雪美Pは元ユグドラシル   作:瑠和

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お久しぶりです。早めに次の話に行きたい。
ちょっと長いですしちょっとグダりましたが、何とか最終回まで走っていきたいと考えています。残りは5話を予定してます。


黒ノ章

「はぁ、はぁ、はぁ…」

 

少女は森を走る。理由は簡単だ。背後から怪物が追いかけてくるからだ。この少女はある日、帰り道に不思議な裂け目が開いているのが見え、好奇心からその世界に足を踏み入れてしまった。そこはヘルヘイムの森。怪物たちが蠢く地獄。

 

少女は怪物に見つかり、必死に逃げていた。入ってきた裂け目は既に消滅し、少女はただ逃げることしかできなかった。しかし、幸運なことに少女は足が長く、速く走ることができたためそう簡単には捕まらなかった。

 

少女は何とか怪物の視界から抜け、遺跡らしき場所に逃げ込んだ。

 

「………お父さん…お母さん…」

 

少女はまだ小学生だ。心細く、今にも泣きそうだった。そんなとき、遺跡の奥で何かが光っているのが見えた。

 

「………?」

 

少女は光るものに向かって歩く。遺跡の奥で光っていたものは腕輪が置かれた石碑のようななにかだった。シュ所はその腕輪に何かやさしさのようなものを感じ、それを装着する。それを付けていると何かに守られているような安心感を得られた。

 

しかし、安心したのもつかの間。そこに怪物が現れる。

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁ!」

 

さっきとは違う怪物だった。少女は驚き、腰を抜かしてしまう。怪物に殺される道しかないと思われたその時、声がした。

 

「ミョジ!」

 

怪物が止まり、少女から離れていく。

 

「…?」

 

何が起きたかわからず少女は戸惑うばかりだった。そんな少女の前に白い怪物が現れる。まだ人に近い形をしていたからか、少女は悲鳴は上げなかったが怖がってはいた。

 

白い怪物は少女に近づく。

 

「エディショエショボリャファミョガエシャンショ………」

 

「…?…?」

 

言語のようなものを話す怪物に少女は何とか話そうとするが、自分自身極限状態なので言葉を発することもできなかった。

 

「デョシェファメデェンショエディショエジャロエイ……ミョファンアデョフォシャン」

 

怪物が手を少女に向けると、少女の背後に次元の裂け目が発生し、そのまま吸い込まれていった。

 

「ディミジジョエディジュフォミャファジャアコベリャカミュショイブリョジャエエ」

 

裂け目から飛び出すと、そこは元の世界。少女は安心感からかその場で気絶した。そして、再び目を覚ますまで夢を見た。

 

その夢の中には、少女がつけている腕輪と同じ腕輪を付けた青年が出てきた。

 

「シャコエアミャエカデェジョフィ。デョジュシェファシャジャカシェアシュショボリャシュイデェジアシュ。ェメロシャコエグミカメジエジョファンシュイファン」

 

何を言っているのかはわからなかったが、怖いという感情はいつの間にか薄れて彼女は家の中で目を覚ました。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「…………き………うき………悠貴!」

 

「はぇ!?」

 

乙倉勇気が目を覚ますと、そこは竜也の車の中だった。彼女は仕事を終え、竜也に送ってもらっていた。どうやらその途中で眠ってしまったらしい。何やら懐かしい過去の夢を見ていたような気がするが、よく思い出せない。

 

「大丈夫か?」

 

「はい…………ごめんなさい、寝ちゃったんですね」

 

「気にするな。疲れているんだろう…」

 

そういうと、竜也は悠貴の隣に座る。そして悠貴の頬に手を当てた。

 

「もし夜に寝られないなら、俺が一緒に寝てやろうか?忘れられない思い出を………」

 

少しずつ身体を近づけながらささやく竜也に悠貴は違和感を覚えつつ少し距離を取る。

 

「だ、大丈夫です……送っていただきありがとうございました!」

 

