日輪を宿す暁   作:狼ルプス

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少女の名前

人買いから引き取った少女を蝶屋敷に連れ帰った後、一夏は抱えていた少女を降す。

 

 

「とりあえず、この子をお風呂に入れて来るわ。一夏はこの子用に何か軽い物を作っててくれない?」

 

「わかった」

しのぶがあの子を風呂場へ連れて行った。まずあの子に必要なのは、体の汚れを落とすこと、そして、食事だ

 

 

「軽い物、取り敢えず喉に通りやすい雑炊でも作るか」

 

「私も手伝おうか?」

 

「いや、カナ姉は買ってきた物を纏めてもらっていいか?」

 

「わかったわ」

 

一夏がスマホの拡張領域から買ってきた物を出すと、カナエはそれを持って退室する

 

そして、一夏は台所で少女の食事を作っている。

 

「(あの子の目、何も映していなかった。まるで……全てがどうでもいいようなあの瞳、束さんと会う前の俺と同じだ。俺の時代じゃあの人身売買は罪になるが、この頃じゃまだそういったことに厳しく対処していないんだったな。それに、昔は男尊女卑の思想もある時代だったみたいだし、俺といた時代とは真逆……)」

食事を作りながら一夏は少女の事を考える。現代でも、親が日常的に我が子に暴力を振るって警察沙汰になる事がある……。

そして人身売買の男は、男尊女卑主義に見えた。一夏の時代はISの登場で女尊男卑となっている。一夏はそう言った人を見分けることができる。千冬と関わりたいがため、一夏に言い寄る女性もおり、女性が信じられない時期もあった。

 

「(自分が命より大切に思っても、他人は容易く踏みつけにできる……か)」

 

縁壱さんの言葉を思い出した。この時代は、鬼の存在により、未だ犠牲者は増えている。胡蝶夫妻は鬼に殺された。俺達は大切だった日常を鬼により容易く奪われてしまった。

 

「(力がなきゃ、何一つ…守ることなんてできない)」

 

一夏は理不尽に奪われる痛みを一度だけで嫌というほど味わった。二人は守られる程弱い者ではないことは自覚している。

しかし鬼殺隊は誰がいつ死ぬかわからない組織。つい最近話していた人がいなくなるかもしれない。カナ姉達も例外ではないだろう。

 

「一先ず考えるのはやめよう」

 

一夏は考えるのをやめ、雑炊を作ることに集中する。

その後、少女はすっかり綺麗になり、胡蝶姉妹から髪を切ってもらい、綺麗な女の子へと変貌していた。

そして完成した雑炊を出したが、自分からは食べず、ずっとお腹を鳴らしながら手をつけなかった。一夏はその様子を見て、少女に雑炊を火傷をしない様、冷ませながら食べさせると、彼女は全て完食してみせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~翌日

 

 

 

「(あの子、食事は自分の意思で食べなかったな。あの様子だとまともな食事すらさせてもらえなかったんだな)」

 

 

縁側で音楽を聴いていた一夏の隣ではカナエが日輪刀の手入れをしていた。彼女の刀身は桃色になっている。

 

「(カナ姉の刀は桃色か… 槇寿郎さんと杏寿郎が赤色、俺はいったい何色になるんだろうな)」

 

日輪刀は、またの名を『色変わりの刀』と言い、刀を扱う者の呼吸にその色は左右されると、一夏は最終選別から帰ってきた杏寿郎の担当の刀鍛冶に説明された。

 

色の種類は

 

炎の呼吸 赤色

 

水の呼吸 青色

 

風の呼吸 緑色

 

岩の呼吸 灰色

 

雷の呼吸 黄色

 

その他の色が出れば、この中の派生系の呼吸ということになる。カナ姉としのぶが使っている花と蟲の呼吸がそうだ。

 

「(記憶で見た縁壱さんの刀は確か漆黒の刀だったな。もしかして日の呼吸の適性の色は…)」

 

