なんかVtuberやれってさ   作:バールクス官房長官

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今回かなり長めです。


第四話 あんまり近づかないでもろて

一通り案内された後、最後に社内にあるスタジオを見に行った。流石は界隈最大手2社の片割れ。設備が十二分に整っている。

「あっ、そうだ。今日ここで配信する人もう来てるはずですから、挨拶しておきましょ……あー…やっぱやめとこっかな…」

「え?何でですか?早い方がいいのでは?」

「そうなんですけど…あの人はなぁ…」

 

浅城さんはずっと渋っている。そんなヤバい人なの?いくらクセ強めのきらぼしとはいえ、流石にそこまではいないんじゃ…。

 

「男女見境なく襲いかかるからな…」

 

あ、いたわ。あの人か。今のでわかったわ。てことは、素でアレなの?いやまさか。

 

「でも流石にあれ程ではないんじゃ…?多少はキャラ作ってやってるものじゃないんですか?」

「いえ、うちでは素の自分で配信して頂くよう皆さんにお願いしています。なので素のままで面白い人を採用してるんです。品村さんも言われませんでしたか?」

 

そういえばそんなこと言われたな。

 

「あら、浅城くんじゃない」

 

二人で話していると、スタイルの良い女の人が話しかけてきた。

 

「げっ」

「げっ、とは何よ失礼ね。隣の子は?」

「例の新人ですよ、谷村さん」

「ってことは、彼が詩音ちゃんの先輩ね。谷村桃子よ。いや、名前ならこっちの方がいいかしら…私はルミス・ユーリ。あなたの同期よ」

 

やっぱりそうだったか。あからさまにヤバい人となれば、この人しかいないからな。

ルミス・ユーリ。俺と同じ3期生の、ピンク担当だ。一言で言えばド変態って感じで、BLだろうがGLだろうがオールオッケー。スイッチが入れば、相手男女問わず猥談を繰り広げる。そして、詩音と一番仲がいいのがこの人。あいつ下ネタとか得意じゃないはずなのに、どうやってこの人と仲良くなったのだろうか。これが一番の疑問だ。

挨拶されたので、こちらも軽く自己紹介をしておく。今のところは別に全然変な感じしないんだけど。なんというかこう、落ち着きがあって、大人の女性って感じ。

 

「やっぱりこの人そこまでおかしくないのでは?どっちかというと見た目清楚な感じなんですけど」

「最初は皆そう言うんです…」

「そうだ。品村くん、これから私の配信に出ない?」

「え?俺がですか?」

「ええ。浅城くんもどう?」

「…どうします?」

「俺はいいですけど…」

「なら私も出ましょう。見張りが必要だ」

「まったくもう。失礼しちゃう」

 

うーん。おかしい所はないんだけど。

 

「あと1分で配信始まりまーす!」

 

おっと、俺も話してないで準備しなきゃ。何度か配信したけど、やっぱり始める前の緊張はまだ取れないな。

 

「開始でーす!」

 

そうして本番が始まる。

本当にこんな人が下ネタかますんだろうか。むしろ恥じらいそうな感じがする。

そう思っていた。

 

「皆さまごきげんよう。ボッキンガム宮殿にようこそ!城主のルミス・ユーリですわ」

「⁉︎」

「くっ…w」

 

開始早々ぶちかましやがった‼︎少しは恥じらいというものがあるかと思ったが、まったくもって本人ノリノリじやねぇか‼︎

それと浅城さん!あんたは何笑ってんだよ‼︎

 

「今日はね、私一人じゃなくて、二人飛び入り参加のゲストがいるの。さ、二人とも、挨拶して」

「ども…瀧雲タクミです……暮賀さん?」

「あ…どうも…ふふっ…暮賀倫也…です。ぼっ…きん…あっははははははははは‼︎」

「ちょ…大丈夫ですか?」

「大丈夫よ。元々この子こういうのに弱いゲラだから。放っておいたらいつか治るわ」

 

:草

:草

:最初からクライマックスやな

:お?初心者か?こんなん平常運転やぞ

:マジか怖っ

:大丈夫?笑い死ぬんじゃない?

