雪美Pは元ユグドラシル   作:瑠和

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ようやく書き終わりました………。

雪美と一緒に歩いてきた道。

まだまだ終わりません!!同作者によるラブライブ×仮面ライダー小説「Before Days ‐case of DGP‐」とのコラボ!「異次元フェス」開催します!


最終章 雪ノ章

―???―

 

 

 

ここは、ある廃工場の一室。一人の男が怪しく笑いながら一つのロックシードを見つめる。

 

「ようやく完成した………これが、黄金の果実に匹敵する力………」

 

 

 

―撮影所―

 

 

346プロでは先日の事件からしばらく、大きな事件もなく平穏な空気が流れていた。そんな中で舞い込んできた雪美の新たな仕事。

 

それは、ウェディングドレスの写真集を作る仕事。そして今日はその撮影日だった。

 

「じゃあ………着替えて…………来るね」

 

「ああ。いってらっしゃい」

 

「………楽しみに………してて」

 

「もちろん」

 

あまり表情には出ないが、雪美はこの仕事を受けられて、心の底からうれしかった。ずっと自分を大切に思ってくれている竜也に、ウェディングドレス姿を見せられるなんて、少なくともあと8年はないからだ。

 

「あ…………そうだ」

 

「?」

 

いざ更衣室に入ろうとした雪美がポケットから何かを取り出し、竜也の方へトテトテと駆けてきた。

 

「これ………この間、家族で行った…………キャンプで…………見つけた」

 

そういって雪美は竜也に少し大きめのマツボックリを渡した。

 

「おお、マツボックリ」

 

「………今度……一緒に………ビーズで……かわいくしよう?」

 

「ああ、わかった。約束だ」

 

竜也がそういうと、雪美は、ぱぁっと顔を明るくした。

 

「………うん♪……約束」

 

竜也は撮影までまだ時間があることを確認し、飲み物でも買おうかと撮影所を一度出た。だが、竜也が撮影所を離れて少しすると、何やら撮影所の方が騒がしくなってきた。

 

「…………なんだ?」

 

「きゃぁぁぁ!!」

 

「ギシャァァァァ!!!」

 

「!」

 

撮影所から職員の女性とそれを追いかけるインベスの姿があった。

 

「インベスだと!?」

 

『マツボックリ!』

 

竜也はすぐに変身し、インベスに切りかかった。インベスは竜也の一撃でかなり飛ばされ、その隙に竜也は女性を救護する。

 

「大丈夫か!?何があった!?」

 

「きゅ、急に変な男が………化け物を出してきて」

 

「雪美は!!!」

 

「わ、わかりませ…」

 

「ギシャぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

インベスが立ち上がり、再び襲い掛かってきた。竜也はカッティングブレードを稼働させ、影松にエネルギーを溜める。

 

「おらぁ!!!」

 

エネルギーを溜めた影松でインベスを切り付けると、インベスは爆発四散した。

 

「雪美!!!」

 

竜也はすぐに撮影所に飛び込み、失礼を承知で雪美が着替えをしている部屋に飛び込んだ。

 

「おや、案外早いね」

 

更衣室には、巨大なクラックが生成され、その奥に男がいた。そして男の脇には雪美が抱えられていた。

 

「雪美ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!」

 

竜也は影松を男に向けて放った。しかし、男がにやりと笑うと同時にクラックが閉じられ、影松は更衣室の壁に突き刺さった。

 

「はぁ………はぁ……くっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

雪美を守れなかった竜也は壁を思いっきり殴った。

 

「うわぁぁぁぁぁ!!」

 

「助けてぇぇぇ!!」

 

まっすぐ更衣室に走ってきた竜也は気づいていなかったが、まだインベスがいたらしく竜也の耳に悲鳴が聞こえてきた。

 

「…………」

 

竜也は影松を引き抜き、更衣室を出る。ドラゴンフルーツエナジーロックシードを取り出す。

 

『ミックス!!ジンバードラゴンフルーツ!!』

 

撮影所で暴れているインベスは2体。竜也はカッティングブレードを二回稼働させる。

 

『ジンバードラゴンフルーツオーレ!』

 

「はぁぁ!!」

 

影松にエネルギーを溜め、生成したエネルギー弾を二体のインベスにぶつけ、撃破した。

 

「……………雪美」

 

 

 

―数時間後―

 

 

 

警察が到着し、竜也も事情聴取されていた。だが、竜也は正直気が気でなかった。一番大切で守りたい存在だった雪美を目の前で奪われた。

 

雪美の親に合わせる顔がない。

 

(雪美を探さないと………)

 

竜也は聴取を終えると、すぐに走り出した。社用の車でユグドラシルやヘルヘイムに関係ありそうな場所を目指した。

 

「雪美!!」

 

かつて雪美と一緒に来た廃工場に来た。以前来た時、ここには妙な実験の跡があった。しかし、以前と変わらないただの廃墟だった。

 

「………くそっ!!」

 

