Re.HUGっとジオウ!   作:yu-ki.S

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ウォズ「この本によれば……いや、我々は今、クライアス社との最後の決戦に挑んでいた。
キュアエール達は時見ソウゴとはぐたんの二人を取り戻す為、クライアス社へと乗り込む。
その道中、私とゲイツ君はオシマイクラッシャーへと変身したスウォルツに苦戦するも、ゲイツ君は私のミライドウォッチによって誕生した奇跡のアーマーでスウォルツを撃退した。
―――しかし、エール達の前に現れた我が魔王の姿は……」


第66話 2019: 本当に望んでいる自分

この話は……そう。アナザーディケイドの戦いが終わり、大晦日まで後もう少しといった所の日の会話だった。

当時私たちは、『大晦日は家族で過ごしたい人の為に、今日のうちにみんなで会おうぜ!』的なノリで、一度ビューティーハリーに集まることになっていた。

 

「いや~もう、すごいよねこの漫画……最近の漫画ってこんな感じなのかな……?」

 

「主人公もそうだけど、他のキャラもすごい魅力的だよね~」

 

「私は少し苦手なのです……人が沢山死んでるから、あまり見たくないのです……」

 

「ネットによれば来年の2月あたりにアニメ化が決定してるみたいよ?」

 

「凄いな最近の漫画は……その内映画化されたらあり得ないくらいに大ヒットするんじゃないか?」

 

「いやいや、流石にそこまではいかないでしょ~?」

 

ソウゴ君達は漫画雑誌を手に持って、今流行りの漫画を読んでいた。

なんでもその漫画の舞台は近代ヨーロッパで、ヨーロッパに蔓延る吸血鬼によって家族を殺された主人公が、吸血鬼になって唯一生き残った妹を元の人間に戻すために、プロのデビルハンターに特殊な呼吸法を教わり、吸血鬼の親玉とその配下達を滅していく物語らしい。

ツクヨミの話を聞いたゲイツ君はその内映画化されるんじゃないかと言ってるけど、はなは流石にそこまでは行かないと思っているらしい。

 

「………さあや、少し良いですか?」

 

「?……いいけど」

 

すると突然ルールーに呼ばれ、そのまま席を外した私はベランダの方に出てルールーと横に並ぶ。

それにしても何だろう?なんか改まった顔をしているけど…

 

「……今日は星が綺麗ですね」

 

「??……うん、そうだね」

 

うん、まったく彼女の考えが読めない…!

初めて会った時よりはずっと分かりやすくなったと思っていたけど、今の彼女はまるで昔のルールーになったみたいで考えが読めない…!

どう考えても、星を見るために此処に呼んだとは思えないし…

 

「ソウゴにはいつ告白するつもりですか?」

 

「急ゥ!?」

 

いきなりド直球に質問してきたぁ!?いきなりすぎて変な声出ちゃったよ!本当に訳が分からないよ!

 

「………今はまだ」

 

「そうですか……」

 

「……」

 

「……」

 

……いや、なんか言ってルールー!?変に気まずい空気が漂っているからぁ!

 

「…………さあやは一体、何を迷っていると言うのですか?ソウゴが私に言った時の事を考えても、彼があなたの事を好ましく思っているのは明確……彼にフラれる事を警戒しているのなら、それは勘違いです。

さっさと告りなさい。というか告れ」

 

「突然の命令形!?」

 

「安心してください。もし仮に玉砕した場合は、眺めの良い崖の上で貴女の墓を建ててあげます」

 

「やめて⁉ 私の不安な思いを煽らないで!?フラれても私自殺とかしないから!

……っていうか、何でフラれること前提で話が進んでいるの!」

 

なんかいつもよりもルールーが辛辣で地味に辛い。

 

「…だったら、なんで彼に想いを告げないのですか?」

 

「……やっぱり、不安だからかな……」

 

「だから、ソウゴは貴女の事が――」

 

「そういう事じゃ無いの。私が彼に相応しい女じゃ無いって思うからなの」

 

「………どういうことですか?」

 

「……私がそう思い始めたのは、アナザーキバの事件からだった……」

 

――ソウゴ君の口から初恋の人についての話が出てきた時、私の心の中にはドロッとした真っ黒い感情…嫉妬心が溢れ出ていた。ルールーがソウゴ君と仲良くしている時もそんな感情が出ていたけど、あの時程ドロドロしてはいなかった。

何で私が初恋じゃないんだろうって、私にはあんな感情を出して貰った事なんて無いのにって思った。

そして初恋の人と再会した時、いつも一緒にいた彼が、私の傍から居なくなるって考えたら、呼吸も上手くできるかどうかも分からなくなっちゃった。

――だからかな……

 

「ソウゴ君の初恋の人――ユウコさんが死んだとき、私すごくほっとしたんだ……」

 

そんな告白をして、自虐的な笑みを浮かべる私を見ても、ルールーは黙って私の話を聞いていた。

 

「…最低だよね、私……

目の前で人が死んでいるのに、あんなにソウゴ君が悲しんでいるのに、そんな感情が生まれてるんだよ……?

だから私、ソウゴ君に何も出来なかった……励ましてあげることも、一緒に居てあげることも、出来なかった……」

 

「………」

 

「それなのに、貴女の口から、ソウゴ君が私の事が好きかもって聞いた時……あんなに嬉しかったのに、私はソウゴ君が考えている程いい子じゃないのにって思って……考えれば考える程、あんな事考えていた自分が嫌になっちゃって……ズズッ…それで嬉しさよりも、申し訳なさが出てきて……っ!」

 

自分の情けなさに思わず涙を流していると、目元に布の感触を感じとり、視線を上げるとルールーがハンカチで私の涙を拭っていた。

 

「うぐっ……ルールー?」

 

「……さあや、貴女はあの人に嫉妬していた事を、死んでほっとしていた事を最低と称しなしたが……私はそんな事ないと思います」

 

「………でも」

 

「そうやって色々思い悩むのは、貴女の悪い癖です。

そんな事言ったら、ソウゴを好きだって自覚した時から、彼の幼馴染である貴女を疎ましく思っていた私も同じです。

それどころか、貴女の消極的な性格を利用して出し抜こうと無意識に考えていた程です」

 

……そうだったの!?

 

「ですから、貴女はもっと誇るべきです。彼に好かれていることを」

 

「………ルールー」

 

「それに私は、彼に想いを告げることが出来ただけで満足です。

もし想いを告げる時が来たら、貴女は自分の事と、彼の事だけを考えてください。

女の子は、少し我儘な位がちょうど良い……と、この間パップルが言ってました」

 

「……うん……ありがとう。ごめんね、ルールー……っ!」

 

そう言って目から沢山涙を流していると、ルールーが自分の肩を貸してくれた。

そして私は、気が済むまで泣いた。自分の情けなさと罪悪感と一緒に、それでいてユウコさんへの後悔だけは心の中に残しながら。

 

 

 

 

ゲイツは自身とウォズ、二人の友情のアーマータイムにより誕生したウォズアーマーへとなり、スウォルツが変身したオシマイクラッシャーを撃破。取り込まれたアナザーディケイドウォッチも破壊した一方で、先へと進んでいたエール達は……

 

「そ、ソウゴ……」

 

「嘘でしょ……」

 

彼女達は今、目の前にいるジオウが本当にソウゴなのかと、疑いたい気持ちで一杯一杯だった。

 

「そこにいるのは、本物の時見ソウゴだよ」

 

そこへ、はぐたんの拘束している場所の隣へクライが現れると、現実を受け入れられない彼女らに向けて無慈悲にそう告げる。

 

「さぁ、時見ソウゴ。共に永遠の世界の為に手に入れたその力を……オーマジオウの力を!」

 

「……」

 

オーマジオウはクライの指示でエール達へと近づき腕を上げ、手を広げると、強烈な波動を発生させる。

 

『きゃあぁぁぁぁぁぁーーッ!』

 

エール達はなんとか、彼の攻撃に吹き飛ばされないように耐える。

しかし、その力はグランドジオウ、ミステリージオウとは比較にはならない強さを持つ。

まさに、最強にして最悪の魔王……オーマジオウそのものだった。

 

「あなたですね!ソウゴをオーマジオウとしたのは!」

 

「時見先輩を洗脳しているのですか!」

 

クライがソウゴを操り、オーマジオウにさせたのだと睨んだアムールとマシェリの二人が、怒りでその身を包みながら叫ぶ。

 

「違うよ……」

 

だが、オーマジオウの口から語られたのは『違う』と言う、静かな否定の一言だった。

それを聞いた彼女達は、彼の言葉を信じることが出来ず。遂には、その声が本当にソウゴのものだったのかと、自身の耳を疑い始めた。

 

「みんな……俺は望んでなったんだよ」

 

しかし、オーマジオウ――いや、時見ソウゴは、自ら望んでオーマジオウの道を選んだのだと、続けて無慈悲に答えた。

 

「望んだ……?

