日輪を宿す暁   作:狼ルプス

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柱合裁判

産屋敷庭園

 

本来会議は屋敷内で行うが、ここは鬼殺隊当主であるお館様産屋敷耀哉と柱たちが集合し、裁判に掛けられた者の審議を問う場所だ。

 裁判に掛けられている炭治郎は、鬼を連れながら鬼殺を行っていたなど、鬼殺隊の名を穢していると同義であり、重大な隊律違反と言うに他ならない。

 

「……」 「……」

 

 

冨岡さんと俺は他の柱から距離を取り、炭治郎を見守っていたが、当然反応は厳しかった。

 

「裁判の必要などないだろう!鬼を庇うなど明らかな隊律違反!我らのみで対処可能!鬼もろとも斬首する!……だがしかし!あの一夏が考えなしにこんなことをするとは思えん!なのでお館様の意見を聞いてから対処しよう!」

 

「その必要はねぇだろ煉獄、だったらオレが派手に頸を斬ってやろう。誰よりも派手な血飛沫を見せてやるぜ。もう派手派手だ」

 

 この場で様子見をする炎柱・煉獄杏寿郎、処刑を主張するのは、音柱・宇髄天元だ。

 

「しかし、柱が、ましてや一夏が隊律違反をするとはな。大体、拘束もしてない様にオレは頭痛がしてくるんだが、そんな柱二人はどう処分する?どう責任を取らせる?どんな目に遭わせてやろうか?」

 

 蛇柱・伊黒小芭内が木の枝の上に寝転びながら、ネチネチと毒を吐く。また、岩柱・悲鳴嶼行冥も処刑に賛成した。

 

「大人しくついてきてくれましたし、処罰は後で考えましょう。それよりも私は、坊やの方から話を聞きたいですよ」

 

しのぶはそう呟く。取り敢えず話を聞く姿勢だ。炭治郎は、うつ伏せで倒れながら言葉を発しようとするが、口の中が乾いて言葉が詰まってしまう。

 

「水を飲んだ方がいいですね」

 

 そう言ってから、しのぶが片膝を突き、炭治郎の口許に、鎮痛薬を混ぜた水が入った瓢箪を差し出すと、炭治郎はそれを啜ってから口を開く。

 

「オレの妹は鬼になりました。でも、人は喰ったことは無いんです!今までも、これからも、人を傷つけることは絶対にしません!」

 

 炭治郎は強く意見する。

 

「くだらない妄言を吐き散らすな。そもそも身内なら庇って当たり前。言うこと全て信用できない、オレは信用しない」

 

「あああ……鬼に取り憑かれているのだ。早くこの哀れな子供を殺して解き放ってあげよう」

 

 だが、小芭内、行冥は否定の意思だ。

 

「聞いて下さい!禰豆子が鬼になったのは二年以上前のことで、その間、禰豆子は人を喰ったりしていない!」

 

「話が地味にぐるぐる回ってるぞ阿呆が、人を喰ってないことを、これからも喰わないこと、口先ではなく、ド派手に証明してみせろ」

 

 天元がそう呟き、恋柱・甘露寺蜜璃が『お館様の意見を聞いてから』と主張する。霞柱・時透無一郎は無関心だ。 

 反論を述べるにしても、強制力は無きに等しいだろう。

 

「妹はオレと一緒に戦えます!鬼殺隊として人を守る為に戦えるんです!だから――」

 

「オイオイ、何だか面白いことになってやがるなァ」

 

 

隠の制止を無視して、禰豆子が入った箱を片手に現れたのは、風柱・不死川実弥だ。

 

「鬼を連れた馬鹿隊士はそいつかいィ。一体全体どういうつもりだァ?」

 

 実弥は殺気を露にし、日輪刀に手を掛け抜き放つ。

 

「鬼が何だって坊主ゥ?鬼殺隊として人を守る為に戦えるゥ?そんなことはなァ、ありえねェんだよ馬鹿がァ!」

 

 実弥は禰豆子が入った箱を貫こうとするが――その直後

 

 

「不死川さん……何をしようとしているんですか?」

 

 

「なにしてんだァ……織斑ァ!!」

 

 

実弥が禰豆子の入った箱を貫こうとした瞬間、ずっと無言を貫いていた一夏が音も気配も消して接近し、素手のまま実弥の刀を掴んだのだ。余りに一瞬の出来事に一同が驚く中、一夏の血が滴る実弥の刀身は赫く変化していく。それは、一夏が力を入れて握っている証拠だ。

 

 

「一夏⁉︎」

 

しのぶが声を上げる。

 

 

「不死川さん、刀を……納めて下さい」

 

一夏は俯きながら声を出す。その声は普段より低く、並々ならぬ気配を漂わせている。その場にいた全員が、それを感じていた。

 

 

「二度も言わせないでください。刀を…納めて下さい、不死川さん」

 