悠貴は車から降り、家へ帰っていった。

 

「…」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

ー呉島家ー

 

呉島家では竜也に取りついたコウガネをどう排除するかを貴虎、光実、千夜、ちとせが話し合っていた。

 

「美優さんの時はどうやって引き剥がしたのですか?」

 

「彼女の時は…黄金の果実に選ばれた葛葉紘汰が彼女とコウガネを切り離した………また彼が来てくれればそれで話はすむかもしれんが…」

 

前回コウガネが現れたときは黄金の果実の力でどうにかできたが、今回は始まりの男は現れない。今回の事態に気づいていないのか、気づいているが介入しないのかがわからない。

 

「…なんとかその男と連絡はとれないのですか!?一刻も早くあいつを救わないと…!」

 

「焦るのはよくないよ千夜ちゃん」

 

「…きっと、あの人が来ないのは、僕らだけで解決できるから…。僕はそう思うよ」

 

千夜の焦りは目に見えていた。焦る千夜を宥めるように光実が言う。光実が言う様に、紘汰であればおそらくコウガネの復活に気づいている可能性が高い。そうれでも彼がこないということはきっと、自分たちだけでどうにかできることが分かっているからだと考えた。

 

「それに、いつまでも紘汰さんに頼りっきりじゃだめだ。僕たちだけで頑張らないと!」

 

「ですが…」

 

それでも、どうにかしたいという気持ちばかりが前にでてしまう千夜だった。そんな時、部屋の一ヶ所が輝きだす。

 

「?」

 

「そう、ミッチの言う通り」

 

光の中から現れたのは高司舞、即ち始まりの女だった。

 

「舞さん!」

 

「この間のあなたの戦いで私たちはコウガネの存在を感知した………だけど、コウガネはあなたたちだけの力で倒せる。だからそのヒントを持ってきたの」

 

「…ヒント?」

 

舞が手を前に差し出すと、手のひらにとあるものの幻影が出現した。

 

「これは…」

 

出現した幻影に千夜とちとせは見覚えがある。それは悠貴がいつも腕に着けている腕輪だった。

 

「私たちが協力すれば、きっとコウガネは倒せるけど………それじゃきっと意味がない。彼の…心を、救ってあげて」

 

それを伝えると舞は光と共に消えた。

 

「今の腕輪………なにかしっているのか?」

 

「はい。それを持っている人物も知っています。明日その人物に協力を要請します。それから作戦を立てましょう」

 

 

 

―翌日―

 

 

 

翌日は雪美のバラエティ番組の撮影があった。最近パティシエとして名を上げ始めている城乃内秀保が出演する回で雪美も秀保の作る料理に舌鼓を打った。

 

その日の撮影は滞りなく撮影は終わり、片づけが行われていると城乃内が休憩している雪美に近づく。

 

「やぁ、雪美ちゃん。今日はよかったよ!」

 

「…………ありがとう」

 

「雪美ちゃん猫飼ってるんだって?俺も好きなんだよ♪」

 

「そうなの…?」

 

「うん、あ、良かったら…」

 

城乃内がなにかを提案しようとしたとき、竜也が近づいて城乃内の胸倉を掴んで立ちあがらせる。

 

「よう色男。小学生にナンパか?」

 

「な、何を…」

 

竜也は城乃内を壁に押し付けた。

 

「お前昔は女癖が悪かったらしいな。今度は雪美が標的か?あ!?」

 

「誤解です!女癖が悪かったのは事実ですが、昔の話です!ある人に男としても鍛えられて………もう反省しました!」

 

「信用できない。とにかく必要以上に雪美に近づくな」

 

そう言って竜也は城乃内を床に投げ捨てた。

 

「雪美、行くぞ」

 

「…………うん」

 

竜也は雪美を連れてスタジオをでた。スタジオから出ると竜也は財布からお金を取り出して雪美に手渡した。

 