竜也はすぐに別の地点へ向かった。

 

次に来たのは楓のプロデューサーが雪美を襲うとした場所。だがやはりここにも変化はない。完全に消沈していると、そこに一台の車が到着した。

 

「Pちゃん!」

 

「プロデューサーさん!!」

 

車からは竜也の担当するアイドル達が下りてきた。運転してきたのは美優だ。

 

「みんな………なんで………」

 

「魔法使いさんが暴走するんじゃないかと思って、集めてきたよ」

 

「ちとせ……」

 

雪美がさらわれたと聞き、竜也が何をするかわからなかったちとせはすぐに竜也のプロデュースするアイドルをかき集め、現場まで来たのだ。

 

「…………そうか……心配かけたな」

 

「いま、呉島が犯人の特定を急いでいます。だから、お前はいつでも雪美さんを助けに行けるように、英気を養え」

 

「…………千夜」

 

「Pちゃん」

 

竜也の前に颯が来た。

 

「はーは、いつも通り、Pちゃんたちが帰ってくるの待ってるから」

 

「………」

 

いつか、竜也が伝えた「いつも通りの日常」。それを颯は伝えた。そうだ、今仮に雪美を追って雪美だけを取り戻したところで、竜也がどうなるかがわからないのだ。

 

「ああ…………わかった」

 

「とりあえず、いったん帰りましょうプロデューサーさん」

 

「ああ」

 

とりあえず事務所に戻ろうとしたとき、竜也のスマホに電話がかかってきた。誰だと思いながら電話を取ると、相手は呉島貴虎だった。

 

「貴虎?どうした?」

 

『ああ、私だ。話は聞いているが、まずいことになった。テレビが見られるなら見てみろ。ジャックされてどこでも同じ放送だ』

 

竜也はスマホでテレビをつける。すると、そこに映っていたのは見覚えのある男。

 

かつて、依田芳乃を誘拐し、楓のプロデューサーの宇随を実験台にし、雪美を誘拐した。竜也のまわりで起きた事件のすべての元をたどればこの男にたどり着く。

 

 

漆ヶ丘達也

 

 

 

竜也が奪ったベルトのベルトオーナーの弟でマッドサイエンティストだ。

 

『やぁ、世界各国の諸君。私の名前は漆ヶ丘達也。かつてこの惑星を襲った脅威、ヘルヘイムの研究を行っている』

 

「…………」

 

『今回放送をジャックさせていただいたのは、ほかでもない。私の研究がついに実を結んだのだ。私は、ヘルヘイムの力を手に入れた。その証明をしよう』

 

漆ヶ丘が手を上げると、クラックが開き、そこからインベスが現れる。おまけにそのインベスはあからさまに漆ヶ丘に従っている。

 

「!こいつオーバーロードの力を………」

 

『今から12時間後、この世界を無数のインベスとヘルヘイムが支配する。ただし、私の腕を買うのであれば………より高い額を出したその国に着こう。12時間後、各国首脳らに連絡を取らせてもらう』

 

その言葉を終わりに放送は切られた。

 

「……………何が目的なんだこいつは!!なぜ雪美を………」

 

「いままでお前にちょっかいをかけていたことや、今回雪美さんを誘拐したことを鑑みると……お前を戦うことが………目的なのでは?この放送はフェイクで、自分の居場所と、早く止めなければ大変なことになるという警告………」

 

「ともかく、貴虎と連絡を取る…」

 

 

 

―呉島家―

 

 

 

竜也たちはそのまま呉島家まで来ていた。客間には竜也とそのアイドル達、呉島兄弟と凰蓮がいた。

 

「どうする?すぐに突入するべきか?」

 

「…………先に手を打つしかないでしょうね。けど、敵がオーバーロードと同じ力を持っているのであれば、油断はできないわ。真正面からっていうのは愚策ね」

 

「放送の背景からの推測だが、場所はおそらくテレコムセンターの展望台だ。裏道などない以上、正面から行くことしかできないだろう。佐城雪美の人質もある」

 

「………」

 

色々作戦が話し合われたが、結局正面突破が最も成功率が高いということになった。作戦開始は翌日の早朝になりその日は解散となる。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

―翌日―

 

早朝。テレコムセンター前の道に竜也、凰蓮、貴虎、光実の四人が並び立つ。そしてその背後には竜也の担当するアイドル達が心配そうに見守っている。

 

「プロデューサーさん!」

 

「どうした?」

 

「これ、皆からの想いです………きっと、無事に…」

 

そういって悠貴が差し出したのはリボンだった。悠貴は竜也の腕にリボンを巻いた。

 

「絶対に戻る。約束するよ」

 

「はいっ!」

 

「さ、ロマンチックはここまでね。来たわよ」

 

いつ間にやら、あたりにはインベスが大量に出現し、竜也たちを取り囲んでいる。

 

「千夜。みんなを頼む」

 

「ええ、任せなさい」

 

「行くぞ」

 

「ああ」

 

