日輪を宿す暁   作:狼ルプス

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全集中・常中と新たな任務

あれから更に十日が経った。

炭治郎は全集中を睡眠中も維持する為、三人娘に寝落ちしたら布団叩きで叩いてもらう形で特訓を続けていた。

 

その後、手応えを感じた炭治郎は小さめの瓢箪を吹いてみることにした。

 

 

そして瓢箪がミシッミシッと音を立て始める。

 

「頑張って炭治郎君、もう少しよ!」

 

「「「頑張れ!頑張れ!頑張れ!」」」

 

カナエと、なほ,きよ,すみが炭治郎を応援する。

 

そして、とうとう瓢箪はバンッ!と大きな音を立てて破裂した。

 

「やったぁー!」

 

「割れたーーーーー!!」

 

「キャーーー!」「わーーー!」「やったーーー!」

 

全集中・常中を会得した炭治郎は、すぐに機能回復訓練で、カナヲに挑んだ。

 

鬼ごっこでは、汗を掻きながらだったが、見事カナヲの腕を掴み、捕まえることが出来た。

 

次は反射訓練……

 

 

 

こっちの方もどちらも譲らない攻防戦になっている。

 

 

守る、攻める、守る、攻める、守る、攻める

 

 

 

「「「頑張って!!」」」

 

「二人とも頑張れ!」

 

三人娘が炭治郎に声援を送る中、カナエは両者を応援する。

暫く互角の勝負をしていたが、遂に炭治郎は湯飲みを持ち上げることができた。

 

 

「(いけーーー!!)」

 

《この薬湯くさいよ、かけたら可哀想だよ?》←炭治郎の理性

 

「ハッ!」

 

 

炭治郎はカナヲの頭の上にコトンと湯飲みを置いた。何十回と繰り広げられた攻防の末、見事勝利したのだ。カナエはその様子に、「あらあら、うふふ」と笑顔で見つめていた。

 

そしてカナヲは湯飲みを頭に乗せたままの状態でキョトンとしていた。

 

「(キョトンとしたカナヲの姿も可愛いわ〜)」

 

「どうやら常中は会得できたみたいだな…、だが炭治郎、カナヲは全く本気を出していないからな」

 

道場の端っこで一夏が腕を組みその場に立っていた。

 

「一夏さん⁉︎いつからそこに?」

 

「最初から、な。」

 

「最初から⁈全く気づかなかっ、って…え⁉︎カナヲは本気じゃなかったんですか⁉︎」

 

「あぁ、今の炭治郎に合わせてやっていたんだ。カナヲは、相性もあるかもしれないが、下弦の肆を一人で倒した実績を持っている」

 

「か、下弦の鬼を……一人で」

炭治郎は、信じられないと言いたげな表情でカナヲの方へ振り返った。炭治郎は那田蜘蛛山で下弦の伍・累と遭遇し戦った。あの時は、追い込んで頸を斬ったものの、それは妹の禰豆子の力があってこそだった。それでも結局は倒し切れず、助太刀に来た水柱の冨岡義勇が容易く仕留めたのだ。

 

一夏はずっと気配を消し機能回復訓練を見守っていた。因みに、カナエ,アオイ,カナヲ,三人娘達はすでに気づいていた。

 

「さて、君たちはどうするんだ?」

 

「あなた達もいつまでもそのままだと炭治郎君に置き去りにされちゃうわよ?」

 

一夏とカナエは道場の入り口の前に視線を向ける。炭治郎の特訓の成果を見ていた善逸と伊之助に問うたのだ。

 

この二人は、今日までずっと訓練をサボっていた。

 

カナエの話によれば、伊之助は裏山で動物相手に遊び、善逸は隠れて盗み食いをしていたとか。更に善逸は、菓子のつまみ食いに対して、アオイから叱られていたらしい。

 

 

 全ての訓練を成し遂げた炭治郎は、戻ってきた善逸と伊之助に自分の訓練方法を教えていた。

 

「こうしてこう、それでこう!ぐっとやってぐぐぐーってやるんだ!」

 

「「………」」

 

「(炭治郎……お前もカナ姉と同じタイプか)」

様子を見守っていた一夏はあまりの説明の下手さに頭痛を覚えた。

 

そして、カナヲを引き取った当時を思い出す。

 

 

 

