雪美Pは元ユグドラシル   作:瑠和

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今回は長いですが前後編になっています。読んでいて少々違和感のある設定が出てくるかもしれませんが、それについてはあとがきにて説明します。

今回は時間軸的にメインストーリーの後の話です。


夜ノ章

シンデレラガールズ総選挙後のライブは大成功に終わった。その裏で起こっていた事件も竜也とアーマードライダーたちの活躍で無事終息した。そして、頑張ったアイドル達にはつかの間の休息が与えられた。

 

 

 

-海-

 

 

 

竜也は自身の担当アイドルを連れて海に来ていた。慰安旅行というものだ。担当しているアイドルの雪美、悠貴、芳乃、美優、千夜、ちとせ、颯、凪の八人に加え、他のプロデューサーが忙しく旅行に連れていけない一部アイドルを連れてきていた。プライベートビーチを借り、騒がれないようにした。

 

「あんま遠くに行くなよ~」

 

「は~い!!」

 

遊び盛りの女の子たちだ。慰安旅行を心から喜んでいるようだった。荷物をまとめ、ビーチパラソルの下で座っていると、悠貴と雪美、芳乃がやって来た。

 

「竜也さん!」

 

「ん、おお悠貴。雪美と芳乃も」

 

「ど、どうでしょうか!今日のためにみんなで選んだんですが…」

 

三人は新しい水着を披露しに来たようだ。以前休みが被った日に三人で出掛けてたのは知っていたが、どうやら水着を買いに行っていたらしい。

 

「ああ、みんなよく似合ってる。可愛いよ」

 

竜也はこういったとき、どう褒めるのが正解かわからなかったので無難な言葉を選んだ。そもそも小学生、中学生、高校生と年齢がバラバラなのでどれがどう伝わるかもわからない。

 

「ありがとうございます!えへへ、一生懸命選んだんです!」

 

どうやら正解だったようだ。一瞬の緊張を乗り越え、荷物の整理に戻るとしたとき雪美が竜也の袖を引っ張った。

 

「竜也…」

 

「ん?」

 

「日焼け止め…………塗って欲しい…」

 

「………俺がか?いや俺がやるのは少し…………芳乃か悠貴、頼めるか?」

 

竜也は二人のどちらかに頼もうとした。しかし、二人は顔を見合わせると、二人も竜也の前に来て背中を差し出した。

 

「私もお願いできますか?」

 

「わたくしもー」

 

「なんでだ!?」

 

結局竜也は全員に日焼け止めを塗ってあげた。ただのビーチであればそれなりに問題あったかもしれないがプライベートビーチなので良しとした。

 

(みんな肌綺麗だな………)

 

「良し、できた。行ってらっしゃい雪美」

 

「…………竜也は……来ないの?」

 

「ん?ああ、俺はここでみんなを見てるから」

 

「………そう」

 

雪美はビーチボールを持って遊びに行った。竜也は小さくため息をついて荷物の整理を行った。

 

「ふぅ………八人でも大変なのに追加とはな。まぁ忙しいのは仕方ないか………」

 

「竜也プロデューサー」

 

一人ビーチパラソルの下で座り込む竜也のところに、楓がビール缶を持って隣に座った。そしてビールを渡そうとしてくる。

 

「どうぞ」

 

「いえ、一応仕事中なので……それより宇随先輩は?あの人楓さんの専任でそこまで忙しいイメージはないんですけど…」

 

「プロデューサーとしての忙しさは皆さんと変わりありませんよ………でも今は、そんなに忙しくはないんですが」

 

「そういえば楓さんから来たいって言ってましたよね。先輩も来ればよかったのに…」

 

「…………………なんだかあの人最近、近寄りがたくて…少し離れたかったんです」

 

「それってどういう…」

 

詳しく聞こうとしたとき、竜也の頭にビーチボールが命中した。空気を入れただけのビーチボールなので大したダメージがない。

 

「プロデューサーさぁん、大丈夫ですかぁ?」

 

「ああ大丈夫だ」

 

走ってきたのは佐久間まゆだ。彼女は竜也の担当するアイドルではないが、時々雪美と仲良く遊んでもらっている。彼女は彼女自身のプロデューサーに相当ほれ込んでいるらしい。

 

「ほら、ボール」

 

「………プロデューサーさんが一緒に遊んでくれないの、雪美ちゃん寂しがってますよぉ?」

 

