日輪を宿す暁   作:狼ルプス

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食事会

「いーちーかー、ねぇ、聞いてるの?」

 

「………」

 

「なんだかこの部屋、熱くない?そう思わない?ねぇ?」

 

「………」

 

「ねえ、ねえ、なんで無視するの?いーちーかー、無視するならどんどん強く突くわよ〜」

 

「(なんでこうなった……)」

柱合裁判から二日後の夜、俺は、しのぶ,甘露寺さん,杏寿郎,小芭内さん、冨岡さん,宇髄さん,真菰,時透のメンバーで夜の食事に来ていた。不死川さんと悲鳴嶼さんも誘ったが、予定が合わず断られた。

ここにいるメンバーには竈門兄妹との出会いについては話している。最初は義勇に問われたが長ったらしい説明になる為、一夏に説明が任された。その後は雑談をしながら食事に興じていたが、しのぶが突然この様な状態になってしまったのだ。

 

 

 

「おーおー、派手に酔ってんなぁ、胡蝶」

 

「義勇、あれ大丈夫かな?」

 

「………」←好物の鮭大根を口に含んでる為何も言えないし考えてもいない

 

「貴様は何か言ったらどうだ、冨岡…なぜ俺が貴様と隣でなければいけないんだ」

 

「見事に酔っているな!」

 

「(酔ってるしのぶちゃんも可愛いけど、これは)」

 

「(この大根、味が染みてる)」

 

何故しのぶが酔っているのかはわからない。いきなり酒瓶を持ちながら俺に引っ付いてきた。

しかし時代が時代であろうとも、俺は二十歳になるまで酒は飲むつもりはない、千冬姉には厳しく言われたから。

 

「ねぇ一夏……大丈夫?」

 

「…食事がし辛い、後、猛烈に背中が痛い」

しのぶは一夏の背中を指で突くがかなり痛い。突きを止めると、頬を赤くしてべったり一夏にくっついてくる。食事中だった一夏は少し困った表情だった。

 

「私なんて身長が伸びないのに……一夏ははじめに会ったときより伸びてるし!なにをどうすりゃのびるのよ!」

 

「(身長のこと気にしてたのか……)」

しのぶは柱の中では身長が一番低い。しかしこの時代でも俺の時代でも、しのぶみたいな身長が低い女性を何人も見ているので、気にすることはないと思っているが、本人は気にしているようだ。

 

「だいたい…いちかはおっきいからせっぷんするのもたいへんだしぃ〜、それからぁわらひは、みなさんにもいーたいんですよお〜、みなしゃんムダにケガししゅぎなんれすぅ!」

 

しのぶは、酒瓶を片手に、この場にいる柱にくだを巻き始めた。顔は赤く酒気を帯び、目は据わって呂律は回らなくなっている。

 

「どうしてこうなるまでほっといたんだ!?」

 

「他人事が過ぎるぞ、宇髄!最初に飲ませたのは宇髄であろう。飲ませたからには面倒を見るのが筋と言うものだ!」

 

「貴様の責任だろう、なんとかしろ」

 

「みなさーん!きいてるんれすかー! とくにいちかぁ!!」

 

「(なんで俺?)」

 

「いちかはいっつもムチャばっかしゅるし!わらひをにゃんどシンパイさせりぇばすむんれすかァッ!?」

 

「(……言い返せない)」

 

「確かに、それは胡蝶の言う通りだぞ一夏!お前は少し無理をしすぎだ!」

 

「同感だ」

 

「杏寿郎、小芭内さんまで……」

実際一夏は無理をして過労で倒れたことが何度かある。その時は藤の屋敷で倒れたのだが、回復して蝶屋敷に帰ってきた時、何故かしのぶが青筋を浮かべながら玄関で待っていた。その際は長い説教が始まり半日以上は叱られた事もある。

 

「まったくぅ!さいきんかまってくれないし!だいたいなんれすか、キョーハンって?!なんれいちかまれ、せっぷきゅなんれすか!?いちかにはちふゅしゃんたちがいるれしょ!しんだらどうするろよ!?」

 

「おい!いい加減飲むのやめろ胡蝶!…って、派手に力強えな、オイ!?」

 

因みに現時点で柱全員と真菰には一夏の家族や友人のことは知っている為、しのぶが「千冬」と一夏の家族の名を出しても皆動じない。

 

