投稿が遅くなり、申し訳ありません。
初配信の翌日、きらぼしの事務所に挨拶に行くことにした。
詩音が「やだ!私もついていくー!」といって聞かなかったが、何とか説得してきた。あいつが駄々こねて二人でなんかしようとするの、初めて配信に出た時のこと思い出すな…。あれで詩音の本心聞いたりとか、綾瀬スズネトークのことバラされたりとか…うわぁ、いらんこと思い出した。あれマジで一生の黒歴史だわ。二度と同じことはやらんぞ。
とはいえ、一人はやっぱり緊張する。いいって言ったけど、知り合いがいてくれるってだけでやっぱ安心するんだな。まぁ、絶対本人には言わんけど。
会社に事前に連絡は済ませてある。社員の人が迎えに来てくれるようで、もう待っているらしい。その人がいるという待ち合わせ場所の駅に向かう。
そういやどういう人来るんだろ?特徴とか何も聞いてなかったな。なんてことを考えながら辺りを見ていたら、すげー綺麗な人を見つけた。迎えならああいう人がいいな。あ、ヤベ、目が合った。
とりあえず、軽く会釈しておく。すると何を思ったのか、こっちに近づいてきた。…え、俺、なんかしちゃったかな?
内心戦々恐々としていると、その綺麗な人(仮称)が話しかけてきた。
「あの、品村航さんですか?」
「あっ、は、はい」
なんで俺の名前知ってんの?てか誰?
「あの…あなたは…」
「ああ、まだ名乗っていませんでしたね、申し訳ない。私、こういう者です」
そう言って渡してきた名刺には、「きらぼし株式会社営業部 沢田みゆき」と書かれている。
「あなたを弊社までご案内するため参りました。どうぞよろしくお願い致します」
「こ、こちらこそ…」
わぁ、すっごいちゃんとした応対。沢田さんとデビューの打ち合わせの時の話とか、世間話をしながら5分程歩くと、会社が見えてきた。
「こちらが我が社です、品村航さん。ようこそ、きらぼしへ」
最初に連れられたのは営業部だった。
沢田さんは何やら仕事があるらしく、ここで案内を別の人に交代するらしい。
「では、私はここで失礼します。これからは別の者が案内しますので。浅城!」
「ん?おお、もう来たんか」
「案内、後は任せるわ。変なこと教えないでよね?」
「前向きに検討しときます」
「それしないやつじゃない…」
沢田さんに呼ばれて、左目に傷のある男の人がこっちに来た。
「初めまして品村さん。私、広報部の浅城博臣と申します」
「ど、どうも…よろしくお願いします」
「こちらこそ、何卒よろしくお願い致します」
あら、こっちもしっかりした人だな。顔ちょっと怖いけど。
「これから先は、私が案内を担当します。では早速、営業部に行きましょうか」
ここで沢田さんと別れ、営業部へと向かう。
「しかし、あなたも大変でしたね。混乱したでしょう、いきなりVtuberやれとか言われて」
「ええ、まぁ…」
そりゃ普通な方がおかしいですよこんなん。10日は迷ってたからね俺。
「ほんと、急に無茶な話を持ちかけたりして、申し訳ない…。いきなりがやる側どんだけ大変か分かってんのか…」
ん?やけに実感がこもってるような感じ…
あれ?さっきから思ってたんだけど、この人どこかで見た事あるんだよな。顔の傷とかさ…あっ!
「どうかしましたか?」
「あ、いえ…浅城さん、暮賀倫也みたいだなって…」
「そうですか?」
「ええ。その目の傷とか…」
「へぇ…暮賀、ご存知なんですね」
「はい。配信は始まってからずっと見てます。ほんと話とか面白いなって思いながら見てました。話だけでここまできたのすごいですよね」
暮賀倫也は、編入のきらぼし3期生だ。元々は詩音達3期生4人のマネージャーだったんだけど、時折配信に出てきてはキレのあるツッコミを放ったり、ボケに回ってふざけ倒したりでめっちゃ面白いってことで人気になり、Vtuberと化した。要は、俺と同じような経緯ってこと。
特筆すべきは話術で、歌とかゲームが特段上手い訳でもなかった彼は、話一つで人気Vtuberに上り詰めた。正直この界隈で一番憧れてる。
「そう、ですか…ふふっ…ふははははは…」
「え?どうしたんですか⁇」
え?え?なんでそんなに笑ってんの?
「あぁいえ…やっぱり皆、案外気付かないものなんだなって…」
「気付かない?」
「えぇ。聞き覚えとかありませんか?私の声に」
「ん?えーと……ああっ‼︎じゃあ、あなたが⁉︎」
「やっと気づきましたか?そうです。私が、暮賀倫也です」
嘘⁉︎この人が⁉︎あ、でも、言われてみれば確かに暮賀倫也の声だ…。
「だからさっき笑ってたんですか?」
「えぇ。気付かないんやなって。あと…」
「あと?」
「同じ事、してるなぁって…品村さん。あの時と…あっはははは!」
「あの時と同じ…あ!ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!」
黒 歴 史 ふ た た び !
またやっちまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ‼︎
また本人の前で語っちまったぁぁぁぁッ‼︎
「まぁ、気にすることはありませんよ。悪口言った訳ではありませんし」
「あぁぁ…」
「何はともあれ、これからよろしく。品村さん」
その場でがっくりうなだれる俺を見ながら、笑顔で手を差し出す浅城さん。
「こちらこそです。よろしくお願いします、浅城さん」
そう言って、浅城さんの手を取り握手する。
まさか、推しと憧れの人の同期になれるとは。人生って、やっぱりどうなるかわかんないな。
Vtuberになりたい訳ではない、と言ったあの時の言葉はどこへやら。
この時の俺は、すっかりこの人達との配信を楽しみにしていたのだった。
次回は、あらすじに出てきたド変態が登場します。
あと、今のところそんな素振りありませんが、実は浅城があらすじに書いた狂犬です。どう暴れるのかもいずれ書く予定です。どうぞお楽しみに。