残るウォッチは四つ。だが今回、時見ソウゴには大々なる試練が待っている……
キーワードは……『初恋』……」
此処は、とある刑務所。
そこで収監されている女性と面会する男性がそこにいた。
「服の趣味が変わったわね……
フゥ…ハァ……香水の香り……ティファニーね。
それから……ワインの匂い……ロマネサンヴィヴァンでしょう?奮発したわね~。
かわいい彼女のために……でしょ?」
鼻がいいのかと思うような発言をすると、女性の表情は変貌した。
「私は冤罪よ。無実なのよ。自分だけ……幸せになるつもり?」
「……」
そう言われると男性は、彼女に何も言い返す言葉がなかったのか、黙っていることしか出来なかった。
「責めてないわ、いいのよ。仕方がないことなのよ」
「すまない……」
男性は申し訳ないように謝る。
しかしその女性の目は、言葉とは裏腹に、憤怒と嫉妬心に満ちたどす黒い目をしていた。
男性との面会が終わると、女性は牢屋で叫び散らしていた。
「私はやってない……やってないの!無実なの……無実だぁぁぁーっ!!」
「素敵よ。あなたのその怒り」
無実なのだと泣き叫ぶ彼女の下へ、クライアス社のオーラが現れた。
「誰?、あなた」
「あなたを……あなた自身を解放しなさい」
『キバ…!』
オーラはアナザーキバウォッチを起動し、彼女へ埋め込んだ。
「うわぁぁぁぁぁぁぁーー‼︎」
悲鳴を上げると、女性の体が変貌していった。
――懐かしい思い出を見ていた。
それは小学三年の春……叔父さんを仕事の関係で待っている間、この神社で迎えが来るのを待っていた。
「遅いな……叔父さん」
だが叔父さんが中々迎えに来ないので、神社からちょっと外へ出ようとする。
「ぁ…」
その時、扉の間から見えた桜の下で、桜の花を見ていた女の子がいた。
青い晴着に、髪を結んだ女の子がいた。
顔は見えなかったけど、桜を優しく見るその子に、何かを感じた。
しかし、それが結局誰なのかは、彼にはわからなかった。
――いや、思い出せない。というのが、正しいのかもしれない。
「ソウゴ……ソウゴ……」
その時、自分の名を呼ぶ声が聞こえた。
「おい!起きろ!」
「ん……ゲイツ……ふわぁ〜」
ソウゴは机から顔を離し、欠伸をしながら声のした方を見るとそこにはゲイツがおり、既に次の授業に使う教材を持っていた。
「いつまで寝てるんだ。休み時間終わるぞ」
「うん……ごめん」
そう言って机から離れると立ち上がり、授業の準備をする。
「急げ、遅れるぞ」
「うん……」
二人が教室を出て行くと、ふと窓の外を見つめる。
(懐かしい夢だったな……)
その時窓から見えた木が、うろ覚えな昔の記憶と重なった様な気がした。
放課後、ソウゴ達はクジゴジ堂へと来ていた。
『いただきます‼︎』
今日は叔父の順一郎が自作でアップルパイを用意してくれていたので、一同はそれを口にする。
「どうかな?初めて作ったアップルパイ?」
「うまい!」
「ほんと美味しい!」
「この皮のサクサクがいい〜!」
「ああ、イケる。しかし珍しいな。激辛好きのツクヨミが……!」
「うん。これなら全然OK!」
「本当⁉︎ 口についてるよー」
ソウゴとさあや、はな、ゲイツが絶賛している近くで順一郎がツクヨミの口にアップルパイのカスが付いていることを指摘すると、彼女は顔を少し赤くしながらふき取る。
「ついにスィーツまで手を出しましたか。出来ればおかわりを」
「私もお願いします!」
「俺も!」
「もちろん!どんどん食べて」
ウォズとルールー、ハリーの要望で、順一郎はお皿に追加のアップルパイを乗せる。
「この生地のさ、さくっと感がイケてるでしょう?