「「「「変身!!!!」」」」

 

『メロンエナジーアームズ!』

 

『ブドウアームズ!』

 

『ドリアンアームズ!』

 

『マツボックリアームズ』

 

「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」

 

四人は一斉に変身し、目の前のインベスを切り倒しながら一気に突き進んでいく。

 

 

―テレコムセンター展望台―

 

 

 

漆ヶ丘は展望台から下を眺め、戦っている竜也たちを眺めていた。その姿に小さく笑い、隣を見る。展望台の一角にある椅子に、雪美はウェディングドレス姿で縛り付けられていた。

 

「君を助けに来た王子様の登場だ。うれしいかい?」

 

「…………」

 

だが、雪美は何の反応もしない。ただ漆ヶ丘の顔を眺めるだけだ。

 

「………もう少し泣き叫ぶかと思ったんだけどねぇ」

 

「………大丈夫。竜也は、きっと負けない」

 

「…………そっか」

 

 

 

―テレコムセンター入り口前―

 

 

 

「おらぁぁぁ!!」

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

真正面から来るインベスだけ相手にしたいが、さすがに敵の数が多すぎた。あと少しで入り口にたどり着くというのに完全に足止めを食らっていた。

 

「このままじゃ………」

 

「ここは俺と光実に任せろ!お前ははやく展望台に言って佐城雪美を救出しろ!!」

 

「僕らが道を作ります!」

 

『ブドウスカッシュ!』

 

『メロンエナジースカッシュ!』

 

光実と貴虎が同時に放った銃撃が前方のインベスを撃破し、道を作った。凰蓮と竜也はその道を一気に突っ走っていく。

 

「行くわよ!」

 

「ああ!!」

 

二人がテレコムセンター内部に入り込むと広いロビーに出たが、そこにも大量のインベスがいた。

 

「こんなところにまで………」

 

「ここはワテクシにまかせなさい」

 

「………すまない!!」

 

「あとでワテクシの店のスペシャルセットを食べに来なさい!みんなでね!!」

 

軽口を叩きながら凰蓮はドリノコでインベスを切り倒し、道を作る。

 

「ああ、約束するよ!」

 

竜也は一気に二回まで飛び、展望台へつながるエレベーターへ走って行った。そのあとをインベスが追っていこうとするが凰蓮が放ったドリノコがそれを邪魔する。

 

「あなた方の相手はワテクシでしてよ!さぁ!かかってらっしゃ~い!!!」

 

凰蓮が敵を惹きつけてくれている間に竜也はエレベーターに乗って展望台へ上がっていった。ものの数秒で展望台まで到着し、エレベーターを降りる。

 

だが、竜也がエレベーターを降りた瞬間にエレベーターが爆発した。

 

「!!」

 

竜也は爆発に巻き込まれ、変身解除させられたが大きな怪我はしなかった。だが、これでもう援軍には期待できなくなった。

 

しかし、いまさらそんなことで立ち止まるわけにはいかない。絶対に雪美を助け出す。

 

その気持ちだけを胸に竜也は最後の階段を上がる。

 

「…………待ってろ雪美…」

 

階段を上がると展望室にたどり着く。そして捉えられている雪美を見つけた。

 

「雪美!!!」

 

「竜也!!」

 

「おお、感動の再会だね。ブラボーブラボー」

 

「…………漆ヶ丘………」

 

「いやぁ、君一人だけに来てほしかったんだ。ほかの連中を足止めするのに随分苦労したものだ」

 

「…………だったらなんで関係ない人間まで巻き込む!!!雪美だけじゃねぇ!芳乃も!宇随さんも!今度は世界中だ!!!」

 

「前にも言っただろ。私は、データがとりたいんだ。今まで君が手に入れてきた力。すべてを出して私を倒してみ給え。できないなら、世界は滅ぶだけだ」

 

漆ヶ丘はロックシードを取り出した。

 

『マンゴー』

 

「…………」

 

『マツボックリ!』

 

『ドラゴンフルーツエナジー!』

 

「「変身」」

 

二人は同時に変身し、それぞれブラックガイムマンゴーアームズ、黒影トルーパージンバ―ドラゴンアームズに変身した。

 

ほんの少し、沈黙が流れる。

 

「はぁ!」

 

先に動いたのは竜也だ。影松真で切りかかった。漆ヶ丘は竜也の斬撃をマンゴパニッシャーで受け止めるが、竜也はそのまま一気に押し通そうとする。

 

「おぉぉぉぉぉ!!」

 

「おっとぉ?」

 

「だらぁ!!」

 

少し押した後に逆側の刃を振り、漆ヶ丘を切り裂く。

 

「はぁぁぁぁ!!」

 

さらに突きを食らわし、一気に壁際まで追い込もうとした。しかし、漆ヶ丘は腰に携えた無双セイバーのレバーを引き、弾を装填する。

 

そして無双セイバーを抜くと同時に竜也に弾丸を放った。

 

「ぐっ!」

 