:どういう繋がりで二人来たの?

 

「さっきタクミくんが暮賀くんに会社案内されてる時に会ってね。折角だからどう?って聞いたらいいよ、って言うから」

「まぁ…大体その通りですね」

 

と、かいつまんだ説明の後、谷村さんがこちらを向く。どうしたんだろ?笑ってるのに怖いぞ?あの人。浅城さんも何やら苦い顔してるし。

 

「ねぇ、あなたはどういうのが好きなの?」

「どう、とは?」

「決まってるじゃない。性癖の話よ」

「へ?」

「始まったかぁ…」

 

いきなり何だ?この人は何を言っている?せいへき…せいへき……性癖⁉︎

「はぁ⁉︎」

「あら、どうしたのよ?急に叫んで」

「初手で性癖かまされりゃこうなるでしょうよ…」

 

少しはブレーキ効くかと思ったけどそんな事なかったなぁ!目ぇ血走って息荒いもんな!

 

「何だって言っていいのよ?私はなんでもOKだから。ロリ?ショタ?それとも大人な方がいい?胸はどうかしら?やっぱり大きい方に惹かれるものなの?あ、シチュエーションはどんなのがいい?ハ○撮り?NTR?教えてちょうだい?あ、そういえば暮賀くんにもはぐらかされて聞けなかったのよね。この際だから聞いておこうかしら。あなたはどんなのが好みなの?」

「勘弁してください…」

「何で俺まで…」

 

早口で捲し立てる谷村さんに反論する気力も湧かず、ただただげんなりしていたのだった…。

 

 

暴走を止めつつなんとか配信を終え、二人でぐったりしていると、一人ピンピンしている谷村さんがこっちに来た。

 

「お疲れ様。喋りっぱなしで喉乾いたでしょ?はい、お茶」

「どうも…」

「浅城くんにも。ブラックのコーヒー」

「ありがとうございます…」

「いっつもそれだけど、たまには微糖飲もうとか思わないの?」

「微糖は甘すぎて無理です」

「そこまでじゃないと思うけどなぁ」

「そういえばですけど、どうして詩音と仲良くなったんですか?」

「それ俺も気になってた。どういう繋がりなんです?二人って」

 

二人揃って気になっていた事を聞く。

 

「そこまで大したことじゃないわよ。少しスキンシップの加減を教えただけ」

「へぇ」

「あの子、先輩によくくっついてるんだけど、やったらあんまりいい顔されないからって。加減を教えてほしいって言われてね」

「もしかしてその先輩って…」

「そう。品村くんよ」

「入りたての頃は確かに、私から見てもやり過ぎだなー、っていうのもあったけどね。今だとかなり大人しくなってるの。あれでもあの子、頑張ってるのよ。あなたも、あんまり拒まないであげてね」

 

こう言っちゃ何だけど、底抜けに明るく、考えなし。これが大多数の、詩音に対する印象だった。

けど、ほんとはそんな奴じゃない。

前に言ってた話に歯止めが効かないこととか、今のことだって、出来ないなりに頑張ってる。他人のことも考えられる。しょっちゅうあいつの側にいたから、そんな事はよくわかってる。

この人は、そこをちゃんとわかってる。いちいちぶっ飛んでるけど、この人はいい人なんだ。

 

そういえば、今日もついて行くって言われて、拒否しちゃったっけ。

…来週もここに来る用事あるし、たまにはこっちから誘ってみるか。

存外真面目に話す谷村さんを見ながら、そんな事を思うのだっ…

 

「それとね、私もあの子と仲良くなりたいって思ってたのよ」

 

ん?

 

「そりゃまたどうして」

「だってすっごく可愛いじゃない?あの子。だからね、近づいて食べちゃおうかな、ってね」

「…」

「どうせそんなことだろうと思いましたよ…」

 

さっきの配信と同じ、怖い笑みを浮かべる谷村さん。

やっぱり、ただのヤバい人なのかもな…。




感想、お気に入りなど誠にありがとうございます。
これからもこの作品をよろしくお願いします。
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