デュエルモンスターズ。
世界に広まったこのカードゲームは、誰でも手軽に楽しめる娯楽だ。
だが、誰でも楽しめる娯楽というのは、得てして賭け事の対象にもなりやすい。
そう、例えば――――
「俺が勝ったら、今日の夕飯はカレーな!」
「僕が勝ったら、ハンバーグだからね!」
――――その日の夕飯の献立を賭ける事もある。
金曜日の夜。
それは多くの勤め人たちが土日の休みを前に、心を躍らせる日。
翌日が休みであり、仕事を気にせずに遊べるこの日は、今は遠きバブル期には花の金曜日。略して「花金」と呼ばれていた。
バブルが弾けて久しい昨今では使われなくなりつつあるこの言葉だが、それでもこの休日前の夜を楽しもうとする人は多い。
今からデュエルをしようとする2人も、もちろんその口だ。
スーツ姿の男は『
デュエルディスクでデュエルするのも良いが、それでは場所を取ってしまうので駅前の立地ではデュエルをするためのスペースの確保が難しい。
そこで、カードショップのフリースペースだ。
ここでなら、テーブルに備わった機能により、小さいながらもソリッドヴィジョンでのデュエルを楽しめる。モンスターたちが小さくなるのに合わせ、ダイレクトアタックを受けるのもソリッドヴィジョンで投影されるデュエリストたちのアバター(課金要素あり)というのも良い。
それぞれ会社を気合で定時上がりし、駅前のカードショップのフリースペースで合流。本日の夕飯の献立を賭け、デュエルを行うのだ。
東雲 圭史
LP:8000
手札:5枚
フィールド:なし
押切 冴香
LP:8000
手札:5枚
フィールド:なし
「俺の先行!まずは《マンジュ・ゴッド》を通常召喚!効果でデッキから儀式魔法の《高等儀式術》を手札に加える!」
「儀式召喚か!」
マンジュ・ゴッド
レベル4 光属性 天使族
攻撃力:1400
開幕に現れたのは、万の腕を持つ仏像を思わせる天使。
とはいえ現在はミニサイズにデフォルメされた、可愛らしいものだ。
その手が東雲のデッキへと差し伸べられると、カードが手札へと加わる。
「今手札に入れた《高等儀式術》を発動!デッキから《異次元トレーナー》と《プロトロン》を3体ずつリリースし、儀式召喚!!唸れ!《ライカン・スロープ》!!」
「{アオオォォンッッ!!!}」
ライカン・スロープ
レベル6 地属性 獣戦士族
攻撃力:2400
1匹の人狼が、フィールドの中央に降り立ち吼える。
本来ならさぞ恐ろしい姿だろうが、ミニサイズの今ではそれすらキュート。
「《ライカン・スロープ》!?……って、どんなカードだっけ?効果見せてくれる?」
「ほらよ」
「えーと……?『相手ライフに戦闘でダメージを与えた時、自分の墓地の通常モンスターの数×200ポイントダメージを相手に与える』……?今墓地にはー……」
「《高等儀式術》で落としたのが6体だな」
「6×200=1200か。バーンダメージとしては大きいけど、そこまで脅威でもないかな?」
「まあ、そんなもんだな。実際コスパは悪いし。とりあえず、俺はカードを1枚伏せて、ターンエンドするぜ」
東雲 圭史
LP:8000
手札:2枚
フィールド:マンジュ・ゴッド、ライカン・スロープ、伏せ1枚
押切 冴香
LP:8000
手札:5枚
フィールド:なし
「僕のターン、ドロー。ふふーん、このターンで勝っちゃうかもね」
「お、随分と良い手札みたいだな?」
「いくよ!まずは《ユニゾンビ》を召喚!一つ目の効果で、手札の《馬頭鬼》を墓地に送って、レベルを1つ上げる!」
片足がないゾンビ2人が、肩を組み支え合いながら現れる。
彼らがハモりながら歌い始めると、押切の手札からカードが墓地へと送られる。
そして歌はまだ終わらない。
「お、アンデットか」
「そうだね。《ユニゾンビ》のもう一つの効果で、デッキから《ワイトベイキング》を墓地に送って、更にレベルを1つ上げるよ!」
ユニゾンビ
レベル3→4→5 闇属性 アンデット族
攻撃力:1300
