日輪を宿す暁   作:狼ルプス

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医者の鬼

俺は織斑一夏。鬼殺隊士となって一年、年号も「明治」から「大正」へと変わろうとしている。階級は甲の『始まりの呼吸』…日の呼吸使いの剣士となった。一気に一番上の階級になった事に関しては、俺が十二鬼月の上弦を倒したのが大きい。

 

柱合会議から半年後、しのぶはカナ姉の跡を継ぐように柱に就任した。

柱名は蟲柱だ。蝶屋敷のみんなで就任を祝ったが、しのぶは何故俺が柱ではないのか疑問を持っていたみたいだった。

ただ、俺やカナ姉達以外の相手では口調がカナ姉寄りになっている。何故かカナ姉口調でいる時のしのぶは寒気がする……本人には言わないけど。

 

そして更に半年後、杏寿郎も柱となった。下弦の弐や笛鬼,雨鬼や泥鬼といった強豪達を討滅してきた結果だ。その時、杏寿郎の柱就任祝いで、蝶屋敷の少女達と一緒に煉獄邸に招待され、しのぶ以上に盛り上がってしまった。一夏は千寿郎と一緒にスイートポテトを振る舞った。杏寿郎は勿論、「うまい!」,「わっしょい!」を連呼し美味しそうに平らげた。

 

 

 

 

 

 

そして鬼殺業では最近、任務先で討伐対象の鬼達に『耳飾りの剣士』と認識された。

 

鬼達は俺の名前を知らないわけだから当然だろう。縁壱さんも耳飾りを身につけていて、自身も縁壱さんの魂を継いでいるためか、耳飾りの剣士と呼ばれるのは不快ではなかった。

 

 

遭遇した鬼によれば、俺を殺せば鬼の始祖、鬼舞辻無惨から更に血をもらうことができ強化されるらしい。正直言ってしのぶ達よりも弱すぎる。あの上弦の鬼もそうだ。鬼の始祖は見る目があるのだろうか。下弦の鬼に関しては最終選別の鬼より少し手強い程度だった……いや、慢心は隙を呼ぶ。油断せずにいこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

明かりのない闇夜の中、一人の青年が森を歩いていた。伸びた髪は結んでおり、髪先は赤身を帯びだ黒色の髪、額には陽炎の様な痣、両耳には耳飾り……

 

 

「………」

 

無言でしばらく歩き続けてたが、ふと立ち止まる。すると、腰から急に出現した刀に手をかける。

 

「日の呼吸改」

 

深く呼吸を行い、

 

「炎舞・鳳凰」

 

紅蓮の刀身を振り下ろす。

 

 

 

炎舞鳳凰は振り上げる二連撃から威力重視に変更した兜割りの一振りである。

穏やかとすら言っていい、無駄が一切なく、激しさの欠片もない洗礼された美しい火の一振りだった。

一夏が放った一振りから衝撃波が発生し、何もない所に叩き込まれたかのように見えたが、

 

「なっ……に!?」

 

突如、真っ二つに断たれた鬼が地面に転がっていた。

 

「な、何故だァッ……!?気配も姿も俺の“血鬼術”で完全に消していた!何故わかった……!?」

 

半分に斬られた鬼の顔は驚愕に染まっている。その鬼の異能“血鬼術”は、自分の姿,気配を完全に消すもの。その隠形により鬼は多くの人間や鬼殺隊の隊士を喰らってきた。なのに、目の前の耳飾りの剣士には通じなかった。

 

問われた一夏は、鬼に顔を向け無表情で告げる。

 

「術で姿を消していても、俺には見えてる。それから、背後を取りたいのなら、血の匂いを消すんだったな」

 

鬼には理解できなかった。あらゆる五感から外れる血鬼術にも拘らず、「見えている」と言われ、挙げ句の果てに斬られるだなんて……混乱したまま、その鬼は再生出来ず、首を断たれずに消滅した。

 

一夏には物や人体が透けて見える。筋肉の動きなどで何をするかいち早く察知し対応できる。それは例え姿気配は消せたとしても、筒抜けとなる。

そして一夏の日輪刀は黒から赫く染まっている。一夏の赫刀は鬼を斬りつけるだけでも鬼の再生能力を阻害できる。自身が気付いたのは上弦の鬼を倒した時だった。

 

「(まだまだ分からないことだらけだな、俺の相棒は……)」

 