「…?」

 

「ごめん雪美。俺ちょっと監督と話があるから……これで一人で帰れるか?」

 

「…………うん……」

 

竜也は笑顔だがいつもと違う雰囲気なのは十分にわかった。

 

 

 

―駐車場―

 

 

 

撮影を終えた城乃内が帰ろうと立体駐車場にやってくる。車のカギを開けて乗り込もうといた時、城乃内の足元にエネルギー矢が撃ち込まれた。

 

「うわ!?」

 

「…」

 

駐車場の車の影から、ソニックアローを持った黒影トルーパーが現れた。

 

「な、なんだよあんた!」

 

「…」

 

黒影トルーパーはなにも言わずソニックアローを構えて城乃内に襲い掛かる。一撃目の斬撃を城乃内は黒影トルーパーの足元に入り込み何とか避けたが体勢を整える前に蹴り飛ばされる。

 

「あぐっ!」

 

倒れこんだ蓮にソニックアローを振り上げた。

 

「うわぁぁぁぁ!」

 

明らかにビビるそぶりを見せた瞬間、城乃内はソニックアローを持っている黒影トルーパーの腕めがけて蹴りを放ち、ソニックアローを蹴り飛ばした。

 

「!?」

 

「パティシエ舐めんなよ!」

 

さらに城乃内は黒影トルーパーの腕を押さえつけて何とか変身解除させようとベルトに手を伸ばすが黒影トルーパーは無理やり城乃内を投げ飛ばした。

 

「あぐっ!」

 

黒影トルーパーはソニックアローを拾い上げて再び城乃内に迫る。

 

「止せ!後戻りできなくなるぞ!」

 

どこからともなく声がした。声の方を見るとそこには呉島貴虎がいた。

 

「呉島貴虎…」

 

「案外簡単に罠にかかってくれたな、アンタ」

 

「何?」

 

城乃内が眼鏡を上げながら言う。

 

「お前が最近、自分のアイドルがどこかへ出演するとき共演者について調べているって聞いてな。雪美ちゃんのときは特に念入りに。だから、嘘の情報をお前に流したんだよ。城乃内秀保は女癖が悪かったってな。そんな俺が雪美ちゃんに近づけば何かしらの反応は見れると思ってたけど、まさかこうも簡単に引っかかるとはね。まぁ、俺の策士としての才能が上だったから………かな?」

 

「…てめぇ!」

 

城乃内に襲い掛かろうとしたが、車の影から雪美が現れる。

 

「やめて…………竜也…っ!」

 

「!」

 

竜也の腕が止まる。

 

「こんなことするの………竜也じゃない!」

 

「…」

 

竜也はその言葉に驚き、少し後退する。そして、車のフロントガラスに映った自分の姿を見た。最初の変身のときには気づかなかったが、ジンバーを纏うことで頭部に出現する三日月形のエンブレムは禍々しい形に変わり、色も黒になっている

 

「なんだ…………これは…俺は…誰だ?」

 

(さぁ………美優、君のすべてを俺にみせて………)

 

(なぜ?信頼が裏切られたから…でしょうかね)

 

(こんなことするの………竜也じゃない!)

 

自分が以前言った言葉、そして千夜に、雪美に言われた言葉が竜也の中で反響する。

 

 

 

(言っただろう、俺はお前だ)

 

 

 

「ちがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁう!!!!!!!」

 

竜也はソニックアローで自身が写ったガラスをたたき割った。竜也は崩れるように地面に座り込み、変身を解除した。

 

「俺は………いったい何を…」

 

竜也は顔をふさいで今までの自分の行動を後悔する。

 

「俺は………あぐっ!」

 

そんな時、竜也はいきなりのけぞり、胸を押さえた。

 

「竜也?」

 

「待て!」

 

いきなり跳ねた竜也を心配した雪美が駆け寄ろうとしたが、それを貴虎が手で制止させる。貴虎が止めたことにより、雪美は冷静に竜也を見る。竜也はのけぞったままの姿勢で首だけ動かして貴虎たちを見る。