……ソウゴさん、何を言ってるの?わかんないよ……」

 

「言葉通りだよ。俺はみんなの未来を守る為になったんだよ……オーマジオウに」

 

アーラの問いに対して彼は、未来を守る為にオーマジオウになったのだと言い。それでもエール達は、みんなの為に戦ってきたあのソウゴがこの道を選んだと言う事実を、未だに信じられずにいた。

 

――だが彼の答えは、みんなと戦って来たからこそ辿り着いた、皆を幸せに出来る“たった一つの結論(conclusion one)”だと言う事を、彼女達はまだ知らなかった。

 

「私の未来を守る為……」

 

「それがそいつと一緒に、時を止める理由……?」

 

「そうだよ」

 

「ソウゴ君……」

 

「俺はみんながより良い未来を過ごせるように、永遠に守ってあげる。クライと一緒にね」

 

皆が本気で言っているのかと言う目で彼を訴えかけるが、あくまでもオーマジオウはクライと共に永遠の世界を作り、みんなを守ると気持ちを変えるつもりはないらしい。

 

「どうして!」

 

「アンジュ」

 

アンジュがみんなの前に出て、オーマジオウに近づこうとする。

 

「さあや……」

 

だがオーマジオウは彼女を見て躊躇いながらも、またしても衝撃波のようなものを発生させ、アンジュを吹き飛ばした。

 

「アンジュ!」

 

「大丈夫ですか?」

 

エトワールとアーラの二人が駆け寄ってアンジュを支えて、アンジュが吹き飛ばされるのを受け止める。

 

「うッ…ケホッ!………ッ、ソウゴ君!どうして!?オーマジオウにならないって、新しい未来を作ろうって!」

 

彼女はオーマジオウから受けたダメージで咳込みながらも、二人で誓ったあの約束を忘れたのかと訴えかける。

するとクライは、今の現実を受け入れようとしない彼女に呆れながら、彼の身に起きた真実を告げ始めた。

 

「それは、彼が絶望の未来を知らなかったからだよ」

 

「絶望の未来……」

 

「彼に、この先の未来を見せたんだよ」

 

 

それは、ここへエール達が突入する数刻前。

ソウゴは叫び声を上げ、トゲパワワが体から溢れ出し、ジクウドライバーからは赤黒い電流を発生させていた。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁーーーーっ‼︎」

 

そのまま叫び上げ続けた結果……ジクウドライバーは赤黒い電流とトゲパワワを注がれ、ベルトが変貌した。

 

「はぁ、はぁ……」

 

ソウゴは自分の身に駆け巡っていた苦しみが収まると、腰に巻いていたジクウドライバーがオーマジオウドライバーへと変貌していた事に驚愕する。

 

「やはり、君の運命はその姿になることを選んだね」

 

クライの声が聞こえたソウゴが慌てて見上げると、彼は笑みを浮かべていた。

それは、ソウゴがオーマジオウを選ぶのを見透かしていたようだった。

 

「時見ソウゴ、人は運命から逃れられない。

だからこそ、君が僕と共に永遠の世界を作るのも運命だったのだよ」

 

「運……命……」

 

これが運命なのだと述べると、クライはソウゴに近づき、手を差し伸べる。

 

「共に行こう。みんなにより良い未来を作ってあげよう」

 

――その時は、ソウゴはその手を取ればいいのか、それとも握ってはならないかわからなかった。

取ってはいけない事は頭ではわかっていたが、彼の心と体はその手を握ろうとしていた。

 

(………俺とクライの力……あんな未来を……見ないで済む……)

 

――通常、人が最も残酷になるのは、どんな時であろうか。

愉悦と快楽の為に、殺戮を繰り返す時か?

自身の利益のために、何も知らない他者を利用する時か?

目的の為ならばと、どんなに卑劣な手を使ってでも勝利をしようとする時か?

 

勿論、それもあるかもしれない。

だが人が本当の意味で残酷になるのは、自身のやっている事が正しい事だと思い込み、悪い事だと認識していない時、だとも言える。

 

今のソウゴは、正にそれを体現していた。

彼は、誰よりも民の事を想い、誰よりも仲間の幸せを願っていた。

それ故に、彼はその心の隙を、クライに付け入れられてしまっていた。

そしてクライの差し伸べる手を、残酷な運命に立ち向かう“勇気”を失って盲目になり、信義を見ることが出来なくなった彼は、その手で悪魔の手を掴もうとした―――

 

 

 

そして今の現状に戻り、ソウゴはオーマジオウへと変身し、エール達の前へと立ちはだかった。

 

「彼は答えを出し、彼はみんなに永遠の世界を僕と共に創る同士として、オーマジオウをになる事を決意した」

 

「そんな……そんなの嘘!ソウゴ君は、そんな事は思わない!」

 

「その通りです!ソウゴは時を奪おうなんて事を……」

 

「アンジュ、アムール……」

 

しかし彼女達は、どんなにクライが残酷な真実を言ったとしても、ソウゴは絶対に、時を奪って永遠の時間を作ろうなんて思わないと信じていた。

 

「……仕方ない。時見ソウゴ」

 

「………わかった…」

 

そんな叫びを聞いたクライが眉間に皺を寄せながらページを開くと、オーマジオウも頷く。

その時、エールの頭上にトゲパワワのエネルギーが集まった。

 

「⁉︎」

 

トゲパワワのエネルギーはエールの周囲を囲み、鳥籠のような檻を作って彼女を捕らえた。

 

「エール!」

 

「お姉ちゃん!」

 

アーラがエールを助けようと飛び込むも、その檻の持つトゲパワワに簡単に弾き返された。

そしてオーマジオウが掌を広げると、エールの捕らえれた檻を自分の後ろへ移動させる。

 

「っ⁉︎ ソウゴ……」

 

「……」

 

「彼は僕の頼みを聞いてくれただけだよ」

 

「えっ?」

 

「僕は、君を救いたいだけだよ」

 

「私を……?」

 

クライはエールを救いたいと願っているのか、その為にオーマジオウは自分の後ろへ移動させたのだと話す。

 

「時見ソウゴ。彼女達を」

 

「うん……」

 

オーマジオウは残るアンジュ達にジリジリ近づいていくる。

 

「みんな!」

 

「君はそこで見ていなさい。理想から程遠い現実を…」

 

クライがそうエールに言うが、アンジュ達は目に見えてオーマジオウと戦うことに戸惑いを見せていた。

 

「……やるしかないの……」

 

「ですが……」

 

オーマジオウとはいえ……ソウゴは自分達の仲間であり友。彼女達はその友達と戦うことなんてできず、エトワールとマシェリも思わず躊躇してしまう。

 

