雪美Pは元ユグドラシル   作:瑠和

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雪美の小説書きたかったけどなんかただの鎧武外伝になってしまいました。アイマス成分薄めですが設定は上手く使えたと思います。時系列は雪美が5位になった前回の総選挙直後、鎧武は本編終了から2年後です。
鎧武は2013年放送でアイドルマスターシンデレラガールズが2011年リリース。そこから時系列滅茶苦茶だったので雪美がデビューしてから1年近くで5位を取ったことにしてあります。まぁ読み切りなので悪しからず。

P.S
ちなみに続きが出ていますが、あくまでもこの鎧武外伝黒影トルーパーを多くの人に読んでもらいたいので続けているだけです。この話が本編で残りは外伝の外伝です。ここまで長くないですし、蛇足に感じたなら読まなくてもいいです。


メインストーリー
鎧武外伝・黒影トルーパー


俺の名前は月寒竜也。346プロに努めるプロデューサーだ今年で二年目になる。

 

私は二年前までユグドラシルという会社にいた。世界を包み込む理由なき悪意、ヘルヘイムの侵略に対抗、及び対応するために作られた組織。ヘルヘイムとは様々な世界を渡り歩き、侵略を繰り返す植物だ。ヘルヘイムの森の実は生物の食欲を刺激させ、自らを食させる。実を食べた生物は「インベス」と呼ばれる化け物に変貌する。

 

地球もその侵略を受けた。いち早くそれに気づいたユグドラシルはヘルヘイムを隠蔽。ヘルヘイムに侵略されても人間のまま生きていけるように対策を用意した。森の実を無害な栄養源「ロックシード」に変える「戦極ドライバー」である。ユグドラシルは戦極ドライバーを10億台を生産し、10億人のみ救う計画「プロジェクトアーク」を行っていた。

 

ロックシードは栄養源以外にも使用者をアーマードライダーに変身させる機能も持っている。量産された一部ドライバーはユグドラシルの社員に配られ、アーマードライダー黒影トルーパーとして街に頻出するヘルヘイムの植物の隠蔽作業に当たっていた。

 

しかし、主任が行方不明になったこと、ヘルヘイム側からの人為的侵略によってプロジェクトアークは破綻した。この騒動は戦極ドライバーの実験台になっていたダンスチーム達によって救われ、地球には平穏が戻った。私はユグドラシルで黒影トルーパー隊の一員だった。ユグドラシルが潰れた後は学生時代の先輩の口利きでこの346プロで世話になっている。

 

今、私がプロデュースしているアイドルの名前は佐城雪美という少女だ。10歳の少女で、とても良い子だ。346プロにはシンデレラガールズ総選挙というものがある。190名を超えるアイドルたちの総選挙だ。雪美はその選挙で今回めでたく、5位に輝いた。

 

そんな総選挙記念に行われることとなった握手会が本日行われる。

 

「みんな、そろそろ出番だ」

 

控室に声を掛けに行く。今回は一位から五位の本田未央、北条加蓮、夢見りあむ、遊佐こずえ、そして佐城雪美の五人だ。

 

俺が声をかけると、雪美は笑顔でこちらに駆けてきた。雪美を担当してからはや1年近く。俺はこの子に妙になつかれている。担当プロデューサーとしてはやりやすくて助かるが、なぜかはよくわからない。

 

「相変らずゆきみんになつかれてるねプロデューサー♪」

 

「はは…なんでかね」

 

「竜也、行こう♪」

 

「ああ。りあむ、変なこと言ってお客さん怒らせんなよ」

 

「はい…」

 

若干の不安要素もあるがまぁ問題はないだろう。そう思って俺は雪美と手を繋ぎ、会場に向かった。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

握手会は問題なく終了した。竜也は雪美たちを家に帰すため、車を運転した。他の四人を送り届け、最後は雪美を送り届けるだけとなった。雪美の家が遠いわけではない。だが、最初に送り届けるとまだ両親も帰っていない。

 

雪美に寂しい思いをさせないためにあえて最後に送り届けることとしたのだ。

 

「竜也…」

 

「どうした?」

 

「今日……ね…………嬉しかった…………私たち………応援してくれた……人たちと……会えて……」

 

「ああ。よかったな」

 

「………私が…5位になれたの…………竜也の…おかげ」

 

「違うよ。雪美の頑張りさ。俺はただ、雪美の手伝いをしてただけさ」

 

「………竜也がいたから……頑張れた…」

 

「……ありがとう」

 

雪美は竜也に礼を言う。雪美自身の頑張りももちろんある。しかし、ずっと一緒にいてくれた竜也のおかげだと雪美は思っていた。竜也と一緒に入れるこの送り迎えの時間が雪美は好きだった。

 

そんな時間を楽しんでいると、突然車に何かが落ちてきた。

 

「!?」

 

よくは見えないが、なにか大きなものがフロントガラスに覆い被さっている。竜也は慌ててハンドルをきった。車が電柱にぶつかり、停止する。

 

「雪美!無事か!?」

 

「うん…」

 

「ここにいろよ?」

 

竜也は急いで車から出てフロントガラスに覆い被さっていたものの確認にいったがそこにはなにもいなかった。

 

「……さっきのはいったい…」

 

「ギィィィ!」

 

そのとき、車の上からなにかが竜也を襲った。

 

「!」

 

竜也は受け身をとって襲撃者の攻撃を受け止め、蹴り飛ばした。

 

「ギィィィ…」

 

襲撃者が街灯の下に転がり、その正体が明らかになる。

 

「インベス!?」

 

それは正しく、ヘルヘイムの森の果実を口にした生物が変態した姿である怪物、インベスだった。インベスは立ち上がり、再び竜也を襲う。インベスは下級のモノだが、あくまでも化け物だ。いくら戦闘経験があるとはいえ、生身の人間がそう簡単に勝てるわけでもない。

 

「くそっ!」

 

竜也は力負けしつつも攻撃をいなし続ける。隙を見て雪美を連れて逃げ出せないか考えていると、小さな悲鳴が聞こえてきた。

 

「きゃぁ!」

 

見るとインベスがもう一匹現れ、車のドアを破壊して雪美を引きずり出そうとしていた。

 

「テメェ!!」

 

竜也の方にいるインベスの攻撃を避け、そのまま車に向かって走り出す。そして全体重を乗せたドロップキックをインベスに食らわした。さすがにそれでインベスはバランスは崩し、その場に倒れた。竜也は雪美を抱え、狭い裏路地に飛び込んでいった。

 

「雪美!大丈夫か!?怪我は!?」

 

「だ、大丈夫…」

 

やや涙目になっていながらも雪美は我慢していた。襲われたとき、きっとかなりの恐怖を感じたんだろう。

 

(くそっ……ヘルヘイムの脅威は去ったんじゃないのかよ…!)

