確か師範って呼んでたのはカナヲちゃんだけだと思うんだけど。
あと若干、というか結構しのぶさんがキャラ崩壊してます。……今更かな。
しのぶが湯あみをしている間、久遠は自分がこの世界に来てからこれまでのことを回顧していた。
突然大正時代の日本に来てしまい、そこでも変わらずヒモ生活をしていたら、なんかこの世界には鬼という存在がいることが発覚した。
伝承の妖怪とかそういうものではなく、実際に人を襲う脅威として存在しているらしい。
だが、それを聞いた久遠は特段動揺することもなかった。
まあ普通に暮らしてる分には大丈夫だろ、と思っていたからである。もっというなら「俺は大丈夫だろう」という謎の自信があった。
で、実際にこちらに来てから2ヶ月ほど経っても、特に襲われることもなく平穏なヒモ生活を送っていた。
そんな折に出会ったのが胡蝶しのぶという少女である。
パッと一目見た時に、町にいる他の女たちとは一線を画す美人であることに気付いた。
とはいえ寄生対象にするには幼すぎる。そう思ったのだが、彼女の身なりや佇まいを見るに結構良い所の御嬢さんであることが見受けられた。
じゃあとりあえずキープしておこう、くらいの軽い気持ちで声をかけ、いつものように宿に連れ込んでお茶をする。
時間が経ち段々と打ち解けていくと、彼女はぽつりぽつりと自分の身の上を語り始めた。
一言でまとめると、どうやら彼女は鬼に家族を殺されその仇討ちをしようとしているらしかった。
多少の同情は感じたが、有体に言ってしまえばそこまで興味はなかったので、久遠は適当にペラを回してその場は切り抜けた。
しかし、しのぶは次の日も久遠の下にやって来た。
そしてまた次の日も。
さらにその次の日も、次の日も……、時間の長短はあれど少なくとも一週間は毎日通い詰めてきていた。
そうして訪問回数が5度、6度、7、8、9、10……とどんどん増えていくにつれ、しのぶの久遠に対する態度もどんどん気安いものになっていく。
遂には部屋にいる間は常にベッタリとくっついてくるようになり、やれ頭を撫でろやら、やれお菓子を食べさせて欲しいだの、様々な要求をしてくるようになった。
久遠はエリートヒモ男なので、この程度のことでことさら面倒くさがったりはしない。ボディタッチを使ったコミュニケーションはヒモ男にとって必須のスキルである。
しかし、このままずっとこのような関係が続くのも久遠にとって旨味がない。現状、久遠の時間と労力だけを消費している形だからである。
久遠は胡蝶しのぶという少女を見極めるタイミングを伺っていた。
そして、その時は訪れた。
ある日、しのぶがとても言いづらそうな顔で「久遠は、その……お仕事はしないんですか?」と聞いてきたのだ。
ここだ、と思った。
久遠はすかさず困ったような苦笑いを作り、「働きたくないんだ」としのぶに告げる。
この発言で自分を切り捨てるならそれはそれでよし、しかし上手くいけば――。
しのぶはちょっとの間逡巡していたようだったが、やがて顔を上げ、久遠の目を見つめてはっきりと言った。
「じゃあ私があなたを養います」と。
その後、しのぶは実は鬼を殺すための組織『鬼殺隊』の隊士で、しかもその中の幹部である『柱』という存在であること、普段は蝶屋敷という所で傷ついた隊士たちの治療などを行っていることを教えてもらった。
そして、その蝶屋敷に来てそこに住んで欲しいと。
ついでに今繋がっている女たちとの縁は全部切れ、とも言われた。
しのぶの経済力と自分への好意は既に知っていたので全て言われた通りにし、今現在、久遠はしのぶのヒモというわけである。
――と、外を眺めながらそんな風にこれまでを回顧していたら、廊下をパタパタと走ってくる音が聞こえた。
「久遠! お風呂あがってきましたよ!」
「うん、でもまだ髪ビショビショだよ?」
「じゃあ、久遠が拭いてください!」
そう言ってしのぶは久遠に背中をもたれかけさせる。
そして久遠がしょうがないなと言って布でしのぶの髪を優しく拭う。いつものことだった。
しのぶの艶のある綺麗な黒髪を、櫛で梳かしながら布で水気を拭っていく久遠。
