日曜の午後に動画見てたら幼女になって配信する件について   作:二三一〇

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 第2話です。
 大きなイベントもなく進みます。


02 朝食を取る、管理者と、変な場所で

 目が覚めるといつもの日常。

 

 電子ポットを仕掛けて卵一個とハム数枚のハムエッグ。パンは今日はクロワッサンにしていたと思う。サラダも作っておいたので冷蔵庫から出せばすぐに頂ける。手作りのマヨはそろそろ無くなるので、次の休みには作ろうかな。

 

「きみ、意外とマトモな子だったんだね」

 

 そうかな? まあ、面白みのない人間とは言われたけどさ。後輩ちゃんに。

 

「二十歳そこそこで酒もタバコもやらないで、朝はきちんと余裕を持って食事の用意とか。普通の子とは言わないかな」

 

 さいですかね。

 家に居たときから続いた習慣だから、あんまり気にもしてなかったし。

 

「ていうか、あんただれ?」

「ようやく気付いてくれたかい。僕は君たちの父であり母さ」

「ちぇんじ」

「グハッ! きみ、容赦ないね……」

 

 だって、もろにおっさんなのに母とか言われたら……がち、きもいわ。

 

「この姿はあくまで君に分かりやすく具現化した姿である。キモいと言うなら君の持つ概念がキモいということだ。あと『がち、きもいわ』と言われるのすごくイイねっ!」

 

 人に指を指して偉そうに宣うとか、態度だけは神様だなぁ。でも言われてみれば人間っぽくはない。

 この理不尽な言い草と言い、やり方といい、感覚といい。たしかに神様だよ。

 

「その節は、大変迷惑をかけたと思います。なのでこうしてお詫びに参った次第です。どうか平にご容赦を」

 

 手のひらの返し方も神がかってるね。

 やっぱり神様だな。

 

「そういう所で感心しないでくれるかな。情けなくなってくる」

 

 あ、泣き始めた。

 意外にメンタル弱いッスね。

 おお、よしよし。

 頭撫でてやるから泣きやめや。

 

「……ありがとうございますぅ!」

 

 ええ……なんでそこで泣くの?

 

「リーセロットたんに撫でられるなんて、わたし大歓喜っ!」

 

 今度は喜び始めたよ……何なの? 情緒不安定? 更年期?

 

「まあ、とりあえず食べながら話していこう。せっかく手ずから用意したんでね。私もご相伴、いいよね?」

 

 どーぞご自由に。作ったのアンタなんだし。

 なかなかに美味しそうだね。あれ? これ、夢じゃないのかな? 普通に美味しい。

 

 というか、ここって俺んちじゃないね。どこ?

 

「ここは夢のようで夢でない空間。管理者たちの領域でね。君の精神だけを飛ばしてもらったのさ。そして僕は地球の管理者。名前は多すぎるので割愛します」

 

 ……つまり。

 あれは、夢じゃなかった、ということなんスか……

 

「君の今の姿を見てもらえばわかる通り、すでに君の魂はリーセロットたんに固定してしまっている。本来なら前の姿のはずなのだが、すんなり固着してしまったようだ」

 

 はあ……

 なるほど、うまい。このハムいいッスね

 

「喜んでくれて嬉しいよ。これで一つチャラにして貰えたらもっと嬉しいけど」

 

 それは都合良すぎじゃないッスかね?

 こっちはいきなり人生ドロップアウトですよ?

 

 親や友達にもお別れも出来てないし、結婚とかも……まあ、相手いなかったけど。そんな人生のイベントのほとんどをやれなかったわけで。それをハムエッグで許せとかおかしくないですかね?

 

「ごもっともです、はい。と、とりあえず君の身体に関しての凍結はしておいたから、全部終わった後に戻れるようにしてある」

 

 ほんとう? だって時間とかどうすんの?

 

「こと管理内であれば時間操作とか出来るんでそれは問題ない。それに君が介在することで与える影響はほぼ無い。戻っても特に影響は与えないよ」

 

 ……巧みなディスりに聞こえたんですが。

 どーせなんの影響も与えない一般ピーポーッスよ。

 

「こ、言葉尻を取るのはやめてほしい。これは私に出来る限りの最大の贖罪だ」

 

 それは、有り難いですよ。もぐもぐ……ところで、全部終わったらって言ってたけど。

 実際はいつまでリーセロットをやればいいの?

 

「まあ、あの世界の平穏が守られるまで、かな?」

 

 ……すごい、アバウトな条件ッスね。

 もっとこう……魔王を倒すとか、世界のバランスを崩してるシステムを直すとか。目的は無いん?

