日曜の午後に動画見てたら幼女になって配信する件について   作:二三一〇

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 幼い頃の自分を眺めるのは、感慨もありますがおそらくほとんどの方は羞恥を覚えるのではないでしょうか?

 自分? 卒アルとか封印すべき黒歴史だゾw


06 ホームビデオとは拷問、これは真理

 僕はアデルベルト=ファン=ハーゼルツァット。

 ハーゼルツァット侯爵家の当主である。

 あとを継ぐ前から婚約していたリーサンネも妻に迎え、順風満帆な人生を謳歌している……筈だった。

 

 妻が身籠るまでに五年かかり、私もすでに三十代になる。幸いにして妻からは側室に関しては構わないとの返答は得ているが、私にはそんなつもりはなかった。

 

 上級貴族が側室を持つのは当たり前だと言う風潮があるが、僕はそれには異を唱える。

 

 側室などいれば家の中で勢力争いが起こる。

 それを僕はイヤというほど味わってきた。

 母が違うとはいえ同じ兄弟と啀み合い、殺し合う。側室の子である僕が継ぐことになったのも、正室の側がやり過ぎた結果の自爆に他ならない。

 

 だから、僕は側室は取らないと決めている。

 王国の法では婚姻ののち十年以内に嫡出子が無ければ、養子を取れと決められている。親戚筋の人間にはこの地位を狙う人間には事欠かないので、候補は幾らでも募れる。

 

 それより、僕は純なる愛に生きたいのだ。

 もう、勢力争いとかはウンザリなのである。

 

 リーサンネはとある男爵家の娘でありながら、高い魔力と美貌を備えた人であり、私は高等学院の頃から見初めていたのだが……どうにも良い返事が貰えなかった。

 

 世間的に見れば、確かに侯爵家の嫁としては格が足りないのかもしれないが……そんな事は些細な話だ。

 

 私は家の格で伴侶を選ぶつもりはなかったし、そもそもその頃は跡継ぎ候補ではなかった。そういう理由から、彼女もようやく絆されてくれたのだと思う。

 

 話は戻るが、そんな私もようやく子供を授かった。なんて可愛い娘なんだろうか……とてもか細く、小さなその姿を見て、僕は不安に苛まれた。

 

 同じ子供と競い合い、いがみ合うのが常だった私は……子供に接する事が殊の外苦手だと、自覚してしまった。

 

 妻が手ずから渡してくれた我が子を受け取るとき、手が強張り落としそうになってしまった。幸いにしてメイド達がフォローしてくれて大事には至らなかったが……私にはもう、リーセロットに触れる事すら出来なくなってしまった。

 

 いっそ、妻が我が子が可愛くないのかと(なじ)ってくれたなら、まだ良かったのかもしれない。

 

 だけど彼女はきみ(リーセロット)を大事そうに抱えてしまい……その機会は失われてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 出張から帰ると、ヴィッセルが慌てて不在の間に起こった顛末を報告し、私は激怒した。

 

「リーセロットを守るためにお前たちを置いていたのに、魔族と対峙させるとは何ということかっ!」

「ははっ……面目次第もございません」

「あの子は無事なのだろうな」

「傷はどこにも無いとの、事です。ですが 魔力欠乏(マインドダウン)を起こされました」

「……あの子はまだ、魔法は使えない筈だ」

「どうも我流にて習得していたご様子で……その」

「言い淀むなっ はっきり言え!」

「スピリットイーターを……一撃で仕留めましてございます」

「……はぁ?」

 

 我ながら、間抜けな声を出していただろう。

 しかし齢五歳の幼子が魔法を使い、スピリットイーターなどという上級魔族をうち滅ぼすなど到底は考えられまい。

 しかし、ヴィッセルは退役したとはいえ近衛で頭角を表していた傑物である。誤った報告をするとは思えなかった。

 

「ひ、被害は? リーサンネは無事か?」

「奥方様はその日はギルドの定例集会のためおりませんでした。使用人と従士が何人かやられたようですが、ご家族には被害はありません」

 

 被害にあった者の家族に報せ、金を支払うようにと伝える。リーサンネやリーセロットに害が及ぶよりは遥かにマシだ。

 

 