「ソウゴさん……」

 

「ソウゴ……」

 

「……ソウゴ君……私は……」

 

「ソウゴ……やめて……」

 

アーラもアムールもアンジュも、檻に閉じ込められているエールも、ここにいる者達はクライを除き、オーマジオウ――ソウゴと戦うのに躊躇いがあった。

 

だがそんなの関係ないと言わんばかりにオーマジオウは手を広げると、そこから大量の蝙蝠の群れが現れた。

その蝙蝠はアンジュ達へ放たれる。

 

「リコーダー・ステッキ!ミライクリスタル!」

 

リコーダーステッキを召喚したアーラは、すぐ様ミライクリスタル・ライムグリーンをセットした。

 

「心のトゲトゲ、吹き飛んでであげる!」

 

ボタンを押して吹くと無数の緑色の小鳥を生み出していく。

 

「プリキュア!バードアタック!」

 

アーラが生み出した小鳥がオーマジオウの放った蝙蝠へ向かって行った。

 

「ッ!!そんな⁉︎」

 

しかしアーラの生み出した小鳥は、オーマジオウが放った蝙蝠達に喰い殺されるかのように、簡単に消されてしまった。

 

「いやぁぁぁぁ!」

 

「ことり!」

 

蝙蝠達はアーラを襲い、彼女への攻撃が終わるとアーラは倒れてしまう。

 

「お、お姉……ちゃん」

 

「ソウゴ!」

 

今度はエトワールがオーマジオウに立ち向かい、パンチを繰り出そうと腕を伸ばす。

 

「っ⁉︎」

 

しかし、エトワールのパンチはオーマジオウには当たらず、見えない壁のようなものに遮られた。

 

「はぁ!」

 

彼に触れる事すら出来ぬエトワールに、オーマジオウの力を込めた右腕から放たれたパンチを打ちかます。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

「ほまれ!」

 

エトワールがやられると、今度は上からマシェリとアムールがツインラブギターを構えていた。

 

「時見先輩!」

 

「ソウゴ!もうやめてください!」

 

二人がツインラブギターからハート型のエネルギーを放つ。

 

「ふぅ!」

 

だが、オーマジオウはそんな“豆鉄砲”を難なく片腕で跳ね返す。

 

「そんな⁉︎」

 

「やはり……ダメですか……」

 

アムールはオーマジオウの力をわかっていたが、まだいつものソウゴならもしかしたらと思い放った。そして結果は大外れ。

オーマジオウは反撃に出る為に、マシェリとアムールに向けて金色エネルギーの球体を飛ばし、二人に放つ。

 

「マシェリ!アムール!」

 

「えみる……ルールー……」

 

捉えれているエールは、自分は見ている事しかできないのかと責めた。その上、友達がみんなを傷つけている姿を、その目に焼き付ける事しか出来ない事実が一番耐えられなかった。

 

「ソウゴ君!やめて!こんなのソウゴ君……じゃない!」

 

アンジュはいつものソウゴに戻って欲しいと呼びかける。

 

「俺は……みんなを……助ける……だから時を止める……俺は……みんなを……」

 

しかし今のオーマジオウは、まるで自身に暗示でも掛けているかの様に、同じ言葉を呟き続けており。アンジュの声など、まるで聞こえはしなかった。

 

「……」

 

アンジュはオーマジオウにメロディソードを向け、それを見たエトワールとアムールは思わず声を上げた。

 

「アンジュ!」

 

「アンジュ………」

 

「フェザ――」

 

『さあや!』

『絶対に……壊させない……

ここは、アンジュの……さあやの思い出が詰まった大切な場所だから!』

 

「―っ…!」

 

アンジュがフェザーブラストを放とうするが、彼女はその時、ソウゴと一緒にいた幼い時からの思い出が頭に浮かぶ。それにより、彼に攻撃することに戸惑いが生まれた。

――だがそもそも、オーマジオウがたった一人の少女が放つで有ろう“貧弱な技”を受けて、その装甲に傷をつける事は出来るので有ろうか?

 

答えは――否。

 

黒と金の素材で構成された、呪術的な力であらゆるダメージを萎縮させる機能を持つ絶対防御の装甲を身に付けているオーマジオウの前では、いくら0.1程の攻撃を与えたとしても、結局はゼロでしかないのだから。

 

(………できない…!)

 

それを抜きにしたとしても、アンジュは大切な人を傷付ける事など出来ず、メロディソードを下ろしてしまう。

だがオーマジオウはそんな苦悩を抱く、幼馴染のアンジュにすら容赦なく衝撃波を放ち、彼女を吹き飛ばした。

 

「さあや!」

 

オーマジオウによりアンジュ、エトワール、マシェリ、アムール、アーラの五人は倒れてしまった。

 

「つ、強い……」

 

「これがソウゴ……」

 

「私達の……力が……」

 

「何一つ……通用しません」

 

「ソウゴ、君……」

 

オーマジオウの力を前に、プリキュア五人の力は何一つ通用しなかった。

いや、この力の前には、自分達の覚悟なんてものは、何も意味のないものだと思わせていた。

 

それは、まさしく天災。

止まらぬ侵害。

類稀に見ない規格外。

甚大なる被害は避けられぬ自然災害の如く、圧倒的な力の差を持つ“理不尽”を前にした人々は、どれだけの恐怖を抱き、いつ来るか解らない人災に怯え、頭を垂れて平伏して来たのだろうか。

そしてアンジュ達もまた心の奥底で恐怖心を抱き、その心と体に傷を刻み付けていた。

 

「未来……ここで止め……永遠の幸せな未来を創る……」

 

オーマジオウがまたしても同じような衝撃波を放とうとする。

その時……

 

「アッハッハッハッハ!待っていたぞ!この時を!」

 

「スウォルツ……ッ」

 

そこへ、ゲイツに敗れても尚しぶとく生き残り、変身解除された時にドサクサに紛れてあの魔法陣に潜り、ここまで追いついてきたスウォルツが現れた。

 

「これでいい。ふぅん!」

 

スウォルツは手から光弾を作り出し、その魔法陣を破壊した。

 

「これで、あの二人はここへは来られない!」

 

ゲイツとウォズが追いかけられないように魔法陣を破壊した彼は、オーマジオウの方を振り向く。

 

「この時を……時見ソウゴ!」

 

スウォルツにとってもこの姿へジオウになったのは、長年待っていた姿である。

 

「お前がオーマジオウとなる、瞬間を……お前を見つけたあの日からな!」

 

あのバスでソウゴを見つけ、試練を与え合格した。あの時から、今日までに何度も何度も追い詰めて、遂にオーマジオウへと変身した。

 

「今こそオーマジオウの力をもらうぞ‼︎」

 

スウォルツは手を伸ばすと、自分とオーマジオウとの間にエネルギーを流すパスのラインを作り出し、自身にその力を流し込む。

 

「素晴らしい力だ! この力さえあれば、俺は妹を凌駕できる!真の王位を継承する事ができる!」

 

オーマジオウの力が自分の体に流れていくのを感じ、力が満ちていくのに興奮していき、これで自分の計画が完成したと痛感した。

しかし―――

 

「うっ……ぐわっ……!」

 

スウォルツがオーマジオウを繋げていたエネルギーの吸収ラインがオーバーヒートを起こし、空気の過剰注入によって風船が破裂したかのように破壊された。

 

「な、何故……」

 

それどころか、オーマジオウの力を吸収した筈のスウォルツにまでダメージがあった。

 

「スウォルツ。君如きが彼の力を奪えるわけない」

 

「なっ……」

 

クライ曰く、彼が自身の体に受け取るには、オーマジオウの力は余りにも強大過ぎた。

だからスウォルツは、その力を自分の体では処理出来なかったのだ。

 

「それと、ここで君にクライアス社、社長として宣言しよう。

スウォルツ……君はクビだ」

 