「はぁ!」

 

竜也が一瞬怯んだ隙に漆ヶ丘は距離を詰め、マンゴパニッシャーで竜也を殴り飛ばす。

 

「ぐぁぁぁ!!」

 

「竜也!!」

 

「おいおい、そんなんじゃあ愛しの雪美ちゃんのお顔に傷がつくことになるよ?アイドルを続けられなくなったら、悲しいよねぇ?」

 

漆ヶ丘は無双セイバーの銃口を雪美に向けた。それを見た瞬間竜也は影松真を掴む。

 

「ざ………っけん……なぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

竜也は立ち上がり走り出す。

 

「おらぁぁぁ!!」

 

「甘い!!」

 

竜也の斬撃を漆ヶ丘はマンゴパニッシャーで受け止め、隙だらけの腹部を無双セイバーで撃つ。

 

「がっ!!」

 

「こんな!」

 

さらに竜也をマンゴパニッシャーで殴り、蹴り飛ばす。竜也は吹っ飛ばされ、地面に倒れた。

 

「程度か!!」

 

「……………こ………のぉ…」

 

漆ヶ丘はマンゴーロックシードを外し、無双セイバーに装填する。

 

「残念だよ。もっといいデータが取れると思ってたのに。まぁ、大切な女の子一人守れない程度の雑魚なら」

 

『ロックオン!一…十…百!!』

 

「ここで死ぬと良い」

 

『マンゴー!チャージ!!』

 

「はっ!」

 

漆ヶ丘は無双セイバーを構えて飛び上がる。エネルギーが溜まった刃が竜也に迫ったが、竜也は影松真を横に構え、柄で漆ヶ丘の攻撃を受け止めた。

 

「ぐぅぅぅぅぅぅ!!!!」

 

「おぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

なんとか受けきろうと踏ん張っていたのもつかの間、影松真の柄が真っ二つに折れ、無双セイバーの刃が容赦なく竜也の身体に当たる。

 

「!!!!」

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「竜也!!!」

 

竜也は無双セイバーに切り裂かれ、蓄積されたエネルギーが爆発した。その爆発を見た雪美が涙ながらに悲痛な叫びをあげた。

 

「…………ここまで……か」

 

「っ!!!!!」

 

だんっ!と地面に足を叩きつける音が聞こえた。漆ヶ丘がその音に驚き、振り返る。それと同時に爆炎の中から竜也が真っ二つにされた影松真を両手に握り、飛び出してきた。

 

「っ!」

 

漆ヶ丘はとっさに無双セイバーを振ったが、竜也はそれを躱し、折れた影松の片割れを漆ヶ丘に突き刺した。

 

「!!」

 

それと同時にカッティングブレードを倒し、ロックシードを起動させる。

 

『マツボックリスカッシュ!ジンバ―ドラゴンフルーツスカッシュ!!』

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

 

漆ヶ丘に突き刺した方と、竜也が持っているもう片割れにエネルギーが溜まる。竜也は突き刺した片割れを突き刺す力をより一層強くし、持っていたもう片割れで漆ヶ丘を切り裂いた。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

漆ヶ丘は爆発し、強制変身解除させられ、地面を転がった。

 

「はぁ……はぁ………雪美!!」

 

「竜也!!」

 

「ごめん!!ごめん!!怖い思いさせたな!すぐに助けるから…」

 

竜也が雪美に駆け寄ろうとしたとき、雪美が何かを恐れる目をした。

 

「竜也!後ろ!!」

 

「!」

 

振り返ると、漆ヶ丘が壁に寄りかかりながらも立ち上がっていた。

 

「そうだ………これくらいしてくれないと、やりがいがないってものさ」

 

「降伏しろ漆ヶ丘!!!もう終わりだ!」

 

「………いいや、これから始まるのさ」

 

漆ヶ丘は新たなロックシードを取り出した。オレンジロックシードに似ているが、なにやら蔦のようなものが絡みついているように見える。

 

「なん………だ?その………ロックシード…」

 

「これが私の研究成果のすべてさ………」

 

『ヘルバスケット!』

 

ロックシードを開錠すると、漆ヶ丘の頭上に大量のクラックが生成され、そこからあらゆるロックシードのアーマーが出現する。そう、それはまるで極ロックシードと同じように。

 

漆ヶ丘はロックシードをベルトに装填し、カッティングブレードを倒した。

 

「変…………しぃん…………」

 

『ヘル・ミックス!バイオレェンス!デストロォイ!デッドリィー・シィン!!』

 

漆ヶ丘の真上にあったオレンジアームズが装着され、漆ヶ丘はアーマードライダーブラックガイムオレンジアームズに変身した。そして、その身体に浮遊しているアームズの一つが飛び込んでいった。

 

「ぐぅ!!」

 

「なっ………」

 

アームズは身体に吸収され、さらに一つ、また一つとアームズが吸収されていった。すべてのアームズが吸収されると、ブラックガイムの胸が緑色に輝く。まるで、ヘルヘイムの森の果実を食べた人間のように。

