この二人が鬼探しに山を歩いていると、炭を売りに行くと言う一人の少年と出逢った。
ドラえもんとのび太が竈門一家を救う話の第二話です。
炭治郎や各キャラの口調に違和感があるかもしれません。
なお本作品はpixiv様にも同じ作品を投稿してますので、よろしければそちらもご覧になって下さい(内容は同じですが)
「のび太くん、着いたよ」
しばらく超空間の中を移動し続けたドラえもんとのび太は、目的地である大正時代に到着するとタイムマシンの出口から遂に大正時代へと降り立つ。
「うわぁ凄い雪!こんなの滅多に見ないよ!」
「うん、山の中かな?思ってたより凄い場所に降りちゃったみたいだね」
超空間から降り立つとそこは全て真っ白な世界であった。見慣れた大きな建物は無く、山の中。周りには雪を被る木々しかない。
「とりあえず鬼を探しに行こうか」
「う、うん……でもその前にさ……」
都会では見られない光景を気にしつつもドラえもんは鬼を探しに行こうとするが、のび太は両肩と歯をガチガチ振るわせ、時折飛び跳ねたりして動けずにいた。
「ドラえもん、この寒さどうにかならない……?」
「そんな格好じゃ、この雪は寒いよ。言われてみれば僕も少し寒くなってきた」
のび太の今の格好はいつも履き慣れたお馴染みの短パンに薄い長袖のTシャツ。
のび太達のいる現代では季節は秋。それも少し肌寒いかという頃であり、対してたこちらは真冬。それも雪が積もる山である。
「よし……じゃあ」
こんな寒さにこんな薄着は正直自殺行為に等しいが、ドラえもんはポケットに入れるとある物を取り出した。
『あべこべクリーム!』
取り出したのは一般的によく売られてるクリームの容器。
だが中身はとんでもないクリームだった。
「早く早く!」
寒さでたまらないののび太はすぐさま奪い取るように容器を取ると、中から少しずつクリームを身体に塗っていく。
「ふぅ……あったかーい……」
このクリームは名前の通り周囲の暑さや寒さをあべこべにする為、言ってしまえばどんな真冬に素っ裸でいたとしても凍死しない。
「よし、じゃあ行こうドラえもん!」
「うん!」
ドラえもんもクリームを少量塗ると、あべこべクリームをポケットにしまうと歩き出す。
特に目的地は無く、計画性もなく、歩いていればそのうち鬼や鬼殺隊と呼ばれる者たちと出会えるのではないかと安易な気持ちで。
「うーん、どうにも見つからないね」
少し雪景色の中を歩く二人は次第に無言になり、そこで最初に沈黙を破ったのはドラえもんだった。
「やっぱり闇雲に探すだけじゃ見つからないのかな」
いつ行っても景色は変わる事なく、ひたすら雪のみ。鬼どころか人にすら出会えない。
「ちょ、ちょっと疲れた……ねえ休もうよ」
そう言って、のび太は座り込む。
それもそのはず、この少年の基礎体力は致命的に悪すぎて、正直この足元の悪い雪山では数十分歩いた程度で動けない様子だった。
「んもう、だらしないなのび太くんは」
そんなのび太に対してドラえもんはまだ余裕があるのか、息一つ切らしていなかった。
「ねえホントにこの時代に鬼っているの?」
「うーん、多分ね。なんせ22世紀でも情報があまり無いんだ。簡単に見つかるはずがないよ」
簡単に見つからないかどうかは置いておいて、とりあえず適当に歩いただけで見つからないのは当たり前である。野鳥観察ならまだしも、相手は噂話程度にしか当時の人々にも浸透していない存在なのだから。
「たずね人ステッキを出してよ、そっちの方が早そうだし」
「あれは時々外れるし、そのせいで遭難したら大変だからダメ!」
「じゃあいっそのこと、どこでもドアで……」
「あのねのび太君、見に来たいって言ったのは君なんだからさ。もうちょっと自力で頑張ってみようよ」
補足しておくと、たずね人ステッキは彼らの大冒険の時にも度々登場するひみつ道具で、恐らく鬼も探し出せるはずだが的中率は七割ほど。
どこでもドアに関しては、インプットされてる地図の範囲内なら多少曖昧でも一発で目的地まで行ける。
「とはいっても疲れた……ん?あれ?」
断固としてもう動こうとしないのび太であったが、ふと視線を向けると、こんな雪山に一人の男がいるのを見つけた。
「ねえドラえもん、あそこに人がいるよ!」
その男は、おそらくのび太より少し歳上で緑と黒の上着。そして耳飾りをしている少年だった。
「こんな雪山に、薪かな?あんなのを背負って何してるんだろ?」