 

裏路地から飛び出した時、真横から車が現れて二人を轢きかけたが急ブレーキで止まる。

 

「おい、大丈夫か」

 

車からはスーツ姿の男が現れた。飛び出してきたことに驚いただろうが、それ以上に怪我をしていたり女の子を抱えていることに疑問を持ったのだろう。

 

「あんたは…」

 

暗くてよく見えなかったが近付いてきたことで顔がはっきりし、竜也はその男に見覚えがあることに驚いた。

 

「…?」

 

現れた男は呉島貴虎。ユグドラシルを運営している一族、呉島家の御曹司でありプロジェクトアークの主任だった男だ。

 

「ギィィィ!!」

 

そこに追いかけてきたインベスが追いついてくる。

 

「インベスだと?」

 

「悪いが車に乗せてくれ!奴らに追われてる!」

 

「………君たちは車に乗って隠れていろ」

 

そういって貴虎は戦極ドライバーを取り出しながら二人の前に出る。

 

「戦極ドライバー…」

 

「すぐに片づける」

 

『メロン』

 

「変身」

 

貴虎はベルトを腰に巻き、メロンロックシードを使用した。貴虎の頭上にクラックが生成され、そこからメロンアーマーが出現する。ロックシードをベルトにセットし、ロックシードをカッティングブレードで切るとメロンアーマーが貴虎の頭に落ち、それが展開されてアーマードライダー斬月メロンアーマーへと変身を完了する。

 

『メロンアームズ、天下御免』

 

「はぁぁぁぁぁ!」

 

斬月に変身した貴虎は腰に装備された『無双セイバー』を手に、インベスに突貫する。一体目のインベスを切り裂き、二体目の攻撃をメロンディフェンダーで受け止めてそのまま弾き飛ばす。二体が倒れた隙に戦極ドライバーのカッティングブレードを一回動かした。

 

『メロンスカッシュ!』

 

メロンロックシードから発生したエネルギーが無双セイバーに溜まる。無双セイバーを前方のインベスに向けて振ると緑色の斬撃波が放たれた。さらに後方のインベスに一撃を放ち、最後に回転しながら二体のインベスに同時に斬撃波を浴びせるとインベスは爆裂霧散する。

 

インベスを倒し終えた貴虎は他にインベスがいないかを念のため確認し、メロンロックシードを閉じて変身を解除した。

 

「怪我はないか」

 

「ああ……」

 

 

 

-呉島家-

 

 

 

二人はそのまま呉島家へと案内された。インベスはヘルヘイムの種を運ぶ。インベスに付けられた傷からヘルヘイム芽が身体を蝕む症例があった。

 

「何事もなくてよかった」

 

「うん…」

 

検査を終えた二人は食堂まで案内された。食堂で雪美を待っていたのは、テーブルを埋め尽くすほどのスイーツだった。

 

「わぁ!」

 

「うぉ!」

 

「いらっしゃいませ。臨時シャルモンへようこそ!」

 

二人が驚いていると、そこにスキンヘッドで妙に筋肉質なコックらしき人物が現れた。その容姿に雪美は少々怯える。

 

「この度は災難な目に遭ったそうね。でももう大丈夫。このワテクシが作ったスイーツさえ食べれば嫌なことなんてS'envoler!!(飛んでいくわ~!!)」

 

濃すぎるキャラに二人が呆然としていると、貴虎が現れる。

 

「この騒動は、元を辿れば我々の責任だ。心ばかりの謝罪だ。受け取ってほしい。彼は……見た目に違和感があるかもしれないが、一流のパティシエだ。安心してほしい」

 

「あらメロンの君、酷いわね」

 

「り、竜也…」

 

瞳を輝かしている雪美が「本当に食べていいの?」と目で訴えてくる。竜也はこのオネェっぽい男のことを思い出していた。元軍人でありながらパティシエとしての腕は一流の凰蓮・ピエール・アルフォンゾという男だ。

 

沢芽市でシャルモンというスイーツ店を開いていたが、アーマードライダーとしても活動し、最終的に沢芽市を最後まで守ったメンバーの一人だ。ユグドラシルの協力者として活動していた時期もあり、竜也はシャルモンのスイーツの味に関しては良く知っていた。

 

「雪美、好きなだけ食べていいぞ。今日も頑張ったしな」

 

「……!うんっ!」

 

雪美は席についてどれから食べようかと悩んでいる。

 

「好きなだけ食べるといい…………………少しいいか」

 

貴虎は竜也を連れて隣の部屋に移動した。

 

「すまないな。妙なことに巻き込んでしまって」

 

「………気にしないでください。あれほどの騒ぎだったんですから。その爪痕が残るのは当然でしょう」

 

「……黒の菩提樹というカルト宗教集団がいる。ある男が作った組織で、それが今もヘルヘイムの力を悪用し、この街を初めとして世界中にロックシードやドライバーを兵器としてバラ撒いている。今回もその影響だと考えるが…」

 

稀にロックシードで出現させられ、そのままコントローラーを失って野良化するインベスもいると貴虎は話した。今回は運悪くそれに襲われたのではないかということだ。

 

「今回は………あのインベスは雪美を襲うというより、誘拐しようとしてたと思います………。恐らくですが」

 

「何?」

 

「だから多分、雪美を狙ってきている可能性はゼロではないかと…」

 

インベスは雪美を襲った時、車の中からわざわざ引きずり出そうとしていた。その様子から見て偶然襲われたというわけではないと考えていた。

 

「そうか…だが残念ながら今こちらから回せる戦力はない……回せないわけではないが、敵の正体を突き止め、彼女の安全が確立されるまで兵士を付かせるというのは、少し難しい…。まだ黒の菩提樹の掃討も、沢芽市の復興も終わっていない」

 

「だが、可能性がゼロじゃない限り!雪美をこれ以上危険にさらすわけには…」

 

「なら」

 

貴虎は懐から何かを取りだし、竜也の胸に押し当てた。

 

「君が彼女を守れ」

 

押し当てられたのは、戦極ドライバーとマツボックリロックシード。

 

「…これは」

 

「トルーパー隊だったのだろう?君は」

 

「………気づいていたのか?」

 

竜也は正体に気付かれたその瞬間から敬語を使わなくなった。

 

「トルーパー隊も、多くの者が犠牲になった。犠牲者の数を調べていた時、メンバー一覧で君の顔を見たのを覚えていただけだ………それとも、やはりまた戦いに巻き込まれるのは嫌だったか?なら、何とかこちらから人員を出せないか再度検討を」

 

「いや」

 

竜也は戦極ドライバーを見ながら答える。

 

「もし自分の担当アイドルを傷つけようとする輩がいるっていうなら、俺の手でケリをつけたい……ありがとう」

 

竜也はドライバーを受け取るとその部屋を後にした。それから雪美と一緒にスイーツを楽しみ、呉島家を出た。出る間際、雪美が凰蓮と何か話していたが、竜也は気には止めなかった。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

それから数日後、雪美は仕事の為にとある大学の敷地内の森へ訪れていた。総選挙で5位になってからというものの、他の上位メンバーもそうだが、撮影や仕事に引っ張りだこだ。

 

「キュケイジカンハジュウゴフンデェェェェェス!!!!!!!!!」

 

「疲れた…」

 

「お疲れ様だ。雪美」

 

休憩に入った雪美に竜也は飲み物を渡す。雪美はストローで水を飲み、一息つく。そんな雪美がふと竜也を見ると、竜也がどこか落ち着かない様子なのを感じ取った。

 

襲撃が行われないか心配しているのだろう。しかしその様子が雪美にとって何かを感じさせてしまったのだろう。

 

「竜也………」

 

「どうした?」

 

「約束…」

 

「約束?」

 

雪美が突拍子もないことを口にした。一体何かと思っていると、遠くから悲鳴が聞こえた。

 

「きゃぁぁぁぁぁっ!!」

 

「!」

 

森の奥からインベスが現れる。インベスは近くにいる人を退かすように暴れる。そして、雪美の姿を確認すると、まっすぐにそちらへ走っていった。

 

「ギィィィ!!!」

 

「ギシャァァァ!!」

 

「やっぱり雪美が目的かよ!雪美!」

 

竜也は雪美を連れて車に向かって走る。

 

「ここで隠れてろ!」

 

「うん……」

 

雪美を車に入れると、竜也は戦極ドライバーを取り出す。

 

「………まさかまたこれを使うことになるとはな…」

 

戦極ドライバーを腰に巻き、マツボックリロックシードを開錠する。

 

『マツボックリ!』

 

