「伊之助!!もうすぐ打ち直してもらった日輪刀が来るって!」
「ほんとか!?」
「うん、今カラスに聞いた!」
炭治郎の言葉を聞いた伊之助は、『急げ急げ』と言いながら、二人で表へ出る。
すると、ひょっとこ面の二人が遠くから歩いてくるのが見えた。一人は炭治郎と一夏の刀を担当していた鋼鐵塚だった。
「鋼鎧塚さん!! おーい!」
嬉しそうに炭治郎は鋼鐵塚に呼び掛ける。
「おーい、おーい、鋼鎧塚さーん!!」
呼び掛ける炭治郎に対して、二人は何かを話している。そして鋼鐵塚はもう一人の刀鍛冶に荷物を預けた。
「ご無沙汰してまーす!」
そして、炭治郎が鋼鎧塚さんと呼ぶ刀匠が、炭治郎の方へ一直線に向かってくる、
「お元気でした……か……?」
手に包丁を構えて。
それに気づいた炭治郎は、表情が固まった。鋼鐵塚は炭治郎へ本気で斬りかかる。
「死ねやぁぁぁ!」
「ギャァァッ⁉︎」
その光景には、思わず伊之助も固まる。
「は、鋼鐵塚さん……」
「よくも折ったな、俺の刀を、よくも、よくもォ!!」
「す、すみません!!でも、本当にあの、俺も本当に死にそうだったし、相手も凄く強くて・・・」
「違うな!関係あるもんか!お前が悪い、全部お前のせい!お前が貧弱だから刀が折れたんだ!そうじゃなきゃ俺の刀が折れるもんか!現に日柱なんかなぁ!あいつの刀を最後に見たのは、刀に『悪鬼滅殺』の文字を掘った時だけだ!一夏はなぁ、お前以上に大切に扱ってんだよ!」
「ほ、ほんとにすみません!」
炭治郎の頬を何度も突いていたが、鋼鎧塚の怒りは収まらない。
「殺してやるぅぅー!」
「うわああああっ⁉︎」
罵りながら、包丁を振り回しながら炭治郎を追い回した。カナエ、しのぶ、アオイが外の騒ぎに気付いて、出てくるほどに。
「何でしょうかあれ?」
「……全く、あの人も変わってないわね」
しのぶとアオイは鋼鎧塚が一夏の担当刀鍛冶の為、顔見知りで、変わりない姿を見て呆れていた。
「新しい訓練かしら?」
「「違うでしょ!」」
二人はカナエの外れた発言に突っ込む。
◇
そして鋼鎧塚が落ち着いた後、刀鍛冶の二人は蝶屋敷の客間に案内される。
「まぁ、鋼鎧塚さんは情熱的な人ですからね。人一倍刀を愛していらっしゃる。刀鍛冶の里でも中々いません」
「……そう、ですよね」
「………あ、申し遅れました。私は鉄穴森鋼蔵と申します。伊之助殿の刀を打たせて頂きました。戦いのお役に立てれば幸いです」
伊之助の手に取った日輪刀の色が変わっていく。
「あぁ綺麗ですね、藍鼠色が鈍く光る。渋い色だ、刀らしいいい色だ」
「……」
その光景には、炭治郎も笑顔になる。
「良かったな、伊之助の刀は刃こぼれが酷かったから……」
その言葉を聞いて、鉄穴森も嬉しそうに満足そうに頷く。
「握り心地はどうでしょうか?実は私、二刀流の方に刀を作るのが初めてでして……」
すると、伊之助は無言のまま庭へ歩き出す。
「? 伊之助殿?」
鉄穴森の声には反応せず、しゃがみこんで、何やら石を吟味している。
「伊之助?」
三人が見守る中、手頃な石を見つけた伊之助は、何の躊躇いもなく刀の刃へ石を叩きつけた。
──ガチーン!ガチーン!
その光景には、その場にいた全員が飛び上がった。
「「「あああーーーーっ!?!?」
「よし!」
折角打ってもらった日輪刀の刃を、ボロボロにした伊之助は、満足そうに掲げる。
それを見ていた温厚な鉄穴森も、ついにぶち切れる。
「ぶっ殺してやるぞ、この糞餓鬼!!何晒しとんじゃいコラッあ゛あ゛っ⁉︎」
「すみません、すみません!!」」
炭治郎が、鉄穴森を止めながら謝る。
そんな光景を意に介さず、伊之助はもう一振りの日輪刀にも同じように石を叩きつける。
「テメェー!もう我慢ならねぇ!」
「すみません!すみません!」
炭治郎は必死に鉄穴森を押し留める。
その後なんとか鉄穴森を落ち着かせたが、二人が帰る際も、炭治郎は後ろ姿が見えなくなるまで頭を下げて謝っていた。伊之助はそんな彼の服の裾を握って佇んでいた。
◇
その後、蝶屋敷の診察部屋にて、炭治郎はしのぶから最終診察を受けていた。
「はい、あーん」
「あーん」
「うん、顎は問題ないですね」
しのぶの言葉に、炭治郎は安堵する。
「すみません、お見送りは出来ませんが、これからも頑張ってくださいね」
「はい! ありがとうございます!」
笑顔で返事をする炭治郎は、気になっていたことを思い出し、声を上げた。
「あ、しのぶさん。最後に一つ聞きたいことがあって・・・」
「何でしょう?」
「“ヒノカミ神楽”って、聞いたことありますか?」
「ありません」
笑顔で即答され、炭治郎はアワアワする。
「えっ、あっ、じゃ、じゃあヒの呼吸とか・・・」
「炭治郎君、それはどちらの“ひ”を言っているのでしょうか?」
「えっと、炎の“火”です」
「そちらの火の呼吸はありません」
「えっとですね、カクカクシカジカデ」
「ふむふむ」
炭治郎は最初から事情を説明した。
家に代々伝わる神楽で技が出せたこと、そこには火が見えたこと……
炭治郎はあまり説明が得意な方じゃないため、苦労していた。しかし炭治郎はなんとか説明し、しのぶの方も根気強く聞いた。
「マルマルウマウマ。なるほど、何故か竈門君のお父さんは“火”の呼吸を使っていた。“火”の呼吸の使い手に聞けば、何か分かるかも知れない、と・・・ふむふむ、竈門君の言っていた“火”の呼吸はありませんが、日輪の“日”……“日”の呼吸ならあります」
「日輪の日……ですか」
炭治郎の質問には、しのぶも困り顔になる。
「日の呼吸は始まりの呼吸とされている技術です。ただ、詳しい内容は私の口からは話せません。日の呼吸を使っている本人に聞いた方がいいでしょう」
そう言うと、しのぶは窓際に止まる鴉へ目を向けた。
「一夏さんはちょうど炎柱の煉獄さんと同じ任務に出ています。鴉を使って連絡しておきましょう。一夏さんと煉獄さんならヒノカミ神楽と日の呼吸の繋がりについても何か知っているかもしれません。」
「そうですか!ありがとうございます!」
「炭治郎君、決して無理はなさらないでください。怪我と言うのは治りかけと、治った後が一番危ないですからね」
「はい、わかっています!」
それから、しのぶの計らいによって、一夏へ事情を取り次いでもらった炭治郎は、しのぶと別れ廊下を歩いていた。
「(さあ、出発だ!ん?誰か来る……)」
炭治郎は、匂いで人の気配を感じ取った。すると、丁度曲がり角で、人とぶつかった。
「(避けたのにぶつかってこられた……)」
それよりも、炭治郎は気になることがあり、ぶつかってきた彼の方を振り返った。
「(あれ?今の人は、最終選別の時の……白髪の女の子を殴りつけた人だ!)」
ムムムッとしながら後ろ姿を見やる。それ以上に、疑問がたくさん浮上する。
「(短期間で、すごく体格に恵まれてる……。それに、なぜここへ……?でも、何だろう、匂いが……?)」
色々と気にはなったものの、とにかく炭治郎は声をかけようと口を開いた。
「久しぶり!!元気そうで良かった!!」
けれど、彼は無視して先へ行ってしまった。
「あら、炭治郎君…どうかしたの?」
「カナエさん、いえなんでもないです。後、ここまでお世話になりました!禰豆子の面倒も見てくれたみたいで…」
カナエは炭治郎が蝶屋敷に滞在している間、ほぼ禰豆子の監視……カナエからすると「交流」という形で面倒を見ていた。
「平気よ、私も有意義な時間を過ごせたわ。あんなに甘えられると昔のしのぶを思い出したわね〜」
「俺は長男なので、弟達からも甘えられていました」
「あら、私達、何処か似たところがあるかも知れないわね。それから炭治郎君はこれから任務よね?お見送りはできないんだけど、気をつけてね」
「はい!ありがとうございます」
◇
「……」
「忙しい中、俺たちの面倒見てくれて、本当にありがとう!お陰でまた、戦いに行けるよ!」
炭治郎は挨拶をするためにアオイのもとにいた。
「あなたたちに比べたら、私なんて大したことはないので、お礼など結構です。選別も運良く生き残っただけ、後は恐ろしくて戦いに行けなくなった腰抜けなので……」
アオイからは、情けなさや葛藤、沢山の苦しい思いの匂いが溢れていた。
「そんなの関係ないよ!俺を手助けしてくれたアオイさんはもう俺の一部だから!アオイさんの想いは俺が戦いの場に持っていくし!!」
「………」
ふわりと、優しい風が吹き抜ける。そんな風と共に、アオイの不安を炭治郎が吹き飛ばす。
「また怪我したら頼むねー!」
「……」
それだけ言うと、炭治郎は笑顔で走っていった。
「ふふっ、一夏さんと同じ言葉」
『関係ないさ、俺たちはいつだって“ひとつ”だ。アオイの想いは俺達が受け継ぐ。アオイは腰抜けなんかじゃない。戦いにはいろんな形がある。どこにいたって、どんな形だって、俺達は一緒に戦ってる』
アオイは思わず笑みを浮かべた。
◇
「あ、いたいた!カナヲー!」
炭治郎は縁側に向かうと座って空を眺めているカナヲを見つけ近寄る。
「俺達出発するよ、いろいろありがとう」
「………」
「………」
カナヲは無言で笑みを浮かべるだけなので、炭治郎はどうしたら良いか分からなかった。すると、突然カナヲは銅貨を取り出し弾く。手の甲で受け止め出た面は裏だった
「師範の指示に従っただけ。お礼を言われるような事はしてないわ。さようなら」
「(喋ってくれた!)今投げたのは何?」
「さようなら」
炭治郎は喋ってくれたことが嬉しかったのか銅貨について聞く。
「今のは何、お金?表と裏って書いてあるね。なんで投げたの?」
「さよなら」
「あんなに回るんだね」
「……指示されてない事はこれを投げて決めるの。今あなたと話すか話さないか決めたの。話さないが表、話すが裏だった。裏が出たから話した。さよなら」
「……なんで自分で決めないの、カナヲはどうしたかった?」
「……家族以外はどうでもいいの。だからこれで決めてたの」
「うーん、カナヲは心の声が小さいんだろうな。それ、貸してくれる?」
「え?・・・うん、あっ・・・」
「ありがとう!」
ニコッと笑いながら、カナヲから銅貨受け取ると、炭治郎は庭の広い所へ出た。
「よし、投げて決めよう!」
「何を?」
「カナヲがこれから、自分の心の声をよく聞くこと!」
そう言うと、炭治郎は、空高く銅貨を飛ばした。
「わー!と、飛ばしすぎた!!」
カナヲは銅貨の行く末を見守る。
「表、表にしよう!!表が出たら、カナヲは心のままに生きる!」
風に煽られ、炭治郎がコインを見失う。
「わっ、あれ、どこ行った…?あった!おっとっと!」
炭治郎はなんとか銅貨をキャッチする。
「取れた、取れた、カナヲ!」
何とか手の甲で銅貨を受け止めた炭治郎は、にこやかにカナヲの元へ走って戻る。
そして、出た面は
「表だーーっ!」
表が出た炭治郎はピョンピョン跳び跳ねた。そして、炭治郎がカナヲの手を包み込む。
「カナヲ、頑張れ!!人は心が原動力だから、心はどこまでも強くなれる!!」
「………」
ポカンと炭治郎を見つめるカナヲ。
「じゃ、またいつか!」
「な、何で表を出せたの?(投げる手元は見てた・・・小細工はしてなかったはず……)」
走り去る炭治郎を、カナヲは呼び止めた。
カナヲに呼び止められた炭治郎は
「偶然だよ!それに裏が出ても、表が出るまで何度でも投げ続けようと思ってたから!」
ニコッと笑った
「……!」
炭治郎の笑みにカナヲは、一夏の姿が重なって見えた気がした。炭治郎の笑みは、初めて一夏に抱えられた時の日輪のような笑みに似ていたから。
「(一夏……兄さん)」
「元気で~!」
「………」
それだけ言うと、炭治郎の姿は見えなくなった。
カナヲの花の蕾が、開き始める瞬間だった。
「あらあら〜、これはただならぬ予感がするわ!」
偶然屋根の上から聞いていたカナエが二人の会話を笑顔で見守っていた。
隊服に着替えた炭治郎達が門の前に出ると、きよ達が待っててくれた。
「うえーん」
「皆さん、お達者でーっ」
「わあぁぁん」
善逸は号泣し、伊之助は猪頭で表情を隠したまま沈黙し、炭治郎はホロッとしながら、きよ達との別れを惜しんだ。
────────
────────────────
「えーーっ、まだ指令来てなかったのかよ!!居て良かったじゃん、しのぶさんちに!!」
善逸の不満な声がこだまする。
「いや……治療終わったし、一ヶ所に固まってるより……」
「あんな悲しい別れを、しなくてよかっただろ!?」
「いや、指令が来たとき動きやすいように……あと、一夏さんに…」
炭治郎が理由を述べても、善逸は『バカバカ』と騒ぎながら、叩きまくる。
「まぁまぁ、善逸っ」
そんな善逸をなだめていると、急に伊之助が騒ぎ出した。
「オイ!」
「今忙しい」
「オイ!!」
「何だよ、うるさいな!」
「なんだありゃ!なんだあの生き物!!」
さっきまで人の多さに驚き、大人しくしていた伊之助が大声を上げて騒ぎ出す。
そして、伊之助の先には巨大な鉄の塊、汽車があった。
「こいつはアレだぜ……!この土地の主!この土地を統べるもの!この長さ,威圧感間違いねぇ!今は眠ってるようだが油断するな!」
「いや、汽車だよ。知らねぇのかよ」
「落ち着け!」
「いや、お前が落ち着け!」
「まず俺が一番に攻め込む!」
「だから汽車だって!」
「落ち着くんだ伊之助。この土地の守り神かもしれないだろ?それに急に攻撃するのはよくない」
「だから汽車だってこの天然!列車分かる?乗り物なの、人を運ぶの!」
「猪突猛進!」
伊之助が汽車に向かって頭突きをし始める。
「おいバカやめろ!恥ずかしいだろ!」
「何してる貴様ら!」
すると、騒いでた所為で駅員たちに見つかった。
「こいつら刀持ってるぞ!」
「警官だ!警官呼べ!」
「ゲっ!やばいやばいやばい!」
善逸は汽車に頭突きをしてる伊之助の首根っこを掴み、炭治郎も引っ張りながら、駅員から身を隠す。
身を隠し、ほとぼりが冷めたのを確認して再び汽車の近くに向かう。
「政府公認の組織じゃないから堂々と刀を持ち歩けないんよホントは…。鬼がどうのこうの言っても信じてもらえないし、混乱するだろ」
「一生懸命頑張ってるのに……」
「まぁ仕方ねぇよ。とりあえず刀は背中に隠そう」
善逸の案に乗り、炭治郎達は羽織の背中側に隠す様に刀を仕舞う。
伊之助は上半身裸なので、刀を背中に仕舞い、その上から布を羽織らせて誤魔化すことにした。
大勢で動くとまた目立ちそうなので、善逸に切符を買ってきてもらい、炭治郎達は善逸が戻ってくるまで大人しく待つことにした。
数分後、切符を買ってきた善逸と合流し、汽車に乗り込む。
まだ騒ぐ伊之助を落ち着かせつつ、柱達を探すことにした。
「炭治郎、柱の織斑さんと煉獄さんはこの列車に乗ってるんだよな?俺、織斑さんは蝶屋敷で見たからわかるけど、煉獄さんの顔知らないよ」
「うん、鴉からの連絡で聞いたから間違いないと思う。二人の匂いは覚えてるから大丈夫」
柱を探して車両内を歩き回り、次の車両に入った時だった。
「うまい!!」
列車の一角から凄く大きな声が聞こえた。炭治郎達は声のする方へと向かう。
「うまい!うまい!うまい!」
「杏寿郎…もう少し声を落としてくれ。他の乗客に迷惑になってるぞ」
「む!?すまない!!!」
「……全く」
「あの人が炎柱?」
「うまい!」
「うん…」
「うまい!うまい!」
「ただの食いしん坊じゃなくて?」
「…うん」
そこには、先程から「うまい!」と大声で連呼しながら大量の駅弁を食していた炎柱・煉獄杏寿郎がいた。隣には同じく駅弁を食べている日柱・織斑一夏の姿もあった。
「あの…すみません」
「ん?炭治郎に我妻じゃないか、どうしたんだ?」
「あっ、いや、その、一夏さん達に用があって…」
「ああ、そう言う事か。だがすまない、今は食事中でな、食べ終わってからでいいか?」
「は、はい、わかりました!」
その後、杏寿郎の隣に炭治郎が座り、一夏は向かいの席に座る。通路を挟んで向かいの席に善逸と伊之助が座った。
「うむ!そういうことか!」
杏寿郎は、炭治郎からヒノカミ神楽の話を聞き、そう答えた。
「日の呼吸ならまだしも、ヒノカミ神楽と言う言葉は初耳だ!それに君のその耳飾り!俺が以前に読んだうちの昔の炎柱当主の手記に出ている一致する部分は多い!君の話したヒノカミ神楽は、一夏が使う日の呼吸で間違いないだろう!ここで俺が話したいところだ…詳しい内容は一夏に聞くといい!」
「え!?は、はい……」
すると杏寿郎は、前を向いたまま再び口を開く。
「俺の継子になるといい、面倒見てやろう!」
「いや、あの、どこ見て言ってるんですか!?」
「炎の呼吸は歴史が古い!」
炭治郎と杏寿郎のやり取りを、隣の席から聞いてた善逸はなんとも言えない気持ちで聞いていた。
「(変な人だな……)」
「(話が噛み合っていないぞ、杏寿郎…、まぁ、杏寿郎らしいがな)」
とうとうヒノカミ神楽と関係のない話をし始めた杏寿郎に、一夏は苦笑する。杏寿郎は、そのまま話を進める。
「炎と水の剣士は、どの時代でも必ず柱に入っていた。炎、水、風、岩、雷が基本の呼吸だ。この五つの呼吸は全て日の呼吸から派生されたもので、他の呼吸は、それらから枝分かれしてできたもの。霞は風、蟲と花、蛇は水、音は雷、恋は俺の使う炎から派生している」
炭治郎は、いつの間にか真剣に杏寿郎の話を聞いていた。
「溝口少年、念のため確認するが、君の刀は何色だ!」
「えっ!?俺は竈門ですよ、刀の色は黒です」
「黒刀か、間違いなく日の呼吸だな!」
「え、黒色が日の呼吸の…?」
「うむ!黒刀の剣士が柱になったのを一夏以外いなかったらしい!当時はどの系統を極めればいいのかも分からなかったからな!先程も言ったが、日の呼吸については一夏に聞くといい!君と同じ黒刀の剣士だからな!」
その時、ガタンと列車が揺れた。
「わっ!」
「動き出したか」
──ガタン、ガタン、ガタン
「あの、一夏さんはヒノカミ神楽と日の呼吸の繋がりについて何か知っていますか?」
「ヒノカミ神楽と日の呼吸の繋がり、知っているぞ」
「え⁉︎本当ですか!」
「ああ、だが確認の為に、カグラ技の名前、全部聞いてもいいか?」
「はい!わかりました」
そして炭治郎はヒノカミ神楽の技を一夏に話し説明した後、一夏は日の呼吸とヒノカミ神楽の繋がりを説明する。
今から四百年以上昔、戦国の世に、鬼舞辻無惨をあと一歩の所まで追い詰めた始まりの呼吸の剣士がいたこと、そして、剣士は無惨を仕留め切れなかったこと、その後、責任を問われ鬼殺隊を追放され、その後炭売りの男と出会い、自身の呼吸と耳飾りを託し、日の呼吸は神楽として受け継がれる形で今も遺っていることを説明する。
「というわけだ。何かわからないところはあったか?」
「ヒノカミ神楽が、日の呼吸と同一の呼吸。その、一夏さんは日の呼吸を誰に教わったんですか?」
「……悪いが今は言えない。俺の素性に関してはお館様と柱、一部の隊士しか知られていない。それと炭治郎、前に言った継子の件は……」
「は、はい!是非お願いします!俺ももっと力をつけたいんです!」
「いい返事だ。本格的に指導を始めるのは任務が終わってからだ」
「よもや!あの一夏が継子を取るとは…よもやよもやだな!」
杏寿郎はまさか炭治郎に継子に誘っていることを聞いて驚いている様子だった。
「うおおおおお!すげぇ速ぇぇぇ!!」
汽車の速さに伊之助は大声を上げて、窓を開け、身を乗り出した。
「俺、外出て走るから!!どっちが速いか競争する!」
「危ないだろ馬鹿猪!馬鹿にも程があるぞ!」
そんな伊之助を善逸は全力で止めていた。
「危険だぞ! いつ鬼が出るかわからないんだ!」
「気を抜くなよ」
「え? 鬼? 出るの? 」
「うむ!!」
「それで俺たちも来たんだ」
「でんのかーーーい!! 嫌ぁぁーー!! ここに出るんかいい!! 俺、降りる!!」
「動き出した以上終点までは止まらない」
「嫌ぁぁぁ!!誰か俺を守ってくれよぉぉぉ!」
善逸は涙を流し混乱しているが、炭治郎は二人に話しかける。
「煉獄さん。柱の煉獄さんと一夏さんが出るってことは、そんなに危険な鬼なんですか?」
「うむ!短期間のうちにこの汽車で四十人以上が行方不明となっている!数名の剣士が送り込まれたが全員消息を絶った!だから、柱である俺達が来た!十二鬼月を視野に入れたほうがいいとの事だ!」
「はぁーーー!十二鬼月⁉︎なるほどね!俺、降ります!」
「だから終点まで止まらないって……なにかあった時は守る。だけど、できるだけ自分の身は自分で守りなさい、いいな?」
「なんでそんな冷静でいられるのさ、異常者達は⁉︎頼むよ〜!列車から降ろして〜!!」
「どうしても降りたいなら、窓しかないな。“運が良ければ”、骨折で済む」
「じゃあ、“運が悪かった”ら⁈」
「そういうことだ。どちらを選ぶにせよ『生きるか死ぬか』が付きまとう。今は俺たち柱や仲間がいるんだ。慌てなくていい。落ち着いて、ゆっくり考えなさい、『自分はどうするべきか』を」
必死で降ろしてくれと泣き叫ぶ善逸に一夏は冷静に対応する。
そんな時、車両の扉が開き、痩せこけた駅員が現れた。
「切符を………拝見……致します………」
「なんですか?」
「車掌さんが切符を確認して切り込みを入れてくれるんだ。炭治郎も切符を車掌さんに渡しなさい。ほら、我妻も席に戻って切符を……」
そう言って一夏と杏寿郎は切符を車掌に渡す。
炭治郎達もそれに倣い、切符を差し出す。
「拝見しました…………」
全員分の切符を確認した車掌は、切り込みを入れる……
しかし、車掌の言葉を聞く者は居ない。
車両に居た全ての人間が眠りに就いてしまったのだから。車掌はそれを確認してから、次の車両へ移動して行った。
◇
一夏が瞳を開けると、ある場所の前に立ち尽くしてした。
「……ここは、篠ノ之神社」
一夏の呟きが、風と共に消え去っていく。それは一夏の生まれ育った、見慣れた風景だった。
「俺は、大正時代にいたはずじゃ……?」
そして次の瞬間、一夏は目を丸くする。
「何をボーッとしているんだ、一夏?」
「いっくん!こっちこっちー!束さんと一緒お話しよ!」
「千冬……姉、束さん?」
声をした方へ振り向くと、そこには実姉織斑千冬と幼馴染の篠ノ之束の姿だった。
産屋敷夫妻とにちかとひなき、珠世を含め生存させるかさせないか
-
させる
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原作通り
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作者に任せる