1946年7月25日
ビキニ環礁に、「彼女」はいた。多くの老朽艦とともに。
「あぁ、これで私の軍艦としての26年間は終わるのだな。」
そう「彼女」がつぶやいたその時、水中からくぐもった爆発音が聞こえ、大きな水柱とキノコ雲を起こした。
その爆発の正体はクロスロード作戦、ベーカー実験。
でも、「彼女」にはその正体を知る由もなかった。
25日夜
「彼女」は周りにいた老朽艦たちが沈んでいっている中、ただ一人だけ浮かんでいた。
それを見たアメリカ軍の兵士たちは思わず
「oh…」
とつぶやいていた。
それから4日後。「彼女」は人知れず冷たい海に沈んでいった。
「……ここは…」
「彼女」はまるで病室のような部屋で目を覚ました。
見ると、まるで人間のような四肢がある。しかも動く。驚き、「彼女」はおおよそ外見とはそぐわないような声をあげた。
その「彼女」の声に気づいたのだろうか、白い軍服に身を包んだ女性が部屋へと入ってきた。
「起きたのね。まぁ、初めてここに来て見た場所がここならさっきの声も無理はないわね。」
「誰だ?」
「私?私はここ、呉鎮守府で提督をしている梓 まつりっていうのよ。あなたは?」
「私は長門型戦艦一番艦、長門だ。こんな姿で提督の目の前にいるのは失礼だな…。」
そういい、長門は床へと足をつく。
「ちょっと、着替えるのは待ってくれる?私の私服だけどワイシャツ持ってくるから。」
まつりはそう言って部屋から出ていく。
「ここは,私の生まれ故郷…呉鎮守府か。私は…何故だか知らないが、人間へと生まれ変わっているのか。あの爆発で沈んでしまった艦たちはどうなってしまったのだろうか。」
その台詞を待っていたかのように太陽が地平線へと沈んでゆく。
それをみた長門は少し感傷的になっていたのだろうか、一筋の涙を流した。
ちょうどそのタイミングで部屋のドアが開き、まつりが帰ってきた。
「はい、これ。私の着ない私服だけどよかったら。」
そうして長門はまつりの私服へと着替え始めた。
「っ…。」
まつりが何かを見て声にならない声をあげた。
「長門。あんたすっごい腹筋あるのね。」
「ん?あぁ、そうだな。」
そこでまつりが帰ってきてから初めてまつりの方を振り向いた長門の目には、少しだけ涙が浮かんでいた。
「長門、何を考えていたの?」
まつりが問いかけると、長門は今気づいたかのように涙を手で拭い、少しだけ笑った。
「いや、なんでもない。この美しい海と夕焼けに少し感傷的になってしまっただけだ。」
「そう、それならいいのよ。明日みんなにあなたのことを紹介するわね。とりあえずまだあなたのことは他の艦娘たちには秘密にしておきたいから、今日のご飯はここに私が持って来るわ。」
そういってまつりはもう一度部屋から出て行った。
夕方のシーンを描いているときにここで終わらせたいなーと思ったので変なところで区切りました。
次話ももし良ければ呼んでいただけると幸いです。