何しろね、この生地作るのに3日かかってるから!一睡もしてないよ」
彼の言う通り、順一郎の目の下にはクマが出来ていた。
すると、ソウゴがアップルパイを深く見つめていた事にはなが気付く。
「ソウゴどうしたの?」
「この甘ずっぱい感じ……なんていうか……そう、初恋の味?」
『ぶぅ!?』
彼の口から初恋という言葉を聞き、全員が口を押さえ咽せた。
「初恋だと……⁉︎ お前、恋を知ってるのか?」
「当たり前だろ、失礼だな。俺だって恋ぐらいするよ」
(初恋……)
さあやが少し複雑そうな顔になっている横でルールーは、初恋というキーワードがどういうものなのか気になっていた。
「失礼ですが……初恋とは?」
「初恋とは、初めての恋!多くの人にとって、一生涯忘れられない恋なのです!」
「それは、どんな気分なのですか?」
ルールーはえみるにそう尋ねるが、これと言った恋をした事のない本人は具体的な説明が出来ず。多分こう言った感覚なんじゃないか?という考えの下、感情論で教えようとする。
「えっ?えっ〜〜と、ですね、胸がドキドキする感覚なのです!」
「ドキドキ……」
それを聞いたルールーは、前にもソウゴに対して、何度か同じ感覚を感じた事があった事を思い出す。
「初恋か……」
一方、初恋と聞いたほまれはハリーをチラッと見つめる。
「ちょっと意外だな~。ソウゴってなんていうか子供っぽいっていうか……」
以外だなと思ったツクヨミは、彼の初恋に少し驚いていた。
「それでどんな人だったの?」
「私も興味があるのです!」
「フッ……あれは俺が小学生の頃だった……」
「話すのか……?」
ソウゴが初恋のことを話し始める。
「俺、公園で泣いてたんだ。その時は1人で遊んでたんだけど、膝を擦り剥いちゃって……」
当時、膝を擦りむいて木の陰で泣いていたあの時を思い返す。
「そしたら通りかかった女の子が絆創膏貼ってくれてさ、『大丈夫?』って……それから一緒に遊んでくれて……」
女の子が膝に絆創膏を貼って貰い、その子と遊んでいたことをとても楽しかったのだと、みんなは聞いていて思った。
「そうして別れ際に……『さようなら。かわいい子』。そう言いながら、俺の顎の下を撫でてくれてさ……」
「お前は猫か……」
顎を撫でてたその子を思い出しながら、溢れんばかりの笑顔で自分の顎を撫でていた。ゲイツはその姿を見ながら、女性がゴロゴロ鳴く猫を優しく撫でる光景を思い浮かべる。
「そうだな~。今のはちょっと恋とはいえないかにゃ?」
「そうかな?普通に良いと思うけど〜」
「えぇ。とても良い話だと思いますが?」
横で聞いていた順一郎は猫の様な語尾でそう話すが、えみるは頭にハテナマークを浮かべるソウゴの意見に同意した。
「でしょ!それに俺の心の中にはあの子の面影が!それに他にも……」
「「もういい!」」
「そう?」
「「うん」」
他にもあるのかと思い、ゲイツとハリーが呆れ気味にお断りする。
「焦らずとも、いずれあなたの元には多くの女性が津波のように押し寄せてくるよ。我が魔王」
ウォズがフォローする様に、そのうち彼の下に女性がいっぱい来ると言う。
「ソウゴ君の……初恋……」
だが、初恋の話を聞かされたさあやは浮かない顔をしていた。
「初恋……胸が……ドキドキ……あの時と似ている……」
一方のルールーは初恋は何かと考えていた。
そんな時、クジゴジ堂のドアが開く音が聞こえる。
「すいません。あ、時計の修理をお願いしたいのですが……こちらは喫茶店ですか?」
男性はアップルパイを食べてるソウゴ達を見て、ここは喫茶店だったのかと思い込む。
「いえいえ、とんでもにゃあ。どうぞどうぞ、どうぞこちらへ」
順一郎は寝不足の影響なのか、呂律の回らない感じで男性をカウンターへと誘導し、仕事内容を伺う。
「はあ~これはいい時計ですね!鳥肌もんだぁ~!何か云われのある品ですか?」
「ええ。私が初めて勝った裁判の記念に購入したものでして」
「へ~、弁護士さんですか?じゃあ、法を守る正義の味方ってことですね」
「いや~凄いなぁ。とてもかっこいい仕事ですね!」
ソウゴとはなが弁護士だという男性を褒めるが、男性の顔は優れなかった。
「いえいえ、そんなかっこいいものじゃありませんよ。無実と信じていた被告を守れなかったこともある」
