日輪を宿す暁   作:狼ルプス

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日輪の再来

一夏が最終選別に行ってから七日目の夜、満月が辺りの町を明るく照らしている夜に、カナエは現在柱の仕事で、管轄している地域の見回りをしていた。

 

最近カナエが巡回している場所は、最近女性だけが行方不明になり、その後で遺体となって発見される事例が多発していた。

 

「(今日か明日には一夏が帰ってくる……怪我がないといいけど…)」

 

 

この七日間、姉妹はずっと一夏を心配していた。しのぶは気を紛らす為に毒の研究をしていたが、凡ミスを起こしてしまったり、上の空だったりした時もあった。当のカナエもしのぶが最終選別に行っている間と同じで仕事や稽古などに集中出来なかったことが多かった。

 

 

 

 

 

 

「(蝶屋敷も、いつの間にか賑やかになったわね。カナヲも少しずつだけど、心を開くようになってきた。一夏には人を惹き寄せるような何かがあるのかしら)」、

 

そんなことを思いながら見回っていく。

 

 

 

 

「やあ!今日はとても良い夜だね!」

 

見回りをしている私の前に現れた男は、虹色がかった瞳、そして眼球には上弦弐とあり、白橡色の髪を持つ特異な容姿の男だった。口の周りには血がべっとり付着しており、感情のこもっていない屈託のない笑みを浮かべながら、話しかけて来た。

 

 

「俺の名前は童磨!綺麗な君の名前を教えてよ!」

 

カナエは日輪刀を抜き構え、上弦の弐の動きに警戒をしていた。

 

「へぇ〜、君、俺と戦うつもりなの?」

 

「私は鬼殺隊の柱として…貴方を逃がす訳にはいかないもの」

 

「こんなに可愛いのに鬼狩りの柱なんて凄いね!でも……俺には勝てないよ?」

 

上弦の弐が手に持っている扇を構えた瞬間、今まで戦いでは感じた事がなかった緊張感が奔る。

先手必勝と上弦の弐へ攻撃を仕掛けるように一歩動き出す。

 

 

「花の呼吸 肆ノ型・紅花衣!」

 

急接近し、上弦の弐を倒そうと技を繰り出し、左腕を斬り落とした。上弦の弐は一瞬驚いたが、持っていた扇を振るってきたので、カナエは攻撃を受け止めた。鬼が持っている扇はただの扇では無く鉄で作られているものだと理解した。

 

「花か〜綺麗な君にはピッタリの呼吸だね!」

そう言うと、一瞬にして左腕を再生させる。

 

「(再生が早い!これが上弦の鬼…今までの鬼とは格段に違う)」

 

 

上弦の弐は、笑顔でそう言いながら、鉄扇で氷を交えた素早い攻撃を放つ。

 

「花の呼吸 伍ノ型・徒の芍薬!」

 

カナエは、なんとか攻撃を受け流す。

 

ーー血鬼術・蔓蓮華

 

 

あまりに早い連続攻撃に斬られてしまい、血を噴き出しながら、後ろへ吹っ飛び、仰向けに倒れた。

 

「ごめんね?痛かったよね?でも大丈夫!直ぐにその苦しみから救ってあげるから!」

 

「結構です。それに、貴方には救われたくないわ!」

 

カナエは刀を地面に刺して杖の様にして立ち上がり、再び構えた。それは、目の前にいる上弦の弐には勝てないと分かっていても柱として責務を全うする“覚悟”だ。

 

余裕そうに笑っている上弦の弐に一太刀浴びせようと走り出し、花の呼吸を繰り出そうと呼吸を行い駆け出した時だった。

 

「(花の呼吸 伍ノ)ゲホ!?ゲホッ!!」

 

肺に違和感を感じ咳き込むと血を吐き出し膝をつく。

 

 

「(な、何……?肺が痛い……冷たい。上手く呼吸ができない!?)」

 

 

「言い忘れてたけど、俺の“血鬼術”は氷なんだよね!君が俺の氷を吸ったせいで血を吐いてるんだよ。だから、俺の前で呼吸は使わない方がいいよ?……って言っても遅いか!」

 

「(やられた!この血鬼術は、呼吸を使う私達とは相性が悪すぎる!!なんとか…情報だけでも……)」

 

 

うまく呼吸を使う事が出来ず、肺を血鬼術でやられ、その場から動くことができず、地面に膝を着き血を吐いている。

 

「苦しんでる哀れな君を救ってあげるね。大丈夫!痛みは一瞬だけだから!その後は骨も残さず食べてあげる!」

 

 

「(ああ、私……ここで死ぬんだ。あの子達を残して……しのぶを独りにして、……せめて最後に……もう一度会いたかったなぁ)」

 

 

満身創痍の私にもう戦える力と術は無い。私は、上弦の弐が殺しにくるのをただただ待っているしか無かった。鬼の扇が、そのまま私へと迫ってーーー

 