一夏の握る手が強くなる。その勢いは刀を折るほどの握力だった。

 

「……ッ」

一夏は無表情で実弥を睨みつける。尋常ではない殺気、それは人に向けられていい物ではない。炭治郎含め、柱全員が一夏の殺気にたじろぐ。余りの無の表情…そして今まで感じたことのない底知れぬ威圧に冷や汗をかく。間近で圧を当てられた実弥は動けずにいた。

 

 

一夏は鬼殺隊最強の剣士と言われている剣士、『始まりの呼吸』日の呼吸を極めた剣士。現柱も、しのぶを除いて、一度も一夏には勝てた事はない。

 

そして、彼は鬼に慈悲を掛ける剣士でもあった。

 

一夏は剣術は好きだが、殺し殺される様な争い事は好まない性格だ。鬼を斬る事は人間を斬る事と同じ…そう考えている。

 

鬼は人を喰らう生き物であり、悪鬼を滅するのが鬼殺隊の心理だ。実弥は、一夏の事は認めてはいるが、一夏の鬼殺の仕方に納得をしていない面もあった。

 

 

「杏寿郎と甘露寺さんの言う通り、お館様の御判断が先かと思いますが、どうしても箱の中にいる彼女を斬りたいのなら、自分の指を斬り落としてからにしてください」

実弥は刀を動かそうにも、信じれない力で掴まれていた為、びくともしなかった。その諫言を聞いて実弥は眉を寄せながら告げた。

 

「わかったァ、わかったからその手離せや、刀折るつもりかぁ?」

 

実弥はお館様の了承も無く、独断で違反隊士を罰するのは問題になると判断したのだ。一夏も彼の言葉に嘘はないと判断すると、手を離す。実弥は納刀しこの場を収めた。そして一夏の手は素手で刀を掴んでいた為、血が流れている。

 

「一夏、手…出して」

 

「すまない」

 

しのぶが一夏に駆け寄り軽い手当てをはじめる。

 

 

 

「お館様のお成りです!」

 

 治療が終わった直後、産屋敷耀哉の到着を告げられると、柱たちはその場で片膝を突け、頭を下げる。

 

「え、え?」

 

炭治郎は突然の事で、疑問符を浮かべていたので、禰豆子の箱を奪還した一夏が助け舟を出す。

 

「炭治郎、俺達と同じように頭を下げるんだ」

 

「は、はい」

 

一夏に言われた通り、炭治郎は急いで片膝を突き、頭を下げる。

 

「よく来たね、私の可愛い剣士(こども)たち。今日はとてもいい天気だね。空は青いのかな?」

 

 

 

 

「顔ぶれが変わらずに、半年に一度の柱合会議を迎えられたこと、嬉しく思うよ」

 

 耀哉がそう呟き、双子に手を貸してもらって座布団に座る。

 そうして始まった柱合裁判だが、やはりと言うべきか穏やかと言えるものでは無かった。

 

 

炭治郎・禰豆子を容認する耀哉に、行冥,小芭内,杏寿郎,天元,実弥が反対意見を述べる。

 

「では、手紙を」

 

「はい」

 

 そう言って、双子の一人が手紙を読み始める。

 

「こちらの手紙は、元柱である鱗滝左近次様から頂いたものです。一部抜粋して読み上げます」

 

 その内容は、二年の歳月が経過しても禰豆子は人を喰ってないと言う内容だ。

 そして、次の内容に柱たちに驚愕が走る――、

 

「――もし禰豆子が人に襲いかかった場合は、竈門炭治郎及び鱗滝左近次、水柱・冨岡義勇、同門の鱗滝真菰……日柱・織斑一夏が腹を斬ってお詫び致します」

 

 だが、反対意見を提示したのは、実弥だ。

 

「…切腹するから何だと言うのか。死にたいなら勝手に死に腐れよ、何の保証にもなりはしません」

 

「死に腐られるのは戦力的にまずいですが、不死川の言う通りです。人を喰い殺せば取り返しがつかない!殺された人は戻らない!」

 

 杏寿郎が同意する。それに対して、耀哉が口を開く。

 

「確かにそうだね。でも、人を襲わないと言う保証ができない、証明ができない。ただ、人を襲うと言うこともまた、証明ができない」

 

 耀哉は手紙を持ち、言葉を続ける。

 

「それに、禰豆子が二年以上もの間人を喰わずにいるという事実があり、禰豆子の為に五人の命が懸けられている。これを否定する為には、否定する側もそれ以上のものを差し出さねばならない」

 

実弥と杏寿郎は押し黙ってしまう。

 

更に、炭治郎が無惨と遭遇した事実も告げ、炭治郎が無惨へ繋がる手掛かりになるかもしれないという考えを見せた。

 

「(鬼舞辻無惨、縁壱さんが唯一不気味に思った存在)」

 