まゆは小声で竜也に告げた。

 

「…」

 

竜也は辺りを見回す。ちとせには千夜がついているから問題ないとして、雪美、颯、凪はまゆと、悠貴と芳乃は二人で遊んでいるが近くに荒木比奈と鷹富士茄子がいる。二人とも担当はしていないが、成人してるし面倒見も良い。信頼に足る人物だ。

 

「楓さん。荷物を任せていいですか?」

 

「はい。私はここでのんびりしてますので」

 

「よしっ!いくぞぉ!」

 

竜也はビーチボールを持つと、スイッチを切り替えて走り出した。

 

「おぉ、Pも参加か。では凪が受けて立ちます」

 

「来ぉい!!」

 

一方でちとせは日よけ傘を差したビニールボートに寝転がり、千夜に押させて沖まで来ていた。

 

「ん~?千夜ちゃん沖まで来すぎじゃない?」

 

「…………お嬢様」

 

「なに?」

 

「お嬢様はご存じだったのですか?あの男が………ユグドラシルに関わっていたこと」

 

「さぁ?どうだろうね~♪」

 

ちとせははぐらかした。千夜にとっては予想できた回答だ。

 

「……はぁ」

 

皆で時間を忘れ遊んでいると、いつの間にか夕方になっていた。海水浴を終え、みんなでホテルに行った。

 

「わぁ、大きいですね!」

 

「みんな頑張ったからな。奮発させてもらったんだ」

 

ホテルでの良い夕食に舌鼓を打ち、海水浴と合わせてどうやら満足してもらったようだった。アイドルには二人に一つ部屋を与え、竜也は一人部屋だった。アイドルと同室になるというのも問題だろうと考えたのだ。

 

竜也は個室で一人、戦極ドライバーとマツボックリロックシード、ドラゴンフルーツエナジーロックシードを並べ、見つめていた。事件の後、またこういう事件が起こるかもしれないということで貴虎が持つことを許してくれた。

 

「もしかしたら使うことがあるかもって思って持ってきたが…使わずに済んでよかった…。また俺がこの力を手にしたことは……なんか意味があるのかな…」

 

再び手に入れた力に、竜也は少し戸惑っていた。

 

「いつかまた……あいつみたいなやつが現れるのかな…ヘルヘイムの脅威は去ったはずなのに…その副産物を使った人間が………一番怖いってことか…」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

(時折、夢を見る。炎が荒れ狂い、大切なものを全てを焦がして焼き尽くす夢。そう他人には話す。だが、その夢には続きがある。すべてが燃え尽きた後、私は植物のツタに絡まれ、縛られる。目が覚めるまで締め付けられ続ける……………そう、今も)

 

「っ!!」

 

千夜は夜中に目を覚ました。悪夢にうなされ、苦しんだ末の目覚めだ。とても良い目覚めとは言えない。身体を起こすと、同室のちとせはまだ起きて月光浴をしているのが見えた。

 

「………お嬢様」

 

「千夜ちゃん。起きたんだ」

 

「……ええ」

 

「まだ夜中だよ?」

 

「……いつもの夢です。少し、外の空気を吸ってきます」

 

千夜はホテルの外に出て、海に向かって歩いた。砂浜で海風を浴びていると、背後から足が聞こえることに気付く。

 

「…お前」

 

振り向くとそこには竜也がいた。

 

「よう………外で一人で歩いているのが見えてな…一人じゃ危ないぞ」

 

「お前に心配されるほど、私は弱くありません」

 

「そうは言ってもな…」

 

刹那、千夜は近づいてきている竜也の背後に回り、竜也の腕を背中で抑えて簡単な拘束をする。

 

「いでででで!!」

 

「言ったでしょう」

 

「でも、心配だから…」

 

「………はぁ、お人好しですね。そんなに人に優しくしても、お前になにか見返りがあるわけではないだろう?」

 

なにかと厚かましい竜也に、千夜は少し苛立ちを感じていた。今はあまり触れて欲しい気分ではなかった。

 

「見返りの問題じゃない。俺はプロデューサーだから……できることは、みんなの仕事取ってきたり、体調管理とかその辺だけだから…心配することくらいしかできないから…」

 

「まぁ、プロデューサーなら当然だとは思いますが」

 

「プロデューサーとしてだけじゃない…一人の人間としてアイドルと、千夜に寄り添いたい気持ちだってある」

 

