書けば書くほど量が多くなってしまう…。誰か助けて(他力本願)
「そういえば」
ずっと忘れていた疑問をぶつける。
「どうしました?」
「もう一人初めましているんですけど、その人って…?」
「あぁ、忘れてましたねそういえば」
「むぅっ」
忘れてた発言に頰を膨らませる初めましての人。怒ってるんだろうけど、可愛らしく癒しにしかならない。
「この人は飯塚奈々さん。和嶋リゼですね」
和嶋リゼは、ここに集まった皆と同じ同期。優しく癒されるような声に、おっとりした性格。何事も拒絶するのではなく、真正面から真摯に向き合う様から、「リゼママ」と呼ばれる。なんというかこう、母性みいのが凄く、綾瀬スズネこと詩音も度々甘えていた。
中でも一番の特徴は機械音痴な所で、操作を誤り配信終了、なんてことはよくある。機材を最も壊したのが彼女であり、破壊王の名を欲しいままにしている。そのため配信はスタジオ限定で、社員が見張ることになった。
この時見張っていた人物こそが当時マネージャーだった浅城さん。こうして配信に出た彼は人気になり、今に至るわけだ。
「あとね、一つとんでもない秘密があるんですよ」
「何です?」
「聞いて驚け〜?この人ね、イイヅカフーズのご令嬢なんです」
「えぇ⁉︎イイヅカって言ったら、あの大手のとこですか⁉︎」
「えぇそうです。最初ビビったなー。大量の黒服で」
「博臣さん、あんまり言っちゃ…」
「あ、そうだった。これ言いふらしちゃ駄目ですからね」
言えるかそんなの。言ったところで信じられないわ。
いやぁ、ここはすごい所だな。まさか大企業の娘さんまでいるとは。
「あの…どうしてこれやろうと?」
「私、もともとこういうの好きだったの。それと、お父さんたちに何でも貰ってばっかりだったから、自分でなにかをやってみたいなって」
なるほど。
「へぇ、そうだったんだ」
「博臣さんは前に聞いたでしょ!」
「にしても、二人はほんと仲良しだよね」
「いつも浅城くんにくっついてばかりよね」
「あと、浅城さんには物怖じしないんですね。配信二人でずっとやってたから?」
「それもあるけど、それだけじゃないのよ。懐いた理由」
「何があったんですか?」
「実はね…」
橋本さんが語り始める。
《ここから浅城視点》
今から4ヶ月前。飯塚奈々は、ストーカー被害に遭っていた。
「ストーカー?沢田ぁ、いくら暇だからってひどい嘘つくなよ」
「嘘で言えるわけないでしょこんなの」
「ごもっとも。で、誰?狙われてるの」
「飯塚さん」
「うっわ…一番やっちゃダメな奴よそれは。黒服にシメられて終わりやんか」
「そうでもないのよそれが。絶対来ないでって言ってるみたい。目立つことは嫌だって…」
「あぁ、人見知りね。じゃ、いつも一人ってわけか」
「そういう事。だから、家まで着いて行って欲しいの。一番気を許してるの、あんただから」
「俺が?男が側にいたら、余計キレるんじゃない?」
「大丈夫よ。どうしたって彼氏とかには見えないから」
「ひっでぇ」
事態を受け、社は見張り役だった俺を同伴させることにした。
「しっかし、どっから身バレしたんだか。怖いねぇ」
「上の話だと、特定班ってやつか…もしくは、内部か」
「…まさかな」
俺が送り迎えを担当してからは流石に警戒したのか、姿も実害も無かった。
それから5日後。
「…ごめんなさい。毎日、私のせいで…」
「いえ、あなたの安全が最優先ですから。さて、何の話します?橋本が学園祭でバジリスクタイム踊って足挫いたのとか?」
「なにそれ…ふふっ」
などと話していると、もう家のすぐそばまで来た。今日も異常は無いようだ。
…と、そう思っていた。
「お、おい、待て!」
誰かが呼び止める。そこには小太りの中年男がいた。
「…どうかしましたか?」
「どうしたもこうしたもあるか!毎日毎日、リゼちゃんに付き纏いやがって!」
「こっちはストーカーに悩まされてるからって送迎任されてんだよ。さてはおめーがストーカーだな?」
「ぼ、ぼぼ、僕はストーカーなんかじゃない!ファンだ!ただ近くで見守ってただけだ!」
「それがストーカーだつってんだよ。毎晩写真と怪文書送りやがって…どんだけ怖いか分かってんのか?」
「う、うるさいっ!ねぇリゼちゃん、分かってくれるよね?」
じわりじわりとこちらに近づいてくる。
「ひっ…‼︎」
すっかり怯えてしまい、俺の後ろに隠れてしまった。服を掴む手も、震えている。
「そろそろいい加減にしろやテメェ。推し泣かせて何がファンだこの野郎!恥知れやゴミカスが‼︎」
「黙れ黙れ黙れェッ‼︎」
そう叫ぶと、男はナイフを取り出し、こちらに向かって振り回してきた。
「ぐっ…!」
左目に当たり、激痛が走る。よろけて一瞬飯塚さんとの距離が離れた隙に、男が彼女に向かって進む。
「一緒に行こう、リゼちゃん!」
「い、嫌っ‼︎来ないで‼︎」
「いいから!来るんだ‼︎」
「嫌っ‼︎」
「このっ‼︎」
そう叫びながらナイフを構えて突進する。やべぇ、刺す気だ!