一夏は日輪刀の柄を強く握るだけで赫く変わる理由を完全に解明できていない。そんなことを考えながら、納刀し、一夏は再び歩き始めるが、

 

「(ずっとつけられているな。さっきの鬼だと思っていたが……どうやら違うみたいだ。気配は二人、だが妙だな……鬼にしては敵意を感じない)」

 

足を止め、再び柄に手をかける。

 

「そろそろ出て来たらどうだ?」

 

今まで何もなかった空間から突如一組の男女が姿を現した。

 

「やはり気づかれていましたか。私達に敵意はありません。貴方とお話をしたくて、後を追っておりました」

 

俺をつけていたのは、鬼の気配がする大人の女性と男の鬼だった。

 

 

「(人食い鬼特有の気配を感じない。何者なんだ?)」

 

正体を現した後も、彼女が言うように、敵意が全く感じらず、人を食った鬼特有の気配も感じられなかったことから、柄に触れていた手を離す。

 

 

「わかりました。一先ずお話は聞きます」

 

 

 

 

 

 

 

最近鬼達の間で『耳飾りの剣士』を殺せば十二鬼月になれると言う話が出回っておりました。『耳飾りの剣士』と聞くと、私はあの人を思い出さずにはいられません。

 

こんな話が出回っているのは、鬼舞辻無惨が鬼達にそう命令したに違いないと確信した私は、猫の茶々丸にお願いをして、耳飾りの剣士と呼ばれている方を探してもらい、見つけ出しました。

 

「愈史郎、私は今から耳飾りの剣士と呼ばれている方と接触します。留守を頼めますか?」

 

「お待ちください、珠世様!御一人で行かれるのは危険です!耳飾りの剣士がどんな奴か分かりません、俺もついて行きます!」

 

愈史郎も一緒に行く事になり、私達は茶々丸に先導してもらいながら耳飾りの剣士がいる所へ向かいました。

茶々丸の後を追い、森の奥へと進んでいくと、剣士らしき人影が見えてきました。

念のため、愈史郎に血鬼術で私達が見えないようにしてもらっている最中、偶然にも、私達と同様に姿を消していた他の鬼が耳飾りの剣士に狙いをつけたのです。

 

月明かりが剣士を照らすと、その姿に、私は……

 

「縁壱……様」

 

私は、耳飾りの剣士を見て、無惨から逃げ出した時に手助けをしてくださった恩人を思い出しておりました。

顔,立ち姿,雰囲気,柄の違う耳飾り,そして頭部を覆うあの痣が縁壱様にとても似通っていたのですから……

 

突然腰から日輪刀が現れ、鬼を真っ二つに切り裂いた光景は、まさに刹那の見斬り。

 

鬼を斬る際に耳飾りの剣士が持っていた日輪刀が黒から赫へと変じ、鮮やかな炎をまとったその一振りは、美麗の一言でありました。

 

 

「そろそろ出て来たらどうだ?」

 

愈史郎の血鬼術で見えない筈なのに、私達が隠れている方に目を向けていました。

愈史郎に血鬼術を解いてもらい、耳飾りの剣士に、敵意が無い事,無惨の呪いを解いている為に人を襲わないこと,後を追った理由を伝えると、彼は私達二人を交互に見定め、矛を収めてくださいました。

 

「……私に話とはなんですか?」

 

「話を聞いて下さり、ありがとうございます。私の名は珠世、此処では他の誰かに聞かれてしまいますので、私達が暮らしている屋敷に行きませんか?」

 

「分かりました。一応名乗りますが、織斑 一夏です」

 

「ありがとうございます。では、私達について来てください」

 

「……はい」

 

耳飾りの剣士、一夏さんとの接触に成功した私達は一夏さんと共に拠点にしている屋敷に帰ることが出来ました。

 

 

 

 

一夏は、珠世と愈史郎、茶々丸の後ろに着いてしばらく走っていると、立派な屋敷が徐々に見えてきた。

屋敷の前に到着すると、一夏は二人と茶々丸に続いて入って行った。

 

「茶だ。珠世様以外には淹れたくないが、一応客人だからな。感謝しろよ、鬼狩り」

 

「……ありがとうございます」

 

屋敷に入ってから珠世さんに案内され居間に通された。その後愈史郎と呼ばれた彼が淹れてくれた茶を一口飲む。

 

「……美味しい」

 

「当たり前だ。毒を入れるとでも思ったのか?」

 

「いや、普通にお店に出してもいいくらい美味しい。それと愈史郎さん……」

 