スウォルツはクライの口から聞こえた……もうお前は用済みだという一言に、彼の罅だらけのプライドが再び大きく傷つけられた。

 

「……く、クライィィィィーーーッッッ!お前ぇぇぇぇぇぇ!」

 

自身を見下すクライに怒りのまま攻め込もうとするが、オーマジオウがスウォルツの前へと現れた。

 

「っ⁉︎」

 

オーマジオウはスウォルツを自らの力で、無理矢理宙へと上げる。

 

「お前如きが……俺の力を受け止めきれるわけないだろ!俺の力は、全てのライダーの力だ……ッ!」

 

そう語るオーマジオウの周りに集めたライドウォッチだけじゃなく、他のライダーのライドウォッチまでもが現れ、その全てがオーマジオウは体へ注がれた。

 

「全ての……ライダーの力だと……あぅ!」

 

いきなりスウォルツの体が、大きな拳で握られているかのように強く締め付けられた。

 

「お前のような……お前のような奴に……!」

 

オーマジオウはドスの効いた声で、スウォルツに対する怒りを開放していくかのように増大させ、彼の体を徐々に締め付けていく。

 

「あぁぁ……あぐっ!」

 

「ソウゴ君……いや……やめて」

 

このまま締め付けると流石のスウォルツも限界、下手をすれば命すら危いと察知したアンジュがやめる様に言うが、彼の耳にはまるで届いていなかった。

 

「やめろ……やめてくれて……

わかった……お前の両親を殺した事は……謝罪する……だから……」

 

自身の体から響き渡る骨の軋む音と内臓を絞る様な音を聞き、自分の命が危ういと察知し、プライドを捨てて命乞いをするスウォルツにオーマジオウは……

 

「……何言ってるんだ」

 

「…っ⁉︎」

 

「お前は……これまでにそんな風に泣いた人達の気持ちを、そんな事も知らずに、何人もの人生を弄んだ……」

 

「……あ…あぁぁ…ぁぁぁ……」

 

驚異的な殺意に塗れたオーマジオウの言葉で、スウォルツは体から流れる恐怖の感情に、一度ズタズタに引き裂かれたプライド諸共、押しつぶされそうになった。

 

「お前の言葉を借りるならば……お前の意見は求めん!」

 

さらに手を強く握り、スウォルツの体を締め付ける。

 

「うわぁぁぁぁぁーーー!や、や、やめてくれぇぇぇぇーーー‼︎」

 

スウォルツはやめてくれと叫び、涙を流しオーマジオウに必死に頼むが、オーマジオウは止めるような素振りを見せようとはしない。

そんな姿にプリキュア達は、深海の様に深い所に沈んでいた筈の恐怖心が浮き出し、心の奥底から滲み出す怯えを見せた。

 

「これが……」

 

「時見先輩なのですか……」

 

「……ソウゴ……そのはず……」

 

「ですが……これでは、オーマジオウ……」

 

「ソウゴ君……もう、やめて……」

 

アーラとマシェリ、エトワール、アムールがあまりの事に目を離せないでいる横で、アンジュは感じていた。オーマジオウが――ソウゴがスウォルツに向けている憤怒と憎悪は、まるで両親を奪った彼に復讐をするかのような、そんな憤りしか感じられぬ想いをぶつけているかの様に。

 

「あぁぁ……ぁ……」

 

スウォルツは長く締め付けられ気を失う。

それと同刻、オーマジオウの腕に光弾のようなものが放たれ、彼はそれを防ぐ為に拘束していたスウォルツを解放した。

 

「そのくらいにしておけ。そいつには、始末する価値などない」

 

するとそこへ、オーマジオウ達の前に灰色のカーテンが現れた。

 

「……お前は……」

 

「門矢士……海東大樹」

 

そこに現れたのはネオディエンドライバーを構えている海東大樹。その後ろには、マゼンタカラーの二眼レフカメラを首にかける門矢士がいた。

 

「ゲイツ!」

 

「ウォズさん!」

 

彼の後ろには、数十分前までスウォルツを抑えていたゲイツとウォズの姿もあった。

 

「大丈夫ですか?」

 

「あぁ……あの入り口が消えた時に、門矢士と海東大樹が俺達を……」

 

入り口をスウォルツに消された時に、門矢士と海東大樹が二人を見つけたらしく、ここまで連れてきたのだ。

 

「……海東」

 

「わかってるよ士。こいつは僕が処理しておくよ」

 

オーマジオウに解放されたスウォルツを海東が回収する。

 

「そいつをどうするんだ?」

 

ゲイツはスウォルツを何処へ連れて行こうとしているのかを尋ねる。

 

「こいつには、一生罪を背負わせないといけないからね。その為にふさわしい場所へ連れて行くだけよ」

 

海東は笑ってそう答えると再びオーロラカーテンを作り、スウォルツを連れ去って行く。

 

「さって……」

 

海東とスウォルツがいなくなったのを確認し、士はオーマジオウとその頭上にいるクライを見つめる。

 

「ソウゴ……お前……」

 

「…我が魔王」

 

ゲイツとウォズはソウゴの姿に言葉が出なかった。いや、何故その姿になったのだと言わんとばかりに見つめる。

 

「門矢士。君と海東大樹がここにいるということは、外の方に現れたのは彼かい?」

 

「外……」

 

「ハリーさんやツクヨミお姉ちゃんの方を……」

 

「彼って誰なのですか?」

 

クライが言う、外にはハリー達と一緒に誰がいるのかとエトワール達は疑問視する。

 

 

 

その頃、外で戦っていたハリー達の前に現れた人物は……

 

「はぁぁ!」

 

強烈な剣技でオシマイダーや融合した怪人達を次々と浄化させている。

 

「なんですか……」

 

「一体誰が……」

 

チャラリートもダイガン、一体誰がこれだけの数を浄化しているのかわからなかった。

 

「なんや……うわぁ!」

 

「ハリー!」

 

油断したところにオルタナティブとアークオルフェノクがハリーを吹き飛ばした。

ツクヨミ、リストル、ビシンは駆け寄るとそこへ、ン・ガミオ・ゼダ、バッファローロード タウルス・バリスタ、オルタナティブ、ドラゴンオルフェノク、アークオルフェノク、パラドキサアンデット、フォーティーン、牛鬼が同時に襲いかかる。

 

だがまたしても、彼らを切り裂いたかのように剣技が放たれた。

 

「「「「オシマイダ〜!オシマイダ〜!」」」」

 

それにより、怪人達が一瞬にして浄化された。

 

「大丈夫……?」

 

怪人達が消えるとそこに、人の影のような姿が見えた。

その姿はボディは全体的に灰色で、右の複眼は蝙蝠の羽をモチーフ、左の複眼は鳥の羽をモチーフとなっており。さらに腰に巻いている、歯車とレバーの付いた黒いベルトに気づく。

 

「あなたは……」

 

「桐ヶ谷晴夜……」

 

「間に合ったみたいだね」

 

彼は門矢士と海東大樹と同じようにクライアス社を探り、プリキュアを陰から守っていたもう一人の仮面ライダービルド……桐ヶ谷晴夜である。

そして、今のビルドは晴夜の持つ最強のビルドの姿……光と闇の二つの力を持つ、ビルド・マジェスティロードフォーム。

 

「リストル、ビシン……」

 

ビルドは仲間となっているリストルとビシンを見る。

その時、後ろからサジタリアス・ノヴァ、ワイズマンがリストルとビシンの背後に現れたのが見えた。

 

「どけ!」

『ロイヤル!フルボトルスラッシュ!』

 

光のロイヤルボトルのエネルギーを纏うフルボトルブレードの力でフルボトルブレードを振り込み、サジタリアス・ノヴァとワイズマンを浄化させる。

 

「君……」

 