マツボックリロックシードをベルトにセットし、カッティングブレードでロックシードを展開する。

 

『マツボックリアームズ!一撃!イン・ザ・シャドウ!!』

 

竜也は仮面ライダー黒影トルーパーマツボックリアームズに変身した。

 

「おぉぉぉぉぉ!!」

 

武器の影松を構え、インベスに突貫する。今回現れたインベスは三体。内一体が上級インベスのビャッコインベスだ。

 

黒影トルーパーになった竜也は下級インベスを影松でいなし、ビャッコインベスに身体でぶつかっていく。ビャッコインベスを押し下がらせ、蹴り飛ばす。

 

「ギィィィ!」

 

「そっちにいくんじゃねぇ!」

 

いなした下級インベスが車に向かおうとしているのをみて竜也は後ろから斬撃を食らわせる。下級インベスに集中していると背後からビャッコインベスの爪で切り裂かれる。

 

「ぐぁ!」

 

地面を転がり、車に激突する。

 

「く、くそっ…」

 

影松を杖代わりに立ち上がり、再び構える。

 

(なんでこんなことしてんだろうな…もう争いに巻き込まれないような世界にいたかったのに…)

 

身体が痛い。ただアイドルをプロデュースしているだけだったはずだ。

 

(でも…)

 

竜也は車の中の雪美に視線を向けた。雪美は明らかに怯えている。しかし、車の外の黒影トルーパーの姿の竜也に気付くと、無理に笑顔を作る。きっと自分は大丈夫だと言いたいのだろう。

 

(こんな小さい雪美がこんなに頑張ってんだ………俺が頑張らなくてどうする!何より!雪美をこんな目に遭わせる連中を、俺は絶対許さねぇ!!)

 

影松を構え直し、竜也はインベスに向かう。影松を横にして三匹まとめて車から離す。そして三体に一撃ずつ加える。さらに間髪入れずにカッティングブレードを二回稼働させる。

 

『マツボックリオーレ!!』

 

影松の穂の部分にエネルギーが溜まり、エネルギーはマツボックリを模る。そのまま影松を突くとマツボックリ型のエネルギーの塊がインベスに飛んでいく。それを三体に向けて放ったが、爆裂霧散したのは下級インベスのみだった。

 

ビャッコインベスは吹っ飛んだが未だに健在だ。

 

「だぁぁぁぁぁ!!」

 

「ギシャァァァァァ!!」

 

ビャッコインベスとのサシの勝負となった。ビャッコインベスの攻撃を避け、影松の石突部分でビャッコインベスの膝裏を突き、バランスを崩したところに一撃を入れようとしたが両腕に防がれる。

 

「クっ!」

 

「がぁぁぁぁ!」

 

影松を弾かれ、鉤爪に切り裂かれる。さらに倒れかかったところにインベスが特殊なエネルギー派を当てられ、吹っ飛んだ。

 

だが吹っ飛んだ場所にちょうど弾かれた影松が落ちているのを見つけ、それを掴んだ。

 

「うわぁぁぁぁ!」

 

やけくそ気味に立ち上がりながらカッティングブレードを三回稼働させる。

 

『マツボックリスパーキング!』

 

影松を抱き抱えるように縦構えにし、高速回転しながら飛び上がる。そしてそのままインベスに突貫していった。その一撃はビャッコインベスは少し耐えながらも最終的に竜也が押し勝ち、ビャッコインベスを撃破した。

 

気が抜けた竜也はその場に座り込む。

 

「はぁ、はぁ、はぁ………やった…」

 

「竜也!」

 

安全を確認した雪美が車から飛び出し、竜也のところに走る。雪美が飛び付き、竜也はバランスを崩しつつも雪美を抱き締める。

 

「怪我はないか?」

 

「うん、竜也が………守ってくれた」

 

「よかった…」

 

しかし、安心したのもつかの間。なにかが近づいてくるのを察知した竜也は慌てて自分が盾になるように、雪美を抱き抱えた。

 

「はぁ!」

 

竜也は迫ってきた何者かに切り裂かれ、雪美と一緒に吹っ飛んだ。

 

「竜也!」

 

「大丈夫だ……雪美、隠れてろ」

 

雪美は怯えながらも走り、木の影に隠れた。

 

立ち上がり、襲撃してきた者の方を向くとそこにいたのは緑色のアーマードライダーだった。しかも使っているベルトはゲネシスドライバーだ。

 

「エナジーライダー…。お前が今回の事件の首謀者ってわけか」

 

「…」

 

アーマードライダーは返事をしない。黙ったままソニックアローを構え、竜也を襲ってきた。

 

「やるしかないのか!」

 

連戦になってしまうが仕方なかった。影松の切っ先を向けて走り出す。

 

「はぁ!」

 

「っ!」

 

ソニックアローの斬撃を影松で受けるが、簡単に力負けする。木に叩きつけられながらもなんとか押しきられないように耐える。

 

「貴様!何者だ!」

 

「俺は…アーマードライダーバイオレンス……」

 

「なんのために雪美を襲う!」

 

「…」

 

その質問には答えず、バイオレンスと名乗ったアーマードライダーは膝蹴りを繰り出して竜也のバランスを崩す。そしてソニックアローを構え直して二連撃を加える。

 

「ぐぁぁ!」

 

竜也は地面を転がるがすぐに構え直す。

 

「…」

 

バイオレンスはベルトにセットしているエナジーロックシードを外し、ソニックアローにセットする。

 

『ロック・オン』

 

強力な一撃が来る。それを察した竜也は急いでカッティングブレードを稼働させる。

 

『マツボックリスカッシュ!』

 

その場から飛び上がり、影松を前方に突きだしながらバイオレンスに向かって落下する。しかしバイオレンスはソニックアローのレバーを引き、エネルギーを溜める。

 

「うらぁぁぁぁぁぁ!」

 

『ライムエナジー!!』

 

バイオレンスの目の前まで影松が迫ったが、命中する直前にソニックアローから放たれたエネルギー矢に撃ち抜かれて吹っ飛んだ。

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

防御姿勢もとれずに受けた大ダメージによって竜也の変身は強制解除された。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

生身の状態で地面に叩きつけられ、そのまま地面を滑るように飛ばされていった。竜也の痛々しい叫びが森に響き渡る。

 

「竜也!!」

 

木の影に隠れていた雪美が飛び出し、竜也のもとへ駆けつける。

 

「大丈夫……?」

 

竜也の痛々しい姿をみて雪美は涙を流す。

 

「がはっ!あぁぁぁっ!」

 

「竜也………竜也…っ!」

 

「雪……美………逃げろ…!はやく……」

 

「駄目……竜也も………一緒じゃないと……」

 

雪美は竜也から離れようとしない。そんな雪美にバイオレンスが近づく。

 

「く………あぁぁ!」

 

痛む身体を無理矢理動かし、竜也は一緒に転がったロックシードを掴んで変身しようとする。

 

「竜也………ダメ…っ!」

 

「…」

 

バイオレンスが雪美に手を伸ばした時だった。

 

『ドラゴンフルーツエナジー!!』

 

龍型のエネルギーがバイオレンスを襲う。

 

「!!」

 

バイオレンスはその攻撃を何とか防ぐが軽くふっ飛ばされる。

 

「はぁ!」

 

何処からか新たなアーマードライダーが飛び出してきた。

 

「アー……マード…ライダー……また!?」

 

「大丈夫ですか!?」

 

新しく現れたアーマードライダーは竜也と雪美の前に立ち、バイオレンスに刃を向けた。どうやら敵ではない様だ。

 

「………」

 

バイオレンスは状況が良くないと判断したのか、そのまま退散する。バイオレンスが退散したことを確認すると、アーマードライダーは変身を解除する。

 