 ゲームならありそうなんだけどな。

 

「きみにはゲームっぽく感じるかもしれないけど、実際は普通にファンタジーな世界だし。まあ、次代の英雄が育つまでって辺りが妥当じゃないかな? それなら死んでも問題ないからね」

 

 結局、死ぬ以外にリタイア無いじゃないスか。

 

「一度身体に固定された魂は死なない限り離れないんだ」

 

 ……そういや、最初の子はどうなったんだ? あの影みたいな奴に殺されたって言ってたけど。

 

「スピリットイーターは魂を直接攻撃してくる上級魔族でね。抵抗が高くないと簡単に魂を分離させられてしまう。セーブソウル系の術が使えるなら助かったのだろうけど、あいにくあの場には使える母親が不在でね。ああするしかリーセロットを助ける手が無かったんだ」

 

 いや、身体は助かったかもしれんけど。

 元のリーセロットの魂は消えちゃったじゃないか。それじゃあ意味ないだろ。

 

「そこは抜かりはないよ! あの世界の管理者に頼んで魂は確保したから。ちなみにすでに母親の中にいる子供に固着したらしいし」

 

 ……それが本当ならめでたい話だ。

 あっさりリタイアした分、長生きさせてあげないとね。

 

 問題は俺がリーセロットをやるって事だけどな。そもそも、なんでリーセロットがそんな立場にあるんだよ。

 

「それは単純に高い魔力の為だよ」

 

 強いから、という意味か。

 勇者的な特別な力では無いんだな。

 

「そうだね。魔力じゃないと倒せない敵というのはいるけど、特定の人物じゃないと倒せない奴はいない」

 

 なら、こんな事しないで次に強い奴にやらせりゃいいだろ。俺を巻き込むなっ!

 

「……リーセロットたんが可愛いからさ」

 

 ……マジで言ってんの? 神様とか管理者とか、みんな頭湧いてるのか?

 

「超絶可愛い女の子が無双するとか最高に格好いいじゃないかっ!」

 

 お前ら人間とは違う感覚の持ち主なんだろ? 人の見た目だけじゃなくて、魂の本質とかも視えてるんだろっ? いい年した男が中身の幼女でいいのかよっ!

 

「それは、それでありっ!」

 

 ダメだ、こいつら……魂の奥底まで腐ってやがる。

 

 大声で叫ぶ地球の管理者は、それはそれは自信満々であった。だけど、俺としてはそう簡単には受け入れられない。

 

「どうしてもイヤならば、もう一度殺して別の魂を送り込む。君の魂も戻してやろう」

 

 いきなり聞き分けが良くなったな。

 なんか、あるのか?

 

「別に、特には。ただ、君のように綺麗に固着するのは珍しいのでね。何度繰り返すか分かったものじゃない」

 

 それはアレか?

 リーセロットを死なせて、俺みたいな奴の魂をねじ込み続けるって事か?

 

「理解が早いな」

 

 たちが悪いっ!

 

 リーセロットが好きなのに何度も殺すとか、何人も俺みたいな奴の魂を奪うとか、人の命をなんだと思ってんだっ!

 

「君が引き受けてくれれば、そうはならない」

 

 いや、本当にたちが悪いっ!!

 

 神様とか管理者とかにとって、人の命なんてゴミ屑みたいなもんなのかよっ

 

「そうとは言わないが、リーセロットたんのためならそれくらいはするよ」

 

 もうだめだ、お前ら。

 社会的規範がおかしいっ サイコパス!

 

「いやだって、ウチら人間じゃないし……」

 

 そうだよね。

 人間じゃなかったよ!

 

 ああもう、なんて言ったら通じるんだろうか。そこまでやって恥ずかしくないのか?

 

「べつに……他の管理者も同意見だし。魔王側の管理者もぜひそうしろって言うし」

 

 ツッコミどころが多いなっ!

 なんで敵側の奴まで俺にやらせようとしてんの? リーセロットを殺さなかったら良かったんじゃんっ!

 

「ああ、後から連絡あってさ。謝罪してきたよ。まさかスピリットイーターが入れるとは思わなかったそうだよ」

 

 はあ? どういうこと?