「さぁ、行くよ」

 

ビルドは一人先に飛び立ち、再び怪人達へ向かう。

すると、今度は巨大怪人のフォーティーンが攻撃を開始。

 

「はぁぁ!」

 

フルボトルブレードを握り締め、フォーティーンの攻撃からみんなを守る。

 

 

 

その様子をクライアス社内部にて、クライが外の映像で晴夜が巨大な怪人達から必死にみんなを守ろうとしているのを見た。

 

「桐ヶ谷晴夜……まだ彼は無意味な事をしているのか」

 

無意味な行動だと、クライが呆れてるかのように呟く。

 

「おい」

 

「……」

 

「一つ教えておく。俺とあいつがやってる事に、無意味な事はない」

 

士は自分と今外で戦っている晴夜、そして自分達がしてきた事に無意味は無いと告げる。

 

「……ソウゴ……」

 

「……我が魔王……⁉︎」

 

「――ウォズ……祝え」

 

「…は?」

 

オーマジオウはゲイツと一緒に居たウォズに祝えと命令し、命令された本人は素っ頓狂な声を出して驚く。

 

「祝えと言っている……!」

 

未だ戸惑うウォズに向け、もう一度祝えと促すと、ウォズはゲイツの肩から降りて本を取り出し構える。

 

「……祝え!時空を超え、過去と未来をしろしめす究極の時の王者!その名もオーマジオウ!歴史の最終章へたどり着いた瞬間である……が!」

 

祝辞の最後にそう言ったウォズは本を仕舞い込み、代わりに取り出したビヨンドライバーを装着する。

 

「……正直、残念だ。

君なら、私の知らない未来を作ると思ったのだけどね、我が魔王。このような形で君をあまり祝いたくない!」

 

なんと彼は、オーマジオウとなったソウゴに忠誠を誓うことなく。それどころか反逆の意思を見せ、自身の本音を――今のソウゴには祝いの言葉を述べたく無いと語り出す。

 

「ウォズ」

 

「あのウォズが祝いたくないなんて…」

 

「初めてなのです」

 

ゲイツはそんなウォズに口元を緩わせ、エトワールとマシェリは祝いたくないと言うウォズに驚いた。

 

「…ソウゴ!何故、オーマジオウを選んだ!」

 

「……それが、みんなの為だと」

 

「……なら、俺がお前を意地でも……」

 

「待て」

 

ゲイツはかつてソウゴと交わした約束を守らんと足を動かすが、士が待てと制止してゲイツ達を止める。

 

「魔王は俺が始末する。お前らは、あそこの社長をなんとかしろ」

 

「なんだと……」

 

クライとの交戦を促しながらネオディケイドライバーを装着し、ディケイドのライダーカードを取り出した。

 

「変身!」

 

そう叫ぶとカードを腰に装着したドライバーに差し込み、ディヴァインサイドハンドルの部分を操作する。

 

『KAMEN RIDE!DECADE!』

 

出現した影が一人となり数枚のプレートが現れると、その頭部を縦に貫きはめ込まれ、黒とマゼンタの仮面ライダーにして、世界の破壊者……仮面ライダーディケイドとなった。

 

「いいや!俺が!」

 

『ゲイツ!ゲイツマジェスティ!』

『ギンガ!』

 

ゲイツとウォズはドライバーにウォッチを装填し、ドライバーを操作する。

 

『マジェスティタイム!仮ー面ーラーイダーー!Ah~!ゲイツ!マジェーースーティー!』

『投影!ファイナリータイム! ギンギンギラギラギャラクシー!宇宙の彼方のファンタジー! ウォズギンガファイナリー!ファイナリー!』

 

二人はゲイツマジェスティ、ギンガファイナリーへと変身し、オーマジオウへと向かって行く。

 

「ふん!」

 

「「うわぁぁぁぁ!」」

 

だがしかし、ゲイツとウォズはオーマジオウによって簡単に吹き飛ばされてしまった。

 

「ヤァァァ!」

 

今度は、ディケイドがライドブッカーで攻撃に出るが、簡単に受け止められる。

 

「門矢士。今の君の力では無駄だよ」

 

スウォルツに奪われたもう半分の力は、今はクライの持つマスタークライウォッチにある。そう言わんばかりに、ディケイドに自身のマスタークライウォッチを見せつけるが、本人は然程動揺した様子を見せなかった。

 

「ふん。ハンデには丁度いい!」

 

「士さん!」

 

「……コイツらは今、手が空いてないみたいだからな…

HuGっとプリキュア、お前らが社長を何とかしろ!」

 

「は、はい!」

 

「門矢さん……ソウゴ君の事、お願いします!」

 

ディケイド達にオーマジオウを任せ、アンジュ達はまずは閉じ込められたエールを救う為にクライへと向かう。

 

「門矢士!」

 

「我が魔王は、私達の家臣の出番だ」

 

ゲイツとウォズもまた、オーマジオウを元のソウゴに戻す為、もう一度戦いに挑む。

 

 

 

その頃、外の方では…

 

「はぁぁ!」

 

『ゴリラ!ダイヤモンド!』

 

今も尚オシマイダーと交戦していたビルド、今度はゴリラボトルとダイヤモンドボトルを差し込む。

 

『ベストマッチスマッシュ!』

 

ブレードを横に切るように振ると、そのブレードの一撃はゴリラボトルの力でフォーティーンを切り裂く。そして無数のダイヤモンドが猛オシマイダーへ放つ。

 

「そらぁぁぁぁぁぁ!」

 

ハリーもジカンチェーンブレードとジカンチェーンで攻撃を繰り出し続け、見えない斬撃を飛ばしたり、チェーンを鞭の様に叩きつけたりしながら怪人達を次々と爆散させる。

 

『ヘリテージタイムフィニッシュ!』

 

今度は背中のジェットから火を吹かせながらライダーパンチで突撃し、全員勢いで吹き飛ばす。

 

「はぁぁ!」

 

怪人とオシマイダー達が起き上がろうとすると、ツクヨミが奴らの背後を既に取っていた。

 

『フィニッシュタイム!』

 

ドライバーを回すと、ツクヨミの右足に光が集まって一撃必殺の技が放たれようとしていた。

 

『タイムジャック!』

 

月のエフェクトと共にツクヨミのキックが放たれ、オシマイダー全員を浄化させる。

先まで押されていたが、少しずつではあるがオシマイダーや怪人の数が減ってきた。

 

(この調子なら……行ける)

 

このままならこっちが有利なると考えたビルドだったが、その時…

 

『ヌウォォォォーーー!』

 

『⁉︎』

 

海に浮かぶクライそっくりのオシマイダーが雄叫びを上げる。

すると頭上から稲妻が発生し、戦っていた彼らに降り注がれた。

 

 

 

オーマジオウの周りには、多くの武器が破損して散らばっていた。

 

「はぁ、はぁ……ゲイツマジェスティの全武器が、通じない……」

 

散らばっていた武器は、ゲイツがゲイツマジェスティの力で呼び出した武器。

だがその全てを出しても、オーマジオウには何一つ通用しなかった。

 

「くぅ……これは間違いなく、オーマジオウの力……」

 

「ちっ、面倒な事してくれたな……」

 

ウォズとディケイドの二人も、オーマジオウの力に何度も返り討ちにされていた。

 

「ゲイツ……ウォズさん……門矢さん」

 

その光景を黙って見ている事しか出来ないエールはこれ以上、ソウゴが仲間を傷つける姿を見たくなかった。

するとそんな彼女の心情を察知したのか、クライが本のページを開く。

 

「希望を持つことは残酷。

望まぬ未来に、人は歩みを止めてしまう」

 

クライがそう語りながら、周りに未来へ怯えて絶望した人の姿を見せる。

 

「負けない!」

 

アンジュとエトワールはクライへ飛び込む。

 