 

「はぁ………はぁ…………はぁ…はぁaaaa……。こRぅえが………人ルiの……………サい終Sin化だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

その叫びと共に、漆ヶ丘の胸の輝きはより一層強くなり、光の波動を辺りに放った。

 

ブラックガイムの仮面の中央にヒビが入り、その隙間から光が漏れる。

 

「おぉぉぉぉ………おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

 

左肩から先のアンダースーツとアームズが吹き飛び、中から怪物の腕が出現する。右足の付け根から先、左足の足首から先も同じように吹き飛び、内部からは怪人化した手足が見えていた。

 

さらに胸には緑色のコアのような発光するものが生成され、アームズにも爪のような触手のようなものが生えていた。

 

そして、最後に仮面が半分剥がれ落ち、怪人の顔が半分覗いていた。

 

「な……………」

 

「これが…………私の研究結果だ……いや?戦極凌馬が望んだ姿…………といえばいいのかな?」

 

「ついに人間であることを捨てたか!漆ヶ丘!!!」

 

「人であることにこだわりはないさ、僕はただ、最高の研究結果をこの身体で体現しただけさ!!!」

 

「だったら…………この手で終わらせてやる」

 

竜也は折れた影松を構えて漆ヶ丘に向かって走り出した。

 

「ん………おぉぉぉぉぉ!!!」

 

漆ヶ丘が叫ぶと胸にあるコアからエネルギーが発生し、そのエネルギーが腕に集まり、大橙丸が生成された。

 

「っ!!はぁ!」

 

そのことに驚きながらも竜也は影松を振るう。その攻撃を漆ヶ丘は大橙丸で受け止め、さらに空いた手にドリノコを生成して竜也を切り裂いた。

 

「ぐぁ!」

 

「はぁ!」

 

漆ヶ丘はさらに身体を暗い緑色に光らせ、高速移動を開始した。目にもとまらぬスピードで竜也を翻弄しながら竜也を複数回切り付け、最後に背後から竜也を蹴り飛ばした。

 

「うわぁぁぁ!」

 

漆ヶ丘は高速移動をやめると両手に無双セイバーとブドウ龍砲を生成し、竜也に弾丸の雨を食らわせた。

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「まだまだ!」

 

さらに漆ヶ丘はクラックを生成し、ヘルヘイムの植物を竜也に巻きつけ、複数回壁に打ち付けた後に投げ捨てる。

 

「あが…………く………そ……」

 

全身が馬鹿みたいに痛む。だが倒れるわけにもいかず、何とか立ち上がり、構える。

 

「しぶといね。なら、これはどうかな?」

 

漆ヶ丘はさらにクラックを生成し、インベスを大量に呼び出した。

 

「ギィィィ!!」

 

「この………やろ………うぉぉぉ!!」

 

竜也は何とか身体を動かしインベスを攻撃するが、隙だらけの身体を切り付けられ、殴られ、完全にお手玉状態となる。

 

「竜也………もう………やめて…逃げて………」

 

雪美が涙ながらに訴えるが、その声は届いているのかもわからない。

 

とうとう竜也は持っていた影松真を落とし、その場に膝まづいた。それを見た漆ヶ丘はインベスに攻撃をやめるように命令する。

 

「竜也………」

 

「……………すこし残念だよ。もう少し、このロックシードの力を発揮できると思ったのに」

 

「…………」

 

「さよならだ」

 

『ヘル・ミックス・スカァッシュ………』

 

漆ヶ丘は飛び上がり、ライダーキックを竜也に放った。竜也は最後の力を振り絞って立ち上がり拳を前に突き出したが、そんな攻撃が通用するわけもなく、竜也はライダーキックを食らい、吹っ飛ばされた。

 

「竜也ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

強制変身解除させられ、雪美の最後の悲鳴を聞きながら、竜也は壁を突き破り、展望室から落ちていった。

 

「……………」

 

「あ、あれって!」

 

「竜也!!」

 

「Pちゃん!!」

 

地面に向かって落ちていく竜也をアイドル達が目撃し、悲鳴を上げた。しかし、竜也が地面に落ちていく中で、空中にクラックが開かれ、金色に光るエネルギー球が出現した。

 

「!?」

 

エネルギー球は竜也を取り込み、どこかへ飛んでいった。

 

「なんなの………あれ」

 

「そんなことより!竜也さんは無事なんですか!?」

 

「…………信じるしか………ありませぬ~……」

 

 

 

―エネルギー球の内部―

 

 

 

「う…………」

 

竜也が目覚めると、そこは妙な空間の中だった。空中でも、地面でもないような場所で竜也は目を覚ます。

 

「よう、よく頑張ったな………なんて、俺が言える立場じゃないかな」

 

「……………君………は」

 

竜也の方へ歩いてくる男がいた。声の方へ顔を向けると、そこにいたのは、白銀の鎧と白いローブのようなものに身を包んだ白髪の男。

 