 

「あの屋敷には魔力結界が張ってあって、魔王だろうと侵入できないほど強いヤツらしいよ」

 

 そうなん? そのわりにあっさり侵入してきたけどな。

 

「あの窓、鍵が壊れてて簡単に開いちゃうんだって。閉じる事で効果を出す結界だから、物理的に開いてると効果が半減するんだ。んで、スピリットイーターは強い魔物だから不完全な結界には効果が無かったんだと」

 

 ええと。

 少し整理しよう。

 

 結界が壊れていたってのは、向こうも知らなかった。結果、リーセロットを殺してしまった。それに対して先方は謝意を示したと。

 

 おかしくないか?

 

 魔王側が自分たちに対抗する存在であるリーセロットを倒すのは、必然なんじゃないのか?

 

「いや、序盤で消しちゃうのはダメでしょ。悲劇的ではあるけど、人類の希望だよ? 主役を退場させるなんて人が許しても管理者達(僕たち)が許さないよっ!」

 

 後ろに『ドンッ』という書き文字が出るほどに、強く言い切った地球の管理者……ヤバい、コイツらマジでおかしいよ……

 

「魔王側の管理者も、『これは失敗だわ、やり過ぎよ、魔王ったら何スピリットイーターなんて送ったのよ。折檻してやるわっ!』とか言っていたよ。指示したのは自分なのにね」

 

 人類の希望を殺せと命じて魔物を送り込んだのに、成功したらしたで怒られる……魔王が可哀想になってきた。

 

 人類も魔王も、コイツらに振り回されてるだけじゃないかな。真の敵はコイツらなんだと思うけどな。

 

「おおっと。リーセロットたんのジト目頂きましたっ! ひゃっほうっ♪」

 

 …………もう、会話するのも、つかれた……

 倫理とか規範とか道徳とかがあまりに乖離しすぎて話が通じないんだもん。

 

「魔王側の管理者の言う事も一理あってね。この時期に無駄にポイント使っておけば、しばらくは強い魔物を送らないだろうって読んでいたらしいんだよ。今は家の中にいる事のほうが多いだろうけど、その内学校とかにも行くようになるし。そんな時にやたらと強い魔物が送られたらマズいと考えたらしいのさ」

 

 ……一応、スジは通っている。というか、マジでこっちのこと考えてるとか魔王側の管理者ってカウンタースパイなのかよ。

 

「まあ、そんなとこかな。ほら、魔王とか勝手にやらせると効率よく世界を滅ぼしちゃうからさ。睨みを利かせる存在が必要なわけ」

 

 魔王の歯止めが利いてるなら世界が滅ぶなんて起こらないだろ? これ完全にヤラセじゃんっ!

 

「ま、まあ……物語はある程度、お約束のようなものもあるし……」

 

 本気で思って言ってるならこっち見ろよ。

 なんで目を背けてんだよ。

 

「は、恥ずかしいし……」

 

 顔赤らめて寝言言うなボケェッ!

 思わず飛び上がって頭を叩く。

 

「ありがとうございますっ!」

 

「もうやだっ 管理者なんて変態ばっかりーっ!」

 

 

 

 

 そう叫んで、目覚めた朝。

 

 晴れやかで小鳥の囀りも心地良い筈なのに、気分は最悪だった。

 

 

 おはよう

 おっはー♪

 なんか元の管理者と会ってたらしいね

 裏山……次は私と会ってくれないかい?

 相変わらずキモいと言わざるを得ない草

 

 朝から元気な奴らだなぁ……

 俺ら人間は配信とか見るのはだいたい仕事終わってから寛ぐ時に見るもんなんだぞ。朝っぱらから張り付いてんじゃないよ。

 

 仕事しながら見てるからへーき(^^)v

 朝とか昼とか無いから、ウチら。

 ついでに言うと休みも有給も退職も無いな

 

 想像以上にブラックで草。

 年中無休で仕事とか人間には無理だな。

 

 まあ、リフレッシュの為に見てるのは本当だよ。娯楽が無いからね

 下界の子どもたちを見るのが一番の娯楽なんだけど……自分の持ち場は他の管理者は見れないから。

 だからこそ共通で見られるこの世界が大事なんだよ(๑•̀ㅁ•́๑)✧

 こういう場が広がってくれれば、我々も過ごしやすくなるんだけどなぁ

 

 だから、朝から世知辛い話はやめーや。

 

「おはようございます。お嬢様」

 

 昨夜からの泊まり明けのアンゼリカだけど、眠そうな様子は見えない。夜勤なのに元気なことだ。

 

「おはよう、アンゼリカさん。今日も元気ですわね」

「……!」

 

 あ、びっくりしてる。

 なんかオレ間違った?