「バリアが……」

 

だが二人の攻撃はクライが作り出したバリアに阻まれた。

 

「かわいそうに……君達の戦いは無駄なんだよ」

 

「そんなことない!」

 

アンジュとエトワールが自身達を哀れな目で見つめているクライから離れ、着地する。

 

「これが、君達の守ろうとしている人間の姿だ」

 

クライはトゲパワワで触手のようなものを生み出した。

 

『ッ⁉︎』

 

「アンジュ!エトワール!マシェリ!アムール!アーラ!」

 

それでアンジュ達を捕えると、その触手にトゲパワワを溢れさせ、木へと変化させた。

 

「なにっ…」

 

「そんな……」

 

クライに捕らわれたアンジュ達を見てゲイツが驚き、まさかこんな事も出来るのかとウォズが眉間に皺を寄せていると…

 

「みんなを離して!」

 

「僕は君が救おうとしている姿を見せているだけだ」

 

エールがクライにみんなを離してと叫ぶ。だがその木から強力な電流が発生し、アンジュ達に強烈な痺れと痛み、電荷熱が襲った。

 

『ア"あぁぁぁぁぁーッ!!』

 

「やめてー!」

 

「貴様!」

 

「やめないか!」

 

ゲイツとウォズがこれを操作しているであろうクライを止めようと飛び込む。

 

「させない……」

 

「「なっ⁉︎ うわぁぁぁぁ!」」

 

それを阻止する為、オーマジオウの放つ衝撃波がゲイツとウォズを吹き飛ばした。

 

「君がわかったと言うまで続ける。

君達は、僕と彼には勝てない」

 

その選択は、余りにも非道だった。

只の女子中学生にとって、希望を微塵も感じることの出来ない究極の選択。

時を止める様に言えば仲間は苦しむ事は無くなり、彼曰く世界中の人々は幸福の時を永遠に過ごせる。

そしてそれを拒否すれば仲間はあまりの苦痛で最悪、その場で死に晒す事になってしまう。

 

二択の道があるように見せかけて、実質的にはたった一択しか無い悪魔の選択肢。

 

仮に奇跡が起きて仲間達は助かり、後述の選択を選んだとしても、オーマジオウとクライ……この二人がいる限りは絶対に勝てないと、その時エールは絶望感を頭だけでなく、体の端から端まで隅々によぎらせた。

 

「何故なら、僕はこの世界の結末を知っている」

 

なかなか決断を下さないエールを見たクライが、今の外の様子を見せる。

 

「⁉︎」

 

彼女が外を見ると、其処には何人も倒れている姿が映し出された。

 

『くぅ……』

 

立っているのも晴夜だけで、他のみんなはクライのオシマイダーから放たれた一撃が直撃した事で地に伏せられ、五人の仮面ライダーも変身が強制変身解除となっていた。

 

「これが現実だ」

 

「そんな……あ、あぁぁぁ……」

 

これが現実…?

どんなに希望を見致したとしても、最後は理不尽を前に膝をつき絶望。

どれだけ夢を求めても、膨大すぎる悪意に呑まれて挫折。

自分達よりも強いであろう者達ですら瀕死状態のこの状況が、現実?

 

そう、これが現実。

曲げられぬ運命。

神の愉悦の為の遊戯。

そんな光景を目に焼き付けた心優しい少女は、必ずこう思うであろう。

 

――もう見たくない……これ以上、誰かが傷つく姿は見たくない!…と。

 

「まだわからないなら仕方ない。ならば、無限の苦しみを続けよう」

 

鼻で溜め息を着いたクライが本のページをまた開く。

 

『アァァァーーーッ!』

 

またしてもアンジュ達に電流を流し、苦しめる。

 

「やめてー!」

 

エールが悲痛の静止を求めると、電流が流れるのが止まる。

 

「もう、やめて……」

 

「僕は、全ての苦しみから皆を救おうとしているんだよ」

 

「時を止めれば……」

 

「そうだ。君の悲しみは終わる」

 

……そうだ、最初から私が頷けば良かったんだ。

そうすれば、これ以上誰も苦しまないで済むのだと。

彼女は絶望感で、正常な判断が出来なかった。

…いや、今の彼女にとって、これが最高最善の判断だった。

 

「これ以上、みんなを苦しめたくない……だから……時を……」

 

そう言いかけたエールから、トゲパワワが少し現れ出した。

 

「何言ってるの!プリキュアは諦めない!」

 

「…っ⁉︎」

 

だがアンジュの裂帛の様な声が、彼女から溢れ出したトゲパワワを堰き止めた。

 

「……アンジュ……」

 

「ウッ……ウゥッ……」

 

アンジュが諦めないと叫び、引きちぎろとする。

 

『ハァーーーーッ!』

 

「みんな……」

 

アンジュ達プリキュアから放たれる光が、クライの生み出した触手を浄化させた。

 

「これからの人生。まだ色んな事がいっぱいあると思うし」

 

「こんなのなんともないのです!」

 

「私達は一人じゃない!」

 

「奇跡を信じて!奇跡を起こす!」

 

エトワールがそう言うと、マシェリ、アムール、アーラの三人がクライへと向かう。

 

「…剪定が必要だね」

 

クライが近づけさせまいと電流を放つ。

 

「雑草が大輪の花を枯らす」

 

「雑草という名の植物はありません!」

 

「どんな小さな花にも名前があるのです!」

 

「小さな花は大輪にも負けない強い花にだってなる!」

 

三人は躱し続け、遂にクライの前へ着いて攻撃に出る。

しかし、クライの前にはあのバリアが立ちはだかる。

 

「やめて!」

 

「ウッ……」

 

「⁉︎」

 

アンジュとエトワールがエールが捕らえられた檻をこじ開けようとする。

 

「わたしにできないことがあなたにはできます。

あなたにできないことがわたしにはできます。

力を合わせれば、素晴らしいことがきっと……」

 

「さあや……」

 

「はなの目指してきた野乃はなから逃げちゃダメ!はなの目指してきた野乃はなから逃げちゃダメ!」

 

アンジュとエトワールが、エールに諦めないで、逃げちゃダメだと叫ぶ。

 

「奇跡……逃げちゃダメ……」

 

奇跡と逃げない、二つの言葉にオーマジオウの心が揺れ動き出した。

 

「おい!」

 

そこへディケイドが前に現れ、彼へ呼び掛けた。

 

「お前……これがより良い……未来だと……?

お前はその未来とやらに怯えたから、オーマジオウになったのか?」

 

「……」

 

「俺はこれまで、多くの仮面ライダーに会ってきた。

その中には、何度も怯え悩んだ奴も沢山いた。

けど、奴らは未来がどうこうよりも今、この瞬間に生きている奴らの自由の為に守っていた。

それが未来へ繋がると信じているからだ!」

 

 

 

そして同時刻、外では晴夜も力を振り絞り再びボトルを取る。

 

「くぅ……」

 

「うぅ……」

 

「はぁ、はぁ……」

 

ハリーやツクヨミを筆頭とした仮面ライダーは変身解除し、トラウムら元クライアス社のメンバーも全員倒れていたが、晴夜はフルボトルブレードを支えとして起き上がる。

 

「まだ……」

 

「桐ヶ谷晴夜……君は……」

 

晴夜は諦めず立ち上がるのを見て、リストルは何故そこまでボロボロになっても動けるのだと思った。

 

「俺には、かけがえのない仲間や大切な人がいる!」

 

どうして戦うのか?

