日曜の午後に動画見てたら幼女になって配信する件について   作:二三一〇

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 ※より前はマルレーン視点。後はリーセロット視点となっております。


22 まどろみの少女と調理中の少女

「う……ん。あさ……?」

 

 少しだけひんやりとした空気に、ちょっとだけ微睡みたいなと思い……そうしても良いのだと気が付いた。

 

 私はマルレーン。

 

 今はエイク男爵家に養子としてフォーセロットの別邸へとやってきた。ここからかなり離れたサラト村の父ヘリーと母フェンケの二番目の娘であった。

 

 本来なら夏は日が上がる前から起きて野良仕事に出なければならない。夏場は野菜も果物も成長が早く、収穫時期を間違えると売り物にならなくなる。常ならば母や父に起こされて手押し車を押したり、弟たちの面倒をみたりとしなければならない。

 

 それをしなくてもよい環境になった事は、たぶん良いことなのだろう。

 手の傷や毎日の筋肉痛に苦しめられないのは、やはり楽だと感じてしまう。そんな自分が怠惰だと詰られる気がしていたたまれなくなるのも、心が弱いせいだと思い込んで閉じ込める。

 

 それでも漏れ出てくるのは、母の暖かい抱擁に父の無骨な掌を懐かしむ感傷。

 彼らの為に身を投げ出したつもりはないけど、やはり売られたようなモノだと感じてしまう。それは五つ年上の姉が奴隷として売られていくという……寒村の子供にはよくある、なんて事ないことを経験してきたからだと思う。

 

『元気でね。遠い空から、あなた達を見守っているわ』

『……おねえちゃん……』

 

 私の父や母にどうにもできない事が、子供の私に出来るはずもない。私はゴトゴトと揺られる馬車を眺める事しか出来なかった。

 

 そんな姉を見送った自分なのだから、売られるのも仕方がない。そう思った。

 あの時姉はなんと思っていたのだろうか。

 今の私と同じ気持ちの訳はないだろう。

 

 私は貴族に養子として引き取られたのだから。

 

 初めは少しだけ誇らしく思ってもいた。

 自分には魔力が備わっていて、男爵様が目をかけて下さったということを。

 

 ただの奴隷とは違うと……少し思い上がっていた。

 

 父や母を恨むのも筋が違うと分かっている。

 男爵様のお召に逆らうなんて出来るはずもなく、私に選択の余地はなかった。

 

 そういう意味では、私は姉と何ら変わらなかった。

 

 実際のところ、奴隷とは違って強制的な労働はあまり無い。魔力を高めるための訓練や勉強の他にやる事は多少の家事手伝いだけ。

 文字も少しずつだけど覚えて、賢くなっている気はする。

 

 でも。

 親元を遠く離れて暮らすという事がどれほど心細くなるのかと言う事は知らなかった。

 

 旦那様はご病気で立つことも出来ず、ご隠居されていた大旦那様はイライラしてばかり。

 領地のお屋敷には奥様がいるけど、旦那様に愛想をつかせているせいか、お見舞いにも来ない。

 そんな人たちの下で働く方たちも、私に同情してくれる人はいない。それもその筈だ。私は彼らと同じ平民なのに、貴族の養子となっているのだから。

 

 この広いとは言えない男爵家別邸には、居場所がなかった。

 

 せめて買い出しくらいはすると言って、まさかあんな事故を起こしてしまう事になるとは思わなかったけど。

 

 あのとき。

 私を助けてくれたあの方は……まるで絵本の中から出てきたような方だった。

 

 罪科を問われて震える私の手を取って。

 悪くないときっぱりと大人に言う姿は、とても凛々しくて。

 女の子だと分かってはいても、ドキドキが止まらない。

 

「リーセロットさま……」

 

 そんな愚にも付かない事を考えて微睡んでいたら、枕元に小さな蜘蛛が居たのに気が付いた。

 

「……?」

 

 私の小さな小指の上に乗って、まるで船を漕ぐように頭を上下させている。蜘蛛はあんまり好きではないけれど、この子はなんとなく愛嬌があって可愛いと思った。

 

「あれ?」

 

 よく見ると。

 昨日ぶつけた左手の怪我がなくなっていた。

 

 男爵様に夕ご飯を持って行って、いつものように食べないと仰って……その器を払われた時にぶつけたのだ。

 

 赤く腫れていたけど、大旦那様に言うほどでも無いと思い、そのままにしておいたのだけど……?