男性の言う通り、今の日本の裁判で弁護士を雇ったからと言って、簡単に勝てるわけではない。特に日本では、刑事裁判の有罪率は大体99.9%であると言われている。
――ただし、検察官が起訴する事件の割合は37%位だとも言われおり。99.9%という数字は、刑事事件の中で決定的な証拠が挙がった場合などで行われた裁判での有罪率である。
「冤罪ですか……それは辛いですね」
「裁判とはそうゆうものだ。仕方ない」
だがしかし、起訴率37%の壁を不運にも乗り越えてしまい、もしそういった裁判に起訴されてしまったら無罪になるのはかなり難しい……とされている事は、あながち間違いではないのかもしれない。
「難しいですよね。裁判に勝つのって」
「裁判じゃ、弁護側が勝つには不利な事が多い時がありますからね……」
「そうなんだ……」
「まぁね。あんな綺麗な娘さんが、今も刑務所にいると思うと……」
男性がそう言いながら、当時助けられなかった女性の事を気に病む。
「じゃあ、完了しだいご連絡します」
「よろしくお願いします」
修理する品を預け、男性は去っていった。
すると、ソウゴが男性の忘れ物を見つけた。
「あれ?忘れ物かな?俺もっていくよ!」
そう言ってクジゴジ堂を出て、男性へ忘れ物を返しに向かう。
その頃、男性は車で何処かへ向かおうとしていた。
だがその前に誰かが立ちはだかり、そこから見えた女性は腕を組んだ状態で、ハイヒールを履いた左足で車のボンネットを押さえる。
「何なんだ君は!危ないじゃないか!」
「いい暮らしをしているな。スーツはオーダーメイド、生地はイタリア製か。昨日は寿司を食べたようね。しかもこの匂い、近海本マグロのトロばかり」
その女性の口調から、男性はその人物が誰なのか思い立った。
「君は北島ユウコ……?」
「思い出したか。お前の下手な弁護のせいで、私は無実の罪を背負った」
確か彼女は刑務所にいた筈……なのに何故ここにいるのか疑問に思っていると、ユウコと呼ばれた女性は男性に近づく。
「何故……何故ここに君が⁉︎」
「お前に判決を言い渡す。有罪‼︎」
ユウコが指を突き刺し、男性に有罪と宣言した。
『キバ…!』
その瞬間、ユウコの体に埋め込まれたアナザーウォッチが反応し。体を覆っているステンドグラス状の器官、頭部から生えているコウモリの翼的な触角が特徴的なアナザーライダーへと変えた。
「えっ〜と?どこに?」
「うわぁぁぁぁぁ……ッ‼︎」
そこへ、男性への忘れ物を渡しに来たソウゴが現れた。
叫びが聞こえ振り向くと、さっきの男性を見つけた。
「アナザーライダー!やめろ!」
『ジクウドライバー!』
アナザーライダーを見つけたのでジクウドライバーを装着し、ウォッチを取り出す。
『ジオウ!』
「変身!」
『ライダータイム!仮面ライダージオウ!』
走りながらジオウへと変身し、アナザーライダーから弁護士の男性を助けに入った。
「大丈夫ですか?」
男性の前へと出て、ジオウがアナザーライダーに構える。
「何だ、お前は⁉︎ 私はいずれこの世の女王となる身。跪け」
「女王……?あ、逃げてください」
「は、はい」
ジオウのおかげで男性は逃げる事が出来た。
「出番よ」
ひび割れたステンドグラスの様な顔から露出した、緑色に発光する瞳でジオウを見据えながらアナザーライダーが指を鳴らす。
「「「ガゥゥ〜……」」」
「なんか、カラフルなの来た……」
いきなり三匹の怪人が現れ、アナザーライダーのしもべとしてジオウに立ちはだかる。
まず、三匹はジオウを取り囲むかのように攻撃を繰り出され続ける。
「ッ……」
三匹に振り回されているジオウは苦戦を強いられる。
すると、フランケンシュタインの様な姿をした紫色の怪人がアナザーライダーに引き寄せられ、ハンマーへと変えられた。
「はぁ!」
「うわぁ!」
それをアナザーキバが手にし、ジオウへ重い打撃攻撃を打ちこむ。
「ふん!」
ハンマーから怪人に戻すと、次は狼型の青い怪人がアナザーライダーに引き寄せられて剣へと変わり、それを使いジオウへ斬撃を放った。
三匹の連携と武器に変えるアナザーライダーに、ジオウは苦戦を強いられた。
「女王に歯向かう貴様は、ただではおかん!」
アナザーライダーはジオウにそう告げながらジリジリと近寄ってくる。
「見つけたぞ!」
そこへ、背丈の高い男性が現れた。
「脱獄犯の北島ユウコ!貴様を逮捕する!」
男性はアナザーライダーの名を呼ぶと、ベルトのようなものを取り出し、そのまま腰へ巻きつけた。