 

「全く、あと少しで完全に復活できたものを………」

 

「貴様……コウガネか?」

 

「久しぶりだな呉島貴虎、城乃内秀保………貴様がどうやってこの男にたどり着いたかは知らないが…………」

 

竜也、正しくは竜也を乗っ取ったコウガネが立ちあがりながら戦極ドライバーを取り出し、三人にみせる。そして逆の手には一部だけ金箔が雑に張り付けられたような黒いリンゴ型のロックシードが握られていた。そのロックシードには「L.S.‐GOLNESS」と書かれている。

 

「中途半端だが貴様ら程度これで十分だ……ふっ!」

 

コウガネが竜也の量産型ドライバーにエネルギーを籠めると、禍々しいアーマードライダーの横顔がフェイスプレートに映し出された。

 

その戦極ドライバーを腰に装着し、ロックシードを解錠する。上空にクラックが生成され、そこから4割ほど黄金で残りが漆黒のアームズが出現する。

 

『ゴォゥルネェス』

 

「変身」

 

カッティングブレードを倒すとアームズが頭に装着され、展開される。竜也(コウガネ)はアーマードライダードミネイターに変身した。

 

『ゴォゥルネェスアームズ…オゥ金 のo 果ジTu…』

 

左手にダーク橙々丸、そして右手にソードブリンガーが握られている。どうやらそれがアームズウェポンらしい。見た目はアーマードライダーマルスに似ているが、頭部は黒と赤色で額に禍々しい形の角が二本追加されている。

 

「二人は下がっていろ。城乃内秀保、佐城雪美を頼む」

 

「ああ、でも守り切る自信はないからな!」

 

二人は駐車場からスタジオに戻っていった。それを確認した貴虎はゲネシスドライバーを取り出す。

 

「変身」

 

『メロンエナジー』

 

貴虎はアーマードライダー斬月・真メロンエナジーアームズに変身した。

 

「はぁぁぁぁ!」

 

「はぁ!」

 

二人は同時に飛び上がり、ソニックアローとダーク橙々丸が激突する。最初の鍔迫り合いは貴虎が勝ち、そのまま一気に追撃に入るが二刀流のコウガネは貴虎の追撃をうまくいなし続ける。うまくいなすどころか少し押し始める。

 

一瞬の隙でコウガネは貴虎の腹部に蹴りを入れ、怯ませる。コウガネは怯んだ貴虎にダーク橙々丸とソードブリンガーを構えて飛び掛かる。しかしその攻撃はソニックアローで何とか受けめた。

 

「貴様は葛葉紘汰が完全に消滅させたはずだ!なぜ、どうやってよみがえった!」

 

「私は黄金の果実だ!私の僅かな残留思念があの女の中に残り続け、闘争を求める人間の欲望を糧にようやくここまで復活したのだ!今度こそ貴様らに復讐するためになぁ!」

 

貴虎がコウガネを弾く。コウガネは空中で体を捻ってソードブリンガーから黒と黄金の斬撃波を飛ばし、ソニックアローを弾き飛ばした。

 

「ぐっ!」

 

「もらった!」

 

『ゴォゥルネェススカァッシュ…』

 

コウガネはカッティングブレードを一回倒し、飛び上がる。そして強力なライダーキックを放った。貴虎は防御しきれずに立体駐車場から飛び出し、そのまま地面に落下した。

 

「ぐ…」

 

「はぁ!」

 

さらにコウガネが追撃をしようと駐車場から飛び出す。倒れた貴虎のすぐ横に着地したコウガネはソードブリンガーから衝撃波を放って貴虎を浮き上がらせる。

 

「たぁ!!!」

 

浮きあがった貴虎に向かって飛び、ダーク橙々丸とソードブリンガーで切り裂いた。貴虎は吹っ飛ばされ、壁にたたきつけられた。

 