そして、堪りかねた宇髄がしのぶから酒瓶を奪おうとするが、しのぶはびくともせずに酒を呷っている。普段の非力な彼女からは想像もつかない光景だ。

 当の本人はメソメソと泣きながら酒を浴びる様に飲んでいる為、余計に異様さが際立つ。

 応援を望む様に宇髄は煉獄に目を向けるが、「そうなってはもう止まらん!」と言わんばかりに煉獄はご飯を口にかっ込むのみ。

 

「とてもじゃないが、俺たちじゃ派手に止められんぞこれは!」

 

「し、しのぶちゃん!流石にそれ以上は行けないわ!もう酔ってるから、ね?ね?」

 

「よってないれすよぉ!」

 

「酔ってる人はみんなそう言うの!!しのぶ、蜜璃さんの言う通りこれ以上はやめて!」

 

「いーやー!」

 

「酒臭い上に面倒くさいなコイツ!!!おい!伊黒も見てねぇで何とかしろや!」

 

「なぜ貴様に手をかさなければならない!貴様が胡蝶に酒を飲ませたのがそもそもの原因だろう!」

 

「お願い伊黒さん!しのぶちゃんを止めるのを手伝って!」

 

「し、しかしだな…」

 

 

ギャーギャー喚く連中を他所に一夏と義勇,時透,杏寿郎の四人料理を堪能している。一夏が肉じゃがを食べている途中、義勇が鮭大根を分けてくれた。

 

「鮭大根、以前いただきましたけど、改めて食べると美味しいですね」

 

「(鮭大根は)俺の好物だ。(いい店を知っている。暇があれば)連れて行こう」

 

「こっちのふろふき大根も美味しいよ…」

 

「こっちの肉じゃがもまた美味しいですよ」

 

「こっちは天丼もいけるぞ!」

 

四人は食べている物を交換しながら食べていた。

 

 

「一夏!呑気に食べてないで手を貸せ!胡蝶を止められるのはもはやお前くらいだぞ!」

 

「……はぁ、わかりましたよ」

 

小芭内の救援要請で、一夏は箸を置き、しのぶに近寄る。

 

「しのぶ…これ以上は「いちかー!!」……」

 

すっかり出来上がってしまっているしのぶを見る。しのぶは、近づいた一夏に、酒瓶を片手に持ったまま飛び掛かり、抱き着いた。足までガッチリと絡めて、一夏が離れないようにぴったりと密着させる。

 

「…し、しのぶ」

 

「やっぱりいちかはおひさまみたいにあったか〜い〜」

 

一夏にしがみついてすりすりと頬擦りを始めた。

素面では絶対に見せない甘えた彼女の姿に、一夏は平常心を保とうと取り繕う。

 

「一応聞きますけど、しのぶに酒を勧めたのは誰ですか?」

 

 しのぶの柔らかな頬に擦り寄られながらも、一夏は他の面子を一瞥する。そして一斉に指差した…………宇髄を除いて。

 

「いや、待て待て待て!俺だけ悪い流れは派手におかしくねえか!?こう言うのは連帯責任だろうが!?」

 

「何が派手にですか!酒を勧めたのは音柱様でしょ!」

 

「よくわからないけど、この人が悪いよね?」

 

「アレがなければこうはならなかったかもしれん!」

 

「女の子に無理矢理お酒ってキュンと来ないわぁ、宇髄さ〜ん」

 

「甘露寺の言う通りだ」

 

「(胡蝶に酒を勧めた)宇髄が悪い」

 

しがみ付かれながら仁王立ちする様も滑稽だ。

 

「もーいーちかー、こっちみーてよー」

 

「酒臭い」

 

「なんれすってー!そんないちかにはこうれす!」

 

 

「しのぶ…何を」

 しのぶは摺り寄せていた頬を離す。尚もしがみ付いたままで、何をするのかと一夏は身構えるが、しのぶは一夏の首筋に顔を近づけていた。

 

「あむっ!」

 

「っ!?」

 

 紅の剥がれた口を大きく開け、その瑞々しい唇を一夏の首筋に吸い付けた。

 一夏は目を見開き、身体はビクリと跳ねるが、しのぶを落とすまいと何とか踏み止める。その光景に一同は目を見開いた。この時、蜜璃は顔を真っ赤にし、時透の両目を塞いだことも付け加えておく。