懐からナックルのような機械を取り出し、それを手に当てる。すると…
『レ・ディ・ー』
という電子コールが流れ、警告音の様な音を辺りに響かせながらそのナックルをベルトに装着する。
『フィ・ス・ト・オ・ン』
再び電子コールが流れると、それと共に男性の前からアーマースーツが現れ、それが男性の身体に纏われた。
「その命……神に返しなさい!」
顔面部のシールドが展開し、熱を含んだ風圧を生み出しながら赤い刀身が伸びる剣型の武器・イクサカリバーを出現させ、アナザーライダーに戦いを挑む。
「仮面ライダー……」
アナザーライダーと突如現れたライダー・仮面ライダーイクサが戦っていると、三匹の怪人が襲い掛かってきた。仕方なくジオウは三人の怪人を引き受けることになる。
「三対一じゃ……これで!」
『ディディディ・ディケイド!』
ディケイドウォッチを起動させ、ドライバーへと装填し回転させると、カード型エネルギーがジオウに重なる。
『アーマータイム!カメンライド!ワーオ!ディケイド!ディケイド!ディーケーイードー!』
ディケイドアーマーが装着され、更にビルドウォッチを起動させる。
『ビルド!』
『ファイナルフォームタイム!ビ・ビ・ビ・ビルド!』
ディケイドウォッチにビルドウォッチを装填して、ビルドスパークリングへとフォームチェンジ。三人の怪人にジオウが挑んでいる間に、イクサとアナザーライダーは戦いを続けていた。
「ふん!」
アナザーライダーが狼の怪人を引き寄せ剣へと変える。
すると、イクサがベルトのホルダーから青と黒のフエッスルのようなもの――『ガルルフェイクフエッスル』を取り出し、ベルトに差し込む。
『ガ・ル・ル!フェイク!』
するとアナザーライダーが持っていた剣はイクサへと移った。
「何⁉︎」
「はぁ!」
イクサはそれを使って斬撃を放ち、アナザーライダーにダメージを与えた。
「貴様ら……この女王に楯突くとは……有罪だ!」
アナザーライダーはイクサへ恨みをぶつけるかのように怒鳴ると、半魚人らしき緑色の怪人がアナザーライダーへと引き寄せられ銃へと変わった。
「っ⁉︎ 危ない!」
アナザーライダーから放たれた泡の銃がイクサに放たれると、ジオウが前に出てジカンギレードを盾にして防ごうとするが、防ぎきれずジオウに直撃した。
「あっ……あぁ……」
攻撃が終わるとジオウが膝を折り、変身解除させられた。
「君⁉︎」
「くぅ……」
それを見てアナザーライダーが変身を解いた。
「ほぅ……中々の度胸。かわいい子」
「えっ?」
それは、ソウゴが小学生だった頃に遊んでくれたの少女と同じ言葉だった。
そう言い残した女性は、ソウゴの前から去っていった。
「なんで……」
「大丈夫か?」
「うん……なんとか?」
ソウゴがイクサに声をかけられ起き上がる。
その場を立ち去ったアナザーライダーの北島ユウコの元へオーラが現れた。
「女王か……それでいいのよ。やはりあなたは話が早い」
「馴れ馴れしいなお前。お前は私の下僕に過ぎん。わきまえろ」
王女を自称するユウコを感心するが、当の本人は力を与えてくれたオーラに対して大きな態度を取る。
「何?お前、誰のお陰でライダーの力を……」
ユウコは文句を言いながら自身の手を掴んだオーラに対し、平手打ちをしようとする。
だがオーラは時を止めて避けた。
「貴様、この女王の手をかわすとは!」
すると、逆上してマンホールの蓋を持ち上げ、オーラへ向けて投げつけた。マンホールはオーラの頬に傷をつけた。
「私の力は、女王たる運命が引き寄せたもの。お前はただの使いっ走りだ」
オーラにきつく言うとユウコは去っていった。
その様子を、アイスを食べながらスウォルツとウール、ビシンが見ていた。
「相当だなぁ、あの女」
「とても、トゲパワワに満ちているね」
「あぁ。面白い女だ」
愉快そうな顔で見ている三人を余所に、オーラは険しい表情で、ユウコが去っていく後ろ姿を見つめていた。
一方、みんなはクジゴジ堂へ中々戻らないソウゴが気になってしょうがなかった。
「遅いな〜、ソウゴ?」
「ちょっと見てきた方がいいかも」
「よし、俺が行って……」
ゲイツがソウゴを探しに行こうとすると、クジゴジ堂のドアが開く音が聞こえた。
「「ソウゴ(君)!」」