「何とかなったみたいですね」

 

アーマードライダーに変身していたのは、若い青年だった。

 

「君………は…」

 

竜也はバイオレンスが撤退したことで気が緩んだのか、雪美の腕の中で気絶した。

 

「竜也!」

 

「大丈夫。気絶しただけみたいです」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「う………」

 

竜也が目を覚ますと、そこは病院だった。

 

「あ、起きた!」

 

視界の中に入ってきたのは346プロに所属するアイドルの久川颯だった。彼女は竜也が担当しているアイドルの一人だ。

 

「よかった~。階段から転げ落ちたんだって?も~あんまり雪美ちゃん心配させちゃダメだよ~」

 

颯が誰からか聞いた事情を話すが、それは竜也の記憶と噛み合わなかった。

 

(階段から………?そうか……雪美が変な連中に狙われてるなんて、大っぴらにできる話じゃないか…ユグドラシルの連中がごまかしたんだな…)

 

「ああ、ちょっと疲れたのかな?」

 

「Pちゃん最近多忙だもんね?忙しいのは分かるけどちょっとは休まなきゃ」

 

「………そうだな…そうするよ…」

 

派手にやられたが、変身していたおかげでそこまで大きな怪我はなかったらしい。今日中には退院できるようだ。

 

「雪美は?」

 

「今日は総選挙上位のみんなとお仕事。雪美ちゃんには未央さんのプロデューサーが付いてるから安心して?」

 

「どこでだ!?」

 

「え!?えっと…ラジオ局だったかな?ラジオ局でインタビュー…」

 

急に血相を変えた竜也に颯は驚きつつも行先を思い出す。

 

「ラジオ局…」

 

関係者以外立ち入り禁止のラジオ局であればそうそう襲われることもないかもしれないが、心配は心配だ。竜也は急いでベッドから飛び出そうとするが、痛みですぐに止まる。

 

「ぐぅぅぅ…」

 

「駄目だよPちゃん!大したことなくても今日くらいは安静にしておかなきゃ!」

 

「でも…」

 

「落ち着け」

 

そこに、呉島貴虎が現れる。突然現れた男に颯は戸惑う。

 

「誰…?Pちゃんの知り合い?」

 

「私は彼の知り合いだ。すまないが…彼と二人にしてくれないか?」

 

「う、うん…」

 

颯は心配そうな表情で竜也を見るが、竜也は目で「大丈夫だ」と伝える。颯は後ろ髪を引かれる思いで部屋を出て行った。

 

「まさか本当に彼女が狙われるとはな………こちらの判断ミスだ。すまない」

 

「………いや…。確証もなかったろうしな。仕方ないさ」

 

「今は俺の弟が彼女の護衛に付いている。今日は学校が休みだからな。先日君たちを助けたのも俺の弟だ」

 

「そうか…」

 

「今回敵の首謀者らしき人物が現れたことで事件の全貌が見えてきた。とりあえず首謀者を捕まえるまで、できる限りの協力はする。とにかく今は休め。こちらの方で調査はしておく。現段階で彼女の仕事の予定は?」

 

「今日のラジオ以外は特にない。ただ、もうすぐ大きなライブがある。それが狙われたら…」

 

「………そうだな。ともかく対策は何か考えておく。今は休むといい」

 

「ああ…」

 

貴虎はお見舞いの品を置いて出て行った。

 

「Pちゃん、大丈夫?」

 

「ああ…そういや颯、お前学校は?」

 

「今日は、はーたちの学校開校記念日でお休みだったの。だから今日ははーがPちゃんの面倒見ててあげるね♪雪美ちゃんにも頼まれたから」

 

「…はいはい」

 

夕方、仕事を終えた雪美が大急ぎで病院へやってきた。

 

「竜也!」

 

「雪美!」

 

「無事でよかった………」

 

 

 

-翌日-

 

 

 

退院した竜也は翌日元気に出社した。いつも通り仕事をしていると学校を終えたアイドルたちが続々と事務所に集まってきた。雪美ももちろんそうだ。雪美は自分のせいで傷付く竜也を心配し、大急ぎで来ていた。そして来るや否やすぐに竜也のそばに来て離れようとしなかった。

 

「雪美、そんなに心配しないでも大丈夫だよ」

 

「でも……私のせいで…竜也が傷付くの………嫌」

 

「そう長くは心配させない………」

 

竜也はマツボックリロックシードを取り出してそれを眺めながら言った。

 

「おはようございます!あ、プロデューサーさん!雪美ちゃんも」

 

元気よく部屋に入ってきたのは乙倉悠貴。ジュニアモデルからアイドルになった娘だ。彼女も竜也の担当である。

 

「今日も雪美ちゃんプロデューサーさんにぴったりですね!」

 

「まぁな」

 

普段と変わらない流れで部屋に入ってきているその時だった、乙倉は竜也が手に持っているものを見て足を止める。

 

「それ…」

 

「ん?ああ、これは…何でもない。気にしないで」

 

「私、それに似たものこの間見ましたよ」

 

「え?」

 

悠貴から細かい話を聞くと、次回行われるライブの打ち合わせの時、346プロの会社に来ていたイベント会社の重役が乗ってきた車の運転手が持っていたのを見かけとのことだった。竜也は急いで貴虎に連絡を取った。

 

[イベント会社の運転手だと?]

 

「ああ。確証はないがそいつが犯人の可能性が高い」

 

[わかった。調べてみよう。こちらとしても、早急に見付けて犯人を保護しなければならない]

 

「保護?どういうことだ?」

 

急に保護と言い出したことに竜也は疑問を抱く。

 

[光実から聞いた話だが、犯人の使っているロックシード………それはかつて開発されたプロトタイプだ。使用を続ければ、恐らく………]

 

「………死ぬのか?」

 

[死ぬかもしれんが、それ以上に最悪の場合アーマードライダーよりも厄介なインベスになりかねん。お前たちにとっては嫌な相手もしれないが、それだけは頭の隅に置いておいてくれ。それから、もしライブまでに事件が解決しなかったらの話なんだが…]

 

「なんだ?」

 

[光実の提案なんだが、ビートライダーズをバックダンサーにつけたらどうだと言う話だ。ビートライダーズの中には今2人戦極ドライバーを持っている人間がいる。内一人が光実だ。ライブ中にインベスの襲撃があってもすぐに対応できるはずだ]

 

「そうだな…」

 

[ビートライダーズには光実から話は通せる。協力を拒むようなやつらではないからそこは問題ないだろう。あとは…]

 

「俺次第ってわけか」

 

大型のライブのバックダンサーにプロでもなんでもないストリートダンサーをバックダンサーに出すなんてそう簡単に出来ることではない。つまり、それをいかに上と交渉できるかが竜也の腕の見せ所と言うわけだ。

 

話が決まってから竜也はすぐにライブ関係者に話を通し、ビートライダーズがバックダンサーとしてライブに出れるように各方面に頭を下げに行った。

 

ビートライダーズをライブに出す許可をもらうまでは中々険しい道のりであることが明らかになっていた。そして竜也は今日も徹夜でビートライダーズのプレゼン資料を作っていた。

 

長いことPCに向かっていると、背後から気配を感じた。

 

「顔に疲れたと書いてありますよ。お前」

 

「え?」

 

振り向くとそこには白雪千夜が立っていた。

 

「千夜!お前なんでこんな夜中に!」

 

「夜中?何を言っているんだお前は。もう朝ですよ」

 

ふと窓を見るといつの間にか太陽が昇っている。それにも気づかないくらい集中していたか、気づかぬ内に眠っていたのだろう。今日は日曜なので千夜も朝から事務所に来ていたのだろう。