この世界には当然ドライヤーはないので、ある程度拭いたら後は自然乾燥に任せるしかない。しかし髪がぐしゃぐしゃのまま乾いてしまってはいけないので、こうして櫛で髪の流れを整えているのだった。
そんな久遠の丁寧な髪のケアに身を任せ、上機嫌な様子のしのぶ。
湯あみを終えた後は毎回これをしてもらっており、しのぶにとっては至福のひと時であった。
「はああぁ……幸せ……」
「大げさだなあ、ただ髪拭いて梳かしてるだけだよ」
「それで良いの。久遠とこうやってくっ付いて、久遠にお世話されてるのが良いんだから。……あー、任務の疲れもどこかに消えてっちゃう…………」
「……あのさ、しのぶ。ちょっとお願いがあるんだけど」
髪のケアをする手は止めないまま、おもむろに久遠は言う。
「んー? どうしたの?」
「ちょっとこれから町に遊びに行こうと思ってるだけど、お金くれない?」
日がな一日家でダラダラしてたくせに、仕事を終えて帰ってきた18歳の少女に対し金の無心である。控えめに言ってクズだった。
しかし、しのぶは全く逡巡することなく即答する。
「うん、いいよ。いくら?」
「25円*1くらいかな」
「分かった、じゃあ後であげるから……今はちゃんとこっちに集中してね」
「あはは、お安い御用だよ」
さらに追加サービスとばかりに久遠は空いた片方の手でしのぶの頭を優しく撫でる。
なでりなでり、と久遠の手が頭を行き来するたびにしのぶは蕩けた声を漏らした。
幸せいっぱいなしのぶに対して、久遠はといえば既にこれから町で何をしようかということを考えているわけだが……、まあしのぶが知らなければ全く問題のないことだろう。
すっかりへにゃへにゃの甘えモードに突入していたしのぶであったが、突如ハッと身体を起こして久遠を真正面から見据える。
「え、どうしたの?」
「久遠、町に出て遊ぶのは全然構わないですけど……間違っても女の子をひっかけたりしないでくださいね。久遠を信用してないわけじゃないですけど、何もしなくても女は久遠に寄って来るし、久遠もあんまり強く言わないので……。
もし万が一、女の子と遊んだなんてことがあったら…………一か月外出禁止です」
「…………気を付けるよ」
本当に気を付けなくてはならないな、と久遠は思った。
◇
神崎アオイが蝶屋敷に到着したのは日も若干暮れ始めた頃だった。
今日は薬の材料を少し遠方まで調達しに行ったため、こんな時間になってしまったのだ。
(今日はしのぶ様もいないから、早く帰ってお夕飯の支度しないと……あの3人だけに任せるのはまだ不安だし)
蝶屋敷の主である胡蝶しのぶは、任務の内容を考えるに少なくともあと1週間は帰ってこない。
しっかりした働き者とはいえ、すみ、きよ、なほの3人だけに料理を任せるという選択肢はなかった。ちなみにカナヲは最初から除外している。普段の手伝いの様子を見ても確実に料理は不得手であるからだ。
(まあ、もう一人いるんだけど……あの人が主体的に動いてくれるわけないし……)
アオイは、ここ1年ほど生真面目一徹の自分を悩ませているあの男の顔を思い浮かべる。
頼めば手伝ってくれはするのだが、あの人物が自分からテキパキ料理をする姿は想像できない。
毎日働きもせずに屋敷でダラダラと過ごすその姿は、この神崎アオイという少女にとってはなんとも受け入れがたいものなのである。
(まあ、嫌いな人じゃないけど……カッコいいし、優しいし、気遣いはできるし、それに……カッコいいし)
なぜ2回言ったのかはさておき、駆け足で帰路をたどったアオイは、想定していたよりも早く屋敷に到着した。
とりあえず薬の材料だけ部屋に置き、炊事場へ向かう。
真っ暗だろうと思っていたそこには、何故か既に明かりが灯されており、鍋からは料理の湯気がモクモクと――。
と、そこでアオイは気が付いた。
「し、しのぶ様!?」
なんと、まだ任務中のはずのしのぶが上機嫌で鍋をくるくるかき混ぜているではないか。
あまりの驚きにアオイは大声を上げてしまう。
側で手伝いをしていた3人娘やカナヲもびっくりしたのか肩を跳ねさせた。