 

「(大好きだよ…みんな)」

 

 

瞳からは涙が流れ、この場にいない家族に別れを告た。そして、上弦の弐の鉄扇が私の首を斬ろうとした時だった...。

 

「あら?消えた?一体どこに」

 

上弦の弐は扇が空振りに終わった。

 

カナエはいつまで経っても痛みは来ず、誰かに抱えられている感覚がした。そしてその手はお日様のように温かかった。

 

「(あれ、この温もり…)」

 

カナエは目を開け、顔を上げると、別れた時と同じ姿の一夏が自分を抱えていた。状態で言えばお姫様抱っこをしている状態だ。

 

「一……夏?」

 

「…よかった。間に合ってよかった…カナ姉。今度こそ、助けることができた」

一夏はカナエの無事を確認すると、安堵の息を吐く。一夏はカナエをその場に優しく下ろすと、元凶と対峙する。

 

 

 

 

「なんだ男か〜、せっかくいい所だったのに。そこを退いてくれないかな?俺は今からその哀れで可愛い女の子を救済してあげないといけないんだ!」

 

「何を言っているんだ?」

 

「救済する」……そう言った時、一夏は無表情のまま、上弦の弐童磨の言葉の真意を訊いた。

 

「勝てるわけないのに俺に向かって来てさ〜、今じゃその子は苦しそうに血を吐いて倒れてるんだよ?哀れで可哀想だから俺が救ってあげないといけないんだ!」

 

「………」

 

 童磨が笑顔で一夏に告げた瞬間、一夏は抜刀して、神速で接近し、紅蓮の炎を纏わせながら刀を唸らせ、童磨の右腕を根元から斬り落とした。

 

 「わぁ!もの凄く速いね、君!腕斬られちゃった!!その刀、炎柱かな?以前殺した炎柱より早いね!でも、俺をそこらの鬼と一緒にしてもらっちゃ困るんだよね〜。だって、直ぐに再、生……あら?」

 

一夏の動きに驚きはしたが斬り落とされたのは腕だからと甘く見ていた童磨に動揺がはしった。

 

「あれ?な、なんで?う、腕が再生しない?」

 

 

 

「失われた命は回帰しない 二度と戻らない。生身の者は鬼のようにはいかない。なぜ奪う?なぜ命を踏みつける……?」

 

一夏は、カナエの元に向かうまで、女性の遺体ばかりの惨状を見てきた。彼女たちは四肢を欠損しており、人の形すら成していない者が殆んど……その中には鬼殺隊の女性隊士の姿もあった。

 

一夏は今、生まれて初めて、目の前の存在に怒りを抱いている。

 

 

 

「一……夏?」

そして今のカナエは、今まで見たことのない一夏に動揺していた。

目の前の一夏の雰囲気も気配も変わり、まるで別人のように感じた。

 

 

「(なんだよ、この言葉……?どこかで聞いたような)」

 

童磨は切り落とされた腕を拾い無理に繋ぐ。手を腕で、顔を手で覆いながら一夏を見据える。

 

「『何が楽しい?何が面白い?命をなんだと思っているんだ』」

 

「(誰だ?俺は知らない……!?)」

 

童磨は目の前の男が、額に陽炎痣があり髪は長く、花札のような耳飾りをした男と姿が重なった。

 

「『どうしてわからない?どうして忘れる?』」

 

「(ちがう。これは……無惨様の細胞の記憶!?)」

 

 

 

「……けほっ……一夏、どうして、来たの……?」

 

 

一夏はカナエの方に振り向き、透き通る世界で状態を確認する。カナエは肺をやられていた。

 

肺が機能しなくなってしまえば、呼吸を使用することが難しくなる。呼吸を使う鬼殺隊士にとっては致命傷だ。今のカナエは、ぎりぎり使用できる“呼吸”で命を繋いでいる状態だった。上弦の鬼との攻防があった所為で立ち上がるのさえ難しい状態だ。

 

「……私の、ことはいいの……一夏たちが、私の分まで、生きてくれれば……」

 

「――カナ姉を見捨てる事はできない。俺がここに来れたのは、しのぶが俺に助けを求めてくれたからだ。俺は自分の意思でここまで来た。あの時みたいに、何も出来ずに喪うのは、俺は真っ平御免だ。救えるものがあれば、俺は手を伸ばす。しのぶとっても、皆にとっても、俺にとっても、カナ姉はたった一人の……大切な家族だ!」

 

「一夏……でも――」

 

 カナエは言葉を区切った。

『あなたじゃ勝てない、だから逃げて』と続けようとしたのだろう。

 

「……俺は死なない。俺を……信じてくれ、カナ姉」

 

一夏はカナエを見て安心させる様に微笑む。その表情にカナエは何も言うことができなかった。一夏の言葉はどこか安心するような感覚がしたから

 