それは、かつて沢芽市を救い、オーバーロードになりながらもこの世界を支配しようとせずに別の惑星へ飛び立った男。

 

始まりの男、葛葉紘汰だった。

 

「葛葉紘汰…………?」

 

「俺のこと知っててくれたのか。まぁ、ユグドラシルの人間なら当たり前か」

 

「…………なんで」

 

「ああ、漆ヶ丘は越えちゃいけないラインを超えた。ヘルヘイムの力で悪事を働く………程度なら俺が出るまでもない。だけど、あいつはオーバーロードの力を手に入れてしまった」

 

「………」

 

「だからあとは俺に任せろ。全部終わらせてやる」

 

「…」

 

紘汰は出ていこうとしたが、その足を止めた。

 

「………けどアンタ、今回のことは自分でケリをつけたい………そんな顔してんな」

 

「……あいつは、俺の大事なアイドルや俺の周りの人を何度も悲しませて、傷つけた………俺が決着をつける」

 

「そうか」

 

紘汰は竜也の懐から雪美のくれたマツボックリを取り出した。そのマツボックリを紘汰が撫でると、マツボックリが光り輝き、角ばった形に変形する。

 

さらにもう一度マツボックリ撫でると、マツボックリは大きなロックシードに変わった。

 

「これを託す。負けんなよ」

 

「…………ああ」

 

 

 

―テレコムセンター展望室―

 

 

 

竜也が突き破った穴にエネルギー球が着地し、その場に竜也だけ残してエネルギー球はどこかへ飛んでった。

 

「竜也!!」

 

「何が起こった………?」

 

「…………奇跡………かな?」

 

竜也は紘汰から託されたロックシードを構えた。

 

「変身」

 

『カチドキ!!!』

 

「K.L.S-346」と刻印されたロックシードを開錠する。頭上にクラックに生成され、巨大なアームズが出現する。ロックシードを戦極ドライバーに装填し、カッティングブレードを倒した。

 

『カチドキアームズ!!いざ!出陣!!エイエイオー!!!』

 

アームズが落下し、展開されると竜也はアーマードライダー黒影トルーパーカチドキアームズに変身した。

 

頭部に四本角のクレストが出現し、胸と背中に背負われたカチドキ旗には346プロのマークが刻印されている。

 

「………………やれ」

 

漆ヶ丘が命じると、インベスたちが一斉に襲い掛かってきた。竜也はカチドキ旗を引き抜き、走り出した。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

最初に挑んできた数体をカチドキ旗で殴り飛ばし、敵の中枢に飛び込むと、カチドキ旗を振り回し、エネルギー波を飛ばし、インベスをすべて浮き上がらせる。

 

「はぁ!!」

 

さらにカチドキ旗を振り回すとインベスはすべて吹き飛ばされ、爆発四散した。その余波で雪美を縛っていた蔓がわずかに切れ、雪美は蔓をはがした。

 

漆ヶ丘は無双セイバーとブドウ龍砲を生成して構える。

 

「…………いいねぇ…さぁ!もっと楽しもうか!!」

 

「ふざけんな!」

 

インベスを一掃した竜也はカチドキ旗を構えて漆ヶ丘に突っ込む。漆ヶ丘は容赦なくブドウ龍砲と無双セイバーの弾丸を放つが竜也はそれをモノともせずに立ち向かってくる。

 

漆ヶ丘はすぐにブドウ龍砲と無双セイバーを投げ捨てオーバーロードが使っていたものに似た斧とマンゴパニッシャーを生成した。

 

「はぁ!!」

 

竜也のカチドキ旗と斧がぶつかり合う。竜也は斧を弾き飛ばし、迫りつつあったマンゴパニッシャーを受け止める。

 

「…………お前は、芳乃を傷つけた」

 

「?」

 

「ただのファンであったろう法堂や、宇随さんをそそのかし、楓さんを傷つけ…………」

 

「…!」

 

竜也の力はだんだん強くなり、マンゴパニッシャーを力づくで下におろしていく。

 

「しまいにゃ雪美を傷つけた!!!!!!ぜってぇ許さねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

 

竜也はマンゴパニッシャーをカチドキ旗と一緒に投げ飛ばし、隙ができた腹部に拳を叩き込んだ。黒影トルーパーとはいえ、カチドキアームズの力でかなりパワーは上がっていた。

 

「ぐぉぉ!!」

 

「おらぁぁぁ!!」

 

怯んだ漆ヶ丘をさらにもう一発、もう一発と殴っていく。

 

「このぉぉぉ!!!」

 

漆ヶ丘はドンカチを生成し、竜也を殴り飛ばした。竜也はそれを受け少し下がる。

 

「はぁ、はぁ…………漆ヶ丘…………お前は、人を捨てたのなら、もう俺は容赦しない」

 

ベルトのカチドキロックシードが輝き、槍が出現した。竜也はそれを掴む。影松の先端に、火縄橙々DJ銃によく似た「火縄松笠DJ銃」が合体し、巨大な薙刀のような形状の武器だ。