「なんて……強さだ…」

 

貴虎も化け物並みの戦闘力を持っているがコウガネのパワーが段違いなのだ。

 

「葛葉紘汰抜きなら貴様らはこんなものか………」

 

「まだ……だぁ!」

 

「フンっ、無駄なあがきだ」

 

再び貴虎が立ちあがると、それと同時に一台の車がそこに現れた。

 

「…?」

 

車から現れたのは、竜也が担当しているアイドルたちだった。

 

「あれは……」

 

目の前にいる禍々しいアーマードライダーを見て美優は嫌な気分になった。昔復興している途中の沢芽市に旅行に行ったとき、コウガネに乗っ取られたのは美優だった。その時は葛葉紘汰に助けられた。

 

「おそらくあいつでしょう。だが、あいつじゃない…」

 

「Pちゃんなの?」

 

「千夜!みんな!」

 

駐車場から雪美と城乃内が出てきた。雪美が千夜に連絡を入れて全員を連れてきてもらったのだ。

 

「………何かと思えば……この宿主の意識でも取り戻そうと言うのか?」

 

「今度こそ取り戻す……悠貴さん。あなたが希望です。どうかあいつを………竜也プロデューサーを頼みます。変身!!」

 

千夜はアーマードライダーブラックバロネスレモンエナジーアームズに変身し、貴虎に加勢する。その場に残された悠貴に視線が集まる。ここに来る前、悠貴が竜也を助けるための希望だと聞かされたが、どうすればいいかなんてわかるわけがない。

 

そうこうしているうちに雪美が呼んだため何わからず終いだ。

 

「………悠貴ちゃん」

 

「……ど、どうすればいいんでしょう…早くしないと…」

 

竜也を助けたい気持ちはここにいる皆と同じだ。悠貴は竜也に恋い慕っているからだ。だがどうすればいいかわからない。役に立てないことに気持ちばかりが焦り、瞳に涙が溜まる。そんなとき、腕輪が輝いた。

 

『大丈夫。落ち着いて』

 

「…え?」

 

腕輪から青い光が放たれ、そこに若干透けている青年が現れた。

 

『僕はラピス。その腕輪の持ち主だ。僕の肉体はもう尽きているけど、腕輪に残した残留思念っていえばいいのかな?』

 

「え…?残留…?」

 

急に現れたラピスが自身について説明したが悠貴もその場にいた他のアイドルもいまいち理解できてなかった。

 

『ともかく僕は味方だ。君のプロデューサーの身体を乗っ取っている存在と敵対している。僕が力を貸す。君が彼を助けるんだ!』

 

「どうすれば…」

 

「シャムビシェ!また貴様か!」

 

千夜との戦闘中にラピスの存在に気づいたコウガネが標的を千夜に変えて攻撃を仕掛けに行く。

 

『ゴォゥルネェスオゥレェ…』

 

「!」

 

ダーク橙々丸とソードブリンガーを振り上げ、そのまま振りぬくと漆黒の斬撃波がバツ字型に発射され、まっすぐ悠貴に向かって飛んで行った。悠貴が最後の希望だと言われていたのを聞いていた美優は反射的に悠貴の前に出て盾になろうとした。

 

「………っ!」

 

覚悟を決め両目を瞑るが攻撃はなかなか彼女に当たらない。目を開けると目の前に千夜がいた。コウガネが放った斬撃波をソニックアローで必死に受け止めていた。

 

「ぐ………うぅぅぅ…………あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

斬撃波はソニックアローを押し切り、千夜の身体に命中して爆発を起こした。千夜は強制変身解除され、その場に跪く。

 

「く…」

 

「千夜ちゃん!」

 

「チッ………邪魔が…」

 

「はあぁぁぁぁ!」

 

再びカッティングブレードを稼働させようとしたとき、飛ばされたソニックアローを拾いに行った貴虎が戻り、その妨害をする。

 