「折角だから鬼について何か知っていないか聞いてみようよ!」
のび太は自身のその言葉に、疲れて動けないはずの重い身体を動かす。
無計画で始めたこの冒険に一つの手掛かりとなる希望が見えたからだ。
「あのー!すみませんー!」
「え?あ、あの君たちは?」
のび太の声に少年は驚いた。こんな山に、見るからに薄着な子供が来たのだから無理はない。
「こんにちは、ぼくドラえもんです」
「ぼくは野比のび太って言います」
「俺は竈門炭治郎。この先に住んでるんだけど……あの君たちは何者なんだ……寒くないのか?」
「え?ああ、ぼくたちは大丈夫です。このクリーム……あべこべクリームって言うんですけど、このクリームを塗れば寒くないので」
そういうとドラえもんはポケットからあべこべクリームを取り出し、炭治郎に見せる。
炭治郎は見た事ないクリームに疑問を思いつつも、薄着な割にどうやら本当に寒くは無いようだと納得する。
「実は僕たち鬼を探してるんですけど、竈門さんは何か知らないですか?」
「見たところ歳もそう変わらないし炭治郎でいいよ。残念だけど鬼は俺も見た事ないし知ってることはなにもないんだ」
アテが外れた事にのび太たちは肩をガックリと落とす。
クリームのおかげでいくら寒くなくても雪は降り続け、足元は悪い。こんな日に見つかるかどうかも分からない鬼を見つけるのは無謀に近かった。
「うーん……のび太くん、やっぱり鬼は簡単に見つからないね。どうしようか?」
「せっかく来たんだからもっと探そうよ、でも炭治郎はここで何をしてたの?」
「俺はこれから町に炭を売りに行く途中だったんだ」
「ええ!?売りに行くって、こんな雪に偉いな……」
「のび太君とは大違い……」
一言余計だよ、とドラえもんにツッコミを入れつつも。炭治郎の働きぶりには二人も驚きを隠せないでいた。
「でもこんな雪に行かなくてもいいんじゃない?見たところ町はこの辺になさそうだしさ」
ドラえもんはそう言うと辺りを見回す。どこを見ても雪と木のみ、町に辿り着くには暫く山を降りなければならないのは地理に詳しくないのび太やドラえもんですら分かった。
「でも俺、正月になったら家族みんなに腹一杯食べさせてやりたいし。それに慣れてるから大丈夫だよ」
「……そうだドラえもん!どこでもドアを!」
最近ではあまり見ない家族想いな炭治郎の意思に共感したのび太達は自分たちにも何か手伝いできる事はないかを考え、そこで思いついた。
「うん!ぼくたちそういう話には弱いんだ」
そう言うとドラえもんはポケットに両手を入れ、毎度お馴染みと言える物を取り出した。
『どこでもドア!!』
「うわっ!?えっ?ど、どうやって出したんだ!?」
このどこでもドアは、宇宙地図十万光年以内という制限を合わせても、どんな地の果てに一瞬で辿り着けるという破格な性能を持つひみつ道具だ。
恐竜がいた時代など、大陸の形や場所が現代と違う場合はその機能は働かないが、そんな問題があるはずのない大正時代においてはあまりにオーバーテクノロジーの産物すぎた。
「まあまあ細かいことはいいから……このドアを開けてみて」
「わ、わかった……」
今の時点で自分の常識外れな事ばかり起きているが、しかし自分を騙そうとはしないドラえもんとのび太の善良な様子から見て、恐る恐るドアのを開いた。
「………え?」
ただ一言、炭治郎は呟いた。
「あ、あれ……俺いま確かに……」
扉の先には、いつも炭を売りに行く町があった。
「え?え!?一体どうなって……」
後ろを振り向くと自分が今いた山。そしてドアの後ろをふと見てみても雪。
なのにこのドアを潜った向こうは町だった。
「まあまあ、さあ早く炭を売りに行こうよ」
のび太が細かいことは気にせずにと告げて、炭治郎の背中を押す。
「よし出発!」
ドラえもんのその言葉で、三人はどこでもドアから町へと移動した。
「昔の町ってこんなんだね」
「今の日本とは大違いだったんだよ、のび太くん」
のび太は周囲を見回しながら昔の日本の町を眺める。
現在のび太たちが住んでいた町とは違い、映画の中でしか出てこないような古い建物ばかりの町だった。
「俺はこれから炭を売るけど、二人はどうする?」
「僕とドラえもんも手伝うよ!」
「そうだね、呼び込みとかなら出来るし」
「あっ、でもそうだ!」
そういうとドラえもんは何かを思い付いたようで、ポケットに手を入れて何かを探し出す。