 

「いいだろう、私も、全力を出そう!!」

 

漆ヶ丘は近くに落ちていた斧を拾い、構えた。

 

「…………」

 

「…………」

 

僅かな緊張が流れる。雪美は自由になった手を胸の前で合わせ、目を閉じる。

 

「…………竜也」

 

小さな一言で、二人は動き出した。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

走りながら漆ヶ丘はヘルヘイムの蔓を伸ばした。しかし、蔓が竜也にたどり着く瞬間、カチドキロックシードが輝きを放ち、蔓を吹っ飛ばした。

 

「なに!」

 

「おらぁぁぁぁぁぁ!!」

 

漆ヶ丘が戸惑った隙に竜也は漆ヶ丘を切り付ける。

 

「ごぁぁ!」

 

「おぉぉぉ!!」

 

さらに刃の向きを変え、切り返して漆ヶ丘をひるませる。

 

「まだまだぁぁぁ!!」

 

「甘い!!」

 

『ヘル・ミックス・スカァッシュ……』

 

接近してきた竜也の腹部にブドウ龍砲を押し付け、チャージショットをゼロ距離で食らわせる。装甲が厚いカチドキアームズと言えど、オーバーロードに匹敵する力を持つヘル・ミックスロックシードの力は受けきれず、軽く吹っ飛ばされる。

 

「ヘルヘイムの植物を消す力は想定外だが、私の力はその程度ではない!!」

 

漆ヶ丘はバナスピアーを生成し、竜也にとびかかる。竜也はその攻撃を火縄松笠DJ銃薙刀モードの柄で攻撃を受け止める。それを弾き返すと漆ヶ丘はバナスピアーを横に振ったが、竜也はさらに薙刀でそれを受け止めた。

 

隙ができた竜也に斧を振り上げるが、竜也は漆ヶ丘を蹴り飛ばす。

 

怯んだ漆ヶ丘に薙刀を突き刺すが、漆ヶ丘は斧とバナスピアーでガードする。薙刀を弾き、漆ヶ丘はバナスピアーを竜也に向けて投げた。竜也はバナスピアーを弾き再度構えようとしたが、パインアイアンが竜也を拘束した。

 

「なに!」

 

「はぁぁぁ!!」

 

拘束された竜也は斧の攻撃をもろに受け、地面を転がる。だが、その攻撃でパインアイアンの拘束が解けた。竜也は薙刀を構え立ち上がる。

 

「おぉぉぉぉぉ!!!」

 

漆ヶ丘はさらにキウイ撃輪を二枚投げ、攻撃を仕掛ける。竜也はそのうち一つを叩き落とし、もう一つのキウイ撃輪を受け止め、漆ヶ丘に投げ返した。

 

「!」

 

漆ヶ丘は両腕にナックルボンバーを生成し、キウイ撃輪を殴り飛ばした。さらにそのままクルミボンバーを射出したが、竜也は走りながらクルミボンバーを躱し、漆ヶ丘に接近した。

 

「はぁ!!」

 

「このぉ!!」

 

竜也が振るった薙刀と漆ヶ丘の突き立てた無双セイバーは互いに当たり、二人とも怯む。

 

「くっ!やれ!」

 

漆ヶ丘はインベスを二体召喚し、竜也に向かわせた。竜也はとっさに火縄松笠DJ銃と影松を合体解除し、火縄松笠DJ銃のスクラッチを動かす。

 

軽快な音楽が流れ始め、竜也はそのテンポを落として大砲モードへ変える。再度スクラッチを回し銃口をインベスに向けた。

 

「はっ!」

 

二体のインベスに一発ずつ、大砲モードの射撃を放つとインベスは跡形もなく消滅した。インベスが消えた後の硝煙が消え、お互いの姿が視認できるようになる。

 

「…………」

 

「………」

 

竜也は火縄松笠DJ銃と影松を合体させ、薙刀モードにする。漆ヶ丘も斧を構えた。

 

漆ヶ丘はカッティングブレードに手をかけ、竜也はカチドキロックシードを外し、薙刀モードの火縄松笠DJ銃にセットした。

 

『ロックオン!!一十百千万……無量大数!!!!』

 

『ヘル・ミックス・スパァキング………』

 

二人の武器にエネルギーが溜まっていく。二人は互いを睨む。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

二人の攻撃が同時に当たり、巨大な爆発が起こる。

 

「きゃ!!」

 

雪美もその爆発に驚く。だが、二人の技は相殺されただけでお互いダメージはない。それは二人もわかっていた。竜也と漆ヶ丘は互いに爆炎の中へ飛び込んでいく。

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

 

「あぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

爆炎の中で漆ヶ丘は無双セイバーを渾身の力を込めて突く。竜也はその攻撃を甲手で受け流し、脇で抱えて漆ヶ丘を捕らえた。

 

「なっ!!」

 