「……あら? あ、ただいま帰りましたアオイ。それともおかえりの方がいいですかね」
「ちょ、え、なんでここにいるんですか? 青森で任務があるはずじゃ……」
「ああ、それですか。それはすぐに終わらせて全力で帰ってきました。久遠に会いたすぎたもので。おかげで想定より1週間は巻けましたよ……これも愛の力がなせる業ですね」
久遠、という言葉がしのぶから出てきたことでアオイのこめかみがピクリと動く。
久遠、久遠、久遠……1年前に突然「この人をこの蝶屋敷で住まわせます」と言って連れてきてからというものの、しのぶはずっとこうだった。
それまではもっと誰にでも分け隔てなく優しく、厳しい、そんな人だったのに。
……いや、今も別にそれ自体は変わっていない。
ただ、とりわけあの人に激甘すぎるだけだ。
一応、久遠がやって来て良かったこともあるにはある。
しのぶの表情が普段からずっと柔らかいものになり、それまでどんなに笑顔でもずっと見え隠れしていた、どこか疲れたような雰囲気もなくなったのだ。
その時は、「恋をすると人はこんなに変わるのか」とどこか他人事のようにアオイは思っていた。
「……それで、その久遠さんは今どちらに? みんなで食べるお夕飯ですし、お手伝いくらいはお願いした方がいいと思うんですが」
「久遠なら今町に遊びに行ってますよ。夕飯までには帰ってくるように言っていたので、そろそろだと思うんですが……」
「遊びに……? まさか、またお金をあげたんですか?」
「? そうですけど?」
その言葉と、さも不思議そうな顔をしているしのぶに、遂にアオイの感情は爆発した。
「お金ってそれ、1週間前もあげてたじゃないですか! 今回は一体いくら渡したんです!」
「今日は25円だったかしら」
「25っ……!? ちょっといい加減にしてくださいしのぶ様! 普通の人が立派に勤め人としてもらうお給金の半分近くをそんなにポンと渡すなんて!」
「ちょっとアオイ、声が大きいですよ。少し落ち着きなさい」
窘めるようなしのぶの言葉にさらにアオイの神経は逆なでされる。
あんたのせいでこうなってるんだ、とは流石に言わないが、全部ぶちまけたい気持ちでいっぱいだった。
「大体毎回毎回そんなお金を何に使ってるんですかあの人は! 町に出たって普通に過ごしてれば大してお金なんて使わないでしょう!」
「お金……最近は賭場で遊ぶのにはまっているとか聞きましたけど」
それを聞いてアオイはもう眩暈がしてきた。
「……あのですね、しのぶ様。はっきり言いますけど、そんな風に久遠さんがいっつもだらしなくて、公序良俗に反したことに傾倒しているのも全部全部、しのぶ様がそうやってあの人を甘やかすからなんですよ!」
「心外ですね、私が一体どれほど久遠を甘やかしてるっていうんですか」
「どれほどって、もう全部ですよ全部! 生活の全てに至って甘やかしてるじゃないですか!」
朝は寝たいだけ寝、みんなが洗濯やら薬の調合の手伝いやらで働いている時にものんべんだらりと本を読み(たまに手伝う時もある)、お小遣いをせびってはふらふらと町に出ていき賭け事に興じる。
その全てをしのぶは咎めることなく、全面的に許しているのだ。これが甘やかしでなくてなんというのだろうか。
「言っておきますけど私はこれでも結構久遠に厳しいですよ。甘やかすだけではよくないこともちゃんと分かっているので」
「はあ……じゃあしのぶ様は一体何をしてるんです?」
アオイが尋ねると、しのぶは得意げな顔で言った。
「まず、久遠が嫌いな物を残そうとしたときには厳しく叱ります。食は身体を形作る重要な要素ですからね。苦手な物でも栄養があるなら健康のために食べなくちゃいけません。
お金だって、久遠が2日連続でお小遣いを求めてきたときには無駄遣いはいけません、と叱ってから渡しました。
そして、久遠が女遊びをしようとしたときにはそれはもう強く叱りましたよ。あの時は2週間は外出禁止にしましたからね」
「…………」
アオイはもう呆れて何も言えない状態であった。
(最初のは完全に子どもへの教育だし! 2つ目は結局普通にお金あげてるし! 最後のはもうただの嫉妬じゃない!)