「はぁぁぁぁぁっ!」
「うっ…‼︎」
男は掛け声と共にナイフを刺した。刺さっていたのは…。
「浅城さん⁉︎」
俺だった。腹のあたりにがっつり刺さっている。
精一杯の虚勢を張り、あいつに向かって笑ってみせる。アドレナリンがドバドバ出てきて、痛みを感じなくなってきた。
「ひっ‼︎わ、笑ってる⁉︎な、な、なんだこいつ‼︎」
「おいどうしたよォ‼︎まだ目と腹ァかすっただけじゃねぇかァ…!ぶつくさほざいてねぇでかかってこいやァァァァァッ‼︎」
死ぬかもしれない状況にありながら、俺はこの状況を楽しんでいた。元々、こう言うのが大好きなんだ。ぶつかり合って、ケンカするの。
怯んで動きが止まった隙を狙い、顔をニ発殴り、膝飾りをお見舞いする。体勢を崩し倒れ込んだ男に馬乗りになり、取り押さえる。騒ぎを聞きつけ、男数人が居酒屋から出てきた。
「お、おい、血出てねぇか⁉︎」
「相手ナイフ持ってるぞ!」
「俺いいから…警察呼べェ…‼︎」
「あ、あぁ!警察!警察だ!」
「あと救急車‼︎」
数分後警察が到着し、男は連行された。意識はそこで途切れ、そこからは何も覚えていない。その後、救急車で俺も運ばれたらしく、目を覚ました時には、病室だった。それもかなり広い部屋。
担当の医師から話を聞く。目はそこまでではないが、損傷により視力が少し低下しているとの事。腹は相当酷かったようで、今後腹に負荷のかかる事は控えろ、と言われた。簡単に言うと、腹筋の筋トレみたいなことができない、みたいな感じだ。
意識が戻ったその日に、飯塚さんが病室に来た。黒服達も皆息を切らしている。相当急いで来たようだ。ダメだろ、病院で走っちゃ。
「浅城さん‼︎」
飯塚さんは泣きながら、こちらに抱きついてきた。腹のあたりに。それはもう凄い勢いで。
「い゛っ…‼︎腹、腹はダメなんですって!」
「ごめんなさい…ごめんなさい…!私のせいで‼︎」
「ずっと言ってますけど、あなたの安全が最優先なんですから。それに、私があなたに怪我させたくなかった。そう思って自分から刺されに行ったんです。あなたが気に病むことはありませんよ」
そもそも悪いのはあのストーカーだし、と付け加える。
あの後ストーカーは、ストーカー規制法と殺人未遂で逮捕。懲役は免れないとのことだ。
まぁ、それはそれとして…。なんとかしろ、という目で黒服がこちらを見てくる。
「そろそろ泣き止んでもらえませんかね…」
「…って訳で、奈々ちゃんが博臣に懐いたんだ」
「いつ聞いても凄い話よね、これ…」
「じゃあ、1月半怪我で活動休止したのは…」
「えぇ、これの事ですね。あの時は大変だったなー。会社帰るなり皆にキレられるもんだから」
「そりゃそうでしょ。あんな無茶苦茶なやり方したらさ…。何なの?確実に捕まえさせる為に刺されにいくとかさ。僕らもキレたよ」
「しょうがねぇじゃん。ストーカーなら碌に動かねぇって話、よくあるだろ?」
「だめ…。もう、こんなことしたら…」
「二度もやれませんってこんなの」
「本当に?本当に分かってる?」
「分かってますって」
怒りながら話す飯塚さんと、笑って答える浅城さん。その二人以外で集まったところで、谷村さんがこっそり話す。
「まだ気づかないの?浅城くんは」
「みたいだねぇ」
「え?何にですか?」
「あなたも…?いや、来たばかりなんだし当然よね。奈々ちゃん見てみなさい。あの子、どう見たって浅城くんのこと好きじゃない」
「えぇっ⁉︎」
「古崎ちゃん、声大きい」
そうだったのか。まぁ、あんな劇的な助け方されればな。…こうしてみると、あの人なんにも気付いてねぇな。わかりやすいぞ?飯塚さん。
はてさて…浅城さんが気付くのは、いつになるのやら。
「あっ、そうだ。博臣さん、私達集めたのって…?」
「やべ、忘れてた」
「もう」
「じゃあ話しますね。実は、我々で映画を作ることになりました」
…え?映画??
「「「「「えーっ⁉︎」」」」」
何人か話し方が似ててややこしいなって書いてて思いました。