「…お前、以前はユグドラシルにいたと聞きます」

 

拘束したまま、千夜は急に話題を変えてきた。竜也の過去の話だ。

 

「え?何で今…」

 

「拘束を解いてもらいたかったら答えろ」

 

なぜそんなことを聞いてくるのか、竜也は分からなかった。しかし、言わなければ拘束を解いてくれないし、知りたいというなら答えない理由はない。色々と知られたくないことはあるが、千夜にはもう知られている。

 

「へいへい……そうだが?」

 

「なぜ最初はその会社にいた?」

 

理由なんてなかった。学力があったから入った。それだけだった。

 

「……自慢じゃないが、俺は勉強はできたからな…でもやりたいこともなくて、なんとなくユグドラシルに入ったんだ。まさかあんな事件に巻き込まれるとは思ってなかったが」

 

「…プロジェクトアークについて、どう思いましたか?」

 

プロジェクトアーク、10億台しか生産できない戦極ドライバーのために60億人の人間を抹殺して10億人の選ばれた人間を生かす計画だ。

 

「…情けない話、プロジェクトアークを聞かされた俺は諦めてた。俺の両親は、ある時起きた通り魔事件の犯人を止めようとして巻き込まれて死んだ。だから俺は、お人好しをして死ぬくらいだったら泥を啜ってでも生きる道を選んだ。60億の人を抹殺する計画にも、ビートライダーズをモルモットにする計画にも、仕方ないと目を瞑り、命を見捨て続けてきた…っ!」

 

千夜から竜也の表情は見えないが、歯を軋ませているようだった。何もできなかった自分に対する怒りに震えていた。

 

「…」

 

「今では後悔してる。葛葉紘汰のように、絶望よりも希望を信じてあがき続けた方がよかった。だから俺は、変わるって決めたんだ…」

 

「………そうですか。質問を変えます。今お前はプロデューサーとしてアイドルを導いている。そしてお前はアイドルの為にその身を挺して戦った。そのことから彼女たちに対して本気になっているのは分かります………もし、アイドルがかつて罪を犯していたとして、お前はそれを受け止めきれますか?」

 

「え?」

 

妙な質問だった。だが質問の意味は何となく分かる。

 

「まぁ、なんというか状況にもよるわな」

 

「状況?」

 

「どうしてもそうしなきゃいけないっていう状況もあるだろ。前の俺みたいに。だからまぁ、状況にも寄るが………俺はきっと、その娘の味方をする」

 

「どうしてです?秘密にすればお前の身の破滅もあり得るだろうに」

 

「俺にその娘をどうこう言う資格はないからな。それに…………背負えるなら背負ってやりたい。長いか短いかなんてわからないが、この先一緒に同じ道を行く仲間…いや、戦友?だったら、重荷はお互いに背負ってこそだろ?それに罪を犯しているのなら、きっとそれを後悔している。誰かに背負ってもらいたいこともあるだろ。後悔してないならさせる。でもそれは敵に回ることじゃない。そうすることが味方になると俺は信じている。そして背負う。最後まで」

 

「………そうですか」

 

千夜は竜也の拘束を解くと同時に、軽く蹴り飛ばした。

 

「!?」

 

竜也はその場に膝を着く。すぐに立ち上がろうとしたその時、驚くことに千夜が後ろから竜也をそっと抱き締めたのだ。

 

「…ち、千夜っ!?」

 

「騒ぐな。変な気を起こしたり、振りほどこうとすれば即座に首の骨を折る」

 

「はい…」

 

僅かに背後から殺意のようなものを感じていたので竜也は抵抗しなかった。明らかに竜也に対して好意を持っているアイドルの距離が近いことは時々あるが、千夜がこういうことをしてくるのは初めてだった。

 

「お前がユグドラシルにいたことを知ってるのは?」

 

「…たぶん、今のところ雪美だけだ。雪美も、俺が昔黒影トルーパー隊にいたことくらいしか…プロジェクトアークとかその辺は知らない」

 

雪美だけでなく、事件に巻き込まれた芳乃も何かしら察してはいるだろうが彼女は深入りしてこなかった。だから知っているのは実質雪美だけだった。

 

「そうか……………………………これから話すのは、私の独り言だ。聞きたければ聞けば良いし、聞きたくなければ耳でも塞いでいればいい」

 

「…」

 

竜也は黙ったまま頷く。

 