ふつふつと溢れ出る怒りを何とか抑え込み、ふーと息を吐き出してからアオイは言う。
「しのぶ様、はっきり言ってしのぶ様のやり方は全く久遠さんのためになりません。それではただあの人は堕落していくだけです。しのぶ様は人を教え導く立場にいるんですから、もっとあの人のことも正しい方向に導いてあげないとダメなんですよ」
「あら……ならアオイはどうすればいいと思っているんですか?」
「まず、好きな時間に寝て好きな時間に起きるのは駄目です。叩き起こしてでも規則正しい生活をさせるべきです。そしてここに住んでいる以上この屋敷の雑務は手伝わせるべきだし、お金は町で使う最低限の分を渡せばこと足ります。
私たちが生活で普通にしていることと同じことを、彼にはさせるべきなんです。無理やりにでも」
アオイがそう言い切るとしのぶは困ったような顔をする。
「うーん、でも久遠を無理やり叩き起こすなんて……そんな可哀そうなこと……」
「別にしのぶ様がやれないのなら私がやりますので問題ありません」
「…………今、なんて言いました?」
「しのぶ様が厳しくできないようであれば、私が厳しくしますと言ったんです。ああいうだらしない人には本来、私のような人間の方がいいんです。ちゃんと指導して真人間に戻すのでご心配なく」
そう言い放ちながら、アオイはすでにどうやって久遠の性根を叩き直そうか既に計画を練り始めていた。
(……あの人だって、そういう所をきちんとすればもう完璧なんですから、うん、やっぱり私がやった方がいい)
小さくうんうんと頷き、明日からの決意を固めていると、目の前のしのぶがぷるぷると震えながらアオイを指差していた。
「つ、つ、ついに馬脚を現しましたねアオイ! そうやって久遠に近づく算段なんでしょう!」
「ば、馬脚ってなんですか! 私は純粋にあの人のことを案じてですね……!」
「私はこの前見ましたよ! 『アオイの作る御飯はいつも美味しいね、ありがとう』なんて言われながら頭を撫でられていた時のアオイのあのだらしない顔を!」
「ちょっ……! なんでそんなものを見てるんですか! しかもだらしない顔なんてしてません!」
そうだ、別にそんな顔はしていない、とアオイは思う。
自分の作る料理を褒められればうれしいし、多少は喜んでいたかもしれないが、だらしない顔などと言われるのは心外だった。
「いーえ、してました! その後もしばらくニヘニヘと笑って上機嫌だったし、その日のお夕飯は気持ち久遠の分を多くしていたような気もします!」
「それは完全に気のせいです! ……もうっ! そうやってしのぶ様があの人のこととなると、急におバカになってしまうから心配なんですよ! やっぱりあの人は私が矯正してあげないとダメなんです!」
「お、おバカって……そんなことありません! 久遠の教育は私がやります! 久遠の側にずっといられる立場はいくらアオイとは言えど譲りませんよ!」
お互いに啖呵を切ってにらみ合う。
どう考えてもこの場で論理的に正しいのはアオイであったが、しのぶの有無を言わせないと言わんばかりの謎の圧を見るに、場は拮抗している……かもしれなかった。
3人娘やカナヲが一体どう収拾をつければよいのかとオロオロしていたところに、ひょっこりと件の男が現れた。
「どうしたの一体。廊下まで声響いてたけど」
「久遠っ! おかえりなさい!」
久遠の姿を見つけるや否や、その胸に飛び込んで頬ずりをするしのぶ。
さっきまでのピリついた雰囲気はどこへやら、である。
自分の胸に押し付けられているしのぶの頭を撫でながら、久遠はこの場にいるメンツに再度尋ねた。
「で、結局何があったの? ここのみんなが喧嘩するなんて珍しいね」
久遠に視線を向けられたアオイはバツの悪さからさっと目をそらした。
代わりに、すみ、きよ、なほの3人娘が何があったかを説明してくれる。
そうすると今度は久遠の方がバツが悪そうに苦笑いした。
(……そ、そうよ。私は何も間違ったこと言ってないし、遠慮することなんて何もないじゃない! いい機会だからここでガツンと言わないと!)