「わぁぁぁぁぁぁ!!」

 

そして竜也は漆ヶ丘の胸のコアに薙刀を突き立てた。

 

「!!!」

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

漆ヶ丘の胸のコアから光が漏れ、漆ヶ丘もあからさまに苦しんでいる。竜也が抱えている漆ヶ丘の腕の力が弱まったことを確認すると、腕を離して両手で薙刀を持ち、漆ヶ丘を壁に押さえつける。

 

「おぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

「こ…………のぉぉぉぉ!!!」

 

漆ヶ丘も負けじと薙刀を掴み、引き抜こうとする。

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

二人の力は完全に拮抗する。漆ヶ丘のダメージは致命的だが、決め手にはまだ遠い。先に力尽きた方の負けとなる状況で拮抗し、竜也も薙刀から手を離せないでいた。

 

そんな時、一つの足音が二人に向かってきていた。

 

「竜也!!!」

 

「雪美!!」

 

雪美は走りにくいウェディングドレスで竜也の前まで走り、竜也のベルトのカッティングブレードを倒す。

 

『カチドキ!スカッシュ!!!!』

 

「!!!!」

 

薙刀にエネルギーが溜まり、威力が強まった薙刀は再び漆ヶ丘のコアに刺さる。

 

「だぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

突き刺さった薙刀で漆ヶ丘の身体を切り裂き、竜也はその勢いのまま後ろを向く。そして雪美を抱え、漆ヶ丘から離れた。

 

「ぐ…………あ……」

 

「…………」

 

漆ヶ丘はコアから光を放ちながらその場に跪く。

 

「……………あ……ぐぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

漆ヶ丘の胸の光が大きくなると、体中から刃のようなものが生え、その衝撃波がテレコムセンター全体を次々きり会裂いていく。

 

「うぉぉぉぉ!」

 

竜也は雪美を抱えたまま衝撃を何とか避ける。

 

漆ヶ丘はそのまま体が膨張し、光が一層強くなったと思うと、大爆発を起こした。その爆発でテレコムセンターの上半分は吹っ飛び、竜也は空中へ放り出された。

 

「うわぁぁぁぁ!!」

 

だが竜也はそんな状態でも雪美をしっかり抱えていた。

 

(俺はどうなっても、雪美だけは絶対に!!!)

 

そんな竜也と雪美は黄金色のエネルギー球にさらわれ、近くのヴィーナスフォートへ連れ去られた。

 

 

 

―ヴィーナスフォート・教会広場―

 

 

 

二人は教会広場のステージにおろされた。まだオープンしてる時間ではないが、教会広場のステージを照らすライトだけが輝き始める。それと同時に葛葉紘汰が現れた。

 

「………ご苦労様。多分アンタが戦わなきゃいけないのはこれで最後になるはずだ。アンタに因縁もってたのは漆ヶ丘だけだからな」

 

「そう………か」

 

「君にも怖い思いをさせたな」

 

「………平気。竜也が………助けてくれるって……………信じてたから」

 

「………そうか。竜也はすっごい疲れてるから、癒してやってくれ」

 

紘汰がそう伝えると、雪美はにっこり笑った。

 

「じゃあな………あ、もし地球のピンチになったら、力を借りてもいいか?」

 

「……もちろん」

 

二人は固い握手をし、紘汰はクラックを通って去って行った。

 

教会広場には竜也と雪美の二人だけが残される。竜也はカチドキロックシードを閉じ、変身解除した。いつも通りのスーツ姿の竜也と、ウェディングドレス姿の雪美が向き合う。場所や演出も相まって、まるで結婚式の様だった。

 

「…………雪美…」

 

竜也はその場に膝をつき、雪美を抱きしめた。

 

「……………無事で………よかった………っ!!」

 

「ん………大丈夫…………ちゃんと………来てくれた………約束………守ってくれた」

 

竜也は己の手に抱かれている小さな命を、強く、強く、抱きしめ。その温かさを実感していた。

 

「竜也………私の顔………見て?」

 

「………?」

 

竜也がいったん抱きしめる手を離し、雪美の顔を見る。

 

刹那

 

雪美の小さくて柔らかな唇が、竜也の唇と重なった。

 

「………」

 

「………好きって気持ち……まだよく…………わからないけど………きっと……こんな………気持ち……私は、竜也が……………好き」

 

雪美は、とびきりの笑顔で、笑った。

 

本来であれば、プロデューサーとしては断り、指導しなければならないこと。だが、二人以外誰もいない空間での出来事。二人だけの秘密になった。

 

二人がヴィーナスフォートを出ると、竜也がプロデュースしているアイドルと呉島兄弟、凰蓮の姿が見えた。

 

「みんな………ん?」

 

頬に何か冷たいものが当たった。空を見上げると、雪が降ってきていた。

 

「雪………か」

 

「竜也」

 

「ああ」

 

二人は手を繋いで歩き出す。これからも続く。一緒の道を。

 

 

Fin

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