 

「そうか…」

 

「…」

 

千夜は竜也に近づくと、机においてあった竜也の財布を奪って離れた。

 

「なっ!?」

 

「ほれほれ、早く取り返さないとお前の財布の中身を空にした上でキャッシュカードも上限まで使うぞ」

 

なにやら急に挑発してきた。構う気力もない竜也はため息つく。

 

「なんだ急に。ほら、返せ」

 

「冗談ではありませんよ。ほら、早く取り返してみなさい」

 

「まったく」

 

席から離れ、千夜に近づく。そして財布に手を伸ばした瞬間、千夜は竜也の腕を掴んで一気に床に倒して押さえつけた。

 

「あだだ!なにするんだ千夜!」

 

「…多少格闘の心得があるとはいえ、高校生に負けるとは、兵士失格ですね」

 

「なに!?」

 

千夜は押さえつけた竜也の懐からマツボックリロックシードを取り出す。

 

「千夜!それは!」

 

「最近こんなものを使っている不審者を相手にしているらしいですね」

 

「どうしてそれを…」

 

「………お嬢様の家は大きいですから。色々と情報は流れてくるのですよ。お前の様子が最近変だとお嬢様が気にしておられたので勝手に調べました。ガラにもないことをしてますね」

 

「悪かったな…」

 

「………お前は雪美さんが安心できるように色々やってるようですが、彼女は不審者や化け物などに怯えていませんよ」

 

「え?」

 

「決して怖くないわけではないでしょうが、それ以上に恐れているのはお前が傷付くことですよ」

 

「………」

 

「それがわからないお前じゃないでしょう」

 

千夜に言われ、胸が痛んだ。確かに今一番雪美に涙を流させているのはあのバイオレンスとかいうアーマードライダーじゃない。雪美に心配ばかりかけている竜也の方だ。雪美はインベスに襲われようと、目の前で戦闘が起ころうと決して泣くことはなかった。

 

しかし、竜也が傷付いたことに関して涙を流し、もっと怯えていた。

 

「雪美…」

 

「わかったらせめて体調管理くらいしっかりしなさい」

 

千夜は竜也を離し、奪った財布を使って近くの自販機でココアを二つ買う。内一つと財布を竜也に投げた。

 

「それを飲んで少し眠れ。これは調査代として頂いておきますから」

 

去り際に買ったココアを見せながら千夜は言った。

 

「お好きにどーぞ」

 

言われた通り竜也はココアを飲んでソファーで横になった。やはり疲れていたのかすぐに眠くなり、深い眠りへと誘われていった。

 

眠っているなかで竜也は夢をみた。夢と言うより、かなり昔の記憶を追体験しているような、そんな夢。

 

(大丈夫。必ず守るから。どこにいても、必ず君の手を取りに行くから…)

 

自然と目を覚ます。目を覚ました竜也が目にしたのは雪美の頭だった。

 

「………雪美?」

 

「………ん?……竜也……………起きた?」

 

雪美がいつの間にか竜也の上で眠っていたのだ。

 

「何してるんだ…」

 

「プロデューサーさんをあっためてあげたいんだってさ」

 

気付けば北条加蓮も来ていた。考えてみれば今日は雪美、加蓮、りあむたちの打ち合わせがあったのだ。

 

「今は…」

 

時間を確認すると、眠り始めた時間は7時前くらいだったがもう12時過ぎだ。よく眠っていたらしい。

 

「寝すぎたな…」

 

「今日は元々お休みだったんでしょ?休日出勤お疲れ様」

 

「………ありがとう」

 

「雪美、プロデューサーさん起きたし、お昼だからみんなでお昼ご飯食べようか」

 

「うん………なにか……作ってもらってくる」

 

加蓮に言われ、雪美は食堂に向かっていった。

 

「いやでも打ち合わせ…」

 

「はいはい、いいからいいから。ドクターストップでーす。プロデューサーが死んでるように寝てるの見て、雪美すっごく心配してたんだからね?小さい子にこれ以上心配かけないの」

 

「心配かけないために休んでたんだがな………同じことを千夜にも言われたんだ」

 

「タイミング悪かったかもね」

 

二人で話していると、そこにりあむがやってきた。

 

「…………っはざまーす………いまだに事務所に来るときはキョドってるりあむちゃんだよ………ああああーっ!Pサマが倒れてるぅーっ!?」

 

来るそうそうソファに横になっている竜也を見て大騒ぎを始めた。

 

「あー、りあむ。静かにね。ちょっと休憩してるだけだから」

 

「ひょっとして僕のせい!?僕がグズったりSNS燃やしたり構ってほしくて電凸したりヨソのお偉いさんにお茶くみさせたり諸々の後始末でPサマが過労の危機に!?ごめんPサマうわーん!」

 

謝罪しているつもりだろうが竜也には耳に響いているだけだ。騒ぐりあむを加蓮が静止させる。

 

「もう!し・ず・か・に!!」

 

「はいっ!サーセン!」

 

りあむがおとなしくなったタイミングで。雪美が食堂から戻ってきた。その手にはトレーが抱えられておりおかゆが乗っている。

 

「……………加蓮………………食堂の人が……おかゆ、作ってくれた」

 

「ありがと雪美。じゃあ…」

 

「それから、竜也…………これ」

 

雪美はバッグの中からかわいらしい包装で包まれた何かを出した。

 

「これは…?」

 

「いろんな人に………手伝ってもらった…………」

 

 

-数日前 呉島家-

 

 

 

「どれも………美味しい……」

 

「お気に召したようで光栄ですわ、Dame(お嬢様)?」

 

凰蓮の作ったスイーツに舌を打ちながら雪美はさっき襲われたことなどもう忘れ始めていた。なにせ世界が認めるレベルのパティシエの作るスイーツだ。嫌なことなど簡単に飛んでいく。

 

「これ、どうやって………作ったの?」

 

雪美は食べていたスイーツの中で特に気に入ったタルトを指して聞く。

 

「あら、このワテクシの様にスイーツを作りたいっていうのかしら?」

 

「…………竜也に………送りたい……………竜也は………私の為に…………いつも、頑張ってくれてる………から。作り方…………教えて………ください」

 

「ワテクシはプロだけど……いくら働いているとはいえ10才の女の子からお金を取るのはさすがに大人げないわよね…。本来ノンギャラなんてアマチュアの極み。だけどメロンの君がはじめてこのワテクシを「パティシエ」として雇ってくれたことに免じて教えてあげなくもないわ」

 

「本当?」

 

雪美の顔がパァッと明るくなった。

 

「でもね、一流のパティシエが作るスイーツっていうのは一日二日で手に入るほど甘くないの。それはお分かり?」

 

雪美はこくりと頷く。

 

「あなた、料理の経験は?」

 

「………あんまり、ない………………」

 

雪美はすこししょんぼりした様子でうつむく。そんな雪美を凰蓮が激昂した。

 

「いい?大切な人へ贈るものを自分で作るって言うなら大切なのは技術でもお金でもない!そう!無限大の愛情!!」

 

「……」

 

「あなたの胸にはそれが溢れてるわ!そう!本物の愛!アイドルとしてはまだまだだけど、その胸の愛だけは本物だってワテクシにはわかるわ!だから料理経験のほとんどないあなたにも愛情込めて作れるレシピを送るわ!!」

 

そうして送られたレシピは簡単に作れる塩クッキーのレシピだった。プロである凰蓮は料理の経験の少ない雪美に作れるものの限界を見抜いていたのだろう。雪美はそのレシピを事務所の料理上手なアイドルと共に作り上げたのだ。

 

それをいま、雪美から竜也に送ったのだ。

 

「雪美………」

 