「とある女の子の話だ。その女の子はどこにでもいる普通の女の子で、両親と幸せに過ごしていた。しかしある日、その女の子にとある災厄が振りかかる。詳しくは言いませんが、荒れ狂う炎が、その女の子の大切なものすべてを焼き払った。家族を失い、天涯孤独となった女の子はとある男に拾われた。その男の名前は、呉島天樹」

 

「!」

 

呉島天樹。ユグドラシルコーポレーションの重役にして、呉島貴虎、呉島光実の父である男だ。竜也も名前くらいは知っていた。

 

「呉島天樹は、孤児院の理事長であり、その孤児院は裏で将来ユグドラシルを担うに値する子供を育成していた。指導者や研究者、社会の裏で暗躍する工作員…子供たちは幼くしてその手を血で汚す子供も多かった。そんな孤児院で育てられた女の子は、ある任務を受けてヨーロッパに行った」

 

ヨーロッパはちとせがかつて住んでいた場所だ。

 

「ヨーロッパにあるトルキア共和国では、ユグドラシルによる実験が行われていた。その実験に支援金を出していた家がある。ヨーロッパで孤児として振る舞い、その家の一人娘に近づき、気に入られて拾われる。そしてその一人娘を殺し、財産を拾われた女の子が引き継ぐ。それがその女の子に与えられた使命だった。そうすればもっと支援金が手に入るからな。しかもその家の一人娘は病弱であまり学校に行けず、友達が少なかった。友人として近づき、孤児という立場を利用すればきっと家に受け入れてくれると思っていた。少し時間はかかったが案の定上手く行き、女の子はその家で暮らすようになった」

 

最初からなんとなく察してはいたがこれは間違いなく千夜のこれまでの話だった。しかし竜也は口を挟まずただ聞いていた。耳を塞ぐわけにはいかない。

 

「女の子は孤児院で身に付けた技術を巧みに使い、一人娘の世話係りを任せられるようになった。そして、事故に見せかけた殺人を行おうとしたとき、女の子は呉島天樹が倒れたことを知る。しかもそれは裏で施設で育った者が手を回していた。その事を伝えてくれた者によって、女の子は自身の手を汚さずに済むことを、もう呉島天樹の命令に従わなくていいことを理解した………やがて呉島天樹は死に、女の子が課せられた使命は実質消滅し、いまでもその女の子はその家の従者として使えている…………この話を知っているのは、お嬢様と私だけです。誰かに話すのは、お前が最初で………多分最後だ」

 

色々と意外だった。千夜は結構何でもこなすのはすごいと思っていたが、その能力が実質ユグドラシルから与えられたものだとは思ってなかった。

 

「…………私はユグドラシルが憎い。あの組織がなくなった今でも、その名前を聞いたり関係しているものを見ると、胸が痛む」

 

孤児院とは名ばかりの工作員を作り出す施設にいたのだ。色々辛い思いをしたのだろう。もっと早くちとせに、ちとせではなくても優しい場所に保護されていれば、そんな辛い思いもせず済んだだろう。

 

「だが、お前といると世の中そんな悪い人間ばかりでないと思う。ユグドラシルにいたお前がこうもお人好しだとな………」

 

「だから………話してくれたのか」

 

「ずっと秘密を抱えているのは心苦しい。そういったのはお前だろう。お前もプロデューサーなら、その秘密を一緒に背負うことくらいは…………してくれるのでしょう?」

 

「そうだな…」

 

「…………これで私とお前は秘密を共有する共犯者だ。分かっているとは思いますが、口外無用ですよ」

 

「…ああ」

 

千夜は竜也から離れ、その場を去っていった。自分の過去を隠したまま過ごすのは千夜も辛かったのだろう。だからこそ、自分の事情を知っててくれる人が欲しかったのだろう。

 

「…千夜」

 

部屋に戻った千夜はちとせがいないことに気付いた。

 

「…お嬢様?」

 

ちとせがいないことに焦る千夜は背後に気配を感じ、振り返る。

 

「!」

 

振り向くとそこにはニマニマしているちとせがいた。

 

「お、お嬢様…?」

 

「千夜ちゃ~ん?」

 

「な、なんでしょう」

 

ちとせはポケットからスマホを出した。そこには竜也を背中から抱きしめる千夜の写真が写っていた。

 

「!!!!!!!」

 

「魔法使いさんといい感じだったね~」

 