 

 

 

『いい天気だ、こんな平和がずっと続けばいいんだけどな……ん?』

 

『カナヲ、それはポーンと投げて、ポーンってとるのよ」

 

『姉さん、それ全然説明になってないから!』

屋敷内を歩いていたら、部屋の中から声が聞こえてきたので、一夏は襖の戸を開け中に入る。

 

『カナ姉、何やってるんだ?』

 

『あっ、一夏!今、カナヲに銅貨の弾き方を教えてるの!でも、中々上手く出来なくて…』

 

『姉さんの説明がいけないのよ!』

カナヲは銅貨を弾くが、上手く真っ直ぐ上がらずあらぬ方向に飛んでしまう。それを一夏は拾い、カナヲに手渡す。

 

『これ、どのくらい続いてるんだ?』

 

『えーと…………一時間くらい?』

 

『私はさっき来たのよ……姉さんは説明が下手なんだから、そりゃこうなるわよね』

 

『カナヲ、もう少し力を入れて弾いてみて!』

 

『まだやるの!?』

カナヲはカナエの言われた通り力を入れて弾くと勢い良く飛び……

 

『………』

 

 

 

 

 

 

 

一夏の右目へ綺麗に当たった。

 

 

『*#@¥$€%÷ッ〜〜!!』

 

一夏は余りの痛みに悶絶し、声にならない声が蝶屋敷に響き渡った。

 

 

『い、一夏ぁーーっ⁉︎/い、一夏⁉︎』

 

この後、しばらく一夏の右目は、開けない程真っ赤に腫れ、しのぶの診察結果、数日間は物がまともに見れないと言われた。最後に、しのぶがカナヲに銅貨の弾き方を教えたら、すぐに出来る様になったことを付け加えておく。

 

 

 

『はぁ、まさかこんな事になるなんてな』

右目に眼帯を着けた一夏は、縁側に座って寛いでいた。

 

『明日には視力が戻るみたいだが、視野が狭まって慣れないな…最悪の事態を予測する事が大切だって身に染みたよ」

一夏は独りごちた後、音楽を聴きながら空を眺めていると、彼女の気配を感知し、イヤホンを外す。

 

『いるんだろカナヲ?出てきていいよ』

開いた襖の奥から顔を覗かせているカナヲ、その顔は何処か不安げな様子だった。

 

『…………』

 

『どうした、カナヲ?』

 

『ご、ごめん……なさ、い』

 

『え……』

カナヲの突然の謝罪に驚く。カナヲを引き取って一週間近くになるが、彼女の声を聞いたのは初めてだったからだ。

 

『ごめんなさい、ごめんなさい』

カナヲは体を震わせながら何度も謝る。しのぶから聞くと、カナヲの身体は痣があったらしく、日常的に暴力を振るわれているのがわかった。一夏はカナヲのそばに駆け寄る。

 

『…カナヲ』

カナヲは体をビクッとさせ目を瞑る。「殴られる」……そう思っていたが、お日様のような温もりに包まれた。

 

カナヲが目を開けると、目線を合わせた一夏がカナヲを抱きしめていた。そして、安心させる様に背中をぽんぽんと優しく叩く。

 

『目は大した事はないから大丈夫だよ。あれはカナヲが悪いわけじゃない。避けられなかった俺も悪いからな。心配してくれてありがとう、カナヲ』

この時、カナヲが銅貨を使わず自分から謝りに来たことを一夏が知るよしも無かった。

 

 

 

 

 

 

 

「(少しだけ手助けするか…)」

 

過去を思い出しながら、流石にそれではいけないと思い、助け船を出すことにした。

 

 

「炭治郎が会得したのは全集中・常中という技だ。全集中の呼吸を四六時中やり続けることによって、基礎体力を飛躍的に上げることができる」

 

 

「その通りです。まぁこれは基本の技術というか初歩的な技術なので、できて当然ですけれども、会得するのは相当な努力が必要ですよね。」

 

 

「しのぶ……」

 

いつの間にか一夏の隣にはしのぶがいた。

 

 

しのぶは教えるのが、かなり上手だから心強い。

 

 

 

「まぁ、できて当然ですけれども!仕方ないですできないなら、しょうがないしょうがない。」

伊之助の肩を数回叩くと、伊之助はしのぶの言葉に腹が立ったのか青筋をつくる。

 

