあ……始まっちまった。てか配信画面みたいだな」
先程見ていたヨーチューブと酷似した画面に、すでにどこかの映像が流れている。
なんだが豪華な作りの部屋である……ホテルかな? 俺も泊まったこともないような高級感溢れる部屋だ。
小さめのシャンデリアとかシーリングファンとか……視点が横を向いているようだ。
ようだ、というのは暗くてよく見えないせいもある。仄暗い常夜灯の光が僅かに部屋の形を浮かび上がらせているからだ。
「寝てる最中の視点かな? ちょっとボヤケてる」
すると、部屋の窓がきい……と、開いて黒い影のようなものが入ってきた。
「え……心霊系かよ……?」
それはまっすぐにこちらに寄ってくる。
黒い影の中に朧気に二つの光が灯っていて……それは目のようにも見えた。
「うわ、ちょっ、マジで勘弁。こういうの苦手なんだよ!」
黒い影が画面を埋め尽くし、微かにくぐもった声が聞こえる。思わずヘッドセットを外そうと思ったのだけど、その声が小さな子供の声に聞こえたので躊躇ってしまった。
『……く、あぐ……ひっあ……』
うええ。
ガチで苦しんでる声にどうしようもなく焦る自分がいた。なんか、なんかやる事はないのか?
ゲームならこういうとき、『QTE』とか出るんじゃねえの?
そう思っていたら、画面に何かが出たのでとっさにタップした。
『リーセロット=ファン=ハーゼルツェットは死亡しました。引き継ぎますか?』
なんか、そう書かれていたような。
考えが纏まる前に、俺の視界が暗転して。
気がつくと、そこは先ほど見た光景であった。
「あ? なに、ここ」
えっと……まず状況確認。
画面にあった風景とおんなじだ。
え、意味分からん。
なんでこんな所に俺はいるんだ?
つか、なんか濡れてる?
背中というか、腰のあたりというか。
慌てて跳び起きると、ベッドを降りる。
つうか、ベッドが大きいな。
キングサイズという意味じゃなくて、リアルに大きい。
部屋の中は薄暗いけど、明かりがないわけじゃない。先ほどの影みたいのが入ってきた窓は開いていて、風で微かに音を鳴らしているだけ。影の姿はどこにもない。
「なんなのですか……コレ」
呟く声がやたらと幼く、高い気がした。
なんかおかしいので手を喉に当てると、特に妙な様子はない。
その流れで気付いたけど、着ている服が違っていた。俺はさっきまで部屋着のスウェットの上下だったはずだけど、なぜかひらひらしたパジャマを着ている。しかも、女の子の着るようなものだ。
「げぇっ……」
おまけに、漏らしていた。
道理で気持ち悪いはずだ。
それにしても、この年で漏らすとか……会社の人間に聞かれたら絶対に笑われること間違いなし。
今日が休みで本当に良かった。
……現状が理解できているのか判断ムズいな
冷静だけどズレてるなw
子供の頭で考えてるにしては論理的だと思うけどな
せやな
途端に、そんな文字が目の前に現れる。視界の端によってるから邪魔にはならないけど、いきなりなので驚いた。
「……チャット?」
お、驚いてない?
やっぱ適性ある子なんやね
たぶん似たような文化が発展していた世界の子だと思うよ
そういや、取り乱してないし
おねしょの方がダメージでかいみたいだしw
いや、そらしゃーなしや。殺された後やで?
おっきい方も出ててもおかしないモンな
もまえら、幼女はうん○しない、オーケー?
あ、はいはいサーセン
おねしょはええんか?
それはご褒美w
コイツ、あかんやつや……
それには禿同。
つか、何なのこのコメント書いてる奴ら。
まるで見てるかのように書き込んでるけど。
見てるんよ
バッチリ見てたよ
幼女が悶け苦しむ様はご飯3杯はイケます
( ・ิω・ิ)
ヤベーのしかいなくて草
ええ……。
状況もさることながら、コイツラの発言がヤバすぎてマズい。なに、見てた? どこから? ここには俺以外いないし、監視カメラみたいなものも見当たらない。なのに見てるって、どーいう?
それはほら、神の視点で
神様はいつでも見ていますよホホホ
気持ち悪くて草
はあ……? 神様? んなものいるわけ無いだろ。
神様ってのは所謂概念の一つで……上位の存在っていう方が正しいかも
世界の管理者、なんだよねぇ……
各々が自分の世界の管理をしてるよ
この世界は観測できる仕様なんよ
はあ……いみ分からん。
とりま敵ではないってことでおk?
おk
むしろ君を手助けするためにいると言っても過言ではない、かな(笑)
自分でハードル上げてるの草
うん。やっぱよくわからん。
とりあえず気持ち悪いから服をどうにかしたいけど……着替えとかあるん?
その部屋には無いね
私室に服置くのは庶民だけだよ
人を呼ぶといい
たしか今日はアンゼリカがいる日の筈。リーセロットのこと大好きだから甲斐甲斐しく世話してくれるよ
は? 人に世話任すの? そんなん恥さらしやん。大の大人がおねしょとかありえんやろ。
状況、飲み込めてなかったw
静かにパニクるってやつか
きみ、自分の身体見て大の大人だと思う?