 

「あなたが治してくれたの?」

 

 うつらうつらと頭を動かす小さな蜘蛛に、そう言った。すると、こちらに気が付いたのか私の方に顔を向けた。

 

「……?」

 

 少しの間、見つめあっていたと思う。

 すると、小さな蜘蛛は前の脚を片方だけ上げた。まるで挨拶をするようにぴょこぴょこ動かす様がすごく可愛くて、思わず笑ってしまった。

 

「くすっ……君はとってもかわいいですね♪」

「……」

 

 前の両脚をぶんぶんと振って、まるで『違う、可愛くなんかないっ』とでも言っているみたい。

 

「ふふ……あ」

 

 小さな蜘蛛は、ぴょん、と跳びはねて明り取りの窓へと跳んでいってしまう。表はもう、朝の光に満ちていた。

 

「うーん……」

 

 身を起こして、大きく伸びをする。

 昨日までの疲れが嘘なように消えている。

 これもあの小さな蜘蛛さんのご利益なんだろうか?

 

 今日の午後は侯爵様のお嬢様とのお茶会に呼ばれている。それまでに今日の分の課題を済ませておかないと。

 

 小さなお客さんのおかげで、鬱々とした気分もどこかへいってしまった。やっぱり朝蜘蛛は幸運の使いなのかもしれない。

 

「よーし。やるぞ!」

 

 私は急いで身支度をして、屋根裏から降りるのだった。

 

 

 

 

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

 

 

 今朝は危なかった。

 スパくん繋げたまま寝落ちして、マルレーンとバッティングするとは思わなかったよ。

 

 苦し紛れに挨拶とか、我ながらバカな真似をしたな……マトモな蜘蛛じゃないってバラすようなモンじゃないかよ、まったく。

 

 そんなわけで。

 朝食を食べてから日課の魔力鍛錬に今日の課題を終わらせる。午後はマルレーンをお呼びしてるので何もないけど、その分午前に回されてるんだよね。

 

「リーセロット、厨房に行くわよ」

「……宜しいのですか?」

「私に聞かれましても……」

 

 答えたのは歴史を教える先生である。雇い主である侯爵家の奥さんが言ってるなら授業は中止だよなぁ。権力の横暴、いくない。

 

 と言いつつ喜ぶリーセロットたんでした。

 ニッコニコやないかw

 

 そりゃあ、嫌いじゃないけど。

 でも今日は初めてのお茶会だからね。

 それに母親(リーサンネ)が料理を教えてくれるんなら行くに決まっている。本と筆記具をしまい、そそくさと勉強部屋を出るとアンゼリカが待っていたので移動……あれ? ここ衣装部屋じゃん。

 

「お仕事着に着替えましょう」

 

 そういうことね。

 この間着ていたディアンドルもここに仕舞っているのでそれに着替える。頭巾やエプロンは別の物が誂えてあって、金色の糸で刺繍がされていた。アンゼリカによるとそれはリーサンネが刺したものらしい。

 

「この刺繍……」

「奥様が刺したものですよ。相変わらず綺麗ですね」

 

 家庭的な彼女だけにこの方面も得意なのだ。

 榛の実を掴んだ鷹というのはうちの紋章にもなっている図柄であり、金糸での刺繍はとても精緻である。ぶっちゃけ普段使いの物にするレベルでないと思う。

 

「お母様はスゴイですわ。それにひきかえわたくしときたら……」

「お嬢様、あの……」

 

 アンゼリカが言い淀む。その意味はとても残念だからである。

 

 運針は問題無いんだけどね

 下絵が、なぁ……

 

 コメントにもあるように、どうもリーセロットは『画伯』のようである……あ、俺はちゃんと鷹を描こうとしてたよ? でもなぁ……

 

 あれはどう見ても怪生物でワロタ

 今の絵、ヒドかったね……

 ちな俺氏の部屋から昔の描いた絵が出てきたけど、こんなの 彡サッ

 ん……まあ、酷くはない。上手くもないけどw

 普通。でも、そこはかとなく中二臭

 これ、なに描いたの?

 

 あり職のハ○メ……のつもり。てか、勝手に人の机イジるなよっ

 ヽ(`Д´)ノプンプン

 

 なるほど……俺氏とリセたんに相違点はあるのか。興味深い。

 そのうち眼帯付けて真っ黒なコート着たりw

 リボルバー片手のリーセロットたんか……アリやなw

 今の容姿だと吸血鬼の方が合ってるね

 

 ……やんないからな(プンスカ)

 

 コメントを無視して厨房へ。

 粉を(ふるい)にかけているリーサンネがいるけど、他には誰もいない。この朝食後の時間は厨房に詰める料理人たちの休憩時間に当てられているのだ。

 

「来たわね。始めましょうか」

「宜しくお願いしますわ、お母様」

 