「ドラえもん?」
「なにをするのさ?」
「どうせ売るなら、もっと沢山の人に買ってもらおうと思って……あったあった」
『フエルミラー!カムカムキャット!』
そう言って取り出したのは、一つの鏡のような物と小さい猫だった。
「炭治郎くん、その炭を一つ貸してくれる?」
「え?ああ、いいよ」
ドラえもんは炭治郎から炭を一つ貸してもらうと、取り出した鏡に映した。
「うわっ!?炭が出てきた!?」
すると鏡からは"本物"の炭が出てくる。
「まずフエルミラーで炭をどんどん増やそう!」
そしてドラえもんとのび太は協力して炭を次から次へとフエルミラーで増やしていったが、炭治郎は目の前で起こってる奇跡に呆然と立ち尽くしているだけだった。
「こ、これ……本物の炭……だ……」
恐る恐るフエルミラーで作られた炭を手に取る炭治郎。何度確認しても、本物の炭であるのが未だに信じられなかった。
「い、一体どういう仕組みなんだ……?」
「これはフエルミラーと言ってドラえもんの道具でね、この鏡に写した物はなんでも本物になって出てくるんだ」
炭を増やすドラえもんに代わって、本人も使用した事のあるのび太が解説する。
余談だが、のび太はお金を増やそうとしてフエルミラーを使うも、左右反対で出てきたので使えなかったという過去がある。
「さてこの辺でいいかな」
ドラえもんの一言で作業は終えた。
「凄いなこれ、こんなに売れるかな」
炭治郎は唖然としていた。
自分が持ってきた籠の何倍に炭が増えている。籠に換算すれば一つや二つの比ではない。
「大丈夫!そこでこのカムカムキャットに……さあ頼むよ」
ドラえもんはカムカムキャットと呼ばれた猫を自分の足元に置く。すると猫がまるで意思を持つかのように腕を招くように動かした。
「……まぁ炭治郎ちゃん!!」
「あれ炭治郎!」
暫くすると、カムカムキャットによって引き寄せられた人たちが大勢集まってくる。
「人がこんなにいっぱい……こんなに人が集まったのは初めてだ」
いつの間にか炭治郎たち三人の前には行列ができていた。
こんなに人が集まったのは炭治郎にも経験がない。この小さな町に、こんなに人がいたのかと疑問に思ってしまうほどに。
「ちょうどよかった、炭を売ってくれ!」
「こっちにも炭をくれ!」
まさかカムカムキャットによって自分達が半ば強制的に連れてこられたとは思わず、町の住民たちはついでだからと炭を次々と買っていく。
するとほんの僅かな間に、大量にあった炭は次第になくなっていった。
「あーー!炭治郎!ちょうど良かった!!」
どこか涙混じりの大声が響く。
「皿を割った犯人にされてるんだよ俺ー!助けてくれよ!!」
「ねえドラえもん、あれ……」
「うん。何か大変そうだね、よし真犯人を…………」
両手に割れたと思われる皿を抱え、隣にいる女性に連れてこられたのは一人の鼻血を出している男の人だった。
「嗅いでくれよぉ!」
「「嗅ぐ?」」
ドラえもんとのび太は二人揃って疑問の声を出した。嗅ぐとはどういうことなのかと。
「ごめんドラえもん、のび太、ちょっと行ってくる!」
たまにやっている事なのか、意味がわからない二人をよそに炭治郎は二人に販売を任せて駆け出す。
「…クンクン……クンクン……」
炭治郎は割れた皿に顔を近づけ、匂いを嗅ぎ始めた。
「猫の匂いがする」
「うわぁ、見た!?ドラえもん!」
「凄いなぁ……。炭治郎くんは鼻が凄く良いんだね」
感心する二人の目の前では、炭治郎が皿についてるであろう微かな匂いで割った犯人が猫だという事を突き止めた。
「炭治郎!ちょっと荷物を運ぶの手伝ってくれねぇか!」
するとまた別の荷物を運んだ男が炭治郎を呼び止める。
「ごめん二人とも、ちょっとまた行ってくる」
「あっそうだ!炭治郎くん、荷物運びならこれを持っててよ」
『かるがる手袋!』
ポケットから取り出したのは、一つの手袋だった。
「これをつけたらどんなに重いものでも軽く持てるようになるんだ」
「へー……うんありがとう!早速付けて行ってみるよ!」
ここまででドラえもんの不思議な道具をいくつか見ている炭治郎はもはや疑うことはなかった。
そこで手袋を早速つけると、呼ばれた男の元へと駆け出した。
「ねえドラえもん、炭治郎ってみんなから慕われているんだね」
「うん。まあとても他人思いで家族想いの子だもん、今時中々あんな子はいないよ」
補足しておくと、今時とかいうがここは大正時代である。