 

ジウウと吸い付く音が耳元で響き、首筋のこそばしさと刺激を感じ取る。恐らく噛み付かれているのだろう。

 歯の圧迫感がどんどん増していく。痛い。

 

「痛っ!し、しのぶ、やめろ!」

 

「んん〜」

 

一夏は頬を赤くしているのに対してしのぶは上機嫌そうに鼻を鳴らす。

嫋やかな彼女しか知らない一般鬼殺隊士が見たら泡を吹いて卒倒するに違いない。

 助けを求めるように一夏は他の面子を見るが、皆「触らぬ“虎”に祟りなし」とばかりに目を逸らす。

 満足したのか、ようやくしのぶは一夏の首筋から口を離した。

 

「よし、これでいちかはわたしのもの〜♪」

 

 しのぶは楽しそうに笑う。べったりと彼女の唾液に塗れた一夏の首筋にはくっきりと歯形が残っていた。しかし強く噛んだせいか血が滲んでいた

 

まるで自分の名前を書くかの様に歯形と痣を残すことで、彼の所有権が自分にあると言いたいのだろう。

 

「っ、しのぶ…」

 

「ぬゅふふ……」

 

 再びしのぶは頬を摺り寄せ、大人しくなった。そして、すうすうと寝息を立て始め、ようやく終わったかと一夏は安堵した。

 

引き剥がそうとするも、足までガッチリ絡めているため剥がせない。

 

「俺達二人は帰ります」

 

「一夏、私も一緒について行こうか?」

 

「いや、大丈夫だ。気持ちだけはもらっておく」 

 

「お、おう。胡蝶は任せたぞ織斑!二人は恋仲だしな!」

 

「それから宇髄さん、明日稽古に付き合ってください。試したいこともあるので是非相手をお願いします」

一夏は無表情で宇髄に伝える。一夏は表情こそ変えないが、相当怒っている。真菰は匂いで、義勇,甘露寺,杏寿郎,小芭内は雰囲気でそれを感じ取った。

 

そして、五人には未来が見えた、宇髄が一夏にボロクソに負かされる未来が。

 

「俺、明日は派手に死ぬのか?」

 

「貴様の自業自得だ」

 

「うん、伊黒さんの言う通りですよ、音柱様」

 

その後しばらくして今宵の食事会はお開きとなった。因みに責任として代金は宇髄が支払うこととなった。

 

 

 

 

 

 

 

◇翌朝

 

「あ、あれ、ここは?」

しのぶは目を覚ます。重い目蓋をこじ開けると、蝶屋敷の自室の見慣れた天井がこちらを迎えていた。

 しのぶは気怠げに布団から身体を起こす。身体が重い、気分が悪い、しのぶはこの感覚を知っている。

 

 

「飲み過ぎた……」

 

しのぶは頭を抱え、はああと大きく息を吐く。

そばに置いてある水差しを手に取り、グラスに水を注いで胃に流し込んだ。口から喉がヒヤリと潤い、不快感が少し和らいだ。

 

「昨日の記憶が曖昧だわ」

 

食事会が始まってからの事は覚えていた。しかし、その後の記憶が朧げになっていた。ついつい飲み過ぎてしまったようだ。

 恥ずかしい。みっともない姿を晒してしまったのではないだろうか。

 

「う、うう」

 

「え?」

しのぶは声のした方を見ると、一夏がしのぶの隣で眠っていた。状況から察するに、一夏は何かしらの原因で自分の布団で寝てしまったのだと判断する。

実際二人は偶に一緒に寝ることはある。

 

「…… ふぁぁぁ、もう朝か?」

一夏は目元を擦りながら周りを確認する。目の前にはしのぶの姿があった。

 

「おはよう、しのぶ」

 

「お、おはよう一夏、その昨日は…」

 

「色々と大変だった。これを見てくれ」

一夏は首筋を見せると、くっきりと歯形と痣が残っていた。しかしそれだけではなく、出血した跡も見受けられた

 

「そ、それ…私が、やったの……?」

 

「酔った蝶にやられたよ。思ったより強く噛まれたからな」

 

「ご、ごめん、一夏!わたし……なんて事を……」

 