「【ワイト】か!しかもそれ最近出たばかりの奴だろ!」
「そうだね。《ワイトベイキング》が墓地へ送られた時の効果を発動するよ。デッキから《ワイトベイキング》以外のワイトモンスター2体を手札に加えて、その後手札を1枚捨てる。《ワイトプリンス》と《ワイトメア》を手札に加えて、今引いた《ワイトプリンス》を墓地へ送るよ。そして墓地へ送られた《ワイトプリンス》の効果を発動するね。デッキから《ワイト》と《ワイト夫人》を1枚ずつ墓地へ送るよ」
「みるみる内に、墓地にカードが溜まっていく……」
「まだ終わらないからね?墓地の《ワイトプリンス》の効果を発動!墓地の《ワイトプリンス》と《ワイト》2体を除外することで、《ワイトキング》をデッキから特殊召喚するよ。《ワイト》と墓地では《ワイト》として扱う《ワイト夫人》をゲームから除外して、デッキから《ワイトキング》を特殊召喚!」
「{カカカッ!}」
ワイトキング
レベル1 闇属性 アンデット族
攻撃力:0
3体のモンスターが墓地から消えると、デッキからカシャリ、カシャリと硬い物が擦れ合い動く音と、生ける者を嘲笑うかの様な声が聞こえる。
その声と共に這い出るそれは、ボロを纏いし骨の王。
彼の力は、墓場より満たされる。
と、仰々しく表現したところで、ソリッドヴィジョンの関係でミニチュアサイズなので、恐れも何もあったものではないのだが。
「《ワイトキング》は、墓地の《ワイト》の数だけ攻撃力を1000ポイントアップするよ」
「《ワイト》モンスターたちは、共通して墓地で《ワイト》になったはずだから、《ワイトベイキング》も今は《ワイト》か?」
「そうだね。だから墓地には今《ワイト》が1体だから、攻撃力1000アップだね」
ワイトキング
レベル1 闇属性 アンデット族
攻撃力:0→1000
「墓地やら除外やら色々なってるけど、これ実質《ユニゾンビ》一枚からかよ……」
「そうだね。でも終わらないよ。さっき手札に加えた《ワイトメア》の効果を発動するね。このカードを手札から墓地へ送って、除外されている《ワイト夫人》を守備表示で特殊召喚するよ。もちろん、《ワイトメア》も墓地で《ワイト》になるから、《ワイトキング》はパワーアップ!」
ワイト夫人
レベル3 闇属性 アンデット族
守備力:2200
ワイトキング
レベル1 闇属性 アンデット族
攻撃力:0→2000
「おっと、この流れはちょっと嫌な予感しかしないぞ?」
「正解!手札から《ワイトプリンセス》を墓地へ送り、フィールドのモンスターはレベルかランク×300ポイント、攻撃力と守備力を下げるよ!」
「お前!?しかもどうせそれも墓地で《ワイト》になるんだろ!?」
「うん!」
ライカン・スロープ
レベル6 地属性 獣戦士族
攻撃力:2400→600
マンジュ・ゴッド
レベル4 光属性 天使族
攻撃力:1400→200
ユニゾンビ
レベル5 闇属性 アンデット族
攻撃力:1300→0
ワイト夫人
レベル3 闇属性 アンデット族
守備力:1300
ワイトキング
レベル1 闇属性 アンデット族
攻撃力:2000→1700→2700
僅かな弱体化に留まるワイトたちに対し、東雲のフィールドへの影響は大きかった。
先程高らかに吼えて現れた人狼も、今では弱々しく耳もへたれてしょげてしまっている。なにせその力が4分の1にまで下げられたのだから、当然だろう。
「あー、いっけなーい。《ユニゾンビ》の攻撃力が0になっちゃったー」
「……ここまで白々しい発言も中々ねえな、おい」
「うん、じゃあ《ユニゾンビ》と《ワイト夫人》でリンク召喚するね。アンデット族モンスター2体でリンク召喚!来て!《アドヴェンデット・セイヴァー》!!」
アドヴェンデット・セイヴァー
リンク2 闇属性 アンデット族
攻撃力:1600
ビルの上からフィールドに降り立つ、ダークヒーロー然としたモンスター。
骨の王の前に立つその姿は、さながら死者の王を守る騎士の様。