「みんなに手伝ってもらって…作った………」

 

「………ありがとう…」

 

「それから、これも………」

 

雪美はポケットから何かのキーホルダーを出して渡した。

 

「これは………?」

 

「………出……………」

 

「え?」

 

何か雪美が小さな声で言った。よく聞き取れずに竜也は聞き返す。雪美は少し間を開けてからもう一度口を開いた。

 

「お守り…………だから………」

 

「そうか、ありがとうな」

 

「……………」

 

それから、数日。竜也の頑張りでなんとかビートライダーズはライブに参加できる運びとなった。

 

そして、ライブ当日。

 

この日まで調査を進めていたが結局犯人の手掛かりは掴めないでいた。悠貴から手に入れた情報を基に調べ、怪しい人物は何人か見つけたが確証がないとのことだった。貴虎はあと少しだと言ったが、既にライブ当日だ。どこまで対策できるか不安なところはあったが、ライブの中止もできなかった。

 

ライブが始まる数時間前、竜也はリハーサルや打ち合わせを行っていた。

 

「それでこっちは………」

 

スタッフと話していると、衣装などを運んでいたスタッフが律叉にぶつかって衣装の箱を落としてしまった。

 

「おい!大丈夫か!」

 

「はい………すいません」

 

妙に具合の悪そうなスタッフだったがそのまま荷物を回収して去っていった。

 

「………あの…」

 

「ああ、すいません。それで………」

 

「竜也さーん!」

 

話を再開しようとしたときに、誰かが竜也の名前を呼んだ。声の主は呉島光実だった。光実の後ろにはビートライダーズの各メンバーが揃っている。

 

「おお、ビートライダーズ」

 

「紹介します。チームバロンのザックです」

 

「ザックだ。よろしくな」

 

「ああ。今回は頼む」

 

光実が唯一紹介したザックという男。それが光実ともう一人のビートライダーズに所属するアーマードライダーであることは明白だった。

 

打ち合わせとリハーサルが終わり、いよいよ開場となった。今のところ不審者や怪しい荷物などは見つかっておらず、このライブが狙われないことを祈るしかない。

 

「雪美………」

 

竜也は戦極ドライバーとロックシードを手に持って構えていた。何かほかにできることがないか考えていると、携帯が鳴り響いた。貴虎からだ。

 

「どうした」

 

[やっと犯人が特定できたぞ!]

 

「本当か!」

 

予想外の連絡に竜也は飛び上る。

 

[犯人の名前は法堂斗真。SNSで妙に佐城雪美に対してこじれた発言をしている男だ。凰蓮が新たに潰した黒の菩薩樹の客リストにこの男がいたことをようやく突き止めた]

 

「そんなことはどうでもいい!そいつは今どこに………」

 

[そいつは………今回ライブが行われる会場をセットしている設営会社に所属している!会場にいる可能性は高い!]

 

「!」

 

竜也は慌てて部屋から飛び出した。貴虎から送られてきた斗真の写真はさっき竜也にぶつかったスタッフだった。写真とさっき見た顔は全く違った。恐らくプロトタイプのロックシードを使用した弊害だと思われる。

 

大慌てでスタッフ一人一人の顔を確認しながら走っていると、急に袖を引っ張られた。

 

「!?」

 

振り返るとそこにはアイドルの依田芳乃がいた。彼女も竜也の担当するアイドルの一人だ。

 

「そなたー?何を慌てているのでしてー?」

 

「芳乃………何でもないんだ…。芳乃は自分の出番に集中しててくれ…」

 

竜也は無理に笑顔を作って芳乃に笑いかける。本番前で本当は緊張している筈だ。それなのに芳乃は竜也の尋常じゃない様子に気をかけたのだ。

 

「もちろんー。わたくしはわたくしのーそなたはそなたの戦場で戦うのでしてー」

 

「ああ。頑張れよ。応援してるからな」

 

「ところでそなたー?そなたの探しものは、あちらでございましてー?」

 

芳乃が廊下の奥を指さす。するとそこにはフラフラと歩くスタッフの姿が見えた。様子とさっき見た時と同じ服装をしていることから恐らく斗真だろう。

 

「あいつ………っ!芳乃!ありがとう!」

 

竜也は急いで走っていった。そんな竜也を芳乃は手をひらひらと振って見送った。

 

「失せもの探しは得意なのでしてー」

 

廊下の奥で竜也は斗真に追いつく。

 

「待て!!」

 

竜也が叫ぶと、スタッフが立ち止まって振り返った。

 

「はい?」

 

間違いなく斗真だった。

 

「どこへ行くつもりだ?」

 

「………舞台袖に、小物を運びに…」

 

「その先はアリーナ席だ。そっから客に紛れてインベスでも出すつもりか?」

 

「なんの話ですか?私はただの…」

 

「お前の正体は割れてんだよ!法堂斗真!!!」

 

竜也は戦極ドライバーを出して叫んだ。それを見ると斗真はすぐさまAランクロックシードを五つ開錠して上級インベスを五体召喚した。

 

「!」

 

インベスに竜也を襲わせ、斗真は走り去っていく。

 

「テメェ!待て!」

 

インベスを放置できるわけもなく、その場でインベスを倒そうと構えるが横から誰かがインベスにタックルをかました。

 

「なっ!」

 

「ここは俺に任せろ!」

 

現れたのはビートライダーズのザックだった。本来はバックダンサーとして雪美の護衛に着く予定だったが、たまたま通りかかったのだ。ザックは戦極ドライバーを腰に巻き、ロックシードを取り出す。

 

「はやく奴を!」

 

「ああ!すまない!」

 

竜也が走っていくとザックはロックシードを開錠する。

 

「変身!」

 

 

 

-アリーナ席入口-

 

 

 

斗真がアリーナ席に入ろうとした直前、竜也はタックルでそこから離す。

 

「おらぁぁぁぁぁ!」

 

そのまま取っ組み合いながら入り口から離す。

 

「貴様…」

 

「………」

 

二人は向き合いながらそれぞれドライバーを出して腰に巻いた。

 

『マツボックリ!』

 

『ライムエナジー!』

 

「「変身!!」」

 

『マツボックリアームズ!一撃!イン・ザ・シャドウ!!』

 

『ライムエナジーアームズ!』

 

二人はそれぞれアーマードライダー黒影トルーパーマツボックリアームズ、アーマードライダーバイオレンスライムエナジーアームズに変身してそれぞれの武器を構えた。ゲネシスドライバーと戦極ドライバーでは性能差は歴然である。それは前回の戦闘でも証明済みだ。だが、だからと言って引き下がるわけにもいかない。

 

「はぁぁぁぁ!!」

 

竜也が影松を構えて突撃するが、斗真はソニックアローを構えてエネルギー矢を放った。それを影松で弾きながら竜也は走り続ける。

 

「はぁ!!!」

 

影松の斬撃をソニックアローで押さえる。

 

「なぜこんなことをする!?答えろ!」

 

「俺が雪美を一番愛していたんだ!」

 

「なに!?」

 

「彼女がデビューしてからずっと俺は雪美を追い続けてきたんだ!彼女のいるイベントは全部行った!それなのに………あの日の握手会で彼女は俺のことを覚えてないって言ったんだ!」

 

「そんな理由で…………ふざけんな!!」

 

「うるさい!!」

 

斗真は影松を弾き、ソニックアローのエネルギー矢をゼロ距離で放った。

 

「ぐぁぁ!」

 

竜也は吹っ飛んだ。

 

「それだけじゃない!いままで雪美を一番応援してきたのは俺なのに!彼女が総選挙で五位になった瞬間世間が彼女を評価し始めた……彼女を俺だけのものにする………そのために手に入れた力だ!」

 

「テメェェェェ!!」

 

 

 

-ステージ袖-

 

 

 

「犯人が現れた?」

 

舞台袖で準備をしていた光実の基にザックからの連絡が入った。

 

[俺はこいつらの相手で手いっぱいだ!そっちの警備は頼む!]

