日曜の午後に動画見てたら幼女になって配信する件について   作:二三一〇

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20 安全確認っ ヨシッ(ΦωΦ)

 スタッファンを逃した事がバレるかな? とも思ったけど、『目撃者も無く』『アリバイもある』『しかも子供』を疑う筈もなかったらしい。

 あの施設に入る際に『透明化(インビジビリティ)』を使ったし。牢を開ける鍵は正規のもので、番をしてた従士は眠らせたし。

 ディーデリックは失敗を報告しに来たけど、切腹でもしそうな勢いだったので止めさせてもらった。

 

「ディーデリック様は悪くないのです。相手が上手だっただけですわ」

「ふむ……人的被害も無いし。以後、気をつけてくれたまえ」

「ご温情痛みいります」

 

 フォーくんの記憶から、彼女がイルセによく似た優しい女性だと言うことは分かっている。有能で綺麗なお姉さんなんだから大事にしなきゃ。

 

 そうなんか

 ワイらリセたんのとこしか見れんからな

 活動的なイルセといった感じで草

 笑うとこか、そこ?

 面頬くらい取ってほしいなあ……

 

 イルセといた時は取ってたらしいよ?

 フォーくんが部屋に入ろうとしたら慌てて被ってたらしい。

 

 フォーくんの記憶もワイら見れないんだよな……

 ウチラ傍観者だもんねw

 

 配信を見る=ストーキングじゃないからな、お前ら(笑)そこを履き違えないでくれよ。

 

 執務室を二人で出てから、少し話を聞いてみる。当然、あの件だ。アデルベルトには聞かせられないからね。

 

「街で出会った少年のことは覚えているかしら?」

「……はい。凛々しい男の子と連れ立っていた美しい子の事でしたら、覚えております」

 

 面頬の奥で笑っている事が分かる声色だ。

 やっぱ気付かれていたのかと思ったのだけど、実はそうでもなかったらしい。

 

「その時は、何故か声をかけるべきだと思ったのです。その子の正体に気付いたのは、貧民街での子どもたちとのやり取りを見てからです」

「あー……踊っていたのは見ましたの?」

「いえ? 私はその子が消える場面を目撃しましたので」

 

 やっぱ見られてたか。イルセと接点のあるディーデリックなら俺が転移出来るって知ってるはずだし。あんな方法が取れる子供なんて他にいるわけないからね。

 

「……お父様に、報告……する?(コテン)」

 

 あざてぇ…… →100

 何気ない仕草が萌えますねw

 

「お嬢様は聡明でありますし、妙な真似はなさらないと信用しております。それに……」

 

 彼女はしゃがみこんで耳打ちをしてきた。

 

「私も、脱走の経験がございますので」

 

 いたずらっぽく彼女は言った。まだ二十歳そこそこで剣も魔法も扱える彼女は、かなり活動的な子だったのではなかろうか。

 

「でも、目に余る事をなさりますと報告せざるを得なくなります。程々が肝要かと存じます」

「心得ましたわ。ありがとう、ディーデリック様♪」

 

 ディーデリック、脱走系お嬢だと判明w

 なるほど。同じく街へ繰り出してたのか

 好奇心旺盛な子供だとやるだろうなぁ

 

 控室のアンゼリカを伴って公邸から出る。

 屋敷と公邸の間はいわゆる官公街であり、各種商業組合や下位貴族の別邸などが建ち並んでいる。そのため歩く人はまばらで、移動はもっぱら馬車だ。

 公邸の使用人が馬車を運んでくるとアンゼリカが杖とカードを出す。

 

騎獣召喚(ゴレム・トランスポート)

 

 カードが光を放つと大きな馬を作り出す。

 親父であるアデルベルトの使う物より雑な作りだけど、これは魔力とレベル、さらにイメージ力といったところの差であるらしい。

 街へ乗り入れる事のできるのはこうした『魔力を以て作られた馬』だけだそうだ。そういや通りを歩いていても落とし物が少なかったのはそういうことなんだなぁ。

 

 中世の街のわりに清潔感あるよなここw

 てかこの世界、大きな街はだいたい上下水道完備だぞ? マップで確認したわw

 下水施設はスライム利用だっけ?

 便利すぎて草

 

 騎獣召喚で作れるのは地上を走る物なら何でも良いとか。農民とかは牛にする事が多いらしい。労働力としてはそっちの方が好まれるそうだ。目立ちたい奴は大狼とか獅子とかにするって。そういうのは冒険者とかアウトローな人間が多いらしい。

 

 つまり、一般的な形が馬というだけの話である。

 

「アンゼリカさんはなぜ馬になさりましたの?」

「父も母も馬でしたので。それに、他の動物はあまり存じませんでした」

 

 まあ、無難な選択というのも悪い事ではない。特に権力機構の中だと目立つのは色々と拙かろう。

 御者台でそう答えるアンゼリカだけど、なんか落ち着かない様子だ。

 

「あの……お嬢様。出来れば席の方へお戻り下さいませ」

 

 そう。俺はアンゼリカの横に座っていたりするのだ。

 風が気持ちいーねえ♪

 

「良いではありませんか。ちゃんと掴まっていますから」

「は、はあ……」

 

 彼女のメイド服のしっかり掴んでいるし、何なら手を回してもいい。この馬は彼女の意思で動くので機嫌が悪くなって暴れたりはしない。手綱も不要なのだ。

 

 あー、イイですねぇ……

 あえて御者席乗って衆目に晒すスタイルおk

 馬車の部分は作れないんだっけ?