アオイがそう思ってツカツカと久遠の目の前まで近づくと、久遠は手に持った袋から何かを取りだし、それをおもむろにアオイの首にかけた。
「え、これ……?」
「今日町で見つけたんだ。蝶をモチーフにした首飾り。あんまり高い物じゃないけど、アオイに似合うかなって思って」
「あ……、えっと、その……あ、ありがとう、ございます……」
「うん、アオイにはいつもお世話になってるし、感謝の気持ち。
……アオイの厳しい言葉も、俺のためを思ってのことだってちゃんと分かってるから。いつも本当にありがとうね」
その言葉と笑顔で、アオイはもう色んな感情がはちゃめちゃになりもう訳が分からなくなってしまった。
ただ一つ言えるのは、今顔がとてつもないほど熱いということだけだ。
(ずるい……本当にずるいですこの人は。こうやれば私が誤魔化されると思って……。まあ、実際に誤魔化されちゃうんですけど)
段々と冷静が戻ってきて、久遠にプレゼントをされた喜びをじわじわと噛みしめていると、後ろから駄々っ子のような声が響いた。
「ずーるーいー! ずるいです久遠―! なんでアオイにだけプレゼントしてるんですかぁー!」
この人も……、この人も1年前まではただ純粋に尊敬できる人だったのだ。それが今じゃなんというありさまだろう。
どこか諦念を感じながらアオイは思う。
久遠はそんなしのぶに苦笑を浮かべながらなだめるように言う。
「しのぶに用意してないわけないでしょ。ほら、手出して」
「これ……指輪ですか?」
「うん、しのぶはやっぱり隊士として動き回るだろうし、行動の邪魔にならないものがいいかなって思って」
しのぶは目を輝かせながらそれをすぐさま左手の薬指にはめた。
「うふふ……ちょっと気が早いかもしれないですけど、はめてみました。どうですか?」
「うん、すごく良いと思うよ。しのぶの清楚な雰囲気を邪魔しない装飾になってるんじゃないかな」
「……あーあ、久遠の分もあればよかったんですけど…………そうしたら――」
しのぶが言い終わる前に、久遠は自分の左手をしのぶの眼前に出す。
その中指にはしのぶのと同じ指輪があった。
「ペアリングにしようって思って自分の分も買ったんだ。薬指だと少し間があって抜けそうだったから中指につけたんだけどね」
「久遠っ! もう本当に大好きですっっ! なんでそんなに私のして欲しいことが分かるんですか? もう結婚しましょう! この溢れる気持ちを止められません!」
「あはは……結婚はちょっと早いかな。うん、とりあえず喜んでもらえてよかったよ。しのぶには誰よりも感謝してるからね。……いつも本当にありがとう、しのぶ」
久遠のその言葉にしのぶは遂に感極まって泣き出してしまう。
そしてそれを頭を撫でて落ち着かせる久遠。
一見すると、なんとも感動的な光景であると言える。
しかし、実のところこれらを買った金銭は全てしのぶのお金である、ということは言わぬが華ということなのだろう。
そんな、蝶屋敷での一幕だった。
カナヲと三人娘にもちゃんとお菓子を買って来ました。
しのぶさんが敬語と普通の口調入り乱れているのは、基本は淑女らしく丁寧な言葉を話そうとしてるけど、テンションが上がると制御できなくなるって感じでしょうか。
まあ、最初はその辺適当に書いてたらなんかごちゃ混ぜになっちゃったんで、ただの後付けですこれ。
後、評価と感想にはとても感謝しております。
感想はいつも何を返したらいいか分からなくて返せてないのですが、本当に嬉しく思っています。これからも応援いただけると幸いです。