 

「わかった………」

 

光実は懐からロックシードを取り出し、辺りを見回した。そこにちょうど一曲終わらせてステージ袖に戻ってきた悠貴がいた。

 

「あの!竜也プロデューサーが担当してる乙倉悠貴さんですよね!」

 

「え、は、はい」

 

「これを竜也プロデューサーに届けてもらえませんか?恐らく会場の外にいると思いますが、これがライブを成功に導く鍵になる筈です!」

 

 

 

-会場外-

 

 

 

「うぁぁぁぁぁ!!」

 

戦闘が激化していく中で戦闘場所は外まで広がる。正しくは圧倒されている竜也が外までふっ飛ばされたのだ。

 

「ぐぁ……」

 

「これ以上邪魔はさせない………アンタ確か雪美ちゃんのプロデューサーだったな………あんたも気にくわないんだ…いつも雪美ちゃんと仲良くしやがって…見てたんだぜ?」

 

「クソがぁ!」

 

竜也は立ち上がり、カッティングブレードを稼働させる。

 

『マツボックリスカッシュ!!』

 

「はぁぁぁ!」

 

一気に飛びあがり竜也は影松を斗真に向けた。

 

「うらぁぁぁぁぁぁ!!」

 

影松の先端にマツボックリ型のエネルギーが形成され、強力な一撃が斗真に決まる。斗真は吹っ飛んだ。

 

「はぁ、はぁ………やったか?」

 

「………」

 

斗真は何事もなかったかのように立ちあがり、ライムエナジーロックシードをベルトから外し、ソニックアローにセットする。

 

『ロック・オン』

 

「はぁぁぁぁ………」

 

ソニックアローのレバーを引き、エネルギーをチャージする。

 

「…っ!」

 

「消えろ」

 

『ライムエナジー!!』

 

「あぁぁぁぁ!!」

 

『マツボックリオーレ!!』

 

ほぼビームのエネルギー矢が放たれる。それと同時に竜也はカッティングブレードを二回稼働し、エネルギーを影松に溜めて対抗しようとしたが、簡単に負けてふっ飛ばされる。

 

「がぁぁぁ!」

 

竜也の変身は強制解除された。

 

「がはっ……くそっ………」

 

起き上がろうとするが、すぐに倒れてしまう。その時、竜也のスーツの懐から何かかが落ちた。

 

「これは………」

 

雪美が渡してくれたお守りだった。木と果物を模ったようなキーホルダー。それをよく見ると竜也は見覚えがあることに気付く。

 

「まさか…」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

-二年前-

 

これはまだ竜也がユグドラシルに所属しており、ヘルヘイムの脅威があった頃の話だ。竜也たち黒影トルーパー隊は出現したクラックの処理に出ていた。クラックの周りの植物を焼却処分していると、近くから悲鳴が聞こえた。

 

「あれは!」

 

小さな女の子がクラックから出現したインベスに襲われていた。

 

「まずい!」

 

竜也が慌てて助けに行こうとする。しかし、別の隊員がそれを止める。

 

「まて、今俺らが出て行けば、ユグドラシルの動きが一般の人々にバレる!」

 

「だが!」

 

「放っておいてもビートライダーズの連中が来るさ。まだ奴らの隠れ蓑を利用させてもらうしかない」

 

「………」

 

竜也は襲われている女の子をみた。そしてあることに気付く。

 

「あの子が持ってる袋……沢芽市の有名なお土産店の袋だ……」

 

「え?」

 

「旅行者ならいくらでもごまかせる!それにまだ小さい子供だ!放っておくなんてできるか!」

 

そういって竜也は飛び出していった。

 

「おい!」

 

「やめろぉぉぉぉぉ!」

 

相手は下級インベスだった。すぐに方は付いた。

 

助けた少女は予想通り旅行者だった。京都から沢芽市に観光に来ていたが、迷子になったところでインベスに襲われたらしい。

 

「この度は娘を助けていただいてありがとうございました!」

 

「いえ、気にしないでください。それより…」

 

助けた少女は竜也から離れようとしない。懐かれたようだ。

 

「ほら、離れなさい」

 

「………」

 

少女は首を横に振る。話を聞くとあまり少女の両親は家にいないらしい。親よりもちゃんと守ってくれた竜也に懐いたんだろう。

 

「な、君。これを上げるよ」

 

いつまでも話してくれない少女に、竜也はユグドラシルが販売しているキーホルダーを渡した。

 

「…………………これは?」

 

「お守りだ。俺と君をつなぐお守り。もしこれから怖いことがあっても、それがきっと守ってくれるよ。大丈夫。必ず守るから。どこにいても、必ず君の手を取りに行くから…」

 

そう約束した。その時はもう危険な目に遭うこともめったにないだろうと思って言った言葉だった。

 

その時の少女が、佐城雪美だったのだ。それから色々あって竜也は雪美のことを忘れていたが、雪美はちゃんと覚えていた。そしてどこで聞いたか知らないが竜也がアイドルプロデューサーをやっていると聞いてここまで追いかけてきたのだ。

 

(そうか………あの時の女の子が…)

 

思えばオーディションに来た時から不思議な子だった。無口で、人と話すのが苦手な女の子。名前も言えないような子がなぜわざわざ京都からオーディションに来たのかわからなかった。しかし、伸び代がありそうな感じはあり、ミステリアスな雰囲気が人気が出そうだったので採用した。

 

オーディションの時に雪美は確かに言った。

 

「私……アイドル……なるためじゃ……ない……。……あなたに………会いに……来た……と……思う」

 

そういった。それは、竜也がやさしいから出た言葉なんかじゃない。彼女は再び竜也に会うために来たのだ。

 

彼女のよく言う、約束という言葉。手を繋ぎに行く。それのことだったのかもしれない。そして雪美がこれを渡した時最初に言った言葉、それは「思い出」だったのかもしれない。

 

「死ね!!」

 

再び斗真がソニックアローの矢を放った竜也はキーホルダーとロックシードを手に取りつつそれを避けた。痛くて動かなかった身体が嘘のように動く。心が原動力となり、火事場の馬鹿力を発揮している。アドレナリンも出ていることで痛みにも鈍くなっていた。

 

「まだだ………まだ終われない!」

 

再び竜也が立ち上がったところに、誰かが駆け寄ってきた。

 

「プロデューサーさん!」

 

「悠貴!?」

 

乙倉悠貴だった。舞台衣裳のまま外まで駆けてきたのだ。

 

「どうして…」

 

「もー探しましたよ…これ、ビートライダーズの人から…」

 

悠貴の手にはゲネシスコアとドラゴンフルーツエナジーロックシードが握られていた。光実に渡してくるように頼まれたのだ。

 

「これが今回のライブに成功するかの鍵だって…あ、私もうすぐ出番なので!それでは!」

 

得意の走りで悠貴は会場に戻っていった。まもなく出番でステージで踊るだろうに悠貴はがんばってくれたのだ。プロデューサーを探すのに夢中で斗真の方に気付かなかったのは不幸中の幸いだろうか。

 

竜也はゲネシスコアをベルトにセットする。

 

「ありがとうな…悠貴…。いや、悠貴だけじゃない…みんなも協力してくれた………それよりなにより!雪美はずっとなにも覚えてなかった俺のために頑張ってくれた!嫌いなレッスンも、苦手な会話も!今度は俺が頑張る番だ!それに、雪美がやっと手にした大舞台だ!絶対に邪魔はさせねぇ!」