はな達がドアの方を見ると、男性に腕を支えられて少しヘトヘトの姿になったソウゴが戻ってきた事に気付き、さあやとルールーは咄嗟に彼の下へ駆け寄る。
「ここが、君の家か?」
「うん、ありがとう……」
「どうしたの?ソウゴ!」
「もしかして、アナザーライダーかい?」
「まぁね……」
とりあえずソウゴを座らせ、何があったのかを聞く。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
順一郎がアップルパイを男性の前のテーブルに置く。
「それで、あなたは?」
「私は名護啓介。素晴らしき青空の戦士だ」
その男性――名護啓介は自己紹介すると、“素晴らしき青空”という単語を聞いたはなが、それがどういう組織なのか気になった。
「素晴らしき青空?ってなんですか?」
「戦士というには、何と戦っていたんだ」
「我々は人々を守り、ある敵を倒すために結成された組織だったが、今や危険な人物の調査と逮捕に全力を注いでいる」
「へぇ〜、そんな組織があったんだ」
「興味があるなら、これを読みなさい」
名護はみんなに何かの本を渡す。
「素晴らしき青空への道……」
「753って……」
『素晴らしき青空への道』というタイトルで書かれた本を渡されたゲイツ達は、表紙の下に書かれた『753』という著書を見て怪訝そうな顔になる。
「なんやこれ?」
「この本は、私が今までの戦いの日々を物語ったものであり、平和を導いた話だ!そしてこの本には、訓練に最適なイクササイズも収録している!」
名護がハイテンションに本を説明しているのを見ていると、なんとなく…いや、かなり自分に酔っているのだと想像出来た。
「それで、あなたはそのアナザーライダーを追っていたのは?」
ルールーがハイテンションの名護に言うと、本人は直ぐに我に戻って、新聞のとある記事を見せる。
「昨夜、永夜刑務所に収監中の囚人が脱走したんだ。脱走したのは北島ユウコ容疑者だ」
その話を聞いたツクヨミがミライパッドを操作して、当時の事件について調べた。
「……見て、この裁判記録」
「被告は北島ユウコ、18歳。罪状はノーブル学園の女子生徒を狙った殺人未遂容疑」
ほまれがパッドによる情報を読むと、名護は自身の仮説と調べたことについて語る。
「おそらく、自分を冤罪に追い込んだ関係者を襲ってるのかもしれない。それを見て、俺は彼女を追っていた……
それに気がかりなのは、彼女には戸籍がない」
「戸籍がないだと⁉︎ つまりそいつは存在しないという事か?」
「それを調べる為に彼女を追っていた。しかも、あの奇妙な力……君達、何があったらここへ連絡して欲しい」
ゲイツ達に名刺を渡し、名護はアップルパイを食べてクジゴジ堂を出ていった。
「復讐やな……自分を冤罪にしたことへのなら……」
「でも、気持ちは分からないでもないよ。冤罪なんだから……彼女はきっとやってない」
「なんで、わかるんや?」
「だって……俺の初恋の人だから」
『えっ!?』
『はぁ!?』
ソウゴは先程、名護を攻撃から庇った時に、アナザーキバの変身者だった女性に言われた事が思い出の初恋の人と重なっていたことをみんなに話す。
「またお前が猫だった頃の話か!どうでもいい‼︎」
「よくない!」
「大体、お前のそんな子供の頃のあやふやな記憶が、当てになるのかニャ⁉︎」
「それは……」
「ソウゴ君の初恋……」
「初恋……」
ゲイツにそう言われると本当に初恋の人なのか不安になるソウゴに、初恋と呟きながらさあやとルールーはソウゴを見つめる。
とあるコーヒーカフェにて、一人の男性がコーヒーを飲んでいた。
「以前、この店では世界一美味いコーヒーが飲めた。
だが経営者が変わった悲劇……今では世界一不味いコーヒーになった……」
「その割には良く来て下さいますよね?」
「君が目当てさ。もうすぐ世界が終わる。それまではなるべく、美しい物を見ていたい」
「終わる……?世界が?」
「あぁ見たんだ。昔、時の扉を開けた時、未来のビジョンを……
いや……気にしないでくれ。はぐれ狼の戯言だ」
店員にそう言ったその男性が鏡に写ると、その姿が人からかけ離れた青い狼になった。
翌日、ラヴェニール学園の教室で……
「はぁ〜……」
ソウゴが外を眺めながら、あのユウコなる女性の事を考えていた。
「今朝からずっとよ〜」
少し遠くでツクヨミが、今朝からこんな調子である事をみんなに説明すると、はなが自身の考えを伝える。