それは一緒に戦っている仲間、友達、家族……そして、彼が何よりも守りたい存在がいるからだ。

 

「だから、戦うんだ!守り続ける為に!」

 

「せやな……俺も守りたいものがあるんや!」

 

「私も……」

 

それに続くように、ハリーとツクヨミも共に起き上がる。

 

「私の事をみんなは守ってくれた。

だから、今度は私がここにいるみんなを守る!」

 

三人の守りたいと言う強い思いが、再び地獄の底から這い上がる力となった。

 

「「「変身!」」」

 

彼ら彼女らは仮面ライダービルド・ラビットロイヤル、仮面ライダーハリー・ギアヘリテージ、仮面ライダーツクヨミへと変身し、再びオシマイダーへと挑んでいく。

 

 

 

「だから、教えてやる!

仮面ライダーの歴史に、無意味なものは一つもない!」

 

ディケイドは負けじと更に押し込もうとする。

 

「…門矢士。君は何者なんだい?」

 

少し眉を顰めたクライは、目の前でオーマジオウと戦っている彼が何者なのか問う。

――彼が何者か?そんなの、決まっている。門矢士が何者かなんて。

彼は、全ての世界を巡り、物語を繋ぐ存在――

 

「――通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ!」

 

ディケイドの持つライドブッカーの剣が少しずつではあるが、押し始めた。

そこへウォズが上空へと飛び上がり、ジカンデスピアを構えていた。

 

「我が魔王!」

 

「っ!」

 

多少驚きながらも、ウォズが投げつけたジカンデスピアを、ディケイドを片手で対処しながら、もう一方の片手で宙で浮かせ止めた。

 

「どけ!門矢士!」

 

そこへ既に、ゲイツがディケイドの背後からジカンザックスを構えていた。

 

「目を覚ませ!ソウゴォォォォ!」

『ギワギワシュート!』

 

ゲイツのジカンザックスから矢が放たれるも、オーマジオウは自分の周りをエネルギーの盾を展開して防ぐ。

 

「なっ⁉︎」

 

しかし、ゲイツが放った一撃は、オーマジオウの展開したバリアを貫いた。

ディケイドとジカンデスピアの対応で両腕を塞がれたオーマジオウに守る術はなく、ゲイツのジカンザックスによって放たれたエネルギーが顔面へと直撃し、オーマジオウはバランスを崩した。

 

「ヤァァァ!」

 

隙が出来たのを見て、ディケイドのライドブッカーから放たれた一撃がオーマジオウの顔面に直撃。

数々の乱闘を生き抜き、あらゆる世界で培った戦闘経験を持ち、不死身のアンデットをも撃破したディケイドの攻撃により、オーマジオウのマスクが右側の上の一部を残し破壊された。

 

「「「「「プリキュアは……諦めない!」」」」」

 

同時に、五人のプリキュアのミライブレスからの光が周囲を照らし、クライを守るバリアを破壊した。

 

「ッ⁉︎」

 

驚いたクライは一瞬にして消え、ここから去った。

 

「はぁ、あっ……ぁぁぁ……」

 

一方で、マスクが破壊されたオーマジオウが膝を折る。

 

「ソウゴ君!」

 

アンジュがオーマジオウの前へと飛び込み、顔を近づける為に膝を折る。

 

「ぁ……ぁぁぁ」

 

破壊された仮面から出る彼の顔には黒い影があり、血の様に赤く濡れた目には光が一切映らず、とても苦しい表情だった。

それを見たアンジュは……

 

「んっ……」

 

「ッ⁉︎」

 

「「「「「えっ⁉︎」」」」」

 

「「なっ⁉︎」」

 

(またか……)

 

その時、アンジュの行動を見たエール達は突然の事に唖然として一瞬だけ頭が真っ白になり、仮面の下で口をあんぐりと開けるゲイツとウォズの横でディケイドは、以前にも似たような光景があったなと思い。同時に何故、この世界のライダーはプリキュアとこうなるんだと、若干死んだ目で呆れながら見つめていた。

そう……アンジュは仮面が壊れ、素顔で口が見えている彼にキスをしたのだ。

 

「……さあや……」

 

しばらくして、アンジュが離れてオーマジオウの素顔から苦しむ表情が消えると、そのまま彼に『ギュッ』と抱きつく。

 

「ソウゴ君!私は……ソウゴ君が好き!」

 

そして彼女は皆んなが見ている前で思い切り、オーマジオウ……いや、ソウゴへ告白をした。

 

「ソウゴ君!負けないで!未来を信じて!」

 

「未来……」

 

「未来は無限な可能性がある!

それでもし、絶望の未来が待っていても、ソウゴ君や私達はどんな未来だって輝ける!

自分を信じて!自分の中にある明日への信じる心を、思い出して!」

 

「……っ!」

 

―――無限な可能性……それを俺は、みんなと沢山見てきた。

これまでの戦いで、ダメかと思った時もあった。

それでも諦めなかったのは、未来の可能性を信じていたから。

 

(そうだ……俺達の未来は……まだ、決まってなんかいない……)

 

クライに見せられた絶望の未来……あれが俺達の進む未来。

でも、まだあの未来が来たわけじゃない。

そうだ。まだ、未来は……運命は決まっていない。

 

(俺は……俺は……)

 

ソウゴの体を纏っていたオーマジオウの鎧は、絶望で創られた呪縛の枷から解き放つかの様に体から外れ、変身前の姿へと戻した。

 

「ソウゴ君!」

 

変身解除し、倒れるソウゴをアンジュが支える。

 

「ん……さ……あや……」

 

「ソウゴ君……ううん。おかえりなさい!ソウゴ!」

 

初めて聞いた、今まで君づけでしか呼ばなかったアンジュの、初めての呼び方だった。

 

「ごめん……俺……」

 

約束を破ってみんなに手を上げてしまった事に罪悪感を感じていると、そこへボロボロのゲイツも駆け寄ってきた。

 

「ったく、世話をやかせやがって……ソウゴ!」

 

ソウゴの肩を担ぎ起き上がらせた。その時、ソウゴ達の周りにトゲパワワで作られた円が現れた。

 

「ソウゴ!」

 

危機感を察知したゲイツは、クライが作り出したであろうトゲパワワの円から、ソウゴをエールのところまで押し放った。

 

「ゲイツ……」

 

エールの下へ飛ばされたソウゴは、穴となったところへ急いでみんなを救おうと手を伸ばす。

 

「さあや!ゲイツ!」

 

「ソウゴ!」

 

それに対してゲイツは自分のジクウドライバーを投げると、ソウゴはそのドライバーを受け取る。

 

「ゲイツ!」

 

「ソウゴ!やって見せろ!お前が望む未来をっ!」

 

「我が魔王!君が目指す王の道を!君らしく戦うんだっ!」

 

「ゲイツ……ウォズ」

 

ゲイツとウォズ――ソウゴの謝罪には一切耳を貸さず、自分の本当になりたい未来を目指せと叫ぶ。

 

「何でもなれる……」

 

「何でも出来る……」

 

「輝く未来を……」

 

「抱きしめて……」

 

「負けないで……ソウゴとはなの二人なら、きっと……」

 

マシェリ、アムール、エトワール、アーラ、アンジュ――その事を教えてくれたから、きっとはななら、みんなの未来を取り戻してくれる。そう信じながら、二人を応援した。

 

「みんな……」

 

すると穴が消えてしまい、みんなの姿も見えなくなってしまった。

 

「やっと、僕達だけになったね」

 

クライが指を鳴らすと、周りが先までとは違ってソウゴが最初に捕らえられた花畑へとなった。

 

「クライ……」

 

立ち上がったソウゴは、腰に装着されたオーマジオウドライバーを外し、後ろへ投げ捨てる。

 

「……何故、棄てるんだい」

 

「あれは、俺が望んだ力じゃない!」

 

何故捨てるのか?何故ならあの力は、自分が本当に目指す未来への力ではないからだ。

 

「……俺は世界を……みんなの進むべき明日を守る!」

 

皆は未来への恐怖心で忘れていた、自分に最も大切な事を、思い出させてくれた。

それは自分がどうしても守りたいもの、みんなとこれからも一緒に歩んでいく未来を守る、その志を。

 

「それは、自分が王としてか?」

 

「違う!王としてじゃない!