「あ、《ワイト夫人》が墓地に行ったことで、《ワイトキング》の攻撃力は追加で上昇するね」
ワイトキング
レベル1 闇属性 アンデット族
攻撃力:2700→3700
「【ヴェンデット】ってアンデットの儀式カテゴリーだろ?俺実際には初めて見るんだけど、効果見せてくれるか?」
「うん、どうぞー」
「ありがとうな。何々……?ほう、モンスターゾーンにいる限り、《リヴェンデット・スレイヤー》として扱う?ああ、そういえばそういう儀式モンスターがいたな。他には……なあ、2つ目はともかく、3つ目の効果が狙いだろ?」
「やっぱり分かっちゃう?」
「当たり前だろーよ!?ダメージ計算時にデッキからアンデット族1体を墓地に落として、そのレベル×200分相手の攻撃力をダウンさせるって、どう考えても《ワイト》シリーズ落とす気満々じゃねーか!!」
「ちなみに、《ワイトプリンス》の効果にターン1回の制限はないよ」
「それだけで《ワイトキング》の攻撃力は3000アップかよ!」
「そうだね。それじゃあ、バトルしようか!」
その宣言の直後。
《ライカン・スロープ》が、その魔狼の咆哮を轟かせた。
「何を……ッ!?こ、これは!?僕のモンスターたちが怯えて、攻撃しようとしない!?」
「……リバースカードオープン、《威嚇する咆哮》!このターン、お前は攻撃宣言できない!」
「クッ!?なら、僕はこのままターンエンドだ!」
「手札3枚もあって、伏せなしか……。やっぱりいつもの火力に偏重したデッキなんだな」
「別に良いだろう!?」
東雲 圭史
LP:8000
手札:2枚
フィールド:マンジュ・ゴッド、ライカン・スロープ
押切 冴香
LP:8000
手札:3枚
フィールド:ワイトキング、アドヴェンデット・セイヴァー
「よし、俺のターンだな。ドロー!……ふむ、なるほどな」
引いたカードを確認し、東雲の口の端が弧を描く。
「おや、良いカードが引けたのかな?」
「ああ、中々悪くない。まずは《儀式の準備》を発動!デッキからレベル7以下の儀式モンスターを手札に加え、その後墓地から儀式魔法を手札に加える!」
「2体目の《ライカン・スロープ》かな?でも、僕の《ワイトキング》には勝てないだろう?」
「デッキからレベル1の儀式モンスター!」
「……レベル1の儀式モンスター?……ッ!?」
「《サクリファイス》を手札に加え、墓地から《高等儀式術》を手札に加える!そのまま《高等儀式術》を発動!デッキからレベル1の通常モンスターである、《バニーラ》を生贄に捧げ、現れろ!《サクリファイス》!!」
サクリファイス
レベル1 闇属性 魔法使い族
攻撃力:0
可愛い兎が生贄に捧げられ、単眼の悪魔……否、一応は魔法使いの魔物が顕現する。
どう見ても悪魔族だが、種族欄には魔法使い族と書かれているので、魔法使いなのだ。
文句は《ハングリーバーガー》に言うと良い。
「《サクリファイス》……!その効果は……ッ!」
「知っての通りだ!お前のモンスター1体をこのカードに装備させ、ステータスをその攻撃力と守備力と同値にする!《ワイトキング》を吸収しろ!」
《サクリファイス》が《ワイトキング》を掴むと、そのまま自身の体の中に沈めていく。
徐々に骨の体は消えていき、残されたのは《サクリファイス》の体から見える頭蓋骨のみ。
本来ならばこれで《サクリファイス》の力が強化されるのだが……。
「《ワイトキング》の蘇生効果は、戦闘破壊にしか対応していない……!でも、攻撃力も守備力も元々は0!《サクリファイス》は強化されない!」
「目的はあくまで《ワイトキング》の処理だから問題ない。続いて、弱体化した《ライカン・スロープ》と《マンジュ・ゴッド》でリンク召喚だ!召喚条件は名前の異なるモンスター2体!リンク召喚!現れろ、《クロシープ》!」
クロシープ
リンク2 地属性 獣族
攻撃力:700
「《クロシープ》……?確か儀式召喚にも対応した効果をもっていたはずだけど、何でこのタイミングで?」