『さぁ!その腕輪に強く念じて!君のプロデューサーのことを強く想うんだ!』

 

「……っ!」

 

悠貴は竜也のことを強く想った。優しかった時の竜也、悠貴が好きだったころの竜也のことを必死に想った。すると腕輪が一段と強く光り、悠貴の意識が精神体となって竜也の身体に向かって飛んだ。

 

しかし、悠貴の意識が竜也の身体に入ったと思われた瞬間、悠貴の肉体が何かに弾かれたように吹っ飛ばされた。

 

「あう!」

 

「悠貴ちゃん!」

 

吹っ飛ばされた悠貴を颯と凪が二人係で受け止めようとしたが勢いもあったことでほとんど二人も一緒に倒れてしまった。

 

「大丈夫!?」

 

「何とか…」

 

『だめだ………奴の力が増しているし、僕自身の力が弱まってることもあって彼の意識に完全に入り込めない…』

 

「そんな……このままじゃPちゃんが…」

 

『………どうにかして、彼の意識をもっと表に出すか…奴の拘束を少しでも緩めない限りは彼の心には入り込めない…』

 

「そんなの、どうやれば…」

 

「………しょうがないなぁ。じゃあ私が何とかするよ」

 

「え?」

 

名乗り出たのはちとせだった。ちとせは戦闘中の貴虎に声をかけた。

 

「ねぇ呉島さん!何とかしてそれの動きを抑えてもらえない!?」

 

「……任せろ!」

 

少々難しい注文だったが貴虎は断らずにコウガネに突貫していった。コウガネは貴虎の狙いが見えているため、近づかせない様に斬撃波を飛ばす。

 

貴虎は斬撃波を紙一重で回避し、カウンターにエネルギー矢を打ち込む。エネルギー矢はダーク橙々丸に弾かれたがその隙に一気に接近した。貴虎を切り払おうと振られたソードブリンガーをソニックアローで防ぎ、そのままコウガネの背後に回り込んで羽交い絞めにする。

 

「この…離せ!」

 

「離してたまるかぁ!急げ!そう長くは持たない!」

 

「…」

 

意を決してちとせは歩を進める。

 

「させるかぁ!」

 

羽交い絞めにされながらもコウガネは何とかソードブリンガーを振り回し、斬撃波を飛ばした。

 

「わっと!」

 

「お嬢様!」

 

ろくに狙いもつけなかったのでちとせに当たることはなかったが、必死に抵抗するコウガネはまだ危険だった。

 

(ちょっと近づきにくいなぁ…)

 

「うおぉぉぉぉぉ!」

 

近づくのを躊躇したとき、いつの間にかコウガネの近くの物陰まで接近していた城乃内がコウガネのソードブリンガーを持っている手を抑える。

 

「ぐっ!離せ!」

 

ちとせがなんとかするといった時点で城乃内は大体を察し、コウガネに近づいていたのだ。さらに別の角度から凪がコウガネのダーク橙々丸を握っている腕に飛びついて拘束する。

 

「秘儀、凪'sバインド」

 

「わぁぁぁぁ!」

 

そして美優がコウガネの下半身に飛びつき、足を拘束した。

 

「今のうちだ!」

 

「………あはっ♪魔法使いさん愛されてるね」

 

妙な光景に少しおかしく思ったちとせは軽く笑い、コウガネに向かって歩を進める。そして、コウガネの目の前にたどり着くと、自身の手をコウガネの頬に添える。

 

「魔法使いさん?約束忘れちゃったのかな?私を退屈させないことって。今私すごくつまらないんだけどなぁ…………思い出して、私と会った時のこと」

 

 

 

―竜也の精神世界―

 

 

 

「お前は俺だ」

 

「これはお前の欲望だ」

 

「これがお前の望みだ」

 

「これがお前の本心だ」

 