 メイド長のイルセから、リーセロットが目を覚ましたとの報告が入る。私はすぐに私室から出るとリーサンネと廊下で出会った。向こうも報告を聞いて来たのだろう。

 

 数日ぶりに会うリーセロットが、ベッドの上から疲れていたにもかかわらず、気丈に挨拶をしてきた。

 いつもは塞ぎこむ様子が見られるあの子が……普通に話してくれた。

 

 これだけでも飛び跳ねんばかりに喜ぶべき出来事だったのだが。

 

 次の日の昼に、エーリクから書き取りがすこぶる早く終わったと聞いた。昨日から比べるとまるで別人のように真面目に取り組み、基礎の文字は全て完璧にこなせるようになったそうだ。

 

「リーセロット様は学問に才があるかもしれません」

 

 わりと気難しい彼が手放しで褒めるのはなかなかない。私とリーサンネの娘なのだから当然だと内心は思ってはいたが、彼に言う必要はあるまい。

 

 そのあと食堂でリーセロットと鉢合わせして、その事を褒めた。

 

 すると、何が気に入らなかったのか不機嫌な表情を見せて近寄ってきた。どうかしたかと聞くと。

 

「褒める時はきちんと褒めて下さいませ、お父様」

 

 そう、答えてきた。

 

 僕は頭を殴られるような感覚を覚えた。

 言われて初めて気付いたが、僕は娘を褒めるときに目を合わせて言ったことは無かった。

 

 そしてそれよりも驚いた事は、娘が自分からそう言ってきた事だった。

 

 何事にもオドオドとした彼女にいったい何があったのか。毅然とした振る舞いは、まるでリーサンネの若かりし頃に良く似ていた。

 

 そう思った次の瞬間、それは間違いだと気付かされた。

 

 あろうことか、椅子に座る私に手をかけ、よじ登ると膝の上に横に座り、こう言った。

 

「淑女にここまでさせたのですから、きちんとお褒め下さいませ♪ それとも、壊れ物を扱うようで怖いですか?」

 

 ……見透かされたと、感じた。

 絶句というのはあの時の僕が感じたもの、そのものだ。

 

 怖くて触れる事も出来ないの?

 幼いながらも蠱惑的な笑みで僕を見ると、今度はそっと瞳を閉じる。

 

 まるで、『あなたの決心がつくまで待ちますよ』と訴えかけるように。

 

 渾身の勇気をこめて、その柔らかな髪に触れ、優しく撫でながら、言葉を紡ぐ。

 

 娘の瞳がゆっくりと開き、穏やかに、そして、華やかに微笑む。

 

「はい、お父さま」

 

 僕は、なんで今まで何をしていたのだろう。

 手に触れて、言葉を交わす。

 それだけで、娘はこんなに嬉しそうに笑ってくれるのだ。

 子供に関わるのが面倒とか、迂闊に触れて壊すのが怖いとか。

 

 そんなことを言い訳に、今までして来なかった事を後悔し、猛省した。リーセロットに陰鬱な顔をさせていた過去の自分に、助走をつけて殴ってやりたい。

 

 そもそも愛に生きるとか抜かしていたのに、娘や妻に笑顔を与えてやれなかったのだ。これは僕の不徳であり、改めなければならない。

 

 妻とも話し合おうと決意をしつつ、娘の真なる力に興奮を禁じ得なかったのは、仕方のない話だ。

 今の僕に迫る魔力の流れなど、この王国にも殆どいないはずだ。しかも、まだ五歳なのである。この力なら、スピリットイーターとやり合ったというのも信憑性は出てくる。

 もっとも、下級のシャドウホーント辺りと見間違えたのだろうと思う。さすがにスピリットイーターは無理だろう。

 

 まあ、だからといって危険な真似をさせるつもりはない。この子は私が守る。妻もだ。

 

 僕はようやく、天命を知ったと感じたのだった。

 

 

 

 

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

 

 

 

 いや、なんスか? これ……?

 

 ここの管理者に頼んで父親の心ン中を視覚化してPVにしてみたんだ

 なかなか良く出来てて草

 アデルベルトって名前だったんだねw

 

 いや、その。

 折角作るなら声はso○talkはやめようよ……親父さん、速○奨っぽい声でカッコいいんだからさぁ。

 

 これ仕様だからw

 

 わりと真面目に出来てたのに、台無しだよぅ……

 それよりもさあ。

 この映像の中のリーセロット、可愛すぎない?