そのコメントを見て、あらためて見直す。
女の子用のパジャマを着て、おねしょ。
よく見ると手足もちっこい。
ああ、なるほど。
「おれ、幼女になってますぅー!?」
草
ほんとうに草
見れば分かるだろ 常考
一般人には無理やろなぁ……
「どうかなさいましたか、お嬢様?」
ヤッバ
思わず大声出したから人が来ちゃったよ!
「な、なんでもないのっ 入ってくるなですわぁ!」
「! 失礼いたしますっ」
入ってくるなと言ったら、強引に入ってきた。子供の力で対抗できるわけもなく、ドアを押し開けられて、ついでに転がる俺。
「も、申し訳ありません、お嬢様っ!」
「い、たた……ちから強すぎましてよ」
「お嬢様が入ってくるなと仰るときは、ああやっぱり粗相でございましたね」
ひょい、と抱え上げられてしまうおれ。
このお姉さん力つえーなぁと思っていたけど、単純にこっちが幼すぎただけらしい。普通にお姫様抱っこされてしまうとは。
「お嬢様はお小さいのですから、粗相くらい普通です。恥ずかしがる必要はありませんよ」
「そこを諦めたらげぇむおーばーですわっ」
「? また、難しい言葉を覚えたんですね? スゴイです、お嬢様っ」
アンゼリカ、相変わらず脳筋だね
知力低すぎて草
教育度高くて知力低いとかSANチェック有利すぎて草
這い寄る混沌とかは、まだいないから(震え)
その理屈だとリーセロットたんガチよわw
あああ、コメントうっとおしい。
そんな最中にも洗い場に連れて行かれて温かいお湯で身体を洗われる。
アンゼリカよりも年のいったメイドさんとかいっぱい居て草生える……てか、この子、貴族かなんかのお姫様かよ。
リーセロットたんは貴族で間違いないぞ?
ハーゼルツェット家は侯爵家だ。国の中では上から数えた方が早い家柄だよね
そんでもってようやく出来た一人娘。ワガママ放題の五歳児だよ
イカ腹カワイイw
はー。
五歳か。それなら納得。姪っ子が同じくらいだったけど、このくらいだった気がする。
ちなみにその姪っ子と比べると天と地ほども差のある容姿であったりする。姿見で見てみたら、本当に天使かと思うほど愛らしい。
長めの金髪は緩くウェーブしてて艶がスゴイし、顔のパーツも完璧。翠色の瞳はキラキラしてるし、肌ももちもちしてて潤いが違う。
あれよあれよと泡だらけになり、お湯でざばざば流されるので、ゆっくり鑑賞など出来るはずもないけどね。
風呂場から出るとふかふかなタオルにくるまれて、丁寧に身体を拭うメイドさん達。手慣れ過ぎてて少し怖いw
「お嬢様、お着替え致しましょう」
「あ、はいですわ」
ときに。
今俺は『はい』としか答えなかったんだけど。
なんでこんな言葉づかいなの?
そりゃあリーセロットたんだからだろw
中身が変わってもガワはそのままだからな。
たぶん記憶とか習慣とかが残ってるだけ
そのうち、消えると思うよ
着替えている最中に、彼らに聞いてみる。
この身体の子は、本当に死んだのか? と。
魂が分離させられちゃったからね
エゲツない魔物送ってきたなぁ
コスト高いだろ、スピリットイーターとか
確か10000くらい使う。おまけに儀式も必要だし。でも、確殺なら選んでもおかしくないかも
私のファインプレーに感謝しろよw 暇そうな魂ねじ込んでリセたん救助とかミラクルじゃん
あ、バカ
ほう……どうやらここに犯人がいるようだな。
テメエから暴露するマヌケがよっ!
あ、イケね。ちょっと落ちるわw
ちょっと待てや、オラあっ?
てめ、人の魂を勝手にねじ込むとか頭おかしいだろっ!
「お、お嬢様? なにか気に障りましたか?」
「そうではないのよっ! あなた達は悪くないけど、少しほっといて下さる?」
着替え終わったあたりで怒り始めた俺のせいで、メイドさん達がオロオロし始めた。別に君たちは悪くないから、気にしないでと言いたいけど、なんだか子供の癇癪みたいに言ってしまってた。
部屋に戻るとアンゼリカをはじめメイドさんたちも退室する。部屋は明るくなっていて、ベッドもきちんと整っていた。
「はう……どうしましょう」
口から出るのは、幼女の言葉。
沈黙していたチャットにまた文字が現れる。
すまん、デリカシーのない奴で本当に申し訳ない
悪い奴じゃないんだけど、少々刹那主義でね
考えなしとも言う草
物語が始まるって時に速攻主役リタイアとか、許せなかったんだろ
アイツがロリコンなだけだろw
それは、否定しない
どうも、他の奴はまだチャットから外れてないようだ。
君は巻き込まれただけのようだが、どうかその子として生き抜いてほしい。
がんばって
僕らが共通で見られる世界は少なくてね
その世界を守るためにどうか頼む
うまくいったら元の身体に戻させるから
え?
そんなの可能なん?
まあ、なんとかなるだろ
アイツがムリさせたんだし。責任取らせないと
そんなわけで、よろしゅう頼んま
むう……よくわからないけど、眠くなってきた。
とりま、おきたら考えるぅ……
おやすみw
いい夢みてね
ねがおかわいい……
がち、きもいわ……ぐうzzz
異世界に飛ばされて(魂だけ)、神様に見守られて(コメントで茶々入れて)何やかやするTSファンタジー。
すごくニッチな気もしますが、どうぞよろしくお願いしますm(__)m