 思わず握る手にも力が入る。

 それを見て少しだけ笑う母親だが、指導はそれなりにスパルタだった。粉と砂糖を混ぜて、牛乳を流し込む。そこで一緒に生のイーストを入れようとしたら注意さたのだ。

 

「いっぺんに入れちゃだめよ」

「ふぇっ? な、なぜですの?」

「うまく混ざらなくなるし、味や食感も固まってしまうわ。手間がかかるけど、一つずつ混ぜていくの」

「はぁい、分かりましたわ」

 

 溶き卵と、溶かしたバターと、お塩。

 これも別々に入れて混ぜていく。

 腕力が無いので身体強化をこっそり使って何とかこなす。

 最後に酒に漬けていたドライフルーツを混ぜていく。

 艶々とした葡萄がとても美味しそうで、つい手が伸びる。

 

「♪ うん、おいしい♪」

「つまみ食いしないのっ(ポカッ)」

「はうっ」

 

 ラムレーズン、マジうまい。

 アイスとかに混ぜて食べたい♪

 こんど作ってみよう(フンス)

 

 リセたんのつまみ食い……かわいい

 叱ってる本人も食べてるがなw

 あ、ちょっと顔が赤くなってるなリーセロットたん

 

「いや、本当にダメだからね」

「あーん、お母さまぁ。もうちょっと〜」

 

 そそくさと冷蔵庫に仕舞うお母さま……もうちょい食べたかったなぁ

 ( ̄¬ ̄*)ジュルルル

 

 あっ、こりゃあ……

 お酒だいすきっ子フラグですな(笑)

 すっげえ見てるしw

 

 その後、ボウルを保温庫に入れて一時間ほど。時間は砂時計で計ってるな。保温庫は発酵させる為のものだろうけど、この世界って微生物の認識ってあんのかな?

 

 一部の博識な人達は知ってるよ

 パンの発酵に関しては経験則らしいけどね

 

 待ってる間に包丁の持ち方、扱い方なんかを教わる。この辺はすんなり出来た。

 

「私の娘だけあって、スジがいいわね」

「ありがとうございます、お母さま」

 

 使った野菜は煮込んで使うらしいからそのまま置いておく。すごい膨らんでた生地を取り出してきてかき混ぜ、またちょっとおいたら油で揚げていく。

 

「魔術装具?」

「リーセロットは魔術式のコンロは見たの初めて?」

 

 厨房の一角にあるそれは、まさに現代のガスコンロみたいなものだった。燃料は何かと聞いたら魔力そのものだとか。

 

「火の強さを自在に調節出来るの。すごく便利なのよ」

 

 俺にとってはそれは当たり前の話なんだけど、火をつけて竈で煮炊きする世界ではこれは革新的なモノなのだろう。開発に夫が関わったのも大きいようでしきりに自慢する言葉が出てる……ごちそうさまです。

 

 油が煮立ってきたら、生地を一口大にスプーンで分けて入れていく。感じからするとサーターアンダギーのようだけど、こちらの生地は少し滑らかだ。

 

「今年の年越しにはリーセロットのオリーボーレンが食べられるかしら?」

「! が、がんばりますっ」

 

 いやまだ七歳児なのに油使う料理させるつもり? まあ、いいけどさ。

 

 ……聞いたか、諸君。

 ああ。何とか潜り込めないかな?

 とはいえ憑依するのはリーセロットたんに止められてるし……

 

 ……管理者世界でなら作れると思うぞ。

 材料用意しておけばね。

 

 ひゃっほーい\(^o^)/

 これはたくさん用意しないと……

 リーセロットたんありがとう →3000

 

 あそこでは地球の管理者が料理してたし、作るの自体は問題無いはずだよな。

 問題はキャパだけど、それは預かり知らん。

 せっかくだし地球の食材色々集めておいてくれよ。ラーメン食いたいし、醤油や味噌も味わいたい。俺から出せる条件はこんなトコだな。

 

 おk 任せろ (๑•̀ㅂ•́)و✧

 年末にイベントか……ヨシッ

 やべえみなぎってきたw

 とりま残業にならんように……

 お前んとこ管理者なのに残業あんのかよ(笑)

 マジで急がないと草

 

 なし崩し的に年末年越しの管理者パーティが決定したけど、俺的には問題無い。

 

 さて、オリーボーレンも出来たようだし。

 あとはお客さんを待つだけだ。

 

 




 スパくんのイメージは、SAOのシャーロットみたいな感じです。ちっこくてちょこちょこ動くけど、蜘蛛は蜘蛛なんだよね……
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