 

「はあ゛ーーーん!?できるっつーの、当然に!!舐めんじゃねぇよ!乳もぎ取るぞコラ!!」

 

なるほど、やる気を引き出すためにわざとそう言ったのか。相変わらず扱い上手だ。だが…………。

 

「嘴平…」

 

「ああ!んだよ赤羽…「具体的には…誰の物をどうもぎ取るつもりなんだ?女性にそういう言い方はいけないと思うぞ?」……ゴ、ゴメンナサイ」

一夏は笑顔で伊之助の肩を掴み問いかけるが、一夏の笑みは笑っている様で笑っていない笑みだった。伊之助は一夏の底知れない何かを感じ逆らえず、片言だが謝罪する。

 

「(あの伊之助が黙り込んでしまった……)」

炭治郎は一夏から感じる匂いで冷や汗をかく。

 

 

 

「頑張ってください、善逸君!一番応援していますよ!」

 

「っ!は、はぃいいいいい!!」

しのぶは我妻に対し、手を握りしめて激励し、これまたやる気を引き出していた。

 

「(我妻、めちゃくちゃ嬉しそうだ。まぁ、俺もしのぶの頼みは何故か断れないが)」

しのぶが一夏に対する頼み事はいつも上目遣いのため一夏は断ることが出来ない。なんだかんだで一夏はしのぶには甘い。

 

 

「うふふ、二人共…やっとやる気を出してくれたみたいね」

 

「カナ姉」

 

「しのぶも大胆なことするわね」

 

「ああでも言わないと、あの二人はやる気を出さないわよ。あの二人にはあれくらいが丁度いいのよ」

 

そんなこともあり、九日程掛かったが、善逸と伊之助は見事に全集中・常中を会得できた。

 

いろいろあったが、三人の機能回復訓練は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

三人が訓練が終えた翌日、一夏は現在ある場所にて、日の呼吸を行っていた。

一夏の両手には“二振りの日輪刀”が握られている。右手には愼寿郎の日輪刀を、左手には自身の日輪刀を……一夏は今二刀流の状態で技を繋げようとしているのだ。

 

 

 円舞

 

 碧羅の天

 

 烈日紅鏡

 

 灼骨炎陽

 

 陽華突

 

 日暈の龍・頭舞い

 

 斜陽転身

 

 飛輪陽炎

 

 輝輝恩光

 

 火車

 

 幻日虹

 

 炎舞

 

二振りの日輪刀を使い一夏は型を繋げていく。

 

「(日の呼吸 円環)」

日輪を体現させるかの様な動き…拾参ノ型・円環は円舞から炎舞まで全ての型を繋げ正に日輪を体現させる型だ。一夏は、円環まで繋げると、更に二振りの日輪刀を振るう。

 

しかし一夏は途中で手を止めた。

 

「(だめだ、円環から更に繋げることが出来ない)」

 

一夏は今、二刀流で円環から更に繋ぐ新たな日の技を作り出そうとしていたのだ。

 

「(縁壱さんは拾参ノ型で終わりとは言ってなかった。円環から更に繋ぐ事は出来るはずだ)」

 

額に汗をにじませながら、一夏は無我夢中で日の舞を行う。

 

 

 

 

そして、気づけば、辺りは日が暮れていた

 

「はぁ…はぁ、今回も無理だったか」

一夏は背を木に預けて座り込み、水筒の水を飲み干す

 

「もうこんな時間か、時が経つのは早いな」

一夏は畳んで置いていた羽織を着て蝶屋敷に戻ろうと足を進めた時、鎹鴉があらわれ、一夏の周りを飛翔する。

 

 

『カァー!煉獄杏寿郎カラ伝令!無限列車ニテ‼︎行方不明者四十人以上、隊士モ三人消息ヲ絶ッテイル‼︎共ニ同行ヲ頼ム!』

 

「列車?しかも柱同士の任務となると…十二鬼月が絡んでる可能性があるのか?あの杏寿郎が同行を願うと言う事は、何かただならぬ事態になりそうだな」

 

 

鴉の伝言は杏寿郎からの連絡で、一夏は、任務の準備をする為、蝶屋敷へと駆け出す。

 

産屋敷夫妻とにちかとひなき、珠世を含め生存させるかさせないか

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