俺は、縁壱さんの記憶から日の呼吸の適性者は黒と推測している。槇寿郎さんから始まりの呼吸使いは漆黒の日輪刀を使っていたと聞いたことがある。それが事実かはわからないが、もし俺が最終選別を無事突破し日輪刀の色が黒となれば、日の呼吸の適性者の日輪刀の色は黒と証明される。

 

 

 

そしてしのぶは、少女に手を焼いているようだ。

 

 

「姉さん…この子、全然ダメだわ!全然反応もしないし、まるで自分の意思がないみたい!食事もそうよ、一夏が食べさせたから食べたけど、『食べなさい』って言わないと絶対食べない、ずっとお腹鳴らしてね!」

 

 

「あらあら」

 

「こんなんでこの子どうなるの!?」

 

「まぁまぁ、そんなこと言わずに、姉さんはしのぶの笑った顔が好きだなぁ〜」

 

「それ今は関係ないでしょ!自分の頭で行動できない子は……危ないわよ。」

 

「まぁ…そうなんだけどね」

 

「一人じゃ何もできない。決められないのよ……」

 

「じゃあ一人の時は……この硬貨を投げて決めれば良いわよ、ねぇー?」

カナエは少女に裏,表と書かれた硬貨を少女に手渡す、それでも少女は無表情だが。

 

「姉さん!」

 

「そんなに重く考えなくてもいいんじゃない?この子は可愛いもの〜!」

 

「全く理屈になってないから!」

 

「きっかけさえあれば、人の心は花開くから大丈夫よ。あなたもしのぶみたいに好きな男の子でもできたら変わるから大丈夫よ、ねっ、しのぶ」

 

「な⁉︎何言ってるのよ姉さん!」

 

「大丈夫よしのぶ、今の彼には聞こえてないから」

そう言いながら、イヤホンを付けて音楽を聴いている一夏をそっと指差す。

 

「(?なんだ?)」

一夏はカナエに指を差されていることに疑問を持つが、聞いている音楽で二人の声は聞こえないため、一夏は気にせず空を見上げる。

 

「それよりも、いつまでも『この子』呼ばわりは流石にいけないわ、名前を決めないと」

 

「そ、そうね。一夏にも聞いてみましょ」

しのぶは縁側で音楽を聴いている一夏に近づき、肩を叩く。肩を叩かれた一夏はイヤホンを外し、しのぶ達に顔を向ける

 

「どうした?」

 

「あの子のことだけど、いつまでも『あなた』や『この子』呼ばわりはいけないから、名前を決めないと」

 

「ああ、悪い悪い。それについて、ずっと考えてたんだ」

 

「え、そうなの…一夏?」

一夏はイヤホンを拡張領域にしまう。一夏は昨日からずっと少女の名を考えていた。そして、一夏は少女に近寄り、目線を合わせる様に座り、頭を優しく撫でながら、こう告げた。

 

「カナヲ…今日から君の名前だ。気に入ってもらえると嬉しいけど。」

 

「カナヲ…素敵な名前ね。これからよろしくね…カナヲ」

 

「………………」

 

“カナヲ”は返事をしない。声は聞こえているが、どう判断していいのか解らないのだろう。

 

「…………返事くらいして欲しいわね、全く」

 

しのぶも文句を垂れながらも、カナヲの頭を優しく撫でる。

 

「そうだ、みんなで写真撮らないか?新しい家族も増えたし……記念にどうだ?」

 

「それは良いわね!早速撮りましょ!」

 

「なんでそんなに嬉しそうなのよ、まぁ…私も賛成だけど」

 

四人は写真を撮る為、縁側に横並びに座り、スマホを台の上に乗せて、タイマーを設定した。カナヲは一夏の膝の上に乗せている。しのぶは左側でカナエが右側に座っている。

 

「久しぶりね、こうやって一緒に写真を撮るの」

 

「言われてみればそうだな。まだ今の俺達で撮ったことはなかったっけ」

 

「うふふ、そうね。それに、カナヲは可愛いわ〜♪何だか一夏に懐いてるようだし」

 