俺は……一人の仮面ライダー……

仮面ライダージオウ!時見ソウゴとして戦う!」

 

今ここで彼と戦う理由は、王でもなければ、オーマジオウとしてでもない。一人の仮面ライダーとしてクライと戦う。

その為に、もう自分はあの力は使わない。

ただ暴力しか振るうことのできない力など、一生いらない。

 

『ジクウドライバー!』

 

ソウゴはゲイツから託されたジクウドライバーを腰へと装着。

 

『ジオウ!グランドジオウ!』

 

ジオウウォッチとグランドジオウウォッチを起動させると、そのまま二つのウォッチをスロットへと装填した。

 

『〈ポォォーン!パァァァァ!〉アドベント!COMPLETE!ターンアップ!〈ピィィン!〉CHANGE BEETLE!ソードフォーム!ウェイクアップ!カメンライド!サイクロン!ジョーカー!タカ・トラ・バッタ!3・2・1!シャバドゥビタッチヘンシーン!ソイヤッ!ドライブ!カイガン!レベルアップ!ベストマッチ!ライダータイム……! 』

 

ドライバーのロックを解除すると、地中から巨大な黄金の時計台が後ろに現れ、その周りには歴代ライダーの石像が出現した。

だが音声が鳴り続けると象の表層が剥がれ、20の仮面ライダーたちの姿が現れる。

 

「変身‼︎」

 

『グランドタイム!クウガ・アギト・龍騎・ファイズ・ブレイード!響鬼・カブト・電王!キバ・ディケイード!ダブル!オーズ!フォーゼ!ウィザード!鎧武・ドラーイーブ!ゴースト!エグゼイド!ビ・ル・ドー!

祝え!仮面ライダー‼︎グ・ラ・ン・ド!ジオーウ!』

 

ドライバーを回転させるとライダー達が黄金のフレームに取り込まれ、ジオウの身体に張り付くように装着されてアーマーが形成。開いたフレームからライダー達が現れるとそれぞれの決めポーズをとって固定され、最後に頭頂部にジオウが固定されると『ライダー』のインジケーションアイがセットされ、グランドジオウへと変身完了した。

 

「行こう。エール」

 

「うん!」

 

エールはジオウの手を取ってお互いに立ち上がり、マスタークライとの決戦を始めようとしていた。

 


次回!Re.HUGっとジオウ!

 

第67話 2019: トゥモロータイム!約束した未来へ!

 

 




おまけ

私は何かを得る時、必ず大事なモノを失う。

「ソウゴ君・・・王様になって・・・!貴方ならなれる・・・最高最善の・・・王様に・・・」
「ありがとう、ソウゴ君・・・・大好き、だよ………………」

「さあや……嫌だよ、さあや……目を覚まして、さあやッ!
・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

最初に失ったのは、家族と友と愛する者だった。
その喪失感は、14歳の少年にとってはあまりにも残酷だった。
彼が18歳以上なら、誤差はあるかもしれないが、もう少し耐えられたかもしれない。
しかし当時の私は14歳だったので、我慢できず精神が崩壊しかけた。

だが私は最高最善の王だ。私が王だったからこそ寸前の所で我慢できた。王じゃなかったら廃人になってた。

オーマジオウになって次に失ったのは、信頼だった。
私は“あの惨劇”をなんとか防ぐことが出来たが、私の民は大勢死んだ。
更に、あの惨劇は私の手によって起きたものだという情報が流れた。
だが確かにあれは私によって引き起こされたモノなので、私には否定する資格は無い。
当然、仮に私が違うと言っても説得力はゼロに等しいので、快く人々から怨まれた。

だが“とある時空”では多くの民が救われると知っていた為、私の時空でも同じ事が起きれば多くの民を救えるという希望があった。
出来なかった時は絶対に絶望するので、無意識に考えなかった。

それから私は、世界を救うために時空を破壊した。
“あの時空”と同じ展開にする為に、時にはもう一度人生を中学生からやり直した。
しかし中学生になった時、その時の事を忘れていたが為に違った行動を取ることが出来ず、またオーマジオウになった時、何も変わってなかった事に膝を付いた。
ならばと思い、私が悪役になる事で未来の者が過去に飛んで、若かりし日の自分を変えてくれる事を期待した。
危機感を覚えたおかげで初期より状況が良くなったと思ったら、失うものが増えたせいで逆に悪化した。というか若かりし日の私のせいで世界が滅びかけたので即破壊(リセマラ)した。
次に、未来に来て私を殺しに来た若かりし日の私に色々とアドバイスをしながらレベルアップを図った。しかし、転生者なる者が多数現れたせいで時空がめちゃくちゃになったので急いで時空を破壊した。
その次に、なんやかんやあってようやくあっちの世界に近い展開になったが、寸前の所で結局オーマジオウになってしまった。だがしかし、その時空の若かりし日の私は思う所があったのか、あっちから時空破壊をしてくれた。

そんなこんなで世界を救う為に時空を何度も破壊し、49周目あたりで失ったのは、友だった。

「オーマジオウ・・・貴方を止める!」

初めは敵対していたが、戦っているうちにどうゆうわけか、彼女は戦いに消極的になっていた。
そしてある日、彼女が私に問いかけてきた。

「……ねぇ、貴方はどうしてそんなに悲しそうなの?」

普段ならその問いに答えなかったが、魔が差した私はその少女・・・キュアトゥモローとお話をした。

オーマジオウになってから初めての話し相手が出来、私は摩耗してきた心に温かさを感じ始めた。そして私は、彼女にこの世界の真実を教えた。

「そんな・・・それじゃあ、貴方はずっと濡れ衣を着せられ続けたの……?世界を平和にする為に・・・」

彼女は、多くの人々を傷つけて来た私の為に悲しんでくれた。私にとってその事実は、枯れ始めていた涙を再び流してくれた。

だが良いことが起きれば、それに比例して悪い事も起こる事を、私は忘れていた。

この時空で未来の時を止めようと暗躍していた組織を自らの手で壊滅させた後、悲劇が起きた。
何と彼女は、この世界を最低最悪なモノにしたのは私ではなく、別の者によるモノだという事を教えた。
しかしそれを聞いた者達は、怒りの炎を燃やした。
当然と言えば、当然の出来事だった。この世界にとっての私は、怨まれ、妬まれ、憎まれるべき、皆が死を望んでいる存在。そんな存在を庇えば、当然皆から反感を買う。

彼女はこの瞬間から、世界を救うべき英雄から、精神異常な異端者となった。

皆から偽物だ、本物は何処だと言われ続けた彼女は、自身が守ってきた者達から鉄の雨を受けてしまう事となってしまった。

そして私が駆け寄った時には、既に彼女は手遅れだった。
オーマジオウの力で彼女の傷を癒したが、その命は既に燃え尽きる寸前まで来ていた。
彼女は最期の言葉を私に語り掛けた後、只静かに事切れていった。

その事実は、私の湧き始めた涙の泉を、再び枯らすものだった。
怒りに支配された私は、愚かにも向かって来た異常者共に鉄槌を下した。
そして全ての異常者共を残虐に皆殺しにした私は、時が止まり、誰もいない大地の上で、私に『みんなを止められなかった・・・ごめんね……』と謝罪する為に訪れた彼女の亡骸が居座る“時見ソウゴ初変身の像”の近くで、氷の様に冷えた頭を天に向け、ゆっくりと腰を下ろした。

これが“最高最善の魔王”の姿か・・・?
なすべき事も成し遂げられず、
皆から疎まれ、
民を虐殺し、
人の痛みを感じられぬ醜さ、
生き恥―――

・・・ごめんさあや。私はもう、頑張れない。

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