「何だ?気安く名を「愈史郎さんは珠世さんの事が好きなんですか?」────な、貴様何を言っている!?」

 

愈史郎は顔をリンゴのように真っ赤に顔を染めた。

 

「その様子だと、当たりですね。自分にも一筋の女性がいるからすぐにわかりました。」

一夏は平然と愈史郎に告げる。愈史郎は更に顔を真っ赤にする。

 

「愈史郎さんの態度を見ればわかります。愈史郎さんの発言は珠世さんを思ってのことだと、鬼殺隊を協力者にして危険を増やしたくないという気持ちも……」

 愈史郎の真意をすぐに理解した一夏だが、

 

「う、うるさい!珠世様が来るまで黙ってこれでも食っていろ!」

 

「ムグッ!」

愈史郎は一夏の口に菓子を突っ込む。一夏は道中、珠世と愈史郎の会話を聞いていた際、珠世の表情が一瞬綻んだのを確かに見た。

 

「俺が珠世様を好いている事を本人の前で絶対に言うな、いいな?」

 

「わかひまひひゃ(わかりました)」

 

一夏が菓子を口に含めたまま首を縦に降って返答するのとほぼ同時に、珠世が部屋に入ってきた。そのため、愈史郎は彼女の左斜め後ろに控える。

 

「愈史郎、お客様に対して無礼な真似をしないでください」

 

「はい珠世様!」

 

珠世が一夏への非礼を叱ると、愈史郎は背筋を伸ばし元気の良い返事をした。愈史郎の返事を聞いてから、彼女は一夏へ顔と視線を向けて、呼び出した理由について話し始めた。

 

「あなたと接触したのは、他の鬼達が噂していた『耳飾りの剣士』か否かを確認したかったからです。」

 

「成る程、あなた方にも、噂は回っていたみたいですね」

 

 

「はい、一夏さんは継国 縁壱様にとても似ています。刀を振るっていた姿や雰囲気,痣なども「縁壱さんを知っているんですか⁉︎」ッ!?ど、どうされたのですか?」

 

どうやら、珠世さんは、縁壱兄さんと縁がある方だったようだ。

 

 

「一体どういう事でございましょうか?あの方は400年前にお亡くなりになっている御方ですよ?」

 

「珠世………グッ!お、思い出した……、あの時、無惨と一緒にいた珠世。縁壱さんが逃した“人の感情が残っている鬼”!」

 

「ッ⁉︎何故それを?」

一夏は目を抑え、今まで靄がかかっていた何かが鮮明となり、珠世と縁壱の関係をはっきりと思い出した。

 

「……全てお話します。何故自分が珠世さんの事や継国縁壱のことを知っているのか、そして、私が何者かをーーー」

 

 

まず自分が縁壱の生まれ変わりであり、自分の内の世界で守護霊として存在している事、未来から来た人間である事を話した。すると、珠世さん達の表情は一気に変わる。

 

「し、信じられるわけがないだろ!?」

 

「証拠をお見せします。取り敢えず、愈史郎さんは珠世さんの隣に立ってもらってもいいですか?」

一夏がスマホを出すと、愈史郎は不思議そうに見つめるが、渋々と珠世の隣に立つ。

 

「よし、出来ました。これを見てください」

 

愈史郎はスマホの画面を見た途端、顔が驚愕の色に染まる。珠世は今まで見た事のない彼の反応が気になり、一夏に近づきスマホの画面をみる。

 

「こ、これは⁉︎」

 

「し、信じられん、俺と珠世様が……鏡の様に写っている」

 

この時代に生きる者にとっては信じられない物だった。今の時代、写真はあるが殆どが白黒だ。ここまで正確に写された写真、しかも掌サイズの物で写真が撮れるなど到底不可能な代物だ。

 

 

「まだ信じられないのであれば、他にも証明する機能もあります」

 

「……いえ、十分です。掌の大きさの物で写真を撮れるなど、今の時代の技術では不可能ですから」

 

「お前……本当に未来から来たのか?」

 

「はい。自分は今から百数年後から来た日本の人間です」

 

「一夏さんが未来から来た方だとわかりました。まさか、縁壱様の魂を継いでいらっしゃるなんて…」

 

俺は内面にいる縁壱さんの経緯と日の呼吸を使える事を話すと、珠世さんは先程のお淑やかな雰囲気からガラッと変わった。

 