 

 貴族が使用人に敬称は付けないよ

 名前を呼ばない事すらあるし、基本呼び捨て

 リーセロットたんもそうだったからね。そりゃ驚くよ

 

 あー、そういうのか。七面倒だなぁ。

 

「昨夜はまた世話になりましたので。感謝の気持ちを伝えたいの。いつもありがとうございます、アンゼリカさん」

 

 そう伝えると、何故か彼女はドギマギしていた。

 

「も、勿体ないお言葉です」

「これからも迷惑をかけてしまうかもしれないけど、宜しくお願いします」

 

 お辞儀するアンゼリカに近寄って、手を握る。感謝の印としての握手をした。

 少々フレンドリーにし過ぎかもしれんが、世話になってるわけだしこれくらいエエやろ。

 

 さらっとアンゼリカの手を握る俺氏w

 リーセロットたんがやってるんだから、無問題

 あー、アンゼリカの好感度が上がっていきますぅーw

 

 好感度とかあるの? やっぱゲームじゃねぇの、コレ。それはともかくパジャマからお着替えだそうで……てかこのチャットって閉じれないの?

 

 右上に□があるでしょ。そこにメニューがあるから、そこから不可視化出来るよ

 コメントの読み上げも出来るよ

 ゆっくりしていってネッ!

 

 えっと、窓消し、音声読み上げ……うわ、本当にSoft○lkみたい(笑) 後は、カメラ閉じ?

 

 あっ、バカ! そのメニュー見せたら……

 

 ははあ……なるへそ。

 では、お着替えの最中はカメラを切るか。

 

 アアーッ!

 リーセロットたんの、裸がぁっ!

 おのれ、俺氏! 血も涙もないのかっ

 お前の血は、何色だぁっ!(血涙)

 ……ノリ良くて草

 

 あのさ。

 俺にとっても、この身体って他人の子供みたいなモンなんだよ。だから、目ぇ瞑ってるんだし。

 お前らに見せる理由もないよな。

 

「あの、お嬢様? なんで目を閉じていらっしゃるのですか?」

「アンゼリカにおまかせだからですっ」

「! はい、おまかせ下さいっ」

 

 アンゼリカ、嬉しそうで草

 主人に尽くすのが楽しいんだろ

 てか、俺らと同類な気がするな彼女(アンゼリカ)

 

「終わりました、お嬢様」

「ありがとう、アンゼリカさん」

 

 目を開けて部屋にある姿見の鏡を見ると、そこにはおしゃまな外国人のお嬢様が立っていた。アンゼリカは手早く髪を梳いていく。髪が長くて綺麗なのはいいんだけど、少し長いなぁ。

 

「アンゼリカさん、髪を纏めて下さらない?」

「畏まりました」

 

 そう言うと、彼女は手早く髪を編みあげていく。いわゆるひっつめという感じでくるんと巻き上げる。

 うん、首筋から背中が開放されていい感じだ。

 

 お、リーセロットたんのアップw

 意外にお洒落さんだね

 

 いや、お洒落じゃなくて、慣れないロングヘア対策なんだけどね。

 

 アンゼリカに聞くと、今日も父親や母親は居ないらしい。ちなみに爺様とか婆様とかもここにはいないので、この屋敷には家族はリーセロットしかいないという。

 

 警備とか大丈夫なの? あの結界を過信し過ぎてない? そう聞くと、アンゼリカが頼もしく胸を叩いて答える。

 

「内部の警備は私どもが行っております。外部は警備担当の従士達が常時おりますので、ご安心下さい」

 

 ここはメイドさんも格闘訓練してるし、従士は専任の奴等を雇っているからね。

 他の貴族の家より相当金かけてるよ

 親父さんは魔法省の大臣だし、お袋さんも高名な魔術師だからね

 

 それって超サラブレッドじゃねえの……リーセロット、すげえな

 

 魔力値が五歳時点で発動可能なレベルにあるのは本当に珍しいから

 普通の貴族でも十歳前後くらいだからね

 

 ほう……つまり、もう使えちゃうわけか、魔法。これは、試してみるかなぁ

 

 少しテンション上がってきた。

 

「今日も一日がんばるぞぃ♪」

 

 

 リーセロットたんの、ぞぃ♪

 ちょっと古くないですか(笑)

 可愛くて草

 

 

 ……媚びるつもりは全く無かったんだ。

 あと、アンゼリカも喜ぶのやめて。

 

 




 管理者達がただの変態集団になりつつあります(笑)
 こんなはずじゃなかったんだが……
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