竜也は闇の中で足掻いていた。必死に闇を振り払おうと逃げ回っていた。今の状況を作り出したのは自分自身だ。それを否定することはできない。ずっとこの闇にそれを責められていた。

 

そんなことはわかり切っている。もう自分が嫌になる。己の欲のためだけにアイドルを利用した。彼女たちを裏切った。わかり切ってはいるが認めたくない。もう消えてしまいたい。そんな思いで闇から逃げ回っていた。

 

そんな時、赤い光が闇を切り裂き、照らされた。その光に当たると、竜也はなにか懐かし気分になり、足を止める。

 

「これは…………この暖かい光は…」

 

 

 

―現実―

 

 

 

「ち………と…せ……?」

 

竜也の意識が表に出た。

 

不思議な気分なまま竜也はちとせを見つめた。初めてちとせを見て、何かにとらわれたようにちとせを探し回っていた日々と同じ感覚だった。

 

「目、覚めた?」

 

「貴様………何をしたぁ!」

 

戻った思ったのも束の間、すぐにコウガネの意識が戻ってくる。

 

『主人格がわずかに表に出た!今だ!彼を引き出すには一人の力じゃ足りない………君たちも力を貸してくれ!』

 

先ほど一瞬竜也の心に入ったラピスはコウガネの植え付けた邪悪の種が深く根付いていることを確認していた。そこから竜也の意識を引っ張り出したうえでコウガネを引き離すには悠貴一人の力では足りないと考えた。

 

「悠貴…」

 

雪美が悠貴に手を差し出す。

 

「……うん!」

 

悠貴は雪美と手をつなぐ。そしてその場にいた芳乃、颯、千夜が手をつないで意識を集中させる。五人の意識が精神体となって竜也の精神世界に入っていった。

 

 

 

―精神世界―

 

 

 

「なんで………いま、ちとせが…」

 

差し込んできた光に当たったと思うと、目の前にちとせが見えたかとまたここに戻ってきていた。

 

「なぜ私を拒む…」

 

闇の中から手が伸び、竜也を掴んで闇に引きずり込もうとする。

 

「ぐ………あぁぁ!離せ!」

 

闇から逃れようと必死にもがく。しかし、どんどんどんどん闇に飲まれていき、視界も暗くなっていく。そんなとき一筋の光が差し込んだ。

 

『竜也!』

 

「…」

 

光から小さな手が伸ばされる。小さい手ではあるがとても暖かく、優しさに満たされていた。さらに四本の手が竜也に向かって伸ばされた。

 

『竜也さん!』

 

『そなた!』

 

『Pちゃん!』

 

『お前!』

 

竜也はその手を無意識に手を取る。五本の腕に引っ張られ、竜也は闇から抜け出した。

 

 

 

―現実―

 

 

 

「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

アーマードライダードミネイターの身体が青く輝き、体からイナゴの軍勢がどんどん飛び出していく。イナゴが出てこなくなると変身が解除され、意識を失った竜也が貴虎にもたれかかった。竜也の身体から飛び出したイナゴの軍勢は一か所に集まり、黒い靄がかかる。

 

『ゴォゥルネェスアームズ…オゥ金 のo 果ジTu…』

 

黒い靄が晴れると、アーマードライダードミネイターが再び出現した。

 

「おのれ………せっかく見つけたちょうどいい依り代を………」

 

コウガネは再び竜也の身体を狙おうとしたがその竜也の前に雪美、颯、芳乃、千夜、悠貴が竜也を庇う様に現れた。千夜はゲネシスドライバーを装着してレモンエナジーロックシードを構え、悠貴も腕輪を構える。

 

「チッ………まぁいい…完全復活まであとわずかだ………」

 

コウガネはイナゴの軍勢に姿を変えてどこかへ飛んで行った。

 

「……ひとまず………脅威は去ったとみていいようだ」

 

貴虎は変身を解除した。

 

「竜也…!」

 

気絶している竜也にみなが寄り添う。

 

 

 

続く

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