あとこの眼鏡をかけた少年、野比のび太もかなりの他人思いで、実際に人の幸せを願い、人の不幸を悲しむ事のできる優しい子だというのはドラえもんも十分承知していた。
「さあ僕たちもどんどん売ろう!」
「うん!」
「ふぅー、やっと終わったねドラえもん、炭治郎!」
「カムカムキャットの効果も、改めて思うけどびっくりだよ……」
フエルミラーで増やしすぎたのではないかというぐらいまで増やした炭は、あっという間に完売した。
「ドラえもん、のび太、ホントにありがとう!こんなにお金が入ったのは初めてだ!」
「それにこの手袋……どんなに重いものでも、まるで鳥の羽のように軽く持てる……」
そう言うと炭治郎は付けていた手袋を外してドラえもんに返した。
「何から何までホントにありがとう二人とも!」
「いいんだよ、ここで出逢えたのも何かの縁だし。ね、ドラえもん」
「そうそう。僕の道具にかかれば人助けも簡単だし、気にしないで」
「おい炭治郎!」
突然男の声が聞こえた。
「あっ、三郎爺さん!」
炭治郎が振り向いた先には、一つの民家の窓から一人の高齢の男性がこちらに呼びかけていた。
「まだ明るいから大丈夫だと思うが、山に帰るつもりなら暗くなる前に早く帰れ。夜は人喰い鬼が出る」
正直どこでもドアを使えば一秒で帰れるのだが、そんなことを三郎爺さんが知るはずもない。
「え!?鬼!?」
人喰い鬼という言葉に真っ先に反応したのはのび太だった。
「あのお爺さん!鬼が出るって本当ですか!?」
「ああ、鬼は昔から日が暮れると彷徨きだす」
「そんな時は鬼狩り様が鬼を斬ってくれるが……お前達も日が暮れないうちに早く帰れ」
何やら見慣れない服装の男の子と見慣れない狸のような生物がいるとは思った三郎だが、それだけを言い残すと家へと戻って行った。
ちなみに狸というのはドラえもんの前では禁句である。
「のび太くん!今のお爺さんが言ってたのって……!」
「うん、鬼狩り様って多分鬼殺隊の事だよね」
まだこの二人は当初の目的を忘れたわけではない、有力な手掛かりを見つけたと思い更なる話を聞こうかと思ったが、家へと戻っていったお爺さんに無理して話を聞きにいくのも気が引けたのでやめる事にした。
「あのー、ドラえもん、そしてのび太」
そんなことを考えていると、ふと炭治郎から声がかかる。
「もし良かったら俺の家に来てほしい。手伝ってもらったお礼もしたいし、弟や妹に会って欲しいんだ。きっと二人なら喜ぶだろうから」
炭治郎としては今までにない額を稼げた事に対して、何かしらのお礼をしたかったのだ。
正直この二人がいなければ、まだこんな昼間のうちから帰る事は出来ず、こんな大量の金額を稼ぐ事も出来なかったのだから。
「そう言う事ならいいよね、ドラえもん!」
「うん、じゃあ早速どこでもドアで……」
特に断る理由もない二人はすぐ納得し、ドラえもんはまたもやポケットからピンク色の少し大きなドア、どこでもドアを取り出した。
「さあ炭治郎くん、このドアを開けてごらん。君の家に繋がっているから」
「あ、ああ……しかし凄いなこれ」
奇跡みたいな効果をまだ実感できていないのか、まだドアノブを触る手はどこか恐る恐ると慎重だった。
「あれ?兄ちゃんもう帰ったの?」
「おかえりお兄ちゃんと……お兄ちゃんの友達?」
どこでもドアの先には二人の小さな男女、炭治郎の妹と弟らしき人物がいた。
「ああみんなにも紹介するよ、今日いろいろ兄ちゃんを助けてくれた、ドラえもんとのび太だ」
「初めまして、僕ドラえもんです」
「こんにちは、ぼく野比のび太です」
どこでもドアから炭治郎から出てきて、ドラえもんやのび太も続く。
雪の降る真冬なのに薄着な人と、見た事もない喋る青い生物。そして謎の桃色のドア。
まだ幼い子が理解できるとは思えないが、しかし悪い人ではないと子供ながらに判断すると。
「「……こんにちは!!」」
とりあえず元気よく挨拶をして終わる。
これが竈門家とのび太達の最初の出逢いだった。
ドラえもんのひみつ道具って、原作・旧ドラ・新ドラ・第○期シリーズ等の各年代といいますか各話において微妙に設定や仕様が変わったりしてるので読んでる人によっては「あれ?この道具こんなのだったけ?」と思われると思うんですよね
のび太と炭治郎(初期)って年齢は3つ違いですけど、呼び捨ての方が友達感ありますので呼び捨てで呼び合う事にしてます。