「こういうことだよ!《
「融合召喚の方か!」
「正解だ!ライフポイントを1000支払い、エクストラデッキからレベル5以下の融合モンスターを融合召喚扱いで特殊召喚する!現れろ!《サウザンド・アイズ・サクリファイス》!《クロシープ》の右下のリンクマーカーの先に特殊召喚する!」
フィールドにカップ麺が現れると、東雲のライフポイントがお湯として注がれる。
そしてカップ麺の蓋が
東雲 圭史
ライフポイント:8000→7000
サウザンド・アイズ・サクリファイス
レベル1 闇属性 魔法使い族
攻撃力:0
「そしてこれにより、《クロシープ》の効果も発動される!融合モンスターがこのカードのリンク先に特殊召喚された時、墓地からレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚する!」
「《マンジュ・ゴッド》を特殊召喚して、効果を使う気かな?」
「いや、《マンジュ・ゴッド》は特殊召喚だと効果は使えない。代わりに《バニーラ》を特殊召喚するぞ!」
バニーラ
レベル1 地属性 獣族
守備力:2050
「そのまま《サウザンド・アイズ・サクリファイス》の効果も発動して、お前の《アドヴェンデット・セイヴァー》を奪う!」
「そんな!?」
抵抗を試みる《アドヴェンデット・セイヴァー》だが、その様な抵抗は無意味に《サウザンド・アイズ・サクリファイス》へ吸収されてしまう。
そしてその力は、《ワイトキング》とは違い《サウザンド・アイズ・サクリファイス》を強化してしまった。
サウザンド・アイズ・サクリファイス
レベル1 闇属性 魔法使い族
攻撃力:0→1600
「そして《クロシープ》と《バニーラ》でリンク召喚!召喚条件は、リンクモンスターを含むモンスター2体以上!現れろ、《天威の鬼神》!」
闇に堕ちた武術家が、拳を打ち鳴らして押切のアバターを威嚇する。
天威の鬼神
リンク3 闇属性 幻竜族
攻撃力:3000
「続けて、《サクリファイス》と《サウザンド・アイズ・サクリファイス》でリンク召喚!召喚条件は、闇属性モンスター2体!現れろ、《見習い魔嬢》!」
悪魔族みたいな見た目の魔法使い2体が素材となると、麗しい正統派な魔女が召喚される。
元の素材が先程の目玉の怪物たちとは思えないほどだ。
見習い魔嬢
リンク2 闇属性 魔法使い族
攻撃力:1400
「《見習い魔嬢》といえば、闇属性強化モンスター……ッ!」
「その通りだ!フィールドの闇属性モンスターは、攻撃力と守備力を500アップする!」
天威の鬼神
リンク3 闇属性 幻竜族
攻撃力:3000→3500
見習い魔嬢
リンク2 闇属性 魔法使い族
攻撃力:1400→1900
「……なるほど、確かにその2体の攻撃力の合計は、5400と僕のライフポイントを半分以上削るだろう。だけど!次のターンで逆転してみせる!」
「いや、次はない!」
「なに!?」
押切の言葉を否定し、東雲は最後の手札を切る。
「《死者蘇生》を発動!俺とお前、どちらかの墓地のモンスター1体を特殊召喚する!」
「《死者蘇生》……?だけど、墓地のどのモンスターを蘇生させても、このターンで終わる火力には……しまった!?そうか!?」
「蘇れ!《ライカン・スロープ》!!」
このデュエルで2回目となる登場に、再び高らかと咆哮を上げる魔狼。
しかも、先程とは異なり、その爪も牙も使う事ができる状況にある。
加えて、墓地から溢れる力が影となって四肢に纏わり付き、更なる力を彼に与える。
「《ライカン・スロープ》のバーン効果を合わせると……ッ!」
「お前のライフポイントは0になる!やれ!《見習い魔嬢》、《天威の鬼神》!そして止めだ!《ライカン・スロープ》でダイレクトアタック!!『シャドウ・ダンス』!!」
「うわぁぁぁぁっっ!!!??」
怒涛の攻撃がアバターに殺到し、押切のライフポイントを削り切る。
そのトドメを飾ったのは、《ライカン・スロープ》のバイティングだった。