「う〜ん、ソウゴの初恋ならみんなで応援する!」
「相手は脱獄犯だろ」
「めちょっく!そうだった……」
「それに本当にソウゴの初恋なのその人?」
「本人が言うには確かじゃないの?」
「「……」」
「ねぇ、そのソウゴの初恋の人、本当に殺人犯なのか調べてみない?」
さあやとルールーが黙ってソウゴを見ていると、はながユウコという女性が本当に殺人犯なのか調べようとする。
「だって、本人はやってないって言ってるんだから。本当なら冤罪じゃないかもって……」
「そうだよね。そうすれば何故アナザーライダーになったのかもわかるかも……」
女性陣はアナザーライダーの裁判の事を調べようとする。
放課後になると、ソウゴは教室を出て一人で先に帰った。
「おい、ソウゴ……ダメか」
「あの様子では、しばらく一人の方がいいかもね…」
「ソウゴ君……」
心配しながらみんなは彼を見つめる。
そんなソウゴは、学校を出ると当てもなくだだ歩き続ける。初恋かもしれないユウコの事を考えながら。
(あの人が俺の初恋の人……でも、どうすれば、会えるだろ……)
もう一度会って、本当に初恋の人なのかを知りたいと考えていると……
〈プゥ〜〜ン♫トゥゥ〜〜ン♪〉
「えっ?音楽?」
突然、森の方から音楽が聞こえた。
その音楽は、とても心地の良い響きだった。
「どこから……」
気になって林のある茂みの方へとソウゴは歩き続けると、音の聞こえる元へ近づいて来る。
「ここは……」
林を出ると大きな湖があった。
「こんな所に湖になんて……」
見覚えのない湖に疑問を覚えながらも周りを見回していると、バイオリンを弾く男性が立っていたことに気づき、ソウゴは近寄る。
「どうした?俺の音楽に魅了されたか〜?」
「えっ?いや、その……いい音だなって〜」
「…そうか」
ソウゴの発言を聞いた男性はバイオリンを仕舞い込む。
「あの、あなたは?」
「俺は紅音也!とても〜偉い人だ〜!」
「偉い人……それって王様だった!」
普通の人ならば、今のソウゴの発言で苦笑するか、真顔で「何言ってんだお前」と言うところだが、今目の前にいるこの男は普通では無かった。
「そうだな……確かに俺は王だった〜……いや!無敵だった!
俺の持つ、愛の戦士としての力で敵を倒し!さらに三匹の怪物を従え、世界中の女性を救ってきた〜!LOVE&PEACEの為に〜♪」
この男性――紅音也はかなりの自信家であるのか、自画自賛しながらそう答える。それを聞いたソウゴは思わず笑みを浮かべる。
「へぇ〜、実は俺も王様になるのが夢なんだ!」
「ほ~う、ガキの癖に王様か……けど、お前には悩みがあるな」
「えっ?」
「それは〜……恋の悩みだ」
「ッ⁉︎ それは……」
確かに自分は初恋かもしてない女性に出会った事で悩んでおり、図星を突かれてソウゴが黙り込む。
「まぁ、俺なら女性を全員同時に愛してやるがな!」
「へぇ〜…全員……」
「けど、結局は最後に愛するのは一人だ……
そいつの事を絶対に守りたいと思うからこそ、心から好きになる。それが恋だ」
「……本当の好き……」
それを聞いたソウゴは、本当に好きな想いが何なのか、それを考える。
「あれ?いない?」
顔を上げると先までそこにいた筈の紅音也は、既にいなくなっていた。
すると携帯電話が着信音が聞こえた。
「ゲイツ?何?」
取り敢えず先程のことは頭の隅に移動させ、ゲイツから連絡を受けたのだった。
その頃、釣りをしていた男性の前に北島ユウコが現れた。
「すさんだ暮らしをしているな。
昨日は泥酔してスーツのまま寝たか?生地がしわだらけだ。最近猫を飼いだしたのは、家族に捨てられて寂しいせいか?裾に猫の毛が着いている。だがその猫もお前に懐いていない。手の引っかき傷がその証拠」
「何だ君は!失礼な!」
「お前に判決を言い渡す。有罪!」
「待て!」
そこへソウゴとゲイツが駆けつけてきた。
「またお前か!言ったはずだ。私は女王、邪魔は許さん!」
「あれがソウゴの初恋の人?」
「なんか、わがままのように思うけど……」
(あの人が……ソウゴ君の……)
続けてやってきたはな達はユウコを見て、第一印象としてわがままなのかもと思った。
「一つだけ、聞かせてほしい……何故あなたは、女王になりたいの」
「この世界の法を正すため。冤罪に泣く人々をなくすため。そのために私が女王となり、正しき法を制定する!」