 

童磨はニヤニヤ笑うだけだ。

 

「うーん。会話から察するに、君たちは家族かな?――そうだ、君たちは纏めて俺が救ってあげよう!」

 

 

 ーー血鬼術・冬ざれ氷柱

童磨は扇子を振るうとともに上方から巨大なつららを多数、一夏に向けてぶつける。

 

氷の刃が迫る中、一夏はただ童磨を見据え……

 

 

「……黙れ」

 

冷たく言い放つ。

 

 

ーー日の呼吸 肆ノ型・灼骨炎陽

 

 

 

「…ッ⁉︎(なんだ?あいつの持ってる赫い刀…姿が、無惨様の記憶で見た男と重なる!?)」

一夏は全ての氷を斬り裂く。童磨は、今の一夏の表情を見て、名状し難い何かを感じ、距離を置こうと動いた瞬間……

 

 

 

「日の呼吸 拾弐ノ型・炎舞」

 

 

一夏は左腕を斬り落とし、右目と胴体を斬りつける。その光景にカナエは驚きを隠せなかった。

 

 

「(嘘……私でも敵わなかった上弦の鬼を!?)」

カナエは一夏が強いのは知っていたが、まさか上弦の鬼すらかすり傷さえ負わず圧倒するとは思わなかった。

 

 

 

 

一方で、童磨は今までに感じたことが無かった感情が精神を支配していた。童磨の精神を支配している感情は『恐怖』だった。

 

数百年の間、自分の実力や血鬼術に自信を持っていた童磨は一夏に手も足も出ずに一方的に斬り刻まれていく。

ただ斬られるだけでなく、再生力さえ潰されて、為す術もない状態に追い込まれたことが無かった。

 

「さっきまでの気味の悪い笑みはどうした?お前ら鬼は蜥蜴みたいに再生するんだろ?上弦の鬼は、他の鬼とは違うんじゃなかったのか?」

 

 

「こ、この、化け物がァァァァァァァァ!!」

 

ーー血鬼術・霧氷・睡蓮菩薩

 

 

「外道よりはマシだ!」

 

 

 ーー日の呼吸 参ノ型・烈日紅鏡

 

一夏は透き通る世界で、術を発動させる前に童磨に接近し、鉄の扇を切り裂き右手を再び斬り落とす。

 

童磨は咄嗟に逃げ出す。その速さは目視するのは難しいくらい異常な速さだった。

 

 

「な、鳴女ど……!」

 

童磨は大声で必死に仲間である鬼の名を叫ぼうとするが……

 

童磨の足が斬られた。童磨が見たのは、鞘に手を添え、紅蓮の日輪刀を振り抜いた一夏の姿だった。

 

 

「日の呼吸改 輝輝恩光・緋空斬」

 

輝輝恩光に花の呼吸の要素を取り入れた技である。渦を巻くように回転して斬撃波を放つ。

 

 

 

「(あ、あの距離から、斬撃を⁉︎)」

 

 

 

「日の呼吸改 陽華突……」

 

一夏は刀を再び納刀し、逃すまいと童磨に接近し、

 

 

 

 

 

 

 

 

「無想覇斬!」

 

無想覇斬は陽華突に蟲の呼吸の要素を取り入れた技である。従来の突き技からかけ離れており、その一振りの剣に業火を纏い一瞬の居合いで無数の斬撃を浴びせるのだ。

 

紅蓮の火の斬撃が、一匹の鬼の頸が、満月が照らす夜空に、鮮血と共に舞った。

 

 

 

童磨は、絶望を刻んだ表情のまま、灰となって消滅した。

 

 

一夏は、消滅したのを確認し、刀を鞘に納めると、急いでカナエの元へ駆け寄る。

 

「カナ姉、無事か?」

 

「けほ……うん、なんとか」

 

一夏が駆け寄ると、カナエは呼吸を整えながら呟く。受けたダメージが落ち着き、呼吸も安定はしているがまだ咳き込んでいた。

 

「ごめん、俺がもっと早く駆けつければ、カナ姉は」

 

 一夏の言葉に、カナエはふるふると左右に頭を振る。

 

「……気に、しちゃだめよ。あなたは、すごい、ことを、成し、遂げた。もし、貴方が、来なかったら、私は……」

 

カナエは咳き込みながらも、力を振り絞り、一夏を抱きしめる。

 

「おかえりなさい、一夏」

 

 

「ただいま、カナ姉」

 

 

一夏もカナエの背に手を回し抱きしめ返す。

 

 

その瞬間、空から日が昇り始め、辺りを優しく照らし始めた。




一夏が使った今回の改の型 無想覇斬は騎神戦のヴァリマールが使っていた無想覇斬をイメージしていただけると幸いです。

中の人の繋がりで、一夏に使わせるとしたらどっち?

  • 神気合一
  • 冥我神気合一
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