「……ここ、は?」
一夏は目を開ける。そして今まで見ていた夢とは違い、夕焼けの空が、どこまでも果て無く続く水面の上にいた。
「俺は確か、鬼を斬って…っ!そうだ、しのぶとカナエさんは!」
「ここにはいない。ここにいるのは…君と私だけだ」
瞬きをしたその刹那、“彼”が一夏の前に立っていた。額の痣,太陽を象った耳飾りが特徴的な“一夏の姿をした”侍がいた。
違いがあるといえば、髪先が赫みを帯びており、瞳の色も赫色だと言う点だ。
「貴方は…」
「こうやって話すのは、初めてだな…織斑一夏、この姿は私の今の仮の姿であり、君が成る姿でもある」
「俺が成る姿……あなたの存在は、ずっと感じていた……ここはいったい?」
もう一人の一夏の周りに炎が渦巻く。炎が消えると、一夏が夢で見ていた耳飾りの侍の姿に変わっていた。
「やはり、私に気づいていたか。ここは君の内面でもある場所だ。私は何者でもない不完全な存在。私は大切なものを守れず、人生において為すべきことを為せなかった者だ。このような私が呼ばれるべき名などない。私はただの亡霊に過ぎない」
「………」
もう一人の俺の瞳は澄んでいて、悲しい色に満ちていた。
「君は、私の生まれ変わりでもある。心当たりはあるはずだ」
「ああ、あなたが出てくる夢をよく見ていた。時系列はバラバラだったけど」
「そうか、こうやっていられるのも限りがある。君には託しておくものがある。受け取るといい」
すると耳飾りの侍が自身に手を向けると、球体状の光が一夏の中に入り込む
「うっ!」
一夏は目を押さえた。頭の中にいろんな光景と記憶が流れ込んできたのだ。
鬼殺隊,柱,呼吸,鬼,鬼舞辻無惨 、いろんな情報が流れ込んでくる。
「不安に感じることはない。今の私は…君でもあるからな」
「…そうですか」
一夏はゆっくり目を開ける。
一夏は水面から反射している自分を見て、変化に気づいた。黒髪なのは変わらないが、髪先だけ赫みを帯びていた。瞳の色はえんじ色から、赫色の瞳に変化していた。
「あなたが言っていた変化、これの事だったのか」
「ああ、いずれにせよ、私は消える存在。いつかは一夏と同化し、私と言う存在は消えるだろう」
「………」
「どうした、一夏?」
「俺はあの時、外に出なかったら…少なくとも、おじさんとおばさんは死なずに済んだかもしれない……力を持っていたはずなのに、何一つ、恩を返すことができなかった!!」
一夏は悔しさをあらわにするが、喪った命はもう戻らない。自身も嫌と言うほどわかっていた。すると彼は一夏の頭を優しく撫でた。一夏は突然の事に顔をあげる。
「一夏、一つだけ言っておく、自分が命より大切に思っても、他人はそれを…容易く踏みつけにできる。だが、君は私とは違う。きっと君なら私のできなかったことができる。君は私でもあるが、それは断じて違う。君は君だ……、それだけは…覚えておいてくれ」
「…… “縁壱”、さん」
その手は温かかった。そして、頬に溢れた涙が伝っているのに気づいた。それを自覚した途端、俺の心の中で何かが決壊する。押し殺していた感情が、溢れ出てきていた。
「はは。自覚して涙を流したのはいつぶりだろうな。それに、今まで聞き取れなかったあなたの名前が…ようやくわかった。呼ぶべき名はちゃんとあるじゃないですか……あの、改めてだけど、あなたの名前を、聞かせてくれませんか?」
「…… 継国、縁壱だ」
耳飾りの剣士、“ 継国縁壱”は少し驚いたように自身の名を一夏に告げる。
「縁壱……やっとあなたの口から聞けた。こっちも改めて、織斑一夏です。そういえば、しのぶとカナエさんは無事なのか?」
「彼女達は無事だ。君は鬼を倒した後、気を失ったのだ。その後は鬼狩りの剣士が来て君達を保護している状態だ」
「そうか…よかった」
「ふふっ、一夏は、二人の事が…とても大切なのだな」
「はい、俺にとって二人は…居場所がない俺に…光をくれた、太陽のような存在です」
「そうか、少し…羨ましい気もするな」
「縁壱さん」
一夏は先ほど流れ“混”んできた記憶から、彼の妻の姿と名前も思い出していた。
俺は、何を言えばいいのかわからなかった。いくら彼の生まれ変わりとはいえ、人格も見た目も違う。
「暫しの別れだ。君が私と同じ事にならないよう…この場で祈っている」
縁壱は笑みを浮かべる。一夏もつられて笑みを浮かべると、意識が暗転した。
◇
「…………」
目が覚めた一夏は、上半身を起こす。自身を見ると布団に寝かされていたことに気づいた。体を動かしてみると、異常もない。背中の痛みもない。
「いったい、どのくらい寝ていたんだ……俺」
辺りはもう夕方だった。すると一夏は右手に温もりを感じ、温もりのした手の方を見やる。
「…………しのぶ」
しのぶが、自分の手を握って羽織をかけられて隣で眠っていた。目の下は赤く涙を流していた事がわかる。
「心配…かけてしまったみたいだな」
一夏はしのぶの頬を撫ぜる。そして周りは自身としのぶしかいない。
「状況がわからないな…おそらくこの家の人にお世話になってはいるだろうけど…」
長い時間寝ていた為、状況がわからなかった。一夏は仕方なくしのぶの体を揺する。
「しのぶ…しのぶ…起きてくれ。」
二度揺すると、しのぶは目をゴシゴシと擦りながら、寝ぼけ眼で一夏の顔をぼうっと眺めた。
「………いち、か?」
「ああ、一夏だよ、おはよう…しのぶ」
暫く見つめあっていると、ブワッ!としのぶの瞳から涙が溢れ出し、次の瞬間には、一夏に思い切り抱きつき、大泣きした。
わんわんと泣くしのぶに対して、一夏は、すぐに彼女の背に手を回し、頭を撫でた。
「…いちか、い、いちかっ…いちかぁ…っ!」
「…心配させて悪かった…無事でよかった、しのぶ…」
グズグズと啜り泣くしのぶに、一夏は手に力を入れて安心させるように抱きしめる。
「…二週間も目、覚まさないしっ…ずっと、このままなんじゃ、って…っ…!」
「に、二週間も寝てたのか、俺…」
そんなに寝ているとは思っていなかった一夏に、しのぶの力が更に強くなる。
「そ、それよりも一夏、あんた…髪と瞳の色が…」
一夏の変化に驚くのも無理はない。しのぶが眠る前に見た一夏は、髪色は黒一色で、瞳はえんじ色だったのだから……。
「これか、その…説明すると長くなるんだが…体はなんともないから大丈夫だ。それよりもしのぶ、カナエさんはどこにいるんだ?」
「姉さんなら…「一夏……くん?」
横から自分の名を呼ぶ声がし、声のした方を向くと、目に映ったのは、桶を落としたカナエの姿だった
「……カナエさん」
「一夏くん!!」
カナエは涙を流しながら一夏に向かい、そばにいたしのぶ諸共抱きしめた
「え?ちょっ!?か、カナエさん?!」
「ね、姉さん!?」
一夏はカナエに抱きしめられオロオロしていたが、カナエが涙を流している事に気付き、冷静になる
「良かった…!目が覚めて…!本当によかったぁ!あの後、意識がなくて心配したんだからぁ!!」
「ごめんなさい……心配をおかけして…」
「いいの…!“一夏”もちゃんと生きてる…それでいいの…!」
「カナエさん、今…呼び捨てで」
カナエは一夏を呼び捨てで呼び、力を更に強くし二人を抱きしめた。
一夏はその温もりに安心すると同時に、瞳から涙が溢れ出てくる。
「……“カナ姉”、しのぶ、ありがとう。そばにいてくれて…ありがとう」
カナエは姉と呼ばれて驚くも、その様子に姉妹は、一夏の背中を摩っていた。
その身体が震えて、泣いている事に気付いたから。その震える身体が収まるまで、しのぶとカナエは一夏の事を抱きしめ続けたのだった。
プロフィール弐
織斑一夏 11歳
使用呼吸 日の呼吸
見た目 額に陽炎の痣があり、髪型は閃の軌跡のリィン・シュバルツァー と同じ
スペック 縁壱同等 透き通る世界の透視、刀も赫刀化可能
中の人の繋がりで、一夏に使わせるとしたらどっち?
-
神気合一
-
冥我神気合一