 

竜也は叫んでロックシードを解錠した。

 

『マツボックリ!』

 

『ドラゴンフルーツエナジー!』

 

二つのロックシードをベルトにセットする。

 

「俺は戦う!!みんなのために!雪美の笑顔のために!アイドルとしてあそこで歌うことを決めた子たちの、夢を夢で終わらせないために!!!!変身!!」

 

『ミックス!マツボックリアームズ!一撃!イン・ザ・シャドウ!ジンバードラゴンフルーツ!ハハーッ!』

 

竜也の上空でマツボックリアームズとドラゴンエナジーアームズが融合し、それが竜也に装備され、アーマードライダー黒影トルーパージンバードラゴンフルーツアームズに変身した。

 

ドラゴンフルーツ柄の陣羽織を彷彿とさせるアーマー。さっぱりしていた頭部には三日月を模したエンブレムが追加されている。

 

鎧武や龍玄のように武器がソニックアローではなく影松のままだがその影松にも変化はある。両端に刃の付いた槍になっているのだ。一端は元々の影松、もう一端はドラゴンフルーツのようなものが穂先に付き、その先端から片鎌の刃が伸びている。

 

「ここからは………雪美たちのステージだ!」

 

影松を構えて走り出す。斗真が放つソニックアローの矢をすべて打ち落とすことに力が必要なくなっていた。

 

(身体が軽い…っ!さっきとは全然違う!これがSランクロックシードの力か!)

 

「はぁ!」

 

上からの斬撃を繰り出すが、ソニックアローで防がれる。しかし防がれた瞬間逆側の刃を使って下から切り上げる。

 

「ぐっ!」

 

そしてそのまま回転斬りからの突きを繰り出す。斗真は吹っ飛ばされるが飛ばされながらもエネルギー矢を放つ。

 

「うらぁ!」

 

その攻撃に瞬時に反応してエネルギー矢を打ち落とし、斗真に突撃した。

 

「はぁぁぁぁぁ!」

 

竜也は立ち上がる斗真に反撃する余裕も与えずに斬撃を連発する。性能が上がったことに加え、さっきよりもさらに「守りたい」と思う気持ちが上がっている。さらに相手はプロトタイプのロックシードを使っている影響で体調にも問題が出ている。

 

「貴様………貴様貴様貴様貴様貴様ぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

『ライムエナジースカッシュ!』

 

怒り狂う斗真はゲネシスドライバーを一度絞り、エネルギーをソニックアローの刃に集中させて竜也に向かって走り出す。

 

「終わりだ…法堂斗真!」

 

『マツボックリオーレ!ジンバードラゴンフルーツオーレ!』

 

影松の両端にエネルギーを溜める。斬りかかってきた斗真の一撃に対し、片側の刃をぶつけた。エネルギー同士がぶつかり、相殺される。しかし、竜也にはまだもう片側の刃にエネルギーが残っていた。

 

「おぉぉぉぉぉ!」

 

斗真の反撃が来る前に影松を持ち変え、エネルギーが残っている刃を斗真に突いた。

 

「うらぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

全力の一撃が決まった。斗真の変身は解除され、地面を転がる。

 

「くそっ………なんで…どうして…」

 

「…」

 

「俺はぁぁぁぁぁ!」

 

『ライムエナジー!』

 

ライムエナジーロックシードを掴み、再度開錠する。

 

「よせ!それ以上は!」

 

ライムエナジーロックシードをベルトにセットしたが、次の瞬間、斗真が胸を押さえて苦しみ始めた。

 

「おい!」

 

「う…うぅぅぅ………うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

斗真の胸が緑色に光り、そこから植物が発生した。植物が全身を包み込む。植物が自然消滅したとき、そこに立っていたのは緑色の眼を光らせるバイオレンス怪人態とでも呼ぶべきだろう化け物だった。

 

「…っ!」

 

「グォォォォォォ!!」

 

理性と人間性を失った斗真、バイオレンス怪人態はとりあえず目の前にいる竜也を襲った。

 

「くっ!」

 

バイオレンス怪人態の攻撃を、影松を使ってうまく押さえる。

 

「月寒竜也!」

 

そこに、調査を終えて会場に向かっていた貴虎が現れる。

 

「貴虎!こいつは法堂斗真が変異した姿だ!どうすればいい!?」

 

「…遅かったか……変異した以上、そいつはインベスと変わらん!殺すしかない…」

 

「殺す…」

 

小さな女の子たちを導く竜也がそんなことをしてよいのか。そのことが頭を過り、竜也はすこし止まった。

 

「もし無理なら私がケリをつける!そもそもは我々の責任だ…」

 

貴虎はゲネシスドライバーとメロンエナジーロックシードを出した。それと同時に竜也はバイオレンス怪人態を影松で切り裂き、蹴り飛ばした。

 

「いや………俺がやる……雪美にあんな思いさせたこいつを、俺は許せない」

 

「………本当にいいのか?」

 

「ああ………俺なりのケジメだ」

 

そもそもインベスを倒しているということは変化する前の生物を殺しているということだ。今更躊躇することはなかった。

 

「………いくぞ。法堂斗真…」

 

竜也は影松を投げ捨て、カッティングブレードを一回稼働させた。

 

『マツボックリスカッシュ!ジンバ―ドラゴンフルーツスカッシュ!』

 

竜也の足にエネルギーが溜まり、そのまま飛び立つ。竜也が飛び立つと、それを追いかけるように龍型のエネルギーが出現した。

 

「雪美ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」

 

龍型のエネルギーと共にバイオレンス怪人態に向かってキックを放った。

 

「グォォォォォ!!!!」

 

キックが決まり、バイオレンス怪人態は爆裂霧散する。竜也は立ち上がり、ベルトのロックシードを閉じて変身解除する。

 

「………」

 

「おーい!大丈夫か!」

 

そこにインベスを片付けたザックが合流した。

 

「奴は?」

 

「倒した。全部終わったんだ…。俺は会場に行かなくちゃ……プロデューサーだからな」

 

駆け足で会場に戻ると、ちょうど曲を終えた雪美にばったり出会った。

 

「雪美!」

 

「竜也!」

 

雪美が走って飛びついてきた。

 

「雪美!無事か!?」

 

「うん…………竜也は……?」

 

「俺は大丈夫だ。犯人も………やっつけたから。もう安心だ。全部終わったよ」

 

「………竜也が…無事で…………良かった……」

 

雪美は目に涙を浮かべながら竜也を抱きしめた。心の底から良かったと思っているのだろう。もう襲われなくて済んだこと、何より、竜也が無事だったことを。

 

そんな雪美を優しく抱き返しながら、竜也はそっと雪美の手を握ってやった。

 

 

 

-数か月後-

 

 

 

数か月後、新たなステージが決まり、雪美は舞台袖で緊張していた。

 

「雪美」

 

そこに竜也がやってきた。そして緊張で震える雪美の手をそっと握ってやる。

 

「竜也……」

 

「大丈夫だ、雪美。必ず守るから。どこにいても、必ず雪美の手を取りに行くから………これまでも、これからも」

 

「…………うん」

 

雪美は微笑んで頷いた。

 

「スイマセーン、そろそろ準備のほう、お願いしますゥ^~↑」

 

雪美が呼ばれる。竜也は雪美の肩を叩く。

 

「行けるか?」

 

「うん………………竜也との約束…………果たす…」

 

 

 

Fin




いかがでしたでしょうか。とてつもなく長くてちょっとあれかもしれなかったですね。今回は読み切り形式でやりました。このサイト以外でも作品の評価を見て、人気な様なら連載します。
読んでいただきありがとうございました。感想待ってます。
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