「日の呼吸を使えるのですか⁉︎これなら…これなら!あの臆病者を屠れる!!」

 

「(興奮している珠世様も美しい!)」

 

 

「(珠世さん、目が……、なんだか…懐かしいな、彼女のあの瞳を見るのは)」

 

珠世さんの瞳は、まるで希望を見たかの様に、輝いていた。一夏は懐かしむ様に珠世の瞳を見つめる。

 

 

「……珠世さん、織斑一夏として、貴女に一つ聞いてもいいですか?鬼を……人に戻す方法は、ありませんか?」

 

一夏の静かな問いかけに珠世は

 

 

「(……縁壱様)」

 

今の珠世には、一夏の姿が縁壱と重なって見えた。

 

 

 

 

縁壱様と出会ったのは数百年前、記憶も朧気な程遠く永い時間の中でも、今も鮮やかに色づいております。

 

そして、一夏さんの瞳も、縁壱様と同じで、深淵を覗いておられるかのような底知れぬ憂いを感じさせる瞳でございました。

 

何も映していないような、或いは彼方まで見透かしているような、不思議なその瞳を以って、私に「悲しい目をしている」と言ってくださった。私の目を見て、鬼の私にも、感情はあるのだと仰ってくださった。

 

当時の私は無惨のせいで、自分の間違った選択によって、与えられた運命に抗う術すら見つけられず、自暴自棄になっておりました。

 

何もかもがどうでもよかった……そんな私に縁壱様が見せてくださったのは、紛れもなく圧倒的な光でございます。

 

闇夜にしか生きられなくなった私にはもう見ることは叶わぬと諦めていた光を…………

この時からでした、私が鬼舞辻を葬る為の研究を始めたのは。これは、縁壱様との約束でもありました。

 

 

それから暫く、縁壱様は私の前に御出でになられました。この時の縁壱様も、いつものように無表情で何を考えているのかわかりませんでしたね。

 

そして縁壱様は

 

『鬼となった人を……人に戻す事は可能か』

 

『(そんな事が…でも、鬼の力を奪い、弱らせる事ができるなら途方もない強さを作り出すより…)』

 

当時の私には夢のような話でした。だから私は、

 

『…わかりません』

そう答えるより他ありませんでした。

 

『………そうか』

 

『……!』

 

鬼舞辻と対峙していた時でさえ凪いていたあの瞳が、瞬きの一瞬波立つのを見ました。

 

『不躾にすまなかった。無事でいて安心した』

これが縁壱様と私の最後の会話と相成りました。

 

 

 

「一夏さん、鬼を…人に戻す方法はあります。」

 

「っ!本当……ですか?」

 

「はい、それも縁壱様との約束でしたから、その代わり一夏さん、私達に力をお貸しいただけませんか?」

 

「力を、ですか……」

 

「はい。私は鬼を人に戻す薬を作っています。そこで、一夏さんには、十二鬼月から採血短剣で血を採ってもらいたいのです。愈史郎……」

 

 

「はい、珠世様!ほら、受け取れ鬼狩り」

愈史郎さんから三本の短剣を渡された。

 

「この短剣は?」

 

「先ほどお渡しした短刀は鬼の身体に突き刺すことで自動的に血を採ることができます。採取した血は、この子を介して届けてください。」

 

「この子…?」

 

「…茶々丸」

 

「ニャーー」

 

鳴き声と共に現れたのは一匹の猫であった。

 

 

「「え⁉︎」」

 

 

 

珠世と愈史郎は驚いていた。現れた場所が一夏の太腿の上だったからだ。一夏自身はいきなり現れた猫には驚いてはいない。この部屋に入って数分して重みを感じていたからだ。姿は消していたがすぐにあの時の猫だとわかった。

 

 

「昔から、動物に好かれるので気にしないでください。それと……ありがとう珠世さん、縁壱さんとの約束を…覚えててくれて」

 

「ふふ、あの人には一度、救われた身です。縁壱様の記憶を見た一夏さんなら、わかると思いますが」

 

「そうですね。改めて、これからもよろしくお願いします、珠世さん」

 

「こちらこそ、改めてよろしくお願いします、一夏さん」

一夏と珠世は互いに手を握り握手をする。その隣で見ていた愈史郎はすごい形相をして一夏を見ていた。

 

 

 

日輪と鬼医者が、再び手をとった瞬間だった

中の人の繋がりで、一夏に使わせるとしたらどっち?

  • 神気合一
  • 冥我神気合一
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