「じゃあ……人々を救うために……」
「何を感心している!? だからといって、人を襲っていいはずがない!この女のしている事は、ただの復讐だ!」
感激しているソウゴに向かって、ゲイツがユウコに指をさしながら叱りつける。
「お前……女王に指をさすとは……」
しかしゲイツに指をさされたのが逆鱗に触れたのか、ユウコが彼に向けて敵意を向ける。その時、彼らの前に憤慨するオーラが現れた。
「お前は失敗作よ!私の……この顔に傷を付けるとは‼︎」
オーラが怒りを露わにしながらユウコにエネルギー弾を放つが、ユウコはオーラの攻撃を咄嗟に、たまたま近くにあったマンホールの蓋で防ぐ。
「お前たちはみんな……有罪だ!」
『キバ…!』
ユウコがアナザーキバへと変身し、再び三匹の怪人も出現させる。
「行くよ!」
「「うん!」」
ゲイツがジクウドライバーを装着し、はなとさあや、ほまれはプリハートにミライクリスタルをセットする。
『ゲイツ!』
「変身!」
「「「ミライクリスタル!ハート!キラっと!は~ぎゅ~!」」」
それぞれの変身アイテムが反応し、四人の身体に纏われる。
『ライダータイム!仮面ライダーゲイツ!』
「輝く未来を〜抱き締めて!みんなを応援!元気のプリキュア!キュアエール!」
「みんなを癒す!知恵のプリキュア!キュアアンジュ!」
「みんな輝け!力のプリキュア!キュアエトワール!」
四人が変身を完了し、アナザーライダーへと向かって行く。
ソウゴのタイムマジーンでツクヨミ、ルールー、えみる、ハリーがノーブル学園へとやってきた。
「ここみたいね」
「なぁ、ここって確か名門な学校じゃ……」
ハリーの言う通り、ノーブル学園はラヴェニール学園と違いかなり名門な学校だった。
「こんな学校で事件があったなんて、信じられないです」
「とにかく、事件の場所へと行ってみましょう」
四人は学園の中へと入り、調査を始める。
「ん?」
「どうしました?」
ツクヨミがふと空を見ると、そこから歪みのようなものが見えた。
「何か……来る?」
彼女は空を見上げ、異変を感じ取る。
同じ時刻、スウォルツも閉じていた目を見開く。
「……」
「どうしたの?」
スウォルツも見上げると、ツクヨミが見たものと同じものが見えた。
同じ頃、アナザーライダーと戦っていたソウゴ達もその現象にソウゴ達が驚く。
「なんだ……」
「隕石……?」
空間からワームホールが発生し、そこから出てきた隕石のようなものがはくぐみ市から離れた山の方へと墜落した。
「我が魔王!」
そこへウォズが現れ、マフラーを使ってソウゴ達を現場へと移動させる。オーラも追いかけるように向かった。
そのままソウゴ達は、突如として現れた青いエネルギー体のようなものが山にはさまっていたのを発見した。
「これは……」
「隕石?」
「違う。あれは……」
「生きてる…」
エトワール達が呟いていると、隕石の様に見えていた青いエネルギー体がまばゆく輝きながら出てきた。
それは、明るい紫色で惑星の様な装飾がなされ、スーツには宇宙に浮かぶ星々の絵が描かれており、金の複眼を輝かせる頭部が何処かフォーゼアーマーに類似しており、何より腰に地球を模した様なものを付けたベルトを巻いていたのが特徴的だった。
「……仮面ライダーギンガ」
「何…?仮面ライダーギンガ?」
「ふん!」
マントを纏った仮面ライダー・仮面ライダーギンガは問答無用で小さな太陽のようなエネルギーの塊を作り、ソウゴ達に攻撃を仕掛けてきた。
「フレ!フレ!ハート・フェザー!」
アンジュは咄嗟にハートフェザーを展開し、攻撃を耐えようとする。
しかしハートフェザーは破られ、ソウゴ達を庇うように代わりに攻撃を受けたエール達は吹っ飛ばされ、はな達の変身が解けてしまった。
「みんな!」
「う……」
ソウゴがさあやに駆け寄り、彼女を介抱する。
「大丈夫か!」
「うん……」
「なんとか……」
「鎮まれ。私はこの世を統べる唯一の法律――」
突如、アナザーキバが巨大なコウモリのエネルギーの群れを出しギンガに攻撃する。
だが、ギンガには通用しなかった。
「私は宇宙の者。この世界の法律は通用しない。全宇宙を支配する不変の法はただ一つ」
ギンガは彼女の言葉に反論すると、アナザーキバにも問答無用で攻撃した。
「うわぁぁぁ!」
アナザーキバも爆風に飲み込まれた。