 

 そこは加工してないですw

 あくまでアデルベルトから見たリーセロットだから、多少は美化されてるかもしれんけど。

 リセたんは可愛い。オーケー?

 

 ま、まあ。そのへんは置いとくとして。

 この内面とかって。

 この管理者には筒抜けなの?

 俺の知らんところでこんな感じに作られてたりはしてない?

 

 ( ゚д゚)ハッ!

 その手があったか……

 ちょ、ちょ、管理者に聞いてみよう!

 

 や、やめ、やめろーっ!

 お前ら、そんなことしたらただじゃおかんぞ?

 

 フリフリ衣装でお歌配信してくれたら考え直す

 ゲスい要求で草

 お前、天才だなっ!

 さすが地球の管理者! 俺たちに出来ない事を平然とやってのけるっ そこに痺れる憧れるぅ!

 ちょ、匿名コメにしてんのにバラすなっ!

 サーセン(笑)

 

 地球の管理者か……お前とはゆっくりお話しないといけないみたいだなぁ……

 

 ユックリシテイッテネ!

 お前の事は忘れないゼッ(^o^)d

 ヒイッ あ、あのリーセロットたん……?

 

 アイツは今度あったら泣かせる。方法は問わない。

 

 ど、どんなコトすんの?

 (((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル)

 少し期待

 

 そうだなぁ……男らしい恰好でタバコでも吸ってみる? 野郎っぽいことしたら幻滅すんだろ、お前らでも(クスッ)

 

 あ……ひ、ひぃっ! なんて事を!

 清楚可憐な幼女になんて、ごほ……辛い仕打ち!

 この鬼畜、おにっ、幼女っ!

 

 おおぅ……珍しくうろたえるコイツらに気を良くするおれ。やっぱり、野郎アピールは堪えるようだな フフフ

 

 いや、きみチョロいな草

 

 え? 草の人、何言ってんの?

 

 コイツらがその程度で怖がるとかない草

 『まんじゅう怖い』という落語に酷似した状況だと気付いてる? 本当に草

 おいっ、黙れよ草ぁっ

 幼女のイキリ顔コスプレ見れるとこだったのにっ

 

 忘れてた。コイツらは高度な変態だったよ……

 

 夕食のあと、そんな動画を見せられて。

 あの父親の事を少しだけ見直した。

 

 身内との壮絶な争いの果てについたトラウマだ。簡単に消え去るものではないと思う。

 それでいて自身の子や妻には愛情を以て接しようと決意していたのだ。

 それが出来なかったのは単に心が弱いからと言うのは、かなり厳しい話ではないのか。少なくとも俺はそう感じた。

 

 そんな奴の想いに応える為になら、俺の羞恥心くらいなら安いものかもしれない……コイツらが煽りさえしなきゃ、我慢できる類のものだし。

 

 しかし、それならば。妻のリーサンネさんがいまいち分からなくもある。

 

 家柄のバランスの良くない所への婚姻とはいえ、そこに愛情が無ければ承諾はしなかったと思う。なにせ、当時は跡を継ぐべき正室の子とやらはいたのだ。アデルベルトは貴族とは名ばかりのただの人だったわけで、そこに打算的な思惑は少なかったと思うんだが。

 

 貴族の子女って、跡継ぎ以外どうでもいいのは三人目以下なんだよね。二番目の候補のアデルベルトは万が一の替えのコマでもあった。

 そのため、周りからの反発は当然あったんだよ

 先代の正室ってのもたち悪い女でさ。家柄の事でいつもいびってたよ

 でも、彼はいざとなれば家を捨てるつもりで強行した。リーサンネはその男らしさに感じ入って受け入れた、というわけ。

 実際、市井に出ても二人なら職にあぶれる事は無いからね

 

 はえー。つまり、ちゃんと恋愛結婚だったわけか。

 じゃあ、なんでギクシャクしてんのかな?

 なんだかリーセロットに対しても壁あるし

 

 ま、その辺は直接聞いた方がいいんでない?

 家庭内の問題だしw

 

 それ言うたら俺だって部外者やんけ!

 中身リーセロットじゃないんだから!