押切 冴香
ライフポイント:8000→0
「……マジで手札3枚あって、防御札一つもなかったのか」
「うん、残りは《大欲な壺》と2枚目の《ユニゾンビ》に……《ワイト》だよ」
「なるほどなぁ……そりゃ防げないな」
「理論上、最大で20000の攻撃力の《ワイトキング》を出して殴れば勝てるからね。防ぐ必要が出る前に勝つつもりだったんだ。……というか、そっちこそ採用カードに《威嚇する咆哮》って今時中々見ないよ……?」
「悩んだんだけどな。デッキのメインが《ライカン・スロープ》だから、やや低めの攻撃力だから戦闘破壊を防ぐためと、雰囲気合わせで入れたんだ」
「ああ、あの《ライカン・スロープ》が吼える事で発動されるのは、ソリッドヴィジョンも小粋だったね」
「だな。あれを見れただけで、入れた価値があったってもんだ。……さて、これで今日はカレー決定だな!!」
「ッ!!?そ、そうだった!僕のハンバーグがぁぁぁ!!」
テーブルに突っ伏して嘆く押切を、額に手を当てて呆れながらも、東雲は思う。
仕方がないから、冷凍のハンバーグも付けてハンバーグカレーにしてやろう……と。
「そら、買い物して行くぞ。どうせ今日もウチに泊まるんだろ?」
「そうだね!今日は飲むよ!負けたから沢山飲むよ!」
「お前は勝っても負けても飲んでるだろうが……」
そして二人はカードショップを後にする。
目指す先は、23時まで開いている駅前の大型スーパー食品売り場。
なお、その食品売り場でモンスターのフィギュアがおまけで付く食玩を買いたいと、駄々を捏ねる押切に東雲はもう一度呆れる事になるのは、また別の話。
「さて、と」
エプロンの紐を締め、台所に立つ。
今日はカレーだが、少し違ったカレーを作る予定だ。
既に時間は夜の7時半。手早く進めよう。
メインの食材は、サツマイモ。
《ワイトベイキング》の焼き芋を楽しんでいた絵を見て思い付いたが、甘口のカレールーと合わせて使う。
まずは先に、ご飯を炊き忘れない内に炊いておく。
玉ねぎを切って塩で軽く揉み、電子レンジに入れる。これで余分な水分が抜け、早く炒める事ができる。
豚肉を炒める際に、ビールを少しだけ注いで風味付けをする事で、甘口カレーながらも大人の隠し味に。
ちなみに、このビールは料理を手伝いもしないで、テレビでプロデュエリストの試合を観戦している押切から奪って来たものだ。
残ったビールは東雲が自分でそのまま飲み干し、中を濯いで乾かしておく。
豚肉と玉ねぎを炒めたら、そこに水を投入。カレーの定番ニンジンは、今日は甘味の強いサツマイモがあるためパスをする。
アクを取りつつある程度煮えたところで、カレールーと煮崩れしやすいサツマイモを最後に入れて、柔らかくなるまで再度煮る。
圧力鍋があれば早そうだが、生憎と東雲の家にはないため使えない。
後は電子レンジで冷凍ハンバーグを温めれば、完成だ。
「ほら、できたぞ」
「おー、良い匂い……あれ!?ハンバーグ乗ってるよ!?」
「カレーハンバーグも、カレーには違いないからな」
「流石圭史くん!分かってるね!」
「はいはい。それじゃあ、食うか」
「そうしよう」
今日の夕飯は、甘口サツマイモカレー。
「「いただきます」」
金曜日の夜の、特別な夕食。
「今回の最強カードは《ライカン・スロープ》だな」
「通常モンスターが墓地にいればいるほど、バーンダメージを増加させる儀式モンスターだったね」
「とはいえ、墓地の通常モンスターの数×200がダメージの数値だからな……。正直に言ってステータスや効果も、決して強いとは言えないカードではあるな。それでもライフポイントが1でも残っていれば希望があるのがデュエルだ。その最後の1ポイントを削り切る、ダメ押しの一手に、きっとこいつはなってくれるだろう」
「今回がまさにそうだったね、圭史くん」
「ああ。どんなカードにも、いつだって輝く瞬間はあるもんだ」
「《モリンフェン》とかは?」
「そいつは出るだけで輝くからノーカンだ」