今の攻撃を見ただけで、あまりにもギンガは強すぎる力を持っていた事を察した。
「強すぎる……」
「ゲイツ!ウォズ!行くよ!」
ソウゴはジオウトリニティウォッチを取り出す。
『ジオウトリニティ!』
ジオウトリニティウォッチを起動し、ドライバーへと装填したソウゴはウォッチのダイアルを回した。
『ジオウ!ゲイツ!ウォズ!』
「だから……お前はいつも勝手に……」
「や……や、やめて……」
三人が光が包まれ、ゲイツとウォズはやめてほしいと言うが、ソウゴはそれをスルーして問答無用でドライバーを回した。
「変身!」
『トリニティタイム!三つの力、仮面ライダージオウ!ゲイツ!ウォズ!トーリーニーティー!トリニティ‼︎』
「すべての者は滅びゆく――」
ジオウトリニティへ変身した三人は交戦するが、ギンガが手から生成した半透明な球状物に阻まれているおかげで攻撃は掠りとも当たらず、逆に手をかざしただけで吹っ飛ばされた。
「強いな……おい!あれをやるぞ!」
「おぅ!…って、アレって何?」
「だからアレはアレだ‼︎」
「だからアレって何?」
「アレでは分からない」
「ふっ!」
「「「ぐえッ!?」」
三人がふわっとした言葉で混乱してる間に、ギンガが近づいてきて蹴り飛ばされた。
「「「はぁ~……駄目だこりゃ」」」
ジオウトリニティでもダメだと思い込みたくなる状況を見て、はな達は思わずそう呟いた。
「ゲイツ、ノープランだって!」
「そんな事は!」
ジオウトリニティはやみくもにパンチ、キックで攻撃を仕掛けるが、まったくギンガへは当らない。
「効かねぇな…」
「俺に任せて」
今度はジオウトリニティがサイキョーギレードを出現させた。
「さすが我が魔王」
サイキョーギレードでギンガに攻撃をしようとする。
――が、またして当たらない。
そしてギンガはサイキョーギレードの刃を掴み、光弾を至近距離で放とうする。
「えっ……あっ⁉︎ちょっと待ってください!待って待って!」
「待って!待って!」
「待ちたまえー!」
ジオウ達は冷や汗をかきながら待ってほしいと頼むが、ギンガにガン無視されてエネルギー弾を押し当てられ吹っ飛ばされる。
「全然効いてないじゃないか!」
「ゲイツだって!!」
「はぁ〜……では私が!」
『ジカンデスピア!ヤリスギ!』
ウォズへと主導権が変わりジカンデスピアを繰り出す。
しかし、ジカンデスピアでの攻撃も、やはりあっさり防がれてしまう。
「やるじゃないか!」
次にジカンデスピアをカマモードにして降りかかろうとするが、ギンガはその攻撃を避けるとジカンデスピアが地面に突き刺さり、ギンガがスピアに足を乗っける。
「えっ?ちょっとウォズ!」
「ばか!何やってる早く抜け!」
三人が言い争いをしながらジカンデスピアを抜こうと奮闘している間に、またしても光弾を受けて吹き飛ばされる。
「なぜ抜かない!」
「すまない……」
トリニティの力はギンガにまったく歯が立たなかった。
「――それが唯一の、絶対の法」
ギンガがジオウトリニティへ向けて放った強烈なエネルギー弾は地面に着弾し、彼らを巻き込んで大きな爆発を起こした。
『ぐあっ…ッ!』
「ソウゴ君!」
「ゲイツ!」
「ウォズさん!」
それによりジオウトリニティの変身が解除され、地面に伏せた三人に更なる追撃を行うとギンガが歩み寄っていると、はな達三人が彼らに駆け寄って救出しようとする。
「三人とも大丈夫!?」
「あ……うん、なんとか…」
「とにかく早く逃げないと……
…えっと…あ、あっ、ああーっ!あれはぁぁーーーっ!?」
「……?」
はなのワザとらしい叫びに反応したギンガが彼女の指をさした方へと顔を逸らした隙に、さあやがソウゴを背負って、ほまれはゲイツに肩を貸して、はなはウォズをお姫様抱っこしてその場から逃げて行った。
ノーブル学園へとやってきたツクヨミ達は、事件の現場へとやってきた。
「ここ見たいね」
「あの?」
そこへ、眼鏡を掛けた女子生徒と赤髪の女子生徒が現れた。
「あなたは……」
「七瀬ゆいといます」
「私は紅城トワと申します」
ノーブル学園の生徒である二人と会ったツクヨミ達。
そこで彼らは、ユウコの事件の真相を知ることになる。
おまけ
ギンガ「ギャーギャーギャーギャーやかましいんだよ、発情期ですかこのヤロー」
ソウゴ「なんか違う気がする・・・」
ウォズ「ナニこれデジャヴ?」
これぞまさにギンさん。
完