「しのぶを責めてるわけじゃない。お前だけが悪いわけじゃないしな」

 

「ごめんなさい。ふしだらな女と笑ってください」

 

「笑わないよ」

 

深々と頭を下げるしのぶ。一夏は肩を竦める

 

「皆さんにご迷惑をかけました。特に一夏には」

 

「そうだな」

 

ズキリとしのぶの胸が痛む。一夏にしては低い声だった。完全に自分の責任なので、しのぶから何にも反論は出来ない。

 

「以前飲んで以来自重しているかと思ったんだが」

 

「耳が痛いです」

 

「何故俺がこんなことを言っているかわかるか?」

 

「……いえ」

 

 しのぶがおずおずと答えると、一夏は起き上がり、彼女の元に近づき顔を近づける。しのぶの顔が自然と赤くなる。

 

 

「あの時より酷いとはどう言う事だ」

 

「うう……」

 

 過去にしのぶは酒で失敗した事がある。それは、一夏の柱就任を蝶屋敷のみんなで祝った時のこと……内容はほとんど昨夜と同じ、「一夏に絡み、一夏が背負い、しのぶを寝室に寝かしたが、しのぶは覚えていない」というものである。この後、カナエやアオイに、お酒は今後飲みすぎないようしのぶは厳しく叱られた。

 

「少しは懲りたか?」

 

「物凄く懲りました」

 

「反省したか」

 

「はい」

 

「ならいい」

 

許しの言葉を得て、しのぶは肩を撫で下ろす。

 

「金輪際禁酒するわ」

 

「いや、飲みたければ飲めばいい。俺は無理強いをしない。ただ……」

 

 一夏は顔を更に近づけ、しのぶの肩を掴む。もう片手で彼女の髪を撫でた。しのぶの心臓が跳ね上がる。

 

「……俺以外にあんな姿を見せるな」

 

「え?」

 

「俺だけに見せてくれるなら、別に構わない……」

 

「え……ちょっ、いち…!」

 

 互いの息がかかる程、顔が近づく。接吻される、しのぶはそう予感する。何度かされた事はあるが突然のことで目蓋を強く閉じる。

すると一夏は目を瞑るしのぶの隊服の首元のボタンを外す。驚いてしのぶが目を開けると、一夏が自分の首元に顔を寄せていた。

 

「え!?」

 

 慌てたしのぶが動く間も無く、一夏はしのぶの白い首筋に吸い付いた。彼女の肌の感触を楽しむ様に甘く歯を立てる。

 

「ひゃ!あっ……!」

 

 くすぐったさに声を漏らすしのぶ。顔も熟れた林檎の様に紅潮させ、思わず仰け反り倒れそうになるが、一夏がすかさず彼女の背に手を伸ばし、倒れない様支えた。

 力が抜けた体を支えられ、逃げる事が出来ず、しのぶはされるがままに首筋を食まれる。

 手で必死で抵抗するものの、呼吸が乱れ、全く力の入らない状態では何の妨げにもならない。

 

そしてわざとらしくジウジウと一夏がしのぶに噛まれた箇所と同じ所を吸い付き、音を耳元で響かせ、しのぶの羞恥心をより煽らせる。

 

「い、いち……だ、だめ……はぁ……」

 

 優しく歯で肌を撫でられ、唇と舌でされるがままに舐られたしのぶは完全に脱力し、一夏の戯れを許していた。

 ぐったりとしたしのぶの耳元で、一夏は囁く。

 

『ーーーー』

 

「〜〜!!?」

 

目が回る様な感覚を覚えるしのぶ。羞恥で頭が沸騰しそうになる。

 

 

 

一夏は倒れない様に心ここに在らずなしのぶの体勢を整えさせ、口元を拭う。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 

「いきなりすまなかった」

 

 布団から立ち上がった一夏はそのまま寝室を後にした。徐々に意識を取り戻し、改めてしのぶは一夏の行動に対して脳で処理を始める。改めて自分にされた仕返しに、思わず顔を覆いたくなった。

 

 特に、最後の一言。

 

「一夏の馬鹿……」

 

 

 

呆れてしまう。馬鹿は私だ。でも、そんな一夏でも……私は大好きだ。

 

中の人の繋がりで、一夏に使わせるとしたらどっち?

  • 神気合一
  • 冥我神気合一
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