 

 周りからは分からんのだよなぁ……

 頭おかしくなったと思われるだけw

 

 せやな……まあ、成り行きだけどリーセロットに悪いしな。前のリーセロットは母親の中の子供に入ってんなら、夫婦は仲良くやってくれんと都合が悪いし。

 

 んだば、ちょっくらお母さんとこ行くべか。

 ドアを開けると、すぐ側の控室からメイドさんが出てくる。

 

「お嬢様、いかがなさいましたか?」

「お母様の所へ参りたいのですが、お部屋はどちらになりますの?」

「それでしたら先触れを出しますので、しばしお待ち下さい」

 

 ん、それはよくないな。

 避けている人間から『会いたい』と言われても断るだけじゃん。親子なんだし。

 

「それではいけませんの。わたくしはお母様に避けられてますでしょ? 断るに決まってますもの」

「は、はあ……しかし」

 

 渋る若いメイドさん。リーセロットは子供であり、リーサンネさんは奥方だ。どちらの言を重きに置くかと言うとそれは歴然である。

 

 じゃあ、どうしようか。

 

 バイタルジャンプで抜けるのは容易いけど、探すとなると面倒だ。屋敷内は夜とはいえ人は多いし、どこかで見つかる可能性もある。

 表に出れば捜索もしやすいだろうけど、窓の鍵はきっちり閉められているのでバイタルジャンプをもってしても抜けるのはかなり難しい(実際やってみたから)

 

 少し悩んでいたのだけど、救いの手はすぐに差し伸べられた。

 

「わたくしが同行いたします」

「イルセ様っ……」

「……めいど長?」

 

 偶然通りかかったメイド達のトップ。イルセさんが引き受けてくれたのだ。

 

「で、ですが。奥様は……」

「あなた達はこのまま待機していて。さ、お嬢様。参りましょう」

 

 失礼します、と断って抱きかかえる。

 わりと普通なイメージだったのだけど、やはりメイドさんは体力仕事なんだろうか。

 

「お世話になります、イルセさん」

「過分な敬称はいりません、お嬢様」

「わたくしよりも先に生きているだけで、皆様は先達。それに敬意を表しているのはいけないこと?」

「……! それは大変宜しい事かと存じます」

 

 顔を近くしての会話は少し照れるけど、イルセは柔らかく笑ってくれた。それだけで大満足だ。

 

 こんな人がいき遅れとか……周りの野郎どもは見る目がねえなぁ。

 

 同意。

 禿同

 実際、完璧すぎて近寄れん所もあるらしいw

 元は子爵家の令嬢だし

 

 は? そうなんだ。

 貴族もメイドとかやってんの?

 

 跡取りとかじゃない限り、家に残るのは難しいからね

 魔術師とか騎士とか冒険者とかやってる元貴族もいるよ?

 だからこの世界、貴族といって鼻にかけてる連中は思ったより多くないよ

 アデルベルトがリーサンネを強引に娶って、そのまま侯爵家を継いだのもよくある話だし

 市民の方が実権強い街とかあるしw

 

 意外と実力主義でワロタ。

 つまり、母親は権力とかそういうので引け目を感じてというわけではない、か。

 そうしてる間にリーサンネ様の部屋に到着した模様。この乗り物、人に優しいね(ニッコリ)

 

「奥様、少し宜しいでしょうか?」

 

 俺の意図を見抜いたか、用向きを言わずに部屋の中に入ろうとするイルセ。普通は不敬な行為かもしれないけど、先ほどの話からすると貴族がいきなり無礼打ちとかしなさそうなんで安心して静観する。

 

「? いいわ、入りなさい」

 

「失礼します」

 

 かちゃり。

 

 ドアが開かれる。部屋はリーセロットの私室よりも広く、調度品もそれなりに多い。そんな中の一つである椅子に座り、こちらを見て固まる美女。

 女の子一人産んでもその美貌は全く損なってないであろう彼女は、こちらとそれを抱えるイルセを見ていた。

 

 

「夜分に失礼いたしますわ、お母さま」

「リーセロット……」

 

 さて。

 母娘の語らいといこうかね。

 片方はニセモノなんだが、そこは固いこと言わんでねw

 

 




 愛が重すぎる父親の熱意にヤラれる俺氏(笑)
 そういうわけで次はお母さんとの語らいです。
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