一夏は縁壱の記憶や見た夢で無惨のことは知っている。一夏でさえも、無惨の異形の体に戦慄したくらいだった。

 

「(縁壱さんの記憶から、無惨の事は皆に話しているが、無惨が更に力をつけている可能性も考えないとな)」

 

 

「……わかりません、お館様。人間ならば生かしておいてもいいが、鬼は駄目です!承知できない!」

 

実弥は日輪刀を抜き放ち、自身の左腕を斬る。

 

「お館様……!証明しますよ、オレが。鬼という物の醜さを!」

 

 実弥は、一夏の傍にあった禰豆子が入る箱を奪取し、それを転がした上に自身の血を垂らし落とす。

 ――実弥は稀血である。鬼を狂酔させることができる程血が特殊なのだ。

 

「オイ鬼!飯の時間だぞ、喰らいつけ!」

 

「不死川、日なたでは駄目だ。日陰に行かなければ、鬼は出て来ない」

 

 小芭内の言葉を聞き、実弥は箱を掴む。

 

「――お館様、失礼仕る」

 

 実弥は箱を持って屋敷内の日陰に向かう。そして、箱を落として、何回か箱ごと禰豆子を突き刺す。強引に扉を開けると、中からは額に汗を吹かせ涎を流しながら禰豆子が現れ、実弥の腕から流れる血を見ている。炭治郎は動こうとするが

 

「ね、禰豆……」

 

「炭治郎。柱たちに認めてもらう為には、禰豆子が人を襲わないかの証明が必要だ。信じてあげなさい…君の妹を」

 

「ッ!?……わ、わかりました」

一夏の静止で大人しくすることにした。こんな状況でも無表情な一夏だが、彼の匂いから内に秘めた想いを感じ取った炭治郎は、禰豆子を信じることにしたのだ。

 

禰豆子はよだれを垂らしてはいるものの、そっぽを向き、実弥の血を拒否した。禰豆子は、人を襲わないことの証明が成されたのだ。

 

だが、柱たちが認めても、隊士の中には鬼の存在を良しとしない者も居るだろう。

 

 禰豆子が人を襲わないという証明が出来てしまい、今ここでの処罰は行われない事になった。

 

「十二鬼月を倒しておいで。そうすれば、皆に認められる、炭治郎の言葉の重みが変わってくる」

 

「はい!禰豆子と共に鬼舞辻無惨を倒し、悲しみの連鎖を断ち切る!」

 

 

「今は無理だから、まずは十二鬼月を倒してからだね」

 

「は……はい」

 

 

 

炭治郎はお館様に言われて余りの恥ずかしさで顔を赤く染めてしまっていた。その中で笑いを堪えるしのぶと蜜璃だったが…

 

「くっ、くふふふふっ」

 

「え……一夏?」

 

すると一夏が笑い出し、柱の全員が注目する。

 

「あはは、アハハハハハハ!」

一夏は涙をためながら笑い始めた。一夏は炭治郎とお館様のやりとりがツボに入ってしまったようだ

 

「(一夏が、声に出して……笑ってる)」

しのぶも一夏の笑顔は見る事はあったが、声に出して笑うところは見たことがなかった為、初めて見せる顔に少し驚いていた。

 

「おお、あの織斑が…派手に笑ってやがる」

 

「うむ!珍しい光景だな!俺でも一夏が声に出して笑う姿は初めて見た!」

 

「はぁっ⁉︎見たことがないって…マジか⁉︎」

 

「ああ!長い付き合いたが事実だ!胡蝶はどうだ?」

 

「私も…正直驚いています」

 

「(あの人、笑うんだ)」

 

「(織斑もあんな顔をするんだな)」

 

「(あの野郎ォ、あんな顔できたのか)」

 

「(声に出して笑う一夏君も素敵!)」

 

「南無」

 

「………一体何が笑えると言うんだ」

 

柱の反応はそれぞれだった。しかし柱一同は表情を時折変える所は見たことあるが、声に出して笑う一夏に内心かなり驚いていた。この中で一番付き合いの長いしのぶでさえも驚くくらいだった。

 

「も、申し訳…ありま、せん。話を遮ってしまいまして…」

 

一夏はすぐに表情を戻すも、笑いを耐えながら御館様に謝罪する。

 

「ふふっ、大丈夫だよ。それじゃあ、この裁判は終わりにしよう。それから、二人のことは」

 

「でしたら竃門君たちは私たちの屋敷で預かりましょう。では連れて行ってください」

 

しのぶが手を叩くと、現れた隠が炭治郎と禰豆子を連れていく。だが直ぐに炭治郎が戻ってきて、「不死川に頭突きをしたい」旨を御館様に訴え、時透から手痛い一発を受けて再び連れていかれるという一幕があった。炭治郎の姿が見えなくなった所で柱合会議が開始された。

 

中の人の繋がりで、一夏に使わせるとしたらどっち?

  • 神気合一
  • 冥我神気合一
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