千夜はすぐに部屋の窓に走った。窓からはちょうどさっきまでいた浜辺が見える場所。迂闊だったと千夜は反省した。

 

「あの、お嬢様っ!……これは…っ!そのっ!」

 

千夜は顔を真っ赤にしながら焦りまくる。

 

「話してきたの?昔の事」

 

「え?」

 

「なんだかつきものが落ちたような顔してるよ?」

 

「………はい。同じ事件に関わっていたものとして…話しておくべきだと」

 

「そっか」

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

楽しい慰安旅行は終わり、忙しい日々が戻ってきた。今日は本田未央と現場が一緒だった。未央と千夜が出演するCMの撮影の為にスタジオに来ていた。

 

「終わったら飯にでも行くか?」

 

「結構です」

 

あの日の夜から少しは打ち解けたと思ったが案外そうではなかったらしい。相変らず千夜の態度は冷たいものだった。そしていよいよ撮影が始まろうとしたとき、スタジオの影から光る矢が未央に向かって飛んできた。

 

「危ない!」

 

それにいち早く気づいた千夜が未央をとっさに押し飛ばし、矢を避けさせた。

 

「な、なに!?」

 

「千夜!本田さん!」

 

さらに矢が飛んできた方向からゲネシスドライバーを付けたアーマードライダーが飛び出してきた。そのアーマードライダーは、この間倒したはずのアーマードライダーバイオレンスだった。

 

「馬鹿な!?」

 

竜也が驚いているとバイオレンスは未央にソニックアローを向けて迫っていく。

 

「はぁ!」

 

未央が襲われる瞬間に二人の間に千夜が割り込み、千夜はソニックアローを蹴り、タックルでバイオレンスを突き飛ばした。

 

「お前!ぼさっとするな!!」

 

「あ、ああ!」

 

竜也はすぐに戦極ドライバーを出した。

 

「変身!」

 

『ミックス!ジンバードラゴンフルーツ!ハハーッ!!』

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!」

 

竜也はアーマードライダー黒影ジンバードラゴンフルーツアームズに変身し、影松真の刃をバイオレンスのソニックアローの刃にぶつけ、そのまま人の少ない位置まで押した。

 

「みんな逃げろ!」

 

「こちらです!」

 

竜也はその姿勢のまま避難を促す。千夜が誘導を手伝ったおかげで速やかに避難が進む。バイオレンスは

逃げる未央たちを追おうとしたが竜也が止める。

 

「行かせるかよ!!」

 

「…っ!」

 

影松とソニックアローが2回ほどぶつかり火花が散る。バイオレンスは矢を放つが竜也はそれを躱し、影松で突く。しかしソニックアローでそれをいなされ、切りかかって来たが片側の刃で斬撃を押さえる。

 

「地獄から蘇ったか!法堂!」

 

「…」

 

「それを使っていればいずれインベスになっちまうぞ!」

 

今度もバイオレンスが使っているのはライムエナジーロックシードだ。それは戦国凌馬が作った試作品であり使い続ければインベスとなってしまう。

 

「どうかな」

 

「なに!?」

 

バイオレンスは竜也を押し飛ばし、矢を放つが竜也は影松真で弾く。弾いた腕が少ししびれる。それほど強力な一撃だった。

 

「このロックシードは試作品ではない。法堂のデータが完成させてくれた新型のエナジーロックシードだ」

 

「お前……何者だ!?何のためにこんなことを!!」

 

「………何のため……か」

 

「法堂の様に、くだらないアイドルへ嫉妬心か!?アイドルの女の子は、皆出来る限りファンにサービスを……届けられるすべてを与えている!」

 

「そんなことは分かりきっている。だが、彼女たちはアイドルに相応しくない。本当に輝くべきアイドルは、他にいる!」

 

その言葉に竜也はカッとなり、影松真の切先を向けて走り出す。バイオレンスは再び矢を放ったが竜也はそれを弾き落として一気に迫る。斬撃を当てようとしたがそれは避けられる。

 

「それを決めるのはお前じゃない!ファンの人たちだ!」

 

竜也は珍しく激高し、影松真を振り回す。バイオレンスは竜也の連撃を躱し、受け止め、いなし続ける。

 

「違うな!お前の言うファンは、346プロというブランドの出す光に寄ってきた蛾と変わりない!そしてその光は本当にアイドルというものの才能を持った者の光をぼやかす!私はその偽りの光を破壊しなければならない!」

 