 あれは魔術装具扱いだね。

 

 お屋敷までは三分ほどで着いてしまう。それでも俺はこの時間が好きだった。なにせ公認で街に出ているのだ。目的としてはまあぼちぼち侯爵令嬢として職場に慣れるという側面もあるから萎える所もあったりはするけど(笑)

 

 そんな折、前の歩道を歩く少女の持っていた布袋の紐が切れ、路面に野菜やら果物を散乱させてしまった。

 

「あっ!」

 

 慌てて拾いに馬車の前に出てしまう少女。

 とは言っても馬車はそんな簡単に止まれるものではない。

 

 なのでいつもの方法を使うことにする。瞬間的に消えて、少女の傍へ。馬車に怯える彼女に抱きついてそのまま転移。歩道へと跳んで着地する。乗っていた馬車はその場を十メートルほど進んでようやく停まった。

 

「お、お嬢様っ?」

「わたくしは平気ですわよ、アンゼリカさん♪」

 

 御者席から飛び降りる彼女にそう答える。

 この辺りは比較的高級住宅街とも言えるので通行する人はあまりいないが、それでも仕事で動く平民などはちらほら見かける。

 馬車の事故に、人が集まってくるが誰も怪我をしてないところを見ると早々に去っていく。

 

 如何にも高そうな馬車だし、関わりたくないだろうねw

 平民にとって貴族は祟り神みたいなもんだし

 

 野次馬はどーでもいいよ。それより女の子の方が大事だ。

 

「怪我はありませんか?」

「は、はひっ! ありましぇん」

 

 俺の腕の中で女の子は顔を真っ赤にしてそう答えた。テンプレみたいなキョドリ方に少し笑ってしまう。俺が抱きかかえているのが原因っぽいので手を離すと彼女は平伏してしまった。

 

「き、貴族のお嬢様のお手を煩わせてしまいましたっ! ど、どうかお慈悲をぉ」

「ええ……いや、ちょっとやめて下さいまし。なんかわたくしが悪いことしてるみたいじゃありませんの」

 

 往来で同い年くらいの子供に土下座させてるなんて見た目に宜しくない。急いで立たせると、スカートに付いた埃をはたく。

 馬車を停めたアンゼリカが寄ってきて俺のことを同じようにするけど、こっちはそんなに汚れちゃおらんから(笑)

 

 それから、彼女に向かって毅然とした様子で言った。

 

「いきなり馬車の前に出るのは犯罪です。貴方の名前は?」

「ひぃっ!?」

「故意にやったとなれば重い罪にもなりますっ! 親や一族にも塁が及ぶかもしれませんよ」

「あわわ、お、お許しをぉっ!」

 

 またしても平伏する少女にアンゼリカは容赦がない。遠巻きに人も見てるし、あんま大事にすんなやっ!

 

 轢かれそうになったのに女の子の方が悪いの?

 そう(よそ)おって貴族が襲撃された事があったらしい。ホントに草

 他の国でも同じ感じだよ。馬車は急には停まれない。

 身分差に慣れていないリセたん、ドギマギしててカワイイw

 

 人に頭下げるのは出来ても、下げられるなんて慣れてねぇよ(笑)

 そんな事言ってる間に警吏が来ちゃった。こっちを見るといきなり敬礼だもんだから俺もビックリ(´゚д゚`)

 

「こ、侯爵令嬢様に敬礼っ!」

「「はっ!」」

「ええ……」

「こ、侯爵令嬢さまって……」

 

 お、俺のこと知らないみたい。わりと街の人の前には姿見せてるし、この辺りの子供ならだいたい知ってると思ってたんだけど。

 

「この子はリーセロット様の馬車の前に転がり出て進路を妨害しました。早急に逮捕し取り調べ下さい」

「はっ」

 

 アンゼリカ、てきぱきし過ぎぃっ!

 涙目の女の子を大の大人が無理やり立たせてる姿はあまりにも痛々しい。

 

「お待ちなさいっ」

「リーセロットさま?」

 

 近寄り、彼女の手を取る。警吏は空気を読んで彼女から手を離した。俺は彼女の右手を握りしめて警吏にこう言った。

 

「彼女は馬車の前の物をどかそうとしただけです。幼さゆえうまくいかなかっただけでわたくしを害そうとする意図は見受けられません。アンゼリカは早とちりなさってないかしら?」

「は、えっと……」

 

 ワタワタする彼らがアンゼリカの方を見る。

 彼女は少しバツの悪そうな顔をすると私に頭を下げる。

 

「どうも私は先走っていたようです。お嬢様が仰るように問題はなく、逮捕や拘禁は必要ありません」

「はっ、畏まりましたっ!」

 

 とりまなんとかなりそうなので、今度はこっちのケアだ。涙ぐんでる女の子に声をかける。

 

「怖かったかしら? でももう平気ですわ」

「あうぅ……ひゃい……」

 

 ……む。

 涙ぐむ少女ってなかなかイイな。

 てかこの子、可愛くない?

 

 リーセロットたん程ではないが足し蟹

 ちょっとタレ目で愛嬌あるねw

 着てる服はちょっとアレだけどな

 ん、野暮ったい草

 

 下働きかなんかの子供だろ?

 ばら撒いたのも野菜とかだし。夕飯の買い物頼まれてたんだろうな。そうだっ!

 

「あなた、買い物帰りだったのでしょう?」

「あっ! そうでした!」

 

 言われて気付くと、場所に轢かれた野菜の元へと向かう彼女。幾つかは平気そうだけどほとんど踏み潰してしまっていた。

 

「これは弁償しないといけませんわね♪」

「お嬢様ぁっ?」

「さあ、アンゼリカさん。この子を乗せて市場へ向かって下さいませ! あ、ここの掃除はあなた方お願いね♪」

 

 俺の言葉に目を白黒させるアンゼリカと少女。ちなみに掃除を命じた警吏は何故か喜んでいた……ホワイ?

 

 

 

 

 

 結論から言うと、市場には行けなかった。

 アンゼリカが頑なに引き留めるし、少女の方も嫌がったからだ。

 

 まあ、そうだよな(笑)

 『畏れ多いですぅ!』ここヨカッタ

 警備とか考えると市場は辛いよな。オマケに一人だし

 さすがのお嬢も無理強いすぎw

 

 アンゼリカが代金を払って、その場を離れる事になった。あんまり引き止めて夕飯に間に合わなくなるとかマズイしね。

 

「あなた、お名前は?」

「わ、わたくしはマルレーンと申します」

「そう。なら、マルレーンさん。明日、わたくしのお屋敷にいらっしゃい。時間はいつ頃なら空いてますの?」

「ふえっ? ああ、あの、それは……」

 

 俺の言葉を聞いてガクガク震えてるマルレーンだけど、アンゼリカがぴしゃりととどめを刺す。

 

「侯爵家ご令嬢のお誘いを断るという事がどういう意味かはご存知ですよね? ニッコリ(^_^メ)」

「……ひゃい……、午後のはじめ辺りでしたら……」

 

 午後のはじめとはだいたい十二時から十五時位のことを指す。厳密な時計がないのでこんな呼び方になるのだ。

 

「では、門でそう仰って下さいませ。お茶とお茶菓子を沢山用意しておきますわ♪」

 

 そう言って彼女と別れたのだけど、心配なのでスパくん(蜘蛛型使い魔)をこっそり忍ばせておいた。ほら、お金渡したからさ。ろくでもない連中に絡まれたりしないようにね。

 

「お嬢様……あの子をご友人となさるのですか?」

 

 アンゼリカが隣から聞いてくる。少し心配そうな顔をしているな。ちな御者席にいるのに文句は言わなかった模様。

 

 もう諦めたんだろw

 なんだかんだと隣にいてくれるの嬉しいみたいだね

 

「あら? 何か問題でも?」

「見たところ、あまり貴族らしくなかったので……お嬢様には相応しくないかと愚考しました」

 

 おっと。アンゼリカも貴族の出だからかこういう事は気になるんだろうね。

 

「わたくしも人のことはあまり言えないですわよ?」

「そんなことはありません。お嬢様には神々しい気品が満ちております。そうしたものがあの少女には感じられません」

 

 アンゼリカが少し唇を尖らせながら言う。あれ? ちょっとカワイイ仕草だなw ひょっとして拗ねてる?

 

 これはてぇてぇw

 リセ✕アンですか

 これはイケる (;゚∀゚)=3

 →3000

 

「アンゼリカさんは心配性ですわね♪ 別にメイドにするなんて言ってませんわよ?」

 

 そう言って抱きつくと、少し驚いたようだ。

 

「お、お嬢様。危のうございます」

「ふふーん。ぎゅーですわっ♪」

「もう……仕方ありませんね」

 

 アンゼリカの機嫌が良くなったみたいなので、一安心。あとは……あの子の確認かな?

 

 

 

 自室に戻るとスパくんとの接続を試みる。とりあえずちゃんとくっついているようだ。

 

 使い魔にした時点で魔法生物になってるから、スパくんに食事は必要ない。その他の害虫にやられるほどヤワでもないんだけど、人間に叩かれるとかなりヤバいのでそこだけは注意しないとね。

 

 んで、確認してみたんだけど。

 マルレーンちゃん、何やらぐすぐす泣いてるみたい。

 

『お父さん……お母さん……かえりたいよう……』

 

 どうも、厄介な身の上の子だったらしい。

 (´Д`)ハァ…

 

 




 現場猫のポスターを見るとどうしても笑います。
 他意はありません()

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