「そうかな?」

 

「ええ、私にはそう見えるわ」

 

「姉さん、前を見て、そろそろ時間のはずよ」

しのぶに促され、前を見ると、スマホからはシャッターを切るような音が鳴り、撮影された。

 

「よし、撮れたな。さて、どんな具合だろうな〜、カナヲ?」

一夏はカナヲを抱えたままスマホを取りに行き、撮った写真を確認する。

 

「うん、良い感じに撮れた!カナ姉達も見る?」

 

「うん!見せて見せて!」

カナエとしのぶは一夏に駆け寄り、撮った写真を確認する。

 

「上手く撮れてるわね」

 

「うん!とても素敵な一枚だわ!」

 

「ああ、カナヲ、どうかな?」

 

「………」

一夏はスマホの写真をカナヲに見えるように見せたが……

 

「いきなり見せてもまだわからないか…」

 

反応を示さないカナヲの頭を優しく撫でる。

 

「一夏、正直これからが不安よ」

 

「しのぶ、流石に自立させようにも今のカナヲには無理がある。カナヲはまだ知らない事だらけなんだ。こうやって誰かに抱えられたり、撫でられたり、食事や作法すら知らない。カナヲにとって全てが初めての事だらけなんだ」

 

「しのぶ……一夏の言う通りよ、そこは時間かけてやっていけば良いわ」

 

「それはそうだけど……」

 

「しのぶ、これから俺達でいろんな事をカナヲに教えていく。完璧な人間なんて一人もいない。互いに支えあって生きていくのが人生ってもんだろ?」

 

「…そうよね、時間はいっぱいあるし……ゆっくりいきますか!」

 

「うふふ、決まりね。そうだ!一夏が良ければだけど、一夏としのぶの写真、撮ってあげようか?」

 

「ね、姉さん!」

 

「俺としのぶの?」

 

「ええ、まだ再会してから私達の写真も撮ってなかったから、初めに二人の写った写真はどうかしら?」

カナエは三人だけの写真を提案してきた為、一夏は賛成するようにカナエにスマホを渡す

 

「使い方は覚えてる、カナ姉?」

 

「えっと、これを押せばいいのよね?」

 

「ああ、合ってる」

カナエは試しに庭を試し撮りし、使い方を再確認する。

 

「よし、大丈夫そう!ほら、二人とも、横に立って!」

 

「わかった。いくぞ…しのぶ」

 

「ちよっ、い、一夏!」

一夏はしのぶの手を引っ張り再び縁側に歩き出す。しのぶは手を握られたことで頬を赤くするが、一夏がそれに気づくことはなかった。

 

「二人とも、撮るわよ〜」

 

「うん、いいよ」

 

「だ、大丈夫よ」

 

「(うふふ、良い雰囲気だわ〜、お姉さん応援してるからね…二人共)」

カナエはシャッターボタンを押す。カシャっと音が鳴り、カナエは撮れた写真を確認すると満足そうに笑みを浮かべる…

 

「よし!次はお姉さんの番ね!一夏、お願いしてもいいかしら?」

 

「ああ、大丈夫!」

一夏はカナエの考えを理解すると、入れ違うようにカナエはしのぶの隣に座る。

 

「…………」

隣で見守っていたカナヲは無表情でジィーっと姉妹を撮る一夏を見つめていた。

 

 

 

今後カナヲの世話は、二人に任務がある時は、一夏が担当することになった。カナヲにはまず食事の作法や箸の持ち方,扱い方を教える。

 

 

カナヲは物覚えがよく一時間で箸を自在に扱えるようになった。

 

 

カナ姉はカナヲを甘やかす。それについてしのぶは愚痴っているが、今のカナヲにはまず当たり前の日常を知ってほしい。

 

今のカナヲには意思がないが、いつかきっかけさえあれば変われる。

 

 

 

 

 

 

 

人は……心が原動力だから

中の人の繋がりで、一夏に使わせるとしたらどっち?

  • 神気合一
  • 冥我神気合一
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