バイオレンスは竜也に数発斬撃を当てるが、竜也はバイオレンスの腕を押さえて詰め寄る。

 

「違う!そしてお前にそんなことを決める権利はない!」

 

「本当の輝きを知る者の務めだ!!」

 

バイオレンスは竜也を蹴り飛ばし、ロックシードを外してソニックアローにセットした。

 

『ロック・オン』

 

レバーを引いてエネルギーをソニックアローにチャージする。竜也はそっと手を戦極ドライバーに持っていき、カッティングブレードを倒した。

 

『マツボックリスカッシュ!ジンバードラゴンフルーツスカッシュ!』

 

影松真の両端にエネルギーがチャージされる。

 

「はぁぁぁ…っ!」

 

「消えるがいい…」

 

『ライムエナジー!』

 

ライムエナジーロックシードからエネルギーを供給された強力な一撃、ソニックボレーが竜也を襲った。竜也は影松真のエネルギーが溜まった刃をぶつけ、相殺しようとしたが力で押し負けてスタジオの外の廊下まで飛ばされた。

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

竜也が吹っ飛んでくると同時にバイオレンスが追撃に来た。ソニックアローの斬撃を影松真で受けとめ、蹴り飛ばす。竜也はすぐに立ち上がり、バイオレンスを無理矢理押してスタジオの外まで窓を突き破って飛び出す。

 

「だぁぁぁ!!」

 

窓を突き破ってスタジオの外の駐車場に落ちた二人は互いに距離を取り、構える。

 

「ファンが来てくれるのは、アイドル達にお前の言う本当の輝きがあるからだ!!」

 

「違う!偽りの光だ!」

 

バイオレンスは矢を放ち、攻撃するが竜也は矢を巧みに弾く。

 

「確かにまだ蕾のアイドルはいる!だが、彼女たちを信じて導くのが俺の、プロデューサーの役目だ!だぁぁぁ!!!」

 

バイオレンスに近づき、ソニックアローの攻撃を頭を下げて避けると同時に影松真の刃を腹部に当て、切り抜けた。そしてすぐさま振り返り、両側の刃で一撃ずつ攻撃を当てる。

 

さらに一撃入れようとするが、ソニックアローで受け止められ、受け止めた状態から放たれた矢に撃ち抜かれて竜也は近くの車まで吹っ飛んだ。

 

「その花を開花できる人間は限られていると言っている!」

 

「違う…誰でも開花できる可能性を持っている!」

 

どう倒すか考えていた時、スタジオから千夜が出てきてしまった。車であれば安全であるかもしれないと駐車場を確認に来たのだ。

 

「お前!」

 

「千夜!来るな!」

 

バイオレンスは千夜を見るとすぐにロックシードをソニックアローにセットし、レバーを引いた。

 

「危ない!!」

 

「偽りの灯りを消さなければ…」

 

『ライムエナジー!!』

 

千夜に向かって強力なエネルギーを込めた一撃が飛ぶ。竜也は千夜の前に飛び出し、千夜を庇ってバイオレンスの攻撃をその身に受けた。

 

「ぐ…がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

「お前!!」

 

「ぁぁ……」

 

竜也はその場に崩れ落ちる。

 

「ちっ………邪魔が」

 

バイオレンスはソニックアローからロックシードを外してベルトに戻し、ゲネシスドライバーのシーボルコンプレッサーを押し込む。

 

『ライムエナジースカッシュ!』

 

ソニックアローの刃にエネルギーが溜まり、バイオレンスはそれを構えて千夜に向かって走る。

 

「…っ!」

 

千夜の前までバイオレンスが迫り、ソニックアローが切り下ろされた瞬間、竜也が立ち上がりソニックアローの刃をその身に受けた。

 

「ぐあぁぁぁ!ぐっ…あっ…がぁぁぁ!」

 

「なに!?」

 

ソニックアローの刃は竜也の変身している黒影トルーパーのジンバードラゴンフルーツアーマーとアンダースーツを貫通し、竜也の腹部にめり込んでいた。

 

流れ出た鮮血がソニックアローを伝い、地面に落ちる。

 

「はぁ…はぁ…ぐ………あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

竜也はバイオレンスを殴り飛ばし、カッティングブレードを二回倒して影松真を構えた。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!セイィィィィィ!!!」

 

「ぐっ!?」

 

エネルギーが影松真の両端に充填され、竜也はそれぞれの刃から斬撃波を飛ばした。

 

「ぐぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

バイオレンスはそれを食らい吹っ飛んだ。

 

「はぁぁ…っ!はぁぁ…っ!」

 

「ぐぅ…おのれ……許さんぞぉ!」

 

バイオレンスがソニックアローを構えた瞬間、二人の間に何者かが割り込み、バイオレンスを攻撃した。

 

「はぁ!」

 

「なんだ!?」

 

現れたのはアーマードライダーブラーボドリアンアームズだった。今日、偶然同じスタジオで凰蓮が自身の店であるシャルモンの独占インタビューが行われていたため、居合わせたのだ。

 

「まったく、レディの扱いがなってないわね」

 

「………」

 

バイオレンスは竜也の予想外の反撃に圧倒され、凰蓮が現れたことで不利と判断したのかその場から撤退した。

 

「お前…」

 

「千夜…無事か…?」

 

「え…ええ」

 

「よかっ…」

 

竜也の変身は強制解除され、その場に倒れそうになったのを千夜が支えた。

 

「お前!しっかりしろ!お前!」

 

 

 

-病院-

 

 

 

竜也は病院に運ばれた。瀕死の重症を負い、もう以前のように階段から落ちたというような言い訳ができないレベルの傷だった。

 

「千夜……っ!」

 

いち早く病院に着いたのは雪美と雪美を車に乗せてきた美優だった。

 

「プロデューサーさんが入院って…」

 

「はい…」

 

「竜也は…?」

 

「…」

 

千夜は黙って集中治療室を指差した。そこには瀕死の重症を負った竜也がベッドに横たわっていた。

 

「竜也!」

 

雪美が泣きそうになりながら集中治療室の窓に駆け寄った。

 

「プロデューサーさんの容態は…」

 

「かなり危険な状態です。全身の打撲、骨折…内蔵損傷」

 

「どうしてこんなことに…」

 

「…とりあえず、皆さんが揃ってから話をしましょう」

 

それから続々と竜也の担当アイドルが集まり、346プロ関係者としてちひろも来た。千夜は全員を病院内の広間に案内する。

 

「竜也……………ぐすっ」

 

「雪美ちゃん、Pちゃんはきっと大丈夫だから、ね?」

 

「ではここで凪の必笑ギャグをお見せしましょう。これさえ見れば抱腹絶倒、獲物を待つハシビロコウも吹き出します」

 

傷つき、倒れた竜也を目の当たりにした雪美は泣いていた。久川姉妹と美優がなだめるが心の傷は相当なものだろう。

 

「………」

 

千夜は拳を握りしめた。

 

(私のせいだ………)

 

「雪美さん」

 

凪のギャグが炸裂する前に、千夜は雪美の前に立った。

 

「雪美さん、今回……あいつ…竜也プロデューサーがあんな目にあったのは全て私の責任です。もし………私が憎いなら…」

 

あ雪美は大きく首を横に振った。

 

「違う……千夜は………悪くない………」

 

「……」

 

予想通りの答えだった。憎んでくれすらしない。責任だけが千夜に重くのしかかる。

 

「わかりました………では、とりあえず何があったかの説明だけ皆さんに行っておきましょう」

 

千夜は竜也が元ユグドラシル社員であったこと、前回のライブの時にも戦っていたこと、これまであったことを事細かに話した。皆それぞれの反応を見せた。戸惑い、怒り、悲しみ、しかし皆一貫してこれまでそのことを秘密にしていた竜也のことを悪く言うものはいなかった。

 

これまで竜也が培ってきた信頼故なのだろうと千夜は実感した。

 

「…」

 

「会社の方には私が説明しておきます。アイドルを狙った事件が起きている以上、社としても対応が必要ですから」

 

ちひろは千夜から聞いた事情を346プロに話すべく会社に戻っていった。

 

「………私は」

 

夜になり、子供たちは帰ったが竜也は目覚めなかった。夕方には竜也は治療室から普通の病室に移された。雪美は帰りたくないと言ったがそんなわけには行かず、美優に送っていってもらった。ちとせと千夜はぎりぎりまで残ることを決め、竜也を見ていた。

 

「…」

 

ちとせがトイレに行っている間、竜也を見ていると竜也が目を覚ますのが見えた。

 

「お前!」

 

「………千…夜……?」

 

掠れた、小さな声で竜也は近くにいた千夜をみて言った。

 

「無事………だったん…だな……本田…さんは?」

 

「彼女も無事です。お前が守ったからですよ」

 

「………良かった……千夜も………無事で……」

 

僅かにだが竜也は笑っていった。

 

「……変わりないようで安心しました。今は安心して眠っていなさい。お前の無事は、私から皆さんに伝えておきます」

 

なんだかいつもと変わらない竜也をみて千夜はようやくホッとした。

 

「では私は帰りますから」

 

「待ってくれ………千夜………」

 

竜也は酸素マスクを外し、近くにあった自分の荷物から戦極ドライバーを取り出す。

 

「ユグドラシルを………憎むお前に………こんなこと……を…任せる…のは………心苦しい」

 

竜也は千夜に戦極ドライバーを差し出す。

 

「……」

 

「………でも…雪美を……みんな…を………がはっ…はぁっ!」

 

「お前!!」

 

竜也は急に苦しみだした。それと同時に隣にあった機材が警告音を出した。竜也の命が危険な状況になったということだ。警告音を聞いたナースが駆け付け、応急処置が始まる。

 

「………」

 

千夜は部屋から出て処置の様子を見ていた。直前に竜也から渡された戦極ドライバーを見つめる。

 

(辺りに火が付き、燃えていくようだった。あの日、私から大切なものすべてを奪った炎のように。そして、いまも私の身体には植物が絡み付いている。すべて振り払ったつもりでも、まだ私の身体を縛り続ける……あいつが、燃える。燃えてなくなってしまう。そんなのはいやだ。共犯者がいなくなったら、また私は一人だ。あの少し煩わしくも、楽しく、明るい事務所での日々は…それだけは奪わせたくない…っ!)

 

緊急措置を終え、竜也は薬で眠らされていた。どうやら目覚めてすぐに動いたり、感情が不安定になったのが良くなかったらしい。その枕元に千夜は戦極ドライバーを置いておいた。

 

「これはここに置いておきます。皆を守ると言う使命、そんなものはお前が背負え」

 

そう言い残し、千夜は病室を出た。一応無事は確認できたのでちとせと千夜は帰ることとし、病院を後にする。外に出てから千夜はちとせに2万円ほどを差し出す。

 

「お嬢様はこれで先にお帰りください。私は少し寄るところがあるので」

 

「千夜ちゃん?」

 

「では…」

 

「千夜ちゃん!」

 

去ろうとする千夜の手を、ちとせは掴んだ。

 

「ご安心ください。夕食までには戻ります」

 

「あなたが何をしようとしてるか、なんとなくわかるよ。伊達に長い付き合いしてないもの」

 

「………私は、私はあいつに戦えと言ってしまいました。それが当然だと思って。あいつは本来もう、戦いとは無縁………私と同じだったのに……皆で逃げる方法だって…あったはずなのに…私は…」

 

千夜は雪美の顔を思い出す。

 

「私は、あいつと……大切な友達………大切な居場所を…傷つけてしまった…っ!」

 

千夜の目には涙が浮かんでいた。ちとせは驚いていた。千夜にとってあの場所は、いつの間にかそこまで大切な場所になっていたのだ。

 

「…それは違うよ千夜ちゃん。それは魔法使いさんを信頼していたから。ただ、結果が悪かっただけ。未来なんて誰にもわからないもの」

 

「お嬢様…」

 

「ねぇ、私にも手伝わせて」

 

「なりませんお嬢様!」

 

「あなたが私以外のためにこんなに必死になっているのが嬉しいの。手伝わせて?それに、これから行くところは私がいた方が話がスムーズでしょ?」

 

「…」

 

 

 

続く




さて、今回は千夜がちとせに保護される前、ユグドラシルに一度保護されて工作員として育てられた過去を追加しました。千夜には前から変身させようとしましたが、いい理由もありませんでした。しかし設定を追っていると、鎧武外伝の斬月で出てきたトルキア共和国の元となったと思われるトラキアという国がありました。そこはなんとヨーロッパの南東に位置する国の旧名。かつてちとせがいたと思われるルーマニアもヨーロッパの南東に位置します。トルキア共和国に千夜を送り、ちとせに拾わせ、ちとせを殺すことで養子となった千夜が遺産を引き継ぐ計画を呉島天樹が出したことにしました。この国の一致はこれ以上ない奇跡の設定の被りだと思